ぜぜ日記

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「異常【アノマリー】」感想。いい読書体験だった

SF小説「異常【アノマリー】」を面白く読めたので感想文を書きます。 (末尾にスペースをあけてネタバレ感想を書いています。そこまではネタバレなし) 異常【アノマリー】作者:エルヴェ ル テリエ早川書房Amazon まず、その異様な表紙の写真に目が行く。荒…

読書メモ「入門 東南アジア近現代史」(岩崎育夫)

入門 東南アジア近現代史 (講談社現代新書)作者:岩崎 育夫講談社Amazon 東南アジアは海外旅行としても身近で、エスニックでおいしい食事も人気があるし東南アジアから日本に移住しているひとも増えているし、肌感覚でも距離が近づいているようにも感じる。 …

「ファシズムの教室(田野大輔)」読書メモ。人々はファシズムの暴走を防げるのか

ファシズムの教室: なぜ集団は暴走するのか作者:田野 大輔大月書店Amazon 30年ナチスを研究してきたという田野大輔先生の「ファシズムの教室 ーなぜ集団は暴走するのか」(2020)を読みました。 ファシズム・全体主義に対しては、自分も、おそらく多くの人も抑…

「三体0 球状閃電」すばらしい研究開発SF

三体0を読みました。 あの世界的にヒットした傑作SF三体3部作の前編、prequelです。 でも、三体を読んでいなくても楽しめるし、むしろ三体を読む前のほうが楽しめるかも。実際の執筆順もこちらが先で、中国では単に「球状閃電」という名前で2004年に公開され…

「歴史学のトリセツ(小田中直樹)」多様な歴史の方法論

ちくまプリマ―新書の「歴史学のトリセツ」を読みました。学問として確立しているようにみえる歴史学のさまざまな潮流をわかりやすく説明していて、アカデミアのダイナミズムのようなものを感じられるのがよかった。 まず、授業で学ぶような歴史はなぜつまら…

「ヒトラーとナチ・ドイツ」(石田勇治)を読んだ

石田勇治先生の「ヒトラーとナチ・ドイツ」読んだ。民主的なワイマール憲法下でなぜヒトラーが権力を握るに至ったか、ホロコーストを実行する組織はどうつくられたかが書かれていて恐ろしくも学びがあった。 ヒトラーとナチ・ドイツ (講談社現代新書)作者:石…

読書メモ:「日本会議の正体」(2016, 青木理)

日本会議の正体 (平凡社新書)作者:青木理平凡社Amazon 読んだ。政治家を含め多数の関係者にインタビューしていて、なにかと黒幕的に語られるこの組織のことについて知ることができた。 日本会議のやろうとしていることのいくつかは全然賛同できないし、国益…

「物語 アイルランドの歴史」(波多野裕造)を読んだ

従妹がアイルランド人と付き合いだしたものの、祖母が英語もアイルランドのこともわからないと言っていたので手に取ったんだけれどかなりおもしろかった。 物語アイルランドの歴史―欧州連合に賭ける“妖精の国” (中公新書)作者:波多野 裕造中央公論新社Amazon…

「ラオスにいったい何があるというんですか? 」(村上春樹)・・・旅に出たくなる旅行記

いちどルアンプラバンを訪れたこともあってラオス大好きなので読んでみた。期待とちがってラオスはほんの一章だったもののなかなかおもしろい (ちなみに村上春樹の小説は10ページくらいしか読んだことはありませんが、オウム関連のノンフィクションはよかっ…

「ドキュメント 日本の米づくり」(1987, 村野雅義)で米農家の悲哀を読む

たまたまみかけて*1買って読んでみた村野雅義の「ドキュメント米づくり」(1987)がびっくりするほどおもしろかった。 ドキュメント 日本の米づくり (ちくま文庫)作者:村野 雅義筑摩書房Amazon 1986年に福島県浪江町(!)の山側の標高600mほどのところにある…

「食と建築土木」でみるDIY精神

食と建築土木 ((LIXIL出版))作者:後藤 治,二村 悟LIXIL出版Amazon 書店でタイトルに惹かれてぱらっとめくって、すぐにこれは傑作だとわかって買った本。 農村漁村にある人の手による工作物をいろいろ紹介しているたたいへんいい本でした。 干しダイコンをつ…

『マーガレット・ハウエルの「家」』を読んだ

周囲?で流行っていた流れで手に取りました。 tymikii.hatenablog.com マーガレット・ハウエル、自分は知らなかったのですが有名なブランドで、シンプルな服をつくっています。その創業デザイナーの住まいについての本です。 www.margarethowell.jp (シャツ…

伊藤俊一「荘園」で学ぶ農地の成り立ち

このところ、なんとなく農地というものに興味があってその流れで手に取った。 荘園なんて歴史の教科書で地味にでてきた用語、と思うかもしれないけれど、じつは新書大賞2022で3位と注目されているし、日本の歴史を考えるうえでも土地は重要。 荘園 墾田永年…

技術オタクのビル・ゲイツの「地球の未来のため僕が決断したこと」はポジティブな気候変動対策本

「地球の未来のため僕が決断したこと 気候大災害は防げる」(2021, ビル・ゲイツ)を読みました。 地球の未来のため僕が決断したこと 気候大災害は防げる作者:ビル ゲイツ早川書房Amazon みなさま知っての通り、ビル・ゲイツは Microsoft の創業者で世界的お金…

農作物の価格について、あるいはペティ=クラークの法則の行き詰まり

今月、尊敬するお二人が続けて新刊を出すことを知った。 1つは農業研究者の篠原信先生による「そのとき、日本は何人養える-食料安全保障から考える社会のしくみ」 そのとき、日本は何人養える?: 食料安全保障から考える社会のしくみ作者:篠原信家の光協会Ama…

「プロジェクト・ヘイル・メアリー」はド直球ド迫力の宇宙SFだった

※ 前半に未読者向けに紹介文を書いて、後半に読み終えた方向けにネタバレ感想を書いています。 プロジェクト・ヘイル・メアリー 上作者:アンディ ウィアー早川書房Amazon 未読者向け紹介 (お知らせ)2022/7/13までKindleで半額セールをしているので買いまし…

「現代経済学の直観的方法」を読んで考える資本主義の未来

これまで勉強しても腹落ちしてなかったマクロ経済や貨幣のことがわかったというのもあるし、ブロックチェーンについてもこれほど明快に書かれている本は知らない(構成の妙もあるので要約しにくいので興味ある方は手に取ってください)。 一番刺さったのは、…

料理人のライフヒストリー『天才シェフの絶対温度「HAJIME」米田肇の物語』

天才シェフの絶対温度「HAJIME」米田肇の物語(2012, 石川拓治)を読みました。 天才シェフの絶対温度「HAJIME」米田肇の物語 (幻冬舎文庫)作者:石川 拓治発売日: 2017/04/11メディア: 文庫 単行本では「三ツ星レストランの作り方 嚆矢の天才シェフ・米田肇…

「土 地球最後のナゾ」を読んで考えた100億人をささえる食のこと

ここしばらくのあいだに人口100億人という言葉に2つの場所で遭遇した。1つは、土壌研究者、藤井一至さんによる新書「土 地球最後のナゾ ~100億人を養う土壌を求めて~」、もうひとつはAmazonプライムビデオでみたドキュメンタリー「100億人-私達は何を食べ…

戦慄しつつゲラゲラ笑える稀有な小説「ゲームの王国」

小川哲さんの「ゲームの王国」を読んだ。 基本読書さんの紹介でkindleで買って10か月ほど寝かせてから読み始めたんだけれど、これがおもしろい。 huyukiitoichi.hatenadiary.jp *1 1970年代からはじまるカンボジアを舞台にした、つまり、クメール・ルージュ…

ありそうでなかった「20世紀の独裁者列伝」

「20世紀の独裁者列伝」を読んだ。 20世紀の独裁者列伝作者:桂 令夫,瀬戸 利春,司 史生,中西 正紀,福田 誠,松代 守弘発売日: 2020/09/15メディア: 単行本(ソフトカバー) 著者は桂令夫、瀬戸利春、司史生、中西正紀、福田誠、松代守弘ら戦史系?のライター…

「AIに負けない子どもを育てる」はただの教育本ではない

topisyuさんがブログで紹介していて手にとった本 topisyu.hatenablog.com タイトルはそこらへんに転がっている教育論のようではあるけれど、本書の著者、国立情報学研究所の新井教授は「ロボットは東大に入れるかプロジェクト」というキャッチーなプロジェク…

ソフトウェア開発を仕事にするなら読んでおくべき古典 Joel on Software

2000年から2005年くらいに書かれたJoel Spolskyのエッセイをまとめた本、"Joel on Software"をこの年末に読みました。 尊敬する友人である荻野氏がプログラミングを仕事にするうえで一番学びがあった本として、2011年に教えてくれた本だけれど、なんでそのと…

読書メモ 世界を変える偉大なNPOの条件

読んだのは2015年だけれど、書いてあったことを参照したく当時のメモを引っ張り出してきたのでメモを共有します。 世界を変える偉大なNPOの条件――圧倒的な影響力を発揮している組織が実践する6つの原則作者:レスリー・R・クラッチフィールド,ヘザー・マクラ…

経営おもしろ話、あるいはなぜ東芝はやらかしたのか(「ヤバい経営学」を読んだメモ)

「ヤバい経営学」という本を読んだ。 原著のタイトルはBusiness Exposed。直訳すると無防備な経営*1だけれど、ヒットした「ヤバい経済学」に乗ってこのタイトルになったようだ。書店で手に取ってもらうためには良いと思うのだけれど、語彙がヤバい・・・。 …

2016年読んだ本の棚卸し

こんにちは。いつのまにか2016年も終わりそうですね。あっというまです。 2016年2月までは毎月か隔月かで読んだ本について羅列していたのだけれど、3月以降、生活リズムの変化という名の怠惰により止まってしまっていたのでまとめてたなおろし。 この1年は読…

2016年1月に読んだ本

2016年1月。 進捗はどうだろう。なにをしただろうか。知識や関係を深めることはできたか。終わりなき日常を生きている感もあるけれど、脱していかねば。 やっぱり、まとまって本を読んではいないのだけれどいくつか読んでみた。 止まった時計 止まった時計 …

2015年12月に読んだ本

師走ですね。お元気ですか。無事ですか。 毎年ながらあっという間の年末という感じもあって、あいかわらずやりたかったことができていない、とも感じています。 人目を気にせぬ勇気を持とう。 書をもって街へ出ることをテーマにしていましたが、そんなに読め…

2015年10月に読んだ本

先月に引き続いてあまり本を読めていない。 ちゃんと読んだのこれくらい。 dai.hateblo.jp 文化的なことはなにかしたかなと振り返ると、巨大なカボチャをくりぬいてカボチャプリンをつくったり、もらいものの紅玉でアップルパイをつくったり鶏ガラから出汁を…

人体について人間が知っていること 「からだの一日?」読書メモ

だいたい知っていることばかりじゃないかな、とあんまり期待せずに人の体をテーマにした啓蒙書読んだらわりと知らないこと多くておもしろかったのでまとめてみた。 怪しい研究成果もたくさんあるけれど、398ページ中、50ページほどの参考文献があるので興味…