未来を予想するにはどうしたらいいだろう。
適当に調べてみるとこんな考え方があるようだ。
- 現状を知り、過去に似たパターンがないか当てはめてみれば未来もわかるよ派(歴史は繰り返すよ派)
- いろんなシナリオ考えてみればどれかは当たるし対策たてやすいよ派(システムズシンキング右派)
- 未来は自分でつくるもんだよ派(アラン・ケイ流)
- どんな未来もありうるよ派(予想放棄派もしくは平行宇宙論者)
- 全部聖書に書いてあるよ派(運命論者)
- どちらにせよ人類滅ぶから関係ないよ派(終末期待論者)
- でも56億7千万年後には救済されるよ派(弥勒期待論者、上生派)
まともなのはうえ2つだけれど、どちらも歴史の広い知識、また現代の状況と事象への深い理解と発想が必要で常人にはなかなかできないし、それでなされた予想が正しいかどうかの検証には時間がかかるし再現性確認もできない。
逆に考えれば、未来を予想する方法を検証するためには、過去になされた予想の正しさを検証するという方法がある。
ある予想がどれくらい正しかったか、誤った場合はどういった原因だったのか、を分析していけば未来予想の精度もあがるかもしれない。
というわけで家で発掘された「10年後の日本」という「日本の論点」編集部が10年前に出した新書を読んでみた。
- 作者: 『日本の論点』編集部
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2005/11
- メディア: 新書
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わりと煽り系だし新書ということで根拠は詳細には書いていないけれどちょっとは示唆もある。
何点か気になった予想について現在との違いを書いてみる。
治安について
団塊の世代のベテラン警官大量退職による検挙率低下で治安は悪くなる、という予想はあったけれど、検挙率については2005年以降は少し回復して横ばい。
日本の犯罪と治安 - Wikipedia
治安の目安となる各犯罪の推移も、発生率の少なかった1980年代と比べると強盗・傷害は若干増えているけれど、殺人や強姦は減少している。
日本の犯罪と治安 - Wikipedia
もちろん、昨今の特殊詐欺は目立っているし、認知されていない犯罪もあるだろうから一概には言えないものの、治安が悪化している数字はなさそう。ただ、景気は相変わらず悪くなって若年層で不安定な非正規雇用も増えているし、なにかのきっかけで治安が悪化してもおかしくないとは思う(それこそ虐殺器官のようなきっかけがあれば)。
スラムの形成も、日雇いの仕事が少なくなったドヤ街に近いものがあるという向きはあるけれど、明確な塀で囲まれたゲーテッドシティみたいなものは日本ではまだなさそうと思うのですがどうでしょう。
予想が外れたのは、思ったよりも日本にモラル、あるいは自己制約する文化があったから?
格差の拡大
正社員率が減って格差がますます拡大するだろうという予測がある。
たしかに非正規雇用率は増えている。けれど2010年までのジニ係数の推移を見る限りは格差の拡大はみてとれないようだ。ただ、ジニ係数では所得の格差しか分からないため、節税対策きっちりしている資産家と労働者の差は出ないので注意。
ピケティ的には、資本収益率が経済成長率より高いと格差が拡大するそうなので、今後も広がっていく見込み。また、資産家と貧困層はかなり固定化されているように思われる。
この格差が増えると社会にはどういった影響が出てくるだろうか。モラルの退廃、教育レベルの低下・社会福祉費の増加・・・とかあるかもしれないけれどどれも富裕層にとっても好ましくないと思うので累進課税or資産への課税にご協力していただきたく。
ただ、なんでジニ係数は維持しているんだろう。非正規が多数派になって(全体が地盤沈下)して格差がへった、なんてことはないか・・・。
日本の富裕層は101万世帯、純金融資産総額は241兆円 | 野村総合研究所(NRI)
都心不動産暴落
オフィスは供給過剰で暴落するのではとの懸念が記述されていた。これは、人口の減少と会社の統廃合、団塊の世代の大量退職やリモートワークの普及でオフィス需要が2010年以降減っていくのではという話。
たしかに2012年時点で2008年から平均募集賃料は20%ほど下落しているし空室率も高いままだけれど、暴落というほどではないし建設もまだ続いている。
オリンピック景気もあるだろうけれど、やはり都市集約のメリットが思われていたよりも大きいからだと思う。一極集中に正のフィードバックがかかっている。ただ、災害リスクや通勤コストなど高まっているのでよくないなあとは思う。
あと、リモートワークがもっとすすんで賃料安くなって欲しい。
朝鮮半島統一
金正日の硬軟織り交ぜた巧みな外交と民族融和を訴える声で、38度線は解消するかもと思われていたけれど、金正恩にかわって相変わらず対立は続いているし交渉はうまくすすんでいない。
これがどこまで持つかは東アジアのパワーバランス上重要で、クーデターなどあって空白地帯が生まれると中国と韓国の綱引きになりかねない。また、無事に統一されると韓国に駐在している米軍の存在意義はなくなって撤退し、中国への牽制も効きにくくなるかもしれない(素人判断)。
独裁政権の末期はいろんな終わり方があるけれど、北朝鮮は国民の統制が強いし、一方で体制には腐敗がありすぎて、金家だけを放逐しても変わらなくなりそうではある。まだまだ独裁政権は温存されるのではないか。
どう着陸するにしても、そのとき韓国経済はどうなるだろう
その他、ちょっと違うかもと思ったこと
細かいので箇条書きで。
- 団塊の世代問題
- 大量退職は、定年延長などによって問題は噴出はしていない?現場レベルだとたいへんなところはたくさんあるだろうけれど・・・
- 企業年金・退職金がもらえなくて問題になる可能性がある、との予測はあったけれど、そう問題にはならなかった?
- ロボットが少子高齢化の救世主になる
- アッハイ
- つくっている人によるプラス面の喧伝にあてられていたからだろうか。技術的にはまだこれから。
- 弁護士大量供給による訴訟社会の到来
- 食えない弁護士は増えているけれど・・・訴訟件数は減っている・・。
- 弁護士「仕事がない!」人数は2倍、訴訟件数3分の2。大半が年収100万円以下 : J-CASTテレビウォッチ
- これは弁護士増えたら訴訟も増えるやろ、という因果関係の安直なとり違いだと思う。
- BRICSの台頭。中国以外は、期待されていたほど存在感は増えていない?
そのまま解決もされずに続いている問題
まだこれから起きるかも系
その他、いくつか論点があってまあおもしろかった。
この本では触れられていない大きな話としてリーマンショックのような金融リスク、イスラム国の台頭、EU,ロシア間の緊張関係がある。
ウクライナ関係以外はあまり予兆もなかったんだろうか。
また、一番怖いのは、10年前時点で「首都直下地震が30年内に発生する確率は70%」と2005年に言っていること。とりあえず、自然災害は来るので備蓄など対策しておきましょう。
これからのこと
さて、本書のような過去の延長線上の未来予測だとイベントを予測することはできなくて、傾向とそれの影響を検討するくらいしかできない。けれど、財政悪化や少子高齢化はすこしずつ数字が悪くなっても社会への影響はなかなか見えない。どこか一定のレベルを越えたら一気に相転移するのかもしれないけれどそれがどの時点で、どんなことが起こるかは何も言えない。社会は複雑すぎる。なんとか平和的に続いていって欲しいものです。
とりあえず、イベントの予測に近いけれど、社会への影響の大きそうなキーになる技術の登場だけ予想しておくか。技術決定論ではないです為念。
- 再生医療の普及
- 間違いなく一般化する。そのときどんな発生して倫理的な問題が生まれるだろうか
- 遺伝子操作ベビーの普及
- そして格差はますます固定化される
- 動植物の遺伝子操作の一般化
- すでにやられているけれど、これまで消極的だった地域でも食糧危機などのきっかけは期待。
- 自動車やドローンの自動操縦の開発
- インフラや法制度が障害だけれど、特定のフィールドでは実用される
- 特定分野で人間と遜色のない対人作業のできる人工知能の開発
- 産業用
- バッテリーの超軽量化
- これに伴いウェアラブルも普及するはず
- 仮想現実没入機器の普及
- まずはエンターテイメントから。
- 分散仮想通貨の普及
- bitcoinそのものかどうかはわからないけれど、国家が管理できない通貨は普及すると思
量子コンピュータとか核融合、圧倒的な再生可能エネルギーは悲観的。あとやっぱり、国家や民族が消えてなくなるほど情報化はされないとは思う。
これらの技術と文化が相互に影響し合って社会は少しずつ変わっていくかな*1
やっぱりわからなさすぎるので未来をつくるには自分でつくるのが一番か(投げやり)
いい未来予想本・メソッドがあれば教えてください。
- 作者: ヨルゲン・ランダース,竹中平蔵解説,野中香方子
- 出版社/メーカー: 日経BP社
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