ぜぜ日記

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読書

苦海浄土(石牟礼道子)感想

苦海浄土 わが水俣病 (講談社文庫)作者:石牟礼道子講談社Amazon ここは、奈落の底でござすばい、 墜ちてきてみろ、みんな。 墜ちてきるみゃ。 ひとりなりととんでみろ、ここまではとびきるみゃ。 ふん、正気どもが。 ペッと彼女は唾を吐く、天上へむけて。 …

『それでも、日本人は「戦争」を選んだ(加藤陽子)』どうしたら戦争を避けられたのか。

それでも、日本人は「戦争」を選んだ (新潮文庫)作者:加藤 陽子新潮社Amazon 歴史学者が中高生(栄光学園の歴史研究部)への5日間の講義をもとにした本。口語で書かれ、質問と応答もあって歴史の本としては独特なんだけれど、日清戦争から国際情勢と日本のト…

「日本一の農業県はどこか」(2024, 山口亮子)感想文

日本一の農業県はどこか―農業の通信簿―(新潮新書)作者:山口亮子新潮社Amazon さまざまなデータを鋭い切りくちで分析していたり、行政の人や農業者にインタビューしていて参考になるし地域差の事例もおもしろいし、主張に同意できるところも多い。自治体や…

「大災害の時代」(五百旗頭真) 次の災害に備える

先日お亡くなりになった、防衛大学長や東日本大震災の復興構想会議の議長を務められた五百旗頭真(いおきべ・まこと)さんの著書。 神戸大教授だったころに阪神・淡路大震災で被災し、ゼミ生を喪うなどした経験がある。 大災害の時代 三大震災から考える (岩…

読書メモ「日本の教育はダメじゃない ――国際比較データで問いなおす」(小松光,ジェルミー・ラプリー) 日本の教育すごいじゃん

日本の教育はダメじゃない ――国際比較データで問いなおす (ちくま新書)作者:小松 光,ジェルミー・ラプリー筑摩書房Amazon かなりよい本だった。 自分がいかに教育について先入観をもっていたか知ることができてよかったし、著者らのデータへの向き合い方から…

「美食地質学」入門~和食と日本列島の素敵な関係~ (2011, 巽好幸) 、日本列島の成り立ちと食。

「美食地質学」入門~和食と日本列島の素敵な関係 (光文社新書 1230)作者:巽好幸光文社Amazon マグマ学者でグルメ野郎でもある巽好幸先生の書いた本。大陸運動という大きな力と、それによって日本列島がどう成り立ったか、そしてこれが日本の食文化にどう影…

「冤罪と人類ー道徳感情はなぜ人を誤らせるのか」(管賀 江留郎)はすごい本だった。人間は過ち続ける・・・

冤罪と人類 道徳感情はなぜ人を誤らせるのか (ハヤカワ文庫NF)作者:管賀 江留郎早川書房Amazon 最近でも湖東病院事件、大川原化工機冤罪事件、プレサンス元社長冤罪事件と冤罪事件は続いているし、IT関連ではPC遠隔操作事件や、岡崎市立中央図書館事件など誤…

読書メモ「わが盲想」目が見えないながら日本留学した著者の奮闘記

わが盲想 (ポプラ文庫)作者:モハメド・オマル・アブディンポプラ社Amazon モハメド・オマル・アブディンさんの「わが盲想」を読みました。 スーダン生まれで12歳で目が見えなくなった著者が19歳で日本留学し福井で鍼灸と点字、日本語を学んで挫折したり乗り…

Spectator vol.49「自然って何だろうか」を読みました。

スペクテイター〈49号〉自然とは何だろうか幻冬舎Amazon Spectatorという雑誌(?)をはじめて買ってみた。年3回くらい出しているカウンターカルチャーっぽい雑誌です。 どの記事もおもしろかったんですが、特に坂田昌子さんという、宮本常一や網野善彦に学…

傑作ファンタジー「ウィッチャー」を読んだ。ダークで旅する神話

ウィッチャーⅠ エルフの血脈 (ハヤカワ文庫FT)作者:アンドレイ サプコフスキ早川書房Amazon ゲーム化されて世界中で大ヒットしてNetflixでドラマ化もしているウィッチャーの原作小説を読みました。自分は原作もドラマも知らないので小説が初ウィッチャー。基…

「物価とは何か」(渡辺努)を読んだ。物価、なんなんでしょうね・・・。

物価とは何か (講談社選書メチエ)作者:渡辺努講談社Amazon 農作物の価格がなかなかあがらないなあ、ということに関心を持っている流れで読んでみました。 東大の経済学部教授でかつ物価情報を配信する株式会社ナウキャストの創業者の渡辺努先生による、イン…

「異常【アノマリー】」感想。いい読書体験だった

SF小説「異常【アノマリー】」を面白く読めたので感想文を書きます。 (末尾にスペースをあけてネタバレ感想を書いています。そこまではネタバレなし) 異常【アノマリー】作者:エルヴェ ル テリエ早川書房Amazon まず、その異様な表紙の写真に目が行く。荒…

「成瀬は天下を取りに行く」(宮島未奈) 近所が舞台でおもしろかった。

成瀬は天下を取りにいく作者:宮島未奈新潮社Amazon 中高生を主人公として、大きな事件が起きるわけでも、恋愛模様が描かれるでもない日常を描いた小説なんだけれど、なかなかおもしろかった。 特に、舞台が滋賀県大津市と自分の住んでいる地域でこのブログ名…

「エンダーのゲーム(オースン・スコット・カード)」読書メモ。現代にも通じる傑作SF

1985年出版で1985年にネビュラ賞、1986年にヒューゴー賞とSFのビッグタイトルを2つとっている傑作。ちょっと前に映画化されたときに気になっていて、積んでいたのをようやく読んだ。 エンダーのゲーム〔新訳版〕(上)作者:オースン・スコット・カード早川書…

「三体0 球状閃電」すばらしい研究開発SF

三体0を読みました。 あの世界的にヒットした傑作SF三体3部作の前編、prequelです。 でも、三体を読んでいなくても楽しめるし、むしろ三体を読む前のほうが楽しめるかも。実際の執筆順もこちらが先で、中国では単に「球状閃電」という名前で2004年に公開され…

読書メモ:「日本会議の正体」(2016, 青木理)

日本会議の正体 (平凡社新書)作者:青木理平凡社Amazon 読んだ。政治家を含め多数の関係者にインタビューしていて、なにかと黒幕的に語られるこの組織のことについて知ることができた。 日本会議のやろうとしていることのいくつかは全然賛同できないし、国益…

「スマート・テロワール」は地方の生存戦略になるか?

カルビーの二代目社長の松尾さん(故人)による農村再生マニュアル「スマート・テロワール」(2014,松尾雅彦,浅川芳裕)を読みました。 農村部の問題や、諸外国での事例、過去の研究などを引き合いに出して農村が自立して発展していくための方法を説いているし、…

「ラオスにいったい何があるというんですか? 」(村上春樹)・・・旅に出たくなる旅行記

いちどルアンプラバンを訪れたこともあってラオス大好きなので読んでみた。期待とちがってラオスはほんの一章だったもののなかなかおもしろい (ちなみに村上春樹の小説は10ページくらいしか読んだことはありませんが、オウム関連のノンフィクションはよかっ…

「ドキュメント 日本の米づくり」(1987, 村野雅義)で米農家の悲哀を読む

たまたまみかけて*1買って読んでみた村野雅義の「ドキュメント米づくり」(1987)がびっくりするほどおもしろかった。 ドキュメント 日本の米づくり (ちくま文庫)作者:村野 雅義筑摩書房Amazon 1986年に福島県浪江町(!)の山側の標高600mほどのところにある…

名著「大日本帝国の興亡(1)暁のZ作戦」で日本が戦争を始めてしまった背景を知る

ノンフィクション作家のジョン・トーランドが1970年に世に出した1936年から太平洋戦争終結までを描いたノンフィクション*1。原題は The Rising Sun: The Decline and Fall of the Japanese Empire 。これは、ギボンのローマ帝国衰亡史 The History of the De…

「トウガラシの世界史」で読む作物と文化の共進化

トウガラシの世界史 - 辛くて熱い「食卓革命」 (中公新書)作者:山本 紀夫中央公論新社Amazon トウガラシという作物の来歴と、これがどう広がって各地の文化に影響しているかをトウガラシ大好きな研究者が書いた本。著者の山本紀夫さんは、1943年生まれで京都…

「食と建築土木」でみるDIY精神

食と建築土木 ((LIXIL出版))作者:後藤 治,二村 悟LIXIL出版Amazon 書店でタイトルに惹かれてぱらっとめくって、すぐにこれは傑作だとわかって買った本。 農村漁村にある人の手による工作物をいろいろ紹介しているたたいへんいい本でした。 干しダイコンをつ…

「プロジェクト・ヘイル・メアリー」はド直球ド迫力の宇宙SFだった

※ 前半に未読者向けに紹介文を書いて、後半に読み終えた方向けにネタバレ感想を書いています。 プロジェクト・ヘイル・メアリー 上作者:アンディ ウィアー早川書房Amazon 未読者向け紹介 (お知らせ)2022/7/13までKindleで半額セールをしているので買いまし…

「ヤバい選挙」で学ぶ制度設計の難しさ

日本のさまざまな選挙トラブルが紹介されていて楽しく笑顔で読める本でした。 ひとつの選挙に200人以上も出た村長選、架空転入、議員が書類送検/辞職し議員0になった自治体、選挙で稼いでいた泡沫候補者の話などなど。 ヤバい選挙(新潮新書)作者:宮澤暁新…

空前絶後の傑作SF「三体」3部作を読んだ。

劉慈欣先生ありがとうございます。太谢谢你了。翻訳者のみなさまありがとうございます。 三体を生んだ文化、読める文化、これまでの人生すべてに感謝。 ※ 本記事では、前半にはネタバレはありません。後半、空白で区切ってネタバレ感想を書いているのでご注…

「エネルギーをめぐる旅」、人類の未来を左右するエネルギー問題を考える

古舘恒介さんの「エネルギーをめぐる旅――文明の歴史と私たちの未来」を読みました。 SDGsが定められる以前から石油の残存量は人類の未来を大きく制約するものとして立ちはだかっており、原子力発電や再生可能エネルギーなどさまざまな取り組みがなされてきま…

いくつか育児本を読んで気付いた共通点

2020年に生まれた子をどう育てるとよいかを学ぶためにいくつか育児本を読みました。 育児は初めてだしやり直せないものなので先人の知恵に学んでおこうという作戦です。 とはいえ、さまざまな人がさまざまな根拠をもとに育児論を語っていて玉石混交。中には…

架空の遊園地の繁栄と衰退を異様なスケールで描く大傑作「ゼウスガーデン衰亡史」(小林恭二)を読んだ

なぜか2014年11月に欲しいものリストにいれたまま放置して、最近kindle化されたことに気付いて読んだ「ゼウスガーデン衰亡史」(小林恭二)がめちゃくちゃおもしろかった。これまで読んできた中でも十指にはいるくらい好み。 ゼウスガーデン衰亡史作者:小林恭…

日本沈没、気候変動、進化する植物

Washington Allston: Elijah in the Desert*1 まとめ 最近続けて読んだ3つの本がジャンルも違うけれどつながって人類社会の危機について触れていたので紹介します 小松左京の「日本沈没」は、タイトル通りの危機に直面する社会を描いたSF。読み応えがあり古…

本の棚卸12月

最近ははてなブログのうんこめものほうに書くのが多くなってるけど日記的な部分はこっちで書くように住み分けるかな。今回も社会人として大丈夫かってくらい軽い本しか読めていないけど棚卸的に。 むつかしい本を何冊か読もうとしているのだけどなかなかまと…