ぜぜ日記

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消費したコンテンツ-2014年7月-9月

金木犀の香りが漂ってくると夏が本当に終わってしまったことが実感として沸いてきて毎年毎年悲しくなる。

夏でおでかけしたりおしごとしたりで忙しかったけれど何冊かは読めたのでメモを記録しときます。

ちなみに前期(4-6月)はこんなの読みました。



ノンフィクション

良心をもたない人々

サイコパス・ソシオパスの読みもの。それっぽい事例を紹介しているけれど、だいたい去年読んだ「診断名サイコパス」とかぶっているかな。進化論的な解釈はわりと興味深い。
9月10月に読んだ本:羊の歌、神々の山嶺、解剖医ジョン・ハンターの数奇な人生 - うんこめも

人の心につけこむ天才である彼ら彼女らから学ぶこともあるかもしれない。できる営業マンとか経営層とかみんなサイコパスに見えてきたり、この手の本って著者がサイコパスに見えてきて不思議(被害妄想)。

良心をもたない人たち (草思社文庫)

良心をもたない人たち (草思社文庫)


謎の独立国家 ソマリランド

内戦の続くソマリアの一角に、一地域だけずっと平和を保っている民主国家、ソマリランドがあるらしい。国連にも認められずほとんど情報のないこの国を、現地での取材を重ねて現状や歴史をがたいへんわかりやすく描かれている。

ソマリアはいま、首都モガディシュを中心に筆者の言うリアル北斗の拳状態となっている南部ソマリア(ここの首都、モガディシュは米兵が19名戦死したブラックホークダウンの舞台だ)と、ソマリアの海賊の拠点になっているプントランド、そしてソマリランド、その他細かい勢力に別れている。


このソマリランドでは、選挙による民主的な手続きで政権交代も起きているというアフリカでも珍しいほどの民主主義国家。複数政党による民主主義が成立しているというだけでもすごい。

まず、氏族の力が強いためにこれをコントロールするように国会議員の選挙とは別に10年に一度、政党の選挙があるという。政党を三つまでに制限し、国政に出るためには6つの地域のうち4つ以上で20%以上の支持を集める必要がある。こうして単独氏族だけでは政党を成立しがたくすることで過去に繰り返されてきた氏族の対立を封じ込めたとか。

また、国会には、選挙で選ばれた議会と、各氏族の長老による会議もあり、ここで拒否された法律は通らない
少数政党が乱立して参議院の存在感がなさすぎる日本よりよほど成熟しているかも。


おもしろかったのは北部のソマリランドが平和で南部のソマリアが内戦続きなのは、南部は戦争が下手だかららしい。逆説的にも聞こえるけれど、だからこそ北部では停戦交渉のプロセスが定まっていて、南部では戦争の止め方を知らないという。これは、産業や資源が南に集中して北部が貧乏だからということもあるけれど、北部を植民地にしていたイギリスはもとの氏族の長老たちの権力を利用した間接支配だったのに対し、南部を植民地にしていたイタリアでは権力機構を解体してしまったというのも大きいようだ。
国連や先進国が多額の援助をしたりしても空回っている感があって興味深い。


南部では武装した護衛なしに外を歩くことはできない状態で、海外からの訪問で多額のお金を落とすことになる。つまりトラブルが銭のタネでもある。だと、なかなか平和にしようという動きは生まれない。ゲーム的だ。



金融について。大きな買い物ではドルが使われるけれど、日常ではソマリア・シリングが’使われている。
それも15年以上までの型のお金をイギリスで刷って空輸しているらしいんだけれど、当時と比べて安定しているんだとか。それは内戦時に無政府状態になり中央銀行もなくなってから新しい札を剃らなくなってインフレ率が下がり、安定するようになったんだという。中央銀行の役割、むずかしい・・。



もうひとつ、現地で強勢を誇っていたアル・シャバーブアルカイダなどのイスラムの一派、世間でいう原理主義者はマオイズム毛沢東主義と被っているのではないかというのはかなり鋭い。アルコールはだめ、サッカーもダメ、女性はヴェールで顔を隠さないとダメという厳格な規則は、貧しい地方では別に苦にならなく、氏族の差別がないために歓迎されるのではないかと。そして氏族の差別がないために支持されるという。
また、サウジアラビアなどのイスラム国家が原理主義者を敵と見なし、キリスト教国のエストリアが支援するという政治の不思議もある。敵の敵は味方ということかな。
サウジアラビアなどイスラム国家の独裁者の最大の敵はイスラム原理主義者というのはたいへん興味深い。
あとはイスラム原理主義について、ニュースではわからない現地の感覚も知れた。いまのイスラム国とはまた毛色がだいぶん違いそうだけれど共通点もあるかもしれない。

現地の空気になじんで取材をすすめて行った高野さんほんとすごい。親類からの送金を頼りに現地人とカートという覚醒植物を嗜んでだらだらしている適当さも素敵。

誰も知らないようなことをしているの、ほんとすごいと思うけれど安全に気をつけて欲しい。現地でコミュニケーションツールとして根付いている覚醒植物のカート、あるいはチャット、日本では合法らしいし栽培してみたいな。

謎の独立国家ソマリランド

謎の独立国家ソマリランド



錯覚の科学

時間つぶしにと本屋で表紙買いした割りにはかなりおもしろかった。

簡単にメモ

  • 注意の錯覚
    • 普通はないものは、注意しているつもりでも気付かないことがある
    • 例)潜望鏡で海上を監視していた潜水艦長は、えひめ丸が「見えていた」のに「見落とした」。人間はバスケの試合に乱入したゴリラにさえ気付かない。
  • 記憶の錯覚
    • 記憶は容易に改竄される
    • 「あるべきこと」と「本当にあったこと」を混同する。
  • 自信の錯覚
    • 人は自信をもっている人を有能だと錯覚する
  • 知識の錯覚
    • 専門家さえ肝心のことがわかっていないことがある
    • 見慣れたもの・日常で触れているものを過大に理解していると評価しがち
  • 原因の錯覚
    • 偶然を必然ととらえたがる、相関関係を因果関係と錯覚
    • ワクチン接種で自閉症になる、9.11陰謀説、セックスで若返る、雨が降るとリウマチが痛む
    • 個人の体験を、データよりも重んじがち
  • 可能性の錯覚


これらのことを多くの実例をもとに解説している。
これらの錯覚のいくつかは直感のダークサイドでもある。直感を頼るべき場面もある。たとえば、味覚なんかは直感に頼った方が適切に評価できる。

いくつかの錯覚は、人間が複雑なものを単純化して楽に生きるために役立っているものではある*1のだけれど、人間の不完全さと弱さがよくわかる。
ふつうに生活している分には、これらの錯覚はせいぜい車で人をはねたりするとか仕事でちょっと失敗するくらいだろうけれど、大組織の力や科学技術によって人の力がレバレッジされる場合にはとんでもないことになる気がする。
原子力発電・航空・ITシステム・議会・裁判などなど・・・。


工学的・制度設計的にシステムを制御するためにテストを重ねてフールプルーフに設計してだったり独裁を防ぐようなルールはつくられてはいるけれど、それでも人間が設計し人間が運用せざるを得ない以上、これらの錯覚を克服することはできえないんじゃないだろうか。
物理的にできることは広がったけれど、それに伴って精神レベルが惰弱なままなのなんとかできないのかもな、とか考えると暗黒ディストピアSFっぽくなるのでここらへんまでで。


ただ、錯覚しうることを前提にシステムは設計すべきだし、自分の自由意志があるという考えはおこがましいかもということを肝に銘じておくとすこしは失敗も減るかも。

錯覚の科学 (文春文庫)

錯覚の科学 (文春文庫)


実録 中国共産党

秘密警察 KGB

実録 中国共産党と同じく、本屋で500円で買ったDVD。60年代のアメリカの番組だろうか。
世界一有名な悪役スパイ機関でありエピソードごとにはかなりおもしろいこともたくさんあるんだけれど、中国共産党と違って、時系列でもないし体系だってもないしどういう内容をどういう順序で話すのかの説明もポイントもなくてけっこうわかりにくくて少し寝てしまった。

気になったことのメモ。

まず一番印象的だったのはヘードマッシングという女スパイ。
国防省の高官や国務長官の政治顧問などの要職にいる人間をスパイに勧誘した大物で必要だったら技術者も女も勧誘した。女スパイで優れた勧誘者というからには峰不二子的なアクティブな美人かと思いきや、アメリカのどこにでもいそうな太ったおばさん。こんなひとまでスパイで高級官僚を勧誘していたというのほんとすごい。

話していた勧誘術としてはこんな感じ

  • 信頼関係を気付いてから追い込む。決してソヴィエトのスパイとは言わない。

例外は相手に思想を説く時だけ。

  • 対象を落とすために嫌いなワーグナーも聴き、(おそらく相手の興味分野である)フロイトも読んで勉強したという。
  • 女はハンサムをあてがって身体の関係までもっていければほぼ100%だとか。でも、ファシズムという敵が目標になっていたからこそできたそう。
  • 労働階級を勧誘するのは不可能、でも知識層や中間層を勧誘するのは簡単。永遠の自由、社会主義、農場、新しい医学、新しい世界


ルーズベルトの顧問で国連の設立にも関わったヒス、ソ連駐在のカナダの大使のワトキンスもスパイだったとか。

大使館や国連はスパイの温床だ。
国連職員は米国内を自由に移動できるからスパイとして格好のポジション。あるソ連出身者が幹部の部署には、その人物の意図ではなくKGBのスパイが大量に入ってきたがKGBの上官の命令しか聞かずスパイばかりしていて国連の仕事をまったくしないものが大量にいたという。

ほかにも民主主義と社会正義を標榜したキューバ革命計画経済を導入)でもその後はKGBが介入し完全に掌握。
60年代に起きた黒人の暴動は、自主的なものではあったが武器の使い方や火焔瓶の作り方を教えたのはKGBケベック解放戦線にも関わっている。

あとアカデミーでもスパイ。ソ連にいる米国人科学者のすべては人文系だが、米国にいるソ連人科学者は大勢いるというのもなかなか。

亡命者や捕まったスパイが誰かはスパイであると証言したり告白すると対象はその数日後に心臓発作で亡くなったりとかまじKGBだわ。



ほかにも高級官僚のスパイは米国から蒋介石政権への支援も大統領と議会の決定があったにもかかわらず無視して遅らせたりとかかなり歴史にも影響を残していそう。自由の女神を爆破する計画まであったそうだ(警察のガサ入れで未然に防げた)
60年代末からのカリブ海の左派独裁政権成立あたりの事情はキューバ独立以外ほとんど知らないので調べてみたい。
東西冷戦、やっぱりおもしろいぞ!

さて、日本国内に潜伏しているという北朝鮮工作員はどうしているんだろう・・・。

秘密警察 KGB THE KGB CONNECTIONS CCP-898 [DVD]

秘密警察 KGB THE KGB CONNECTIONS CCP-898 [DVD]


聞き書き にっぽんの漁師

沖縄から北海道までの日本各地のベテラン漁師13人からの聞き取りを書き起こした本。
それぞれ捕る魚も規模も違うけれどみなプロフェッショナルだ。その考え方は何十年もの経験からのみ得られる重みを感じる。

同じ場所でずっと同じものを狙っている人、時代に合わせてターゲットを変えている人、遠洋で捕りまくっている人。

(海の)底の硬い所とか柔らかい所とかありますさかい。海底は実際には見たことがなくてもわかるわ。だいたいヒトデが違うてくる。ヒトデの形でここは柔らかいか硬いか、また中間ぐらいのザレの石か濃いしか。みんなヒトデが違うておるわ。ヒトデを見たら海の底がどうなっとるかわかる。


気になるのは、ほとんどの人が「昔は良かった。今の若いもんはたいへんだよ」と言うこと。魚の値段が下がったり、漁獲が減っているからだそう。魚群探知機や強い繊維など漁具は進化したけれどとれる漁は減っている。
高齢化も進むし遠洋だと外国人船員に頼らざるをえない。鰻の漁獲高が減っていることはニュースで知ることが出来るけれど、ほかの漁業全般もあんまり継続的じゃないのかも。

陸(おか)で勤めた場合は何十年か勤めな一人前の給料は出んがいね。漁師の場合は、一年経てばもう一人前や。みな漁師になったのは、それが魅力でなかったんやないかな。今は違うわ。みなサラリーマンや。自分のところも三人息子があるが誰も後継者はおらん。高校生の勉強の嫌いな孫がやる言うてるが、やれんわ。遅い。高校出てからでは遅い言うんじゃなくて、俺が教えるには年がいき過ぎた。もうみんなそんな人ばっかりや。


恵みの海をみなで漁するというのは共有地の悲劇感もあってむずかしい。ホタテとかだと地区を決めて稚貝を育てて4年ごとに採るという方法をとっている農家のようなところもあるけれど、回遊魚ではそうもいかない。国内で厳格に漁獲量を定めていても他国もとるし、密漁をするインセンティブも強い。そしてみんな苦しむ。

また、多くのところで出てくるのが漁業権の話。港をつくるであったり資源保護するためにそれまで漁業を営んで来たひとに家がたつほどの補償金を国から払って漁師が減る。そしてそれにより港の好立地でもある魚の産卵場である藻場が減って漁業資源に影響をもたらしている様子。漁業資源、どう管理していけばいいんだろう。


もちろん、そんな後ろ向きな話じゃなくて熱い話もある。


オホーツクでサケ定置網やっている人がソビエトの監視船の目をくぐって密漁して大漁をあげた話や、紀州の伝説的マグロ漁師。これについてすこし書いてみる。

紀州の漁師は漁法や漁具を改良して日本の隅々まで魚を追い、そしてその漁法を各地に伝えた。三陸の漁師も房総の漁師もその漁法に驚き、教わったそうである。

この本で紹介されているマグロ延縄漁の寺本正勝さんは19トンの船で年間1億円くらい揚げていた名漁師なんだけれど東シナ海魚釣島、喜屋武岬、沖ノ鳥島、硫黄島、小笠原など日本中の海に縄を下ろしているし漁具に工夫も重ねている。で、いろんなところに行くと現地の漁師とトラブルになったりするけれど、逆に、なんでこんな金みたいな魚がこんな値段しかせんのよと怒って、魚の扱いやら何やら教えて魚の買い取り価格が上がって喜んでもらったという話もある。

名漁師と呼ばれるひとの多くは、勘と経験だけでなく、進取の気性と工学的な考え方も持ち合わせていてすごくかっこいい。

農家編とか畜産、猟師、林業家などの類書があれば読みたいな。そういえば漁師や猟師は「師」だけれど、それにそうとうする農業者を指す言葉ってなさそう。

聞き書き にっぽんの漁師 (ちくま文庫)

聞き書き にっぽんの漁師 (ちくま文庫)


パーソナリティ障害がわかる本

パーソナリティ障害とはなにか。米国精神医学会の発効する「精神疾患の診断・統計マニュアル第4版(略称 DSM-IV)」によれば「著しく偏った泣いてきた意見や行動の持続的様式」ということで著者は「偏った考え方や行動パターンのため、家庭生活や社会生活、職業生活に支障をきたした状態」と説明している。
ひとくちにパーソナリティ障害といっても、10種類に分類され、有名なところで境界性パーソナリティ障害(俗に言うボーダー)から回避性パーソナリティ障害、妄想性パーソナリティ障害がありそれぞれ大きく異なっているようである。

「偏っている」という表現は、「偏っていない」・「正常」なものの存在を前提にしているようであまり好ましくないと思うけれどある枠組みでとらえることで認識でき、対処することで本人にとっても周囲の人間にとってもよい結果となるというのは素晴らしいことだと思うし医学の成果としては直接に病を取り除く外科手術の技術や難病を癒やす薬に優らぬとも劣らぬものだろう。

この本ではそのパーソナリティ障害の紹介に留まらず、パーソナリティ障害をそれを個性として活かす、つまりパーソナリティ・スタイルに昇華するための方法であったり周囲の人間がどう対応すべきかという点まで盛り込まれていて参考になる。

また、興味深い指摘をメモしておく。
こういったパーソナリティ障害は遺伝か環境かという議論はあるが、二元論ではない。自閉症スペクトラムなどで遺伝的にすこし育てにくい子だと、親や先生からも否定的な反応をとられることが多いなど環境にも影響を与えるというもの。また、著者によればほとんどのパーソナリティ障害では親の影響があるということである。核家族化・少子化が進み子にとって親の存在感が相対的に大きくなっている現代ではある種の先進国病として増えつつあるのかもしれない。

先に挙げたマッカーサーはこの本の分類でいう自己愛性パーソナリティ障害に強くあてはまっていると思う。彼の英雄気質もこういったものからもたらされているとすればある種の天才には逆に必要な要件なのかもしれない。


家庭の科学

書きました。

日本の経済

新書。明治から高度経済成長、オイルショック・バブル・平成不況と歴史を概観し、国際関係・産業・企業経営・雇用と職場・財政と社会保障・日本の金融と各論を簡潔に整理している。
わりと知っているつもりであったけれど高度成長のあとに成熟した社会へのシステムの切り換えに失敗したということを整理されて勉強になる。

これまではフリードマン的に自由化がいいんじゃないかな、規制撤廃して市場に任せたらえんちゃうかなと無垢にも思っていたんだけれど、保護にはそのメリットもある。産業を育成できる。日本の自動車産業も5,60年代に保護していなかったらつぶれていたかもというのはある。いま、アメリカなどすでに成熟した産業をもっている先進国中心に発展途上黒に門戸開放を迫っているけれど、ご都合よすぎなのかも。ソマリランドにしてもほかの最貧国でも資源やプランテーション以外はなかなか産業が育たないよね・・・。


これからどうしたらいいんだろう。本書から考えると、経済成長は見込めず、共同体が不可逆に縮小しているなかでは個々の経済主体に多くを任せることが難しいので小さな政府ですませることはもはや不可能。無理にすれば大幅な格差のもとで社会矛盾が噴出する。そのため、あるていどの負担は覚悟する必要があるという。しかし政府任せのどんぶり勘定ではこれも不満が噴出するため正当性・納得性が確保されるようにする必要がある。具体的には、能力に応じた負担、必要に応じた受益を基本とし、権限・根拠を明確にしたルールを透明に運用する。これは企業などの組織でも同じで、コンプライアンスを厳しく追及し、不当な身分的差別の解消に努め、不払い労働に頼らない経済水準の維持を目指す、というものだろうか。それでも難しすぎる。
問題が複雑で錯綜しすぎていて無力感高まってる・・・

日本の経済―歴史・現状・論点 (中公新書)

日本の経済―歴史・現状・論点 (中公新書)


マッカーサー大戦回顧録

長らく絶版だった朝日新聞版からフィリピン戦から日本占領政策までを抜粋して一冊にまとめている。

やっぱりマッカーサーはすごい。自伝の行間から窺えることは英雄的とも言えるカリスマ性と、自身を英雄に見せようとするその強烈な自己顕示欲。主観的な自伝で客観的な歴史ではなく資料でしかないけれど、物語としておもしろい。ちなみにマッカーサーの思い違いや、過大に記述しているところを解説で指摘しているので安心して読めます。


読んでいると、大統領選に出馬しようとするなどの誇大な自己顕示欲、マニラホテルのスイートルームを占有する特権意識、他者を利用すること、共感の欠如、キング提督など批判者への過度な反撃、厚木空港への降り立ちや戦艦ミズーリでの降伏式、どう見られるかを強く意識した演技性の行動などなど自己愛性パーソナリティ障害を思わせるようなところが多い。もっとも、その希代の才能と戦場や組織での経験からそれは障害というよりはスタイルに昇華している感じはあるかな。というよりもこういった、命も関わるし国家内外の利害が絡む複雑な近代戦で支持や信頼を集めスムーズに行動するにはこういう性格は必須なのかも知れない。


太平洋戦争であまり知らなかったフィリピン戦(米軍を先制攻撃した1941年のM作戦時と1944年末からのレイテ戦)についても知れたし米軍が戦いながら英国やロシアとどう連携し、牽制していたか、またマッカーサーが自国政府や各国とのあいだで巧みな外交をしていたことが興味深い。こういう人物は平時には育ちえないなあという気もする。


彼がいなければ日本はどうなっていたか。北海道はいまもソ連領かもしれないし分割統治も本気であり得るし今よりも精神的封建制が強く残っていただろうことはわかる。


チャーチルルーズベルト、またオーストラリア首相のカーティスやフィリピンのケソン大統領、ほか軍のトップやはては日本軍の将官の、マッカーサーを褒め称える手紙をたくさん紹介していて古風なレトリックがなかなかおもしろいし自分もこういう手紙を書いてみたい。


それも含めて何カ所か気に入ったフレーズを抜粋してみる。

彼は攻撃に際しては敏速で確実であり、防衛に当ってはねばり強くたじろかず、勝利を得た時は謙譲で慎み深かった。敗北した場合にどうかは私は知らない。なぜならクルーガーは一度も破れたことがないからだ。

こういう褒め言葉のオンパレードである。批判も多いけど。こういった褒めフレーズ辞典になるかもしれない。

私はいつも、戦闘に先立って細かい計画を立てることは危険だと考えている。なぜなら、敵の反応ないしは敵のイニシアチブといった不安定的な要素で予期しない状況が出てきた場合、指揮官の判断を狂わせるおそれがあるからだ・従って私は、作戦に当たっては、それをいつはじめるかということ以外に日程を立てたことはない。こんどの作戦では、進展が非常に早くて、はじめの希望や期待をはるかに越える戦果があがった。野戦の指揮官にとっては、上級の司令官からあまり細かい”くちばし”を入れられたり、あまりきびしい”時間表”を強いられたりすることほど、危険なものはない。
どのような部隊にも、それぞれに特有の長所や弱点からくる自然の制約があって、それが部隊の作戦行動に影響することになる。それがどう影響するかを知っているのは、その部隊の指揮官だけであり、時にはその指揮官でさえわからず、推測を働かせねばならない場合がある。従って作戦の現場に居合わせない者が、あれこれと強制的な判断を加えることは、ものごとをぶち壊しにしてしまうおそれが多分にある。

日本の大企業ではよくあるよね。ということだけでなく、まま当たり前のことではあるけれどこれだけ堂々と言語化できるということに驚く記述も多い。

日本はいまや、国民を全体主義的な軍部の支配から解きはなち、政府を内部から自由化するという実権の一大研究所となったのである。日本での実験は、日本の戦争再開能力をぶちこわし、戦争犯罪者を処罰するという連合軍主要目標よりはるかに先に進んだものでなければならないことが、私にははっきりしていた。
同時に、近代において被征服国の軍事占領が成功したためしはないということも、私にはよくわかっていた。(中略)
その弱点とは、民間人の支配が軍にとってかわられるだけであること、非占領地の住民がいや応なく自尊心と自信を喪失してしまうこと、自由社会のもつ地方的な代表制とは逆に中央集権化された独裁的で専横な権力がどんどんのさばりはじめること、外国兵の銃剣に支配された国民の精神的、道義的風潮は、次第に低下するものであること、権力という病気が次第に占領軍部隊にしみ込み、占領することはある種の人種的優越を示すものであるかのような有害な錯覚が兵士たちの間に生れるにつれ、占領軍自体も次第に堕落してしまうことなどだった。

イラクやアフガンで統治にあたっていた現地のトップはどう考えてどう行動したのか、記録を読んでみたいな。


そういえばむかし、「女子学生会長 マッカーサー大戦回想記に目覚める!」というラノベみたいな某書の二番煎じを読んだなあ。高専×ロボコン×マッカーサーというどうしてこうなった感があって二番煎じにしてはおもしろかった。
ただ、本家は苦手です為念・・・。



エッセイ

茶の間の正義

硬派な保守のコラムニスト、山本夏彦氏によるエッセイ。
1967年に初版なので随分と昔の本だ。保守観念も今読むと時代がかかっているようにすら感じる。けれど世間一般の通念や識者・マスコミの言葉に一味違う視点から鋭く、しかし考えてみるとまっとうな風刺を投げかけている。現代でいうと誰だろう?小田嶋氏とかだろうか。

電車のなかで読んであまりメモはとっていなかったのだけれど2つ気にいったことを紹介してみる。


売血や売春を批判する流れで、職業には貴賎があると断言している。職業に貴賎はないと教え込まれた自分はオヤと思ったけれど読んでいくと、職業に貴賎はないと言う人は多いが、誰しも子供を一流校へいれたがり、やがては一流企業にいれようとする。してみれば貴賤はあるとは白状しているも同然ではないかと続く。そして腹と口が違うことに皮肉をかける。

また、核家族礼賛を排す。という話を紹介する。核家族では過去の知恵や技量が受け継がれにくいとしている当時、世間にどう受け止められていたかはわからないけれどいまはよくある話。
そのなかで下記のように書いている。

私は年寄のいない家庭は家庭ではないと思っているーと言えば年寄りは喜ぶ。核夫婦はいやな顔をするだろうが、早合点である。何度も言うが、核家族という造語は新しいが、実物は早く存在していた。今のインテリ老人の多くは、その先駆である。あれは本物の年寄りではない。にせの年寄である。彼らは若夫婦と縁を切る前に、または切られる前に、ご先祖と縁を切っている。肉声で昔話一つ話してやれなかったのは彼らである。


ほか、昔話を改竄するな、犬のふり見て我がふり直せ、ラーメンと牛乳で国滅びるなど興味深いタイトルのエッセイがあるので気になる人は読んでみるといいかも

雑誌の連載コラムのようであるのでその初出を載せて欲しいなあという気持ちはある。

茶の間の正義 (中公文庫)

茶の間の正義 (中公文庫)



人望の研究

空気の研究や偽ユダヤ人問題の山本七平氏の本であること、「二人以上の部下を持つ人のために」というサブタイトル、Amazonでの高評価からぽちってみた。
中身を簡単に言うとこんな感じ。

  • 能力と徳の両方が必要だよ(このあとは徳の話だけになる)
  • 四書五経の入門としての近思録に学ぼう
  • 九徳に達するために中庸を目指そう

最近の自分は徳が足りないので訓練しようかな。



全東洋街道

たぶん70年代くらいにトルコから日本まで旅した藤原新也の写真ポエム。よい。
フィルムのしめっぽさ、とてもよい。
インターネット時代でいろいろ変わっちゃったなー、と思ったりする。

上下巻でこれだけいい感じのパターンの表紙の本はあまり知らない

全東洋街道 上 (集英社文庫 153-A)

全東洋街道 上 (集英社文庫 153-A)

全東洋街道 下 (集英社文庫 153B)

全東洋街道 下 (集英社文庫 153B)



技術書

プロが教える農業のすべて

カラーで現場のミクロな話から国家間のマクロな話もあって概要を知るにはよかったかも。
米や野菜の畑作りからはじまって種まき、収穫まで簡単に説明している。あとは補助金とか具体的にどのくらいもらっているもので、もらうためにどう工夫するのか知りたいなー。
ただ、こういうのはある程度の実践がないと机上での学習も非効率だしな・・・

史上最強カラー図解 プロが教える農業のすべてがわかる本―日本農業の基礎知識から世界の農と食まで

史上最強カラー図解 プロが教える農業のすべてがわかる本―日本農業の基礎知識から世界の農と食まで


インフラデザインパターン

整理されていて便利。求められる非機能要求のレベルに応じて比較して選べるというのがよい。ただパターン化しすぎなきらいはあるかも。クラウドデザインパターンAWSなどの具体的なサービスでやっていかないとわからないかな。
あたらしく構築するときに、どういったポイントがあるかメモ的に見てみるとよいかも。インフラむずかしい(小並感)

インフラデザインパターン ~安定稼動に導く127の設計方式 (WEB+DB PRESS plus)

インフラデザインパターン ~安定稼動に導く127の設計方式 (WEB+DB PRESS plus)


パーフェクトJavaScript

これまで、ちょっとしたおもちゃをつくるくらいにしか使っていなかったJavaScriptをようやくちゃんと勉強してみた。
言語仕様から、クライアントサイドでの使い方、web APIの関連、Node.jsを用いたサーバサイドまで触れられていて、自分みたいなコピペプログラマにとって筋の通った理解への大きな助けになったと思う。
ファットクライアントで速度を出すみたいなのがどれくらい効くのか調べていないけれど、どうなんでしょう。

それよりサーバサイドをNodeで書くのが楽すぎてびっくりした。もっとちゃんと書けるように勉強したい。

パーフェクトJavaScript (PERFECT SERIES 4)

パーフェクトJavaScript (PERFECT SERIES 4)



実践Node.js

原題はNode in Actionで日本風の名前になっている。
nodeおもしろいと思って読んでみた。わかりやすいし開発現場を意識していて実践的でインスタントに効果ありそう。
ExpressやそのコアのConnectにかなり紙幅をさいているのだけれど、これが出た前後で新しいバージョンの、がらっと変わったExpressがでてつらい感じ。作者にExpressつくったひとがいるのに訳者には連携されていなかったのかな。
あと訳者と監訳者のコメントどころか紹介もない技術書ってめずらしい。なんか後ろめたいことでもあるのかな。

実践Node.jsプログラミング Programmer's SELECTION

実践Node.jsプログラミング Programmer's SELECTION



マンガ

サルでも描けるまんが教室

表紙のインパクト買い。
なんだこれ、天才過ぎる。

まず表紙をめくってすぐの、マンガができるまでカラーコラムが異常。
インドネシアの木材業者のインタビューからはじまってパルプや紙の加工を学研マンガかってくらい解説してから、険しい顔をした漫画家が真剣にエロ漫画を描いて、これまた真剣な編集者から「もっと食い込みを強調して!」と鋭い指摘を受ける。そして写植屋さんがインタビューを受けながら、ひわいなセリフを打ち込む写真。それが製版され、ふたたび編集部で校了し、厳しい顔をした印刷会社の職人さんのまえをエロ漫画が流れていく様の写真とインタビューがある。そして、それを読む若者。それは読み終わった後、断裁されパルプになり、再生紙へ。そしてトイレットペーパーとしてさらにエロ漫画を読む若者の右手に置かれる。死と再生の雄大な仏教的景観・・・。
ひどすぎる。


はじめは漫画の書き方を項目ごとに4-8ページずつ書いて、ジャンルごとに攻略法がのっていてるんだけれどパロディ・諷刺だらけでいちいちおもしろい。
枠線の項では「陰毛」をつかって枠線をつくってみたり(なに言っているかわからないと思うが本当だ)、ポーズの項では竹熊センセのあられもない姿が描かれていたりいろいろひどいんだけれど、少年漫画で大事なのはメガネくんだと喝破したり、少女漫画と相撲の関連性について洞察していたりとするどい。

後半、彼ら自身が持ち込みして連載がはじまり、苦心と努力?の末に大人気漫画となってアニメ化・グッズ化して絶頂をむかえる。そして人気低迷からどん底まで落ちてホームレスになるところまでを漫画家視点で描いていて、まるで創世と終末を描いた神話のようでもある。


これも上下巻ともに異常な存在感のある表紙だ・・・



アニメイション・特撮

喰霊

同居人が借りてきて予備知識なしに見たら驚きのあまり呆然としてしまった。いいから何もググらずに一話を見ろ。話はそれからだ。アニメでこれだけショックを受けたのは初めてかも・・・。


ジョジョの奇妙な冒険

いま、深夜アニメで3部をやっている。前半が終わったところで、1月からまた後半が始まるらしい。分割4クールでかなりの長編だ。

結末まで知っていて予定調和的ではあるんだけれどついつい見てしまう。いいアレンジはあるとはいえ、話の筋は原作に忠実すぎてテンポが悪いけれど長旅を追体験できてよいのかもしれない。

これの原作をリアルタイムで読んでいた世代はほんとうらやましいな。
アブドゥルさんが亜空間に***されたシーンとか、ディオの能力***だとわかった前後あたりはもう翌週が待ち切れなさすぎるだろうし、どうなるかの予想や議論はほんと盛り上がりそう。


仮面ライダー鎧武

フルーツ×戦国という謎デザインでかつ虚淵玄氏が脚本を書いているということで話題を呼んだ鎧武もとうとうおしまい。そもそもが対象が子供向けで販促番組であり、タイアップも多いし制約だらけでほんと難しいと思うんだけれどよくつくりきったと思う。

賛否両論ではあるけれど続きが気になるというのはおもしろかったということかな。
とりあえずしばらく続いていた、新しい敵怪人に苦しめられる回と、弱点の発見orパワーアップによる敵怪人を倒す回の繰り返しをほとんどないものにしたのは大きな功績だろう。

しかしデザインださすぎではないだろうか。いや、これがいまのちびっ子に受けるとすればこれからの時代は・・・。むしろおれの感性が老化しているということ?


イベント

深川八幡祭り 本祭

3年に一度の本祭りに参加してきた。朝5時集合で夕方17時解散まで御神輿担ぎっぱなし、沿道で水かけられっぱなしでかなりしんどかったのだけれどかなりおもしろい。地域コミュニティにもかなり入れたしなかなかよかった。

1年近く付き合った彼女と別れた

原因は自分の徳が足りなかったとでも言っておこう。


以上。わりと人生の悩みどころ。

*1:人工知能でいうフレーム問題を解決するようなのと近いかな