大津宿日記

@daaaaaai の日記です

イタイ・ヨナト「認知戦(文春新書)」眉唾な部分もありながら・・・

本書は、イタイ・ヨナト(Itai・Yonat)というイスラエル国防軍で影響力工作の経験を積んだり、医療系スタートアップを創業したりもしていまはIntercept9500という敵対的影響力対策の会社の創業CEOをやっている人間に、奥山真司さんがインタビューして書き起こしたという2025年の本。

奥山真司さんをWikipediaで調べると戦略学者と分類され「日本におけるジョン・ミアシャイマー紹介の第一人者である」とも書いてあってちょっとうさん臭く感じたけれど、エキサイトブログ「地政学を英国で学んだ」の著者らしい。

はてなブックマークでドメインを検索すると見た記憶のある記事もちらほらある。 https://b.hatena.ne.jp/site/geopoli.exblog.jp/?sort=count

というわけで、眉に唾をつけながら読みましたが、ロシアがウクライナに侵略し、イスラエルはガザで虐殺し、中国では情報統制がしかれ、アメリカもトランプの"ディール"がとんでもないことになっている昨今ではけっこう迫真だでぞっとするような内容だった。

認知戦とは民間のSNSやメディアを用いることで人々の思考に影響を与えるというもの。一般人をよそおった多数のアカウントによって行われ、空間のムードをつくって世論に影響を与えるというもの。

2010年ごろまでの日本では総理大臣や与党の支持はマスメディアがどう切り取るかで大きく左右されてきたように思えるけれど(バカヤロー解散にしろ神の国発言にしろ、もとの発言がひどいのはあるんだけど、メディアに切り抜かれないままのひどい発言はもっとあっただろう)、昨今のSNSを中心に排外主義が煽られている様子をみると、特定の国への敵愾心・好感度も操作されうるようには思えてしまう。

とはいえ、まだ野党ディスや排外主義煽りなど正義感や怒りを刺激するコンテンツがアクセス数を稼げるからプラットフォームも投稿者もよりそちらに注力するという資本主義駆動な状況ではどのくらい影響力を持つものだろう。

シンガポールや台湾がやっているように国による監視や規制が必要だと提言されており、どこかで必要かもしれないと思わなくもないけれど、表現の自由のど真ん中の政府による検閲と紙一重で民主主義的にはかなり危ういことをせざるを得ない、とも思った

いくつか拾い読み。

ディスインフォメーションは、大きく分けると2種類あります。 ①情報のコンテンツそのものが偽物 ②情報の広げ方が偽物(偽メディア、フェイクユーザー、ボットなど)  このうち、①は、内容をファクト・チェックすれば、正しいか誤っているかが見分けられやすい。しかし、②は人間がおこなっているのか、フェイクユーザーによるものなのかの見分けがつきにくく、しかも簡単に操作できます。そのため、影響力工作キャンペーンにおいてよく使われる手法です。

はい。そしてTwitter(現X)でもYoutubeでもアルゴリズムが隠蔽化されてわかりにくくなっていますね、

相手の感情に訴えかけるとき、最も効果的なのは否定的な感情や屈辱感、フラストレーションや怒りを刺激すること です。そして、 既存のシステム、司法制度などを批判し、現状に不満を抱える人々のために〝正義〟を提示する のです。(中略)もう一つ、注目してほしい側面があります。ディスインフォメーションはより多くのお金を生み出すということです。 ナラティブをもつディスインフォメーションは人の心にダイレクトに訴えかける力をもっています。そのため、 本当の事実よりも記憶に残りやすく、人を動かす力をもちます。スマホやパソコンで広告をクリックさせる力をもつのです。

必ずしもだれかの悪意があるわけではなく、資本パワーに駆動されて怒りを刺激されているというのはかえって怖い。

第二次大戦後、約 60 年かけて民主主義国家は定着しましたが、世界的にみて 10 年前より減っており、現在 60 か国ほどが民主主義制度を採用しています。  しかし今、 民主主義の国家は内部に問題を抱えています。たとえば、イスラエルのネタニヤフ首相とその政権幹部の強権的な振る舞いは、トランプ政権のそれと 酷似 しているという指摘が多くあります。ヨーロッパのハンガリーでも同じような状況が見られます。つい最近まではポーランドもそうでした。

イスラエル人の著者がネタニヤフに否定的である。けれど、後半でパレスチナへの侵略は正しいと思っていそうだった

しかし、SNSでは、日本の若い世代を中心に、戦前や戦中に対する肯定的なイメージが拡散されているのです。「日本は現在より偉大だった」「旧日本軍は強く、他の先進国にも恐れられていた」「日本の国際的地位も高かった」というもので、「古きよき時代」を求めたり、「再び偉大になろう」と語ったりする声がスマホを通じて垂れ流されています。

こうした思考、一部ではそういう風潮があるけれどどれくらいメジャーなんだろう。 格差が拡大し、社会で承認を得にくくなったときにナショナリズムが最後のアイデンティティになる、とは言われるけれどそういう流れ? 自分は、過去の誤った行いを直視して謝罪した方が国としては信頼もされて国益になる、とは思っています。

ところが、中国とロシアは、日本に対して攻撃を仕掛けてきました。ALPS処理水について「汚染水」という誤った名称を定着させようとして大規模なキャンペーンを展開したのです。中国の 王 毅 外交部長(外務大臣に相当) は「核汚染水の放出は海洋環境の安全や人類の命と健康にかかわる」と主張しました(中略)このように、 中国やロシアが展開している影響力工作のなかには、子供だましのようなレベルのものが多くあります。しかし、そんな程度であっても悲しいことに効果がある のです。

日本でも原発に不信をもつあまり、これらにのっかってしまった人々がいたのは残念でした。

しかし、その一方で、日本にはじつに多くの課題があります。「影響力」という観点で見ると、少なくとも周辺にある三つの国が日本に大きなリスクをもたらしている。 中国、 ロシア、 北朝鮮 です。  中国は、その能力と戦略的関係の観点からみて、最大の脅威です。  2番目はロシアです。西側諸国から見ると、ロシアは「核兵器を保有するガソリンスタンド」のようなものです。エネルギー資源を多く抱えており、核兵器の使用をちらつかせているので敵に回しにくい。(中略)中国は人口が急速に減少しており、経済をはじめ、さまざまな問題を抱えています。また、習近平をはじめとする中国共産党幹部らは、中国の国力は今がピークであるということを知っています。つまり「今すぐ強みを活かして問題解決に取り組まなければ、 20 年後には問題解決が不可能になっている」と認識しています。  したがって、中国が何か行動に移すのであれば、いまがまさに最後のチャンスなのです。(中略)先ほど指摘したように、中国は三つの戦域すべてで影響力工作を展開しているので、中国は日本との戦争に備えている、というのが私の結論です。戦争開始の時期を私の調査結果から逆算すると、2026年から2030年の間となります。  では、その戦争は具体的にどのようなものになるのか。台湾侵攻当日、日本に対して大規模なサイバー攻撃が行われる でしょう。その目的は、自衛隊への打撃、指揮統制拠点の制圧などです。影響力工作の観点でいえば、サイバー攻撃によって、メディアやソーシャルメディアをブロックすることで、日本政府による情報発信を妨害し、国民にパニックを起こさせ、SNSで間違った噂を広め、言論を支配しようとします。

ここは眉に唾をして読む。台湾問題、あまりよくわかっていなかったけれどそこまで差し迫っているんだろうか。 これは危機煽りすぎている気がしなくもないけれど、可能性がある以上備えざるを得ないんだろうか。

戦後 80 年経った今でも、 多くの日本人は1946年に公布された憲法を変えることなく、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部) による統治下の1950年当時のままで行けるという観念に 囚われています。  私は、日本が抱える課題は非常に大きいと感じます。私は日本語もできませんが、本書のような著作を出版したり、政策決定者と会談したりすることを通じて、日本に貢献したい。大それた考えかもしれませんが、本書を通じて日本や日本人の考え方を変えることができたら、と思っています。

これは余計なお世話すぎる・・・。

しかし、 世界中からの「認識」の面で、私たちイスラエルは負け続けている のです。ハマス側、イラン側が流す情報のほうが信憑性を持って受け止められ、イスラエル側の情報が真実性をもって受け止められていないのが現状です。  世界中の人々が「イスラエルは自衛しているのではなく、罪のないパレスチナの人々を殺している」とみなしています。「イスラエルは大量虐殺をおこなっている国だ」というイメージを持っている人さえいます。一方で、「先にテロを仕掛けたハマス側が悪い」「ハマス側は民間人を『人間の盾』として、無用な犠牲を増やしている」「イスラエルは命をかけて戦っている勇敢な国だ」という逆の見方をする人は決して多くありません。

ハマスも犯罪組織だけど、これまで過剰な抑圧をしてきて敵愾心を育ててきたイスラエルのユダヤ人の認知こわすぎる・・・。認知戦の最大は教育なのではないか、と思えてきた。

イノベーションは革新的な人々によって生み出されます。しかし、革新的な発想を持つ人々は組織に適応しにくいという特質があります。組織は革新的な人々をうまく使いこなせず、彼ら自身もフラストレーションを感じ、最終的には追い出されてしまうことがよくあります。そのような 革新的な人々を活かすためには、既存の組織との「つなぎ役」が必要 です。 私はそれを「コネクター」と呼んでいます。「コネクター」はシステム内部にいて、システムでの働き方を知っている人で、通常は将軍などの高い地位にいますが、心の中では物事を変えたいと思っています。コネクターは、革新的な人材にイノベーションをさせ、それをより大きなシステムにつなげて実現するのです。

これはそうだろう・・・。イノベーションは小組織で起きる、というのは軍でもそうなのかも。

中華人民共和国は建国当初から国内で影響力工作をおこなってきました。中国共産党は、旧ソ連時代からコミンテルン(共産主義インターナショナル) を通じて影響力工作を学び、それらを独自の様式に改変して取り入れてきましたが、現在の習近平体制の下で、主要な能力のひとつとなりました。  中国では影響力工作のことを「三戦(世論戦、心理戦、法律戦)」と呼んでいます。これに加えて経済戦、外交戦、サイバー戦などを組み合わせています。  中国の特徴は、 隠密 裏 にではなく公然と影響力工作をおこなうことです。まず、指導者や外交官などの政府関係者、あるいは国営メディアがディスインフォメーションを含む見解を公に発信。

空手の三戦(サンチン)ではなかった

日本に対するロシアの工作について、私たちはいくつかの調査を実施し、その証拠を集めました。また、ロシアを支持する日本のインフルエンサーや政治家をスカウトしていると見ています。  たとえば、 Xのフォロワー数が 40 万人以上を誇る野党の国会議員

だれだろ・・・

数年前、私たちはロシアによるアフリカでの政権転覆工作を調べたことがありました。その時点で 20 件の工作が進行中であることを確認しましたが、そのうち5件はすでに成功しています。 政権転覆の成功率が 25% というのは、驚異的なことです。  ロシアはターゲットとなる国を定めると、その政権に対する反対派を見つけ、彼らに武器を与えて訓練し、影響力工作を大規模におこない、5年から8年という歳月をかけて政権転覆を実現しています。  ロシアの情報機関のどこかには、 政権転覆の方法論を熟知した、経験豊富な部隊がいるはず です(個人的にはワグネル・グループではないかと考えています)。問題は、それがアフリカで起きているので、あまり注目されない、という点です。

律儀に文書を残していたソ連自体と違って、経緯が将来公開されることはないだろうなあ・・・。外部での調査記事やノンフィクションあれば知りたい。

影響力工作への対抗策は、以下のような手順でおこなわれます。 1 影響力工作への対抗を可能にする法整備 2 データ収集および分析 3 敵を潰す

台湾は常に中国と戦っているため、非常に良い仕事をしています。この分野で世界一と言っていいでしょう。他の政府の人々と話し合う際、私はまず「台湾に学びなさい」と伝えています。台湾は2020年の総統選挙の直前、中国による選挙介入や内政干渉を防ぐために、敵対する勢力や人物からの指示、資金援助による選挙活動・政治活動を禁じた「反浸透法」を公布しました。(中略)一方、シンガポールは、2021年 10 月に「外国干渉防止法」という先進的な法律を制定しました。シンガポール政府が自国を攻撃するキャンペーンを発見した場合、法律に基づいてSNSの運営元に連絡し、そのようなユーザーのアカウントをブロックするよう要求できます。こういった対抗措置をおこなうためには、インターネットやソーシャルメディアからデータを収集する、つまり 会話を監視する必要があります。

認知戦に限らず日本も外資SNSに罰金課してほしい。

シンガポール政府は、自分たちが国民を対象に監視をする必要性をよく理解しています。民主的な方法で国民を動員するために、政府は教育やコミュニケーションを通じて、国民に説明して選挙をおこない、多くの場合、政府は望む結果を得ているのです。このようなシンガポールのあり方が「不完全な民主主義制度」なのか「完全な民主主義制度」なのかという議論はここではしませんが、権威主義国家からの攻撃を 跳ね返す力があるという点は評価できます。  台湾やシンガポールのように、法整備をして専門機関などを立ち上げて、ようやく影響力工作と戦えるようになります。

これは全体主義国家の第一歩でもあるので賛成しにくい

スクレイピングは、特定の人物について検索をかけるのではなく、大量にデータを集めているだけなので、法律には触れません。ただ、ソーシャルメディアのエンドユーザー規約には違反しています。現在、何らかの分析を可能にする技術的なツールを提供している企業は、プラットフォームの規約に違反してスクレイピングしているか、スクレイピングしている企業からデータを買っているかのどちらかでしょう。「規約違反は不道徳だ」と言われかねないので、この問題は法的に解消されるべきです。影響力工作が存在する場合、十分なデータと分析能力があれば、その構成要素を特定できます。  工作活動(キャンペーン) の構成要素を知ることを、サイバーセキュリティの世界から用語を借用して、「TTP」と私は呼んでいます。これは「テクニック(techniques)、戦術(tactics)、手順(procedures)」 を指します。

かつて私が影響力工作と戦う上で、もっともよく使っていた手法が「テイクダウン(take down)」 でした。 これはフェイクユーザーを見つけたら、運営元に伝えて、そのユーザーのアカウントを削除してもらい、利用できなくするという手法です。フェイクユーザーやそれに連携した動きに対して非常に効果的に機能します。  たとえば、フェイスブックの運営元に「ユーザー規約に違反するグループを発見した。彼らはフェイクユーザーであり、連携した動きをしている」というレポートを提出して訴えると、運営元はチェックして、そのユーザーアカウントを閉鎖します。(中略)これが「シャドウバン(shadow ban、悪質なユーザーのアカウントの投稿をタイムラインなどに表示させないように設定すること)」と呼ばれるもの です。この状態では、そのユーザーは投稿できますし、他の人の投稿を閲覧できますが、ソーシャルメディアがそのユーザーの投稿を拡散しなくなり、フォロワーもその人の投稿を閲覧できなくなる場合があります。  これらの対抗策をおこなうには、グループが必要です。 シャドウバンするには、5000人が苦情を「報告」すれば十分 です。イスラエルでは1万人ほどのグループをつくり、反ユダヤ主義的な活動をしているユーザーなどに対して、グループ内のすべての人に「報告」するように頼んでいます。  この「報告」は、人間がおこなうことが重要 です。

こわすぎるよ・・・。

ユーザーは他人が自分の心を混乱させることを好まないので、インフルエンサーが報酬をもらって 偏った視点をプッシュしていることがわかると、その人物から去っていくのです。また人々の心を免疫化する効果もあり、 心が操作されていることに気付くと、インフルエンサーの効果は低下します。  この手法はAI時代以前に開発されましたが、AI革命によって発展しました。それを私は「 オートメーション・リプライ」と呼んでいます。まず、私たちはソーシャルメディア上のユーザーに、影響力工作への対抗策を行っているAIを紐づけし、この

Twitter(現X)のコミュニティノートをつけたり攻撃されるリスク承知で訂正して回る専門家の方々はこれを公共心からやっていただいているけれどほんと頭が下がる

いくつかの問題を抱えていることがわかります。「真実」は一つではなく、各人それぞれの「真実」があるからこそ分断され、多くの見解が出てくるわけです。分断があると、意思決定ができなくなります。したがって、 民主制度を信奉する社会であればあるほど行き詰まり、社会が機能しなくなり、民主制度は 破綻 する のです。(中略)私が皆さんに望んでいるのは、 誰が自分の心を操ろうとしているのか、自分の望まない解決策を押し付けようとしているのかを知ってもらうことです。  私は本書の中ですべてを解決するための方法や、民主制度が良いのか悪いのか、そしてどうすればそれを正すことができるのかという話をしたかったわけではありません。ただし自信を持って言えるのは、民主主義の制度は世界中で大きな課題に直面しているということです。  その問題の一つは、「感情」に原因 があります。 私たち人間が常に犯している最大の過ちは、感情で判断してしまうこと です。私たちは、事実に基づき、論理的に考えて、合理的な判断をしなければならないのです。

これはほんとそう思う。感情で判断しないためには、どういう訓練がいるんだろうか