100万人以上の患者がいるほど現代社会を蝕んでいるものなのに*1、どういうものなのか断片的な情報しかなく、よくわかっていなかったので読んでみた。防衛医科大学校精神科の教授や病院長、日本うつ病学会の理事長もつとめるうつ病の第一人者である野村総一郎先生が一般向けにだしている本で、2004年に初版がでてから2017年に大幅にアップデートされてこの新版がでたという。
子どもの場合や非定型うつ病から、適応障害、双極性障害など関連疾患についても記述されていて、またそれぞれ典型的なストーリーもついているのでわかりやすい。
いくつか読書メモ
さまざまなうつ病・関連病
メランコリー型うつ病
- 典型的なうつ病
- 生真面目・がんばり屋などのうつ病に陥りやすい性格のひとが、ストレスをきっかけに発症する
- 治療薬の反応が良く、治りやすいが完全に治らないうちに抗うつ剤を安易に中止すると再燃する
- うつ病者はしばしば「必死で無理をして」「まわりにウツを気付かせないようにし」「その必死がばれないように、また必死で努力する」性向がある。
- うつ病の場合は、趣味などの気晴らしもかえってつらくエネルギーが枯渇しますます悪化する
- うつ病の経過は自然回復するが、繰り返す。何10年たって再発する場合もよくあるし、近年は再発までの間隔が短くなっているように感じられるという。
- 抗うつ剤の継続投与で再発率を低めることもできる
- うつ病なのに顔はいつもニコニコしているタイプを表す「微笑みうつ病」という言葉もある
- うつ病の妄想は、ほかの精神病によくある被害妄想と異なり、自己否定という特徴がある。まわりに迷惑ばかりかけたとか、裕福なのに、お金がなくなると確信してしまったり
現代うつ病
- 従来のメランコリー型と違う
- 軽症で仕事のストレス状況が発病の引き金・余暇などは楽しく過ごすことができる・(従来型のうつ病と比べ)他責的・薬物療法は効果がない
- メディアは「新型うつ病」と呼ぶ場合もあるがうつがスティグマともなるため学会などはこの呼称を使わないようにしている(重要)
- 高校・大学までの教育と職場での扱いの落差の適応形式なのではないか
- 事例でさらっとしか触れられていないが、リワーク活動で改善することもあるそうだ(このあたりもっと知りたい)
仮面うつ病
- ほとんどのうつ病でみられる強い府民、食欲不振がなく、逆に眠りすぎたり食欲がありすぎる
- 通常のうつ病は、よい出来事があっても改善しないが、ちょっとした良い出来事で機嫌が良くなったりするなどまわりの状況に左右されるようにみえる
- 身体に鉛がはいったような独特の重さを絶えず感じる
季節性うつ病
- 光療法・・・早朝2時間、明るい光を浴びることで"季節性"うつ病はかなり改善する
子どものうつ病
- 不登校は子どものノイローゼということもできるが、大きな葛藤がなくとも不登校になる場合もある。そのなかにはうつ病の場合もあって、投薬が効く場合もある
- (もちろん、不登校のすべてではないけれど、不登校の原因を特定するなかで可能性の一つとして知っておくとよい場合もあるかも)
- DSM-5では「発生したストレスにうまく適応することができず生じた病的な心理状態」という定義
- 「ほかの精神疾患の病名もつくような場合はそちらを優先して、適応障害とはしない」という条件もある
- ストレス状況がなくなってから、6か月以内に消失する
対策
- 生活療法
- 可能な限り休養させる
- しかし、うつ病者は「休むなんてとんでもない」と考えがち・・・「努力して休暇をとる」ようにする
- 叱咤激励してはいけない
- 日常生活記録 → 精神療法につなげる
- 可能な限り休養させる
- 薬物療法
- 略。いろいろ研究されている。効果検証はたいへんそうだ
- 精神療法
- 要点は、休養を勧める・自殺を禁ずる・受け身でいるように指示する・流れの中で人生をとらえる
- 有力な治療法
- 「できごと」と「感情」のあいだには、考え方という媒介がある
- あなたのものごとのとらえ方が正しくないこともあるし、ほかの考え方もある
- 以下のうつ病的思考パターンをとらえる
- 全か無か思考
- 過剰な一般化
- 肯定的側面の否認
- すべき思考
- 結論の飛躍
- 心の読みすぎ
- レッテル張り(自分に対して)
- このパターンから脱却するには、このパターンを覚えて、自覚していくことから
- 修正するのではなく妥協を目指す
うつ病について
うつ病者に独特の性格があるかどうかについては文化圏により意見が分かれている。日本やドイツではメランコリー親和型や循環気質(躁鬱的なにぎやかさ)が指摘されているが英語圏では否定されている。遺伝される気質によるところも大きく、ここの進化心理学的な説明は、仮説以前のレベルであって斜めに見る必要があるけれどすこしおもしろい。
ゆううつになると、動きが止まる。動きを止めたほうが有利な場面で、ゆううつは役に立つ
とか
人間同士の戦いでは、負けたほうが憂鬱になって復讐戦が避けられ、互いに安定して子孫を残すことができる
とのこと。これは文化的な側面のほうが大きい気もするけれどなあ・・・。
また、いっぽうでうつ病の発症パターンとして、遺伝などによる、こだわり・生真面目さ・人に配慮するなどの特質があり、現代のように変化の大きい都合の悪い環境でストレスを受けてうつ病を引き起こすというものもある。
これは本来、組織や家庭に必要とされやすいものでもあると本書でも指摘されている。逆に、大組織で出世するためには共感性のないサイコパス的な性格が向いているという問題の裏返しなようにも思えてしまった(どっかの県知事とか大統領を想起)。
また、しばしば見聞きする自閉スペクトラム症の二次障害としてのうつも連想する。これも現代社会ならではのストレスかもしれない。
まとめ
うつ病全体についてはなんとなくわかったが、適応障害については4ページ程度しかさかれていないし、よくわからないことも多い。 たとえば、ツイッター*2で、職場、特に大学とかで、ボスからパワハラ・アカハラを受けてメンタルの調子を崩し、その後ずっと崩しっぱなしという事例をしばしば見かけるけれど(自分の観測範囲の問題)、これはなんなんだろう。こういう、人為的な攻撃によってひとをうつ状態にするのは犯罪的な行為だとは思うけれど、医学からはどうとらえているのだろう(調べていない)。あと、性被害や戦争でのストレスによるメンタルの問題もストレス下でのうつ状態という点では近いけれどどう関連しているんだろう。
と、気になることもあるけれど、身近な人間としてできることは、うつ病の人間について、叱咤激励しない・休養が重要だということを認識する・適切な医療にかかれるように(必要な場合に)サポートする、などかなあ。ただ、診断は専門領域だし診断結果は高度なプライバシー情報だし予断するべきではないなかでどう振舞うかは難しいのですが
*1:精神疾患を有する総患者数の推移 厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000940708.pdf
*2:Xへの名称変更に納得がいっていないのでこう呼び続けている
