ぜぜ日記

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通勤読書メモ、希望の国のエクソダス、競争の作法

前回に続いて2回目。
こうして記録に残すことには価値はあるけれど、すこしばかり問題もありそう。ここで書くまでもない本や、書くのが恥ずかしい本もあったり、一方で記録を公開することでたくさん本を読んでることを誇示してしまうよくない動機も生まれてしまう。

あと読んでる本と感想を晒すというのは、自分の底の浅さを公開するようなものではあるけど、一種の羞恥プレイとしてやってみる。

というわけで私的な読書メモ、にプラスで良い本は紹介しようかなと思う。それとだいたいの本はもう読まないのでほしい人が入れば気軽に連絡ください。近くならあげます。

今週は

  1. 希望の国エクソダス村上龍
  2. 「深くておいしい小説の書き方」 三田誠広
  3. 「競争の作法」 斎藤誠
  4. 「第81Q戦争」 コードウェイナー・スミス
  5. ウルトラジャンプ5月号(ネタバレ)

希望の国エクソダス村上龍

実は初めての村上龍小説なのだけどすごくおもしろかった。平成10年、1998年に文藝春秋で連載開始した、社会風刺のような小説。あらすじは失われた10年などと言われ閉塞感漂う2001年の日本にて、中学生達が社会(大人)から脱出していく話。ここだけ書くと似てるように感じる「ぼくらの七日間戦争」とはシリアスさもスケールも違う。舞台になった2001年、ぼくはちょうど中学生だった。それもあってか、このなかで出てくる、自分でものを考えることができる中学生との違いにはらはらする。現状に疑問を持たず、思考停止に陥って流されていた中学生のころに読んだらどう思っただろうか。

もちろんこれはフィクションで、実際にはこんな中学生はいないけれど、社会に対する風刺としてすごく秀逸。日本の国民の異常な現実感を描いている。

ディティールもなかなか鋭い。PC普及期とはいえまだまだソーシャルなものはなかった時代に、SNS集合知やネット中継、地域通貨電子マネーカーシェアリングなどのアイデアがでてきている。これを読んで、これはあたる!と当日思った人はどれくらいいるのだろうか。またこの作品で描かれているような危機は「まだ」発生していないが、金融や日本を中心にした通貨危機を描いており、思考実験として非常におもしろい。ドルとユーロを過大評価してる気はするけど当時だと仕方ないのか・・・。社会資本やストック循環にも言及されている。


これは架空の、ある種ユートピアの話だけど、そこには現状の社会に対する痛烈な風刺がある。国民性というものが存在するなら、日本人の危機感と適応力の不足、うえにへつらい、したに威張り、先例主義に陥るさまを言外に指摘しているように感じた。教育や法律のありかた、高齢者問題とモラルも考えることができる、

こう書くと、よくある評論のようにも感じるが、小説、エンターテイメントとしても優れている。パキスタンから始まり、素早く展開していくストーリーには緊迫感がありどんどん読んでしまう。

「この国には何でもある。だが、希望だけがない」

今後の日本がどうなっていくか、どう延命されてなにが先送りしたのかも考えることができるという意味で10年以上前の本だけど今読む価値もある。


深くておいしい小説の書き方

口語体の軽快なエッセイ。小説の書き方、というよりは簡単な文学史と小説の読み方にもとれる。神話と構造の話は自分が気付いていなかったところで興味深い。罪と罰よみたくなった。小説、書いてみようかなー。感性ってなんだろ、

競争の作法

小泉政権は格差を増やしていない、ということや戦後最長の景気回復のまやかしを丹念にデータを追って解説している。マクロ経済をよく知らない自分にとってはいろいろ刺激的な考え方が多く勉強になった。特に実質為替レートと名目為替レートの違いは重要なところ。タイトルはややミスリードな気もするしたまに妙な文体もあるけれど読みやすく、論理的で経済政策に興味のある初学者におすすめ。わりと啓蒙書なのかな。結論の、今後すべきことが抽象的になってしまったのは残念だけど、それだけ難しい問題ということだろう。

第81Q戦争

前回紹介した、「鼠と竜のゲーム」と同じシリーズ。短編集だけど、作者の初期の作品が多いからか、前作ほど強烈ではなかった。それでもやや破天荒なSFとしてはおもしろい。「昼下がりの女王」は人類補完機構シリーズを読む上では必読。

ウルトラジャンプ5月号

ついにスティール・ボール・ラン完結。いい終わり方だった、けれど残酷な終わり方。
またまとめて感想書きたい。というか来月から新連載かよ。杜王町かよ。衝撃。


なんだか今回は希望の国エクソダスばっかだな。。いまは金融・財政系の本を何冊か読んでいるのだけど非常に読むのに時間がかかる。するする読める小説の5倍くらい遅い。もっと知識と訓練ではやくなるかなあ。