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「論文分析でみる世界の研究活動の変化と日本の状況」について

スラッシュドットでこんな記事をみつけた。

日本の国立大学の研究活動が失速している?
ちょっとデータの解釈が怪しいので元記事を辿ってみる。

科学研究のベンチマーキング2010

  • 論文分析でみる世界の研究活動の変化と日本の状況-

(科学技術政策研究所)

プレスリリース(日本語版概要) (PDF 429 KB)


科学技術政策研究所。こんな研究所があったのか。wikipediaにも項目がない。
文部科学省直轄らしい。科学行政イノベーションとかの研究をやってるそう。
予算883百万円、人員160人だけど、うち97人が客員研究官。

資料はなかなかおもしろい。
情報量多いけど、気になったところを簡単にまとめてみよう。

国際共著論文

国際共著論文のほうが一論文あたりの被引用数が高い。
しかし日本では国際共著論文が少ない。物理・環境では国際論文が多いが、他の分野ではやや少ない。これは国際的に同じ傾向だが、中国はやや違う。材料分野で国際論文の共著関係、97年まで1位は米国だったが、07-09年では中国が1位。しかし中国の国際共著論文の相手は韓国・オーストラリアが増加し、日本はシェアを落としている。
国際共著論文率は特に欧米で増えている。英独仏それぞれ50%程度。米国31%、日本25%、中国22%。

論文数

90年代は増加していたが、2000年代に入り増加率は低下している。世界平均の増加率よりも低い。

論文の質

日本のインパクトの高い論文(Top10%論文数)の量は科学や材料科学や工学の分野で減少しているが他分野においては増加している。Top10%論文数の伸び率は英独仏に及ばないことや新興国の台頭により低下傾向。

研究活動分野のバランス

日本では90年代後半、化学・材料科学・物理学のシェアが高く、計算機や数学・環境のシェアが低かった。2000年代に入ってから、シェアが高かった分野の伸びが低かったために偏在は小さくなった。英独仏は90年代はバランスがとれていた。しかし英国では物理・環境・臨床医学・基礎生命のウェイトが増加している。独仏は物理・環境のウェイトが増えている。米国では、もともと生命科学のウェイトが大きかったが近年工学が小さくなってきている。
中国では化学、材料化学、物理学、計算機・数学、工学のウェイトが高い。
米独仏英と比べると、日中韓は論文数のわりにTop10%論文数が低い。

国内の論文算出構造

国立大学が50%、私立大学が30%程度。3位は長く企業だったが90年代末から大幅に低下させ、その後は独立行政法人が取って代わった。Top10%論文割合はほぼ横ばいだが、独立行政法人がやや伸ばしている。

私見

日本には研究面で強い分野がなくなっており、国際共著論文もなかなか出せていない。論文数の割にTop10%論文が少ないことから質の悪い論文も多いのかもしれない。Top10%の評価軸はよくわからないけれど。もしそうだとするなら論文の質をあげる工夫がいるだろう。