ここ数年では珍しく小説を3冊も読んだ月であった。やっぱりすぐれた小説にはパワーがある。かなり心にくるものがあった。でも大衆にはなかなか届かないんだよな。
ただ、なかなかまとまった時間をとって本を読めていない。これは電車通勤でなくなったことと、引っ越して作業机がなくなったことが大きい。これまでは食卓を兼ねていたものを使っていたのだ。また、自分で豆を挽いてコーヒーを淹れるようになってからはカフェでコーヒーに数百円もかけることがだるくなったし、近くにはまともな図書館がないしでなにか考えたい。今のところ会社の始業時間前と仕事終わった後に技術書をちょっとずつ読んでいるけれど、ほんとにちょっとずつでしかない。
とりあえず、いつもどおり読んだ本を棚卸ししておく。
バイバイ、エンジェル
- 作者: 笠井潔
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1995/05
- メディア: 文庫
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探偵役、矢吹駆は現象学的アプローチで事件の把握(≠解決)を試みるという異色さ。これは、事実の積み重ねからではいくつもの恣意的な解釈が生まれうるため真実を取り出すことはできないとし、「直観」を用いるものだという。
ただ、一見オチが唐突だったし、最後の対話はもと学生運動のイデオローグで転向した作者の代弁かと思うところもあるけれど、内容的には大好物でなかなかよい。 キャラクタもいい味をだしていて例えばワトスン役で20際の学生ナディア・モガールの語りなのだけれど、その感性・主体性・プライドの描き方がほんと好ましい。これ書いたのほんとに男か、という気もするし女性が読むとどう感じるかは気になる。
わたしは少し得意な気持になりひとりでほくそえんだ。青年たちが自分を巡って競争心や嫉妬心を燃やすことほど、若い娘を面白がらせ自尊心を満足させることはない。 (バイバイ、エンジェル p174)
何冊もシリーズ出ているので読みたいけれどエネルギー使うんだよな。。
虚無への供物
- 作者: 中井英夫
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/04/15
- メディア: 文庫
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・・・なんで放置していたのか理解に苦しむほどおもしろく、いっきに666ページ読んでしまった。これはほんとすごい作品で、キャラクタと構成とメッセージ性でこれをこえるミステリーがありえるのかと不安になるほど。
1955年当時の文化に彩られつつも多数のメタメッセージが編み込まれ、現実と非現実が重ね合わさっているかのような展開。最後の二重の告発の重さがたまらない。はじめは1962年の発表だけれど、ノベルゲーム的なライトさも持ち合わせている。そしてFate / hollow ataraxiaで感じたアンチノベルゲームのメッセージに似た衝撃もある。探偵物のひとつの極致といってもよいと思う。 結末もたいへん優れているのだけれど、読み進めている途中で感じる、ドグラ・マグラとは別の方向で現実と非現実の間を行き来するような、不安感はたいへん貴重だった。
スローターハウス5
スローターハウス5 (ハヤカワ文庫SF ウ 4-3) (ハヤカワ文庫 SF 302)
- 作者: カート・ヴォネガット・ジュニア,和田誠,伊藤典夫
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1978/12/31
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と、脇道にそれたけれど本書が傑作であることはかわらない。 第二次世界大戦時の連合国による虐殺、ドレスデン空襲を軸に、戦争の悲惨さを生死の無情さを滑稽にシニカルに描いている。凄惨な部分もありつつも笑える。そしてそれによって人の命の軽さが際立つ。
時間を行ったり来たり、現実にとっぴなSF世界を混合させるやり方は絵本的でもある。 同著者の長編ではタイタンの妖女(これもタイトルの翻訳微妙)が似た雰囲気もありつつもスケール大きくて好きだけれど、それと比べると人の脆弱さが浮かび上がるような文体と物語で味わい深い
流通大変動
流通大変動―現場から見えてくる日本経済 (NHK出版新書 425)
- 作者: 伊藤元重
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2014/01/08
- メディア: 新書
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都市圏の流通の変遷だと、この資料がめちゃめちゃおもしろかった。
(PDF)商業ポテンシャルから見た東京の都心と郊外の変化
- [都市]
- [東京]
交通と商流の変化、都心と郊外の盛衰、都市のダイナミズムめっちゃおもしろい
2015/02/23 13:28
統計学が最強の学問である
- 作者: 西内啓
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2013/01/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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絵でわかるロボットのしくみ
- 作者: 瀬戸文美,平田泰久
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2014/01/30
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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イベント
増井さんのUI話
スマホに満足してますか? ユーザインタフェースの心理学 (光文社新書)
- 作者: 増井俊之
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2015/02/17
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そういえば、増井さんの記事だと、このブックマークがおもしろかったので紹介しておく。
「みんなジョブズに騙されている」増井俊之教授が進歩の止まったコンピュータのUIを問い直す【TechLIONレポ】 - エンジニアtypeb.hatena.ne.jpさやか「あのさあ、ジョブズがそんな嘘ついて、一体何の得があるわけ?私達に妙な事吹き込んで仲間割れでもさせたいの?まさかあんたホントはあのナデラとか言う奴とグルなんじゃないでしょうね?」
2014/10/02 10:59
雑感
最近はふたたびインターネッツ依存気味。空き時間があるとついニュースアプリをひらいたりSNSをひらいてソーシャルゴシップやらネタ記事やつぶやきを見てしまって時間を浪費している。 もっと本を読んで、先のことや今のことを考えて、人と話して美味しい物を作ったり体を動かしたい、とは思うのだけれど目の前の刺激に翻弄されている。その背徳感も含めて娯楽なんだろうけれど。