ぜぜ日記

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意識とは、あるいは意識をつくる方法

みなさんは自分がなにものかわかりますか?
自分がなぜ生きているか分かりますか?
今日の自分が昨日の自分と同じだと言い切れますか?

自分ってなんでしょう。僕はいい答えを持っていません。哲学の領域です。
おもしろい問いでしょうが、なにか出てくるかどうかはわかりません。

しかし自分とは何か、ということをみなさんが考えている意識について考えてみることは有益ではないでしょうか。
この問題は知能の問題に直結し、ドラエモンのようなロボットをつくったり、人をさらに賢くすることにもつながりそうです。

ここでは意識とは何か、を簡単に整理し、意識をつくる方法を考えてみます。

「宿命というのは、確かにある。人は場所・時代・環境を選んで生まれることはできない……ゆえに、生まれた瞬間にそれぞれの人間の生きる条件は異なっている。
 これが宿命です。そして、世界が残酷なのは当たり前のことです。
 
生の始まりは化学反応にすぎず
 人間存在はただの記憶情報の影にすぎず
 魂は存在せず
 精神は神経細胞の火花にすぎず
 神のいない無慈悲な世界で、たった一人で生きねばならぬとしても……
 
なお……我は意志の名の元に命じる「生きよ」と!!」
ディスティ・ノヴァ教授(銃夢)

意識は脳で発生していることを疑う人はいないでしょう。しかし、いつからあるのでしょうか。子どもの時は?赤ん坊のときは?受精卵ではなさそうです。意識とは最初からあるものでなく、受精卵が大きくなり脳の神経細胞と体の感覚器官が発達したときから徐々に成長していくもののようです。遺伝子に記述されているのは、この細胞の発達の仕方で、その結果として意識が生まれたのです。意識がたまたま発生するような遺伝子が生き残ったという進化の一つの帰結となっています。


脳は1000億個のニューロンと、それぞれが数万から数百万もっているシナプスで構成されるかなりの複雑系です。
シナプスの形成は、手を動かすなどのさまざまな行動と、視覚や痛覚などの感覚器官を通しての外部刺激による部分が大きくなっています。
未発達の脳だけの思考はありうるのか、というのは大きな論点ですが、あまりまとまった結果は出ていないようです。(ぼくが知らないだけかもしれませんが)

しかし意識は脳それだけで成立するものではありません。脳を解析してわかることはあっても、意識の中身は、入出力から推測せざるを得ないのが現状です。複雑系リバースエンジニアリングが難しいことが原因です。そうしたものを再現しようと思ったらどうするか。

科学や工学で伝統的な分析的・要素還元的な手法はこうしたものではうまくいきません。部分の総和が、全体とならないからです。そこで構成論的な、なにかつくってみる、というやりかたが一つの手法としてとられています(他の手法はあまり知らないので、わかる人ぜひコメントください!)。これは人間の動作を機械でどれだけ再現できるか、考えてみることで対象を理解しようという手法です。つまり意識をつくろうと思うなら、意識を持っている人を模してみようという考え方です。


意識を人為的につくろうと思ったら、そうした人を模すことがひとつの解決策。古典的な人工知能アプローチ、トップダウンにつくっていくやり方は、フレーム問題を初めとする問題によりうまくいっていません*1。一方で、現代的なアプローチの1つとして、脳を再現してみるというものがあります。人を模すならば、神経細胞シナプスのように(仮想的な)コンピュータを配置して、ネットワークを形成させるものを用意し、外界に影響を与えるインタフェースと外部刺激を入力するインタフェースをつくってみるというやりかたです。*2

この外部刺激を受けたり、外界に行動を起こすことを身体性と表現しましょう。人間のような意識を獲得しようと思うならば身体性は必須です。身体性が脳の発達に大きな影響を与えているからです*3。擬似的にコンピュータ上で感覚器官を持たせる人工知能はつくられていますが、その感覚器官相応の人工知能しかできていません。人間のように高密度な感覚器官を持ち、腕や足などの身体を持たないといけないのです。

人工生命については下記のサイトが若干古いですがおもしろいです。
http://www.h5.dion.ne.jp/~terun/alFrame.html
人工生命 - Wikipedia

さらに脳の発達には、時間をかけて行動し、教えられることが必要ですよね。意識の成長には時間が必要なのです。


ここまでを整理すると意識の獲得について、3つ要素が必要だということがわかりました。

  1. 神経細胞のような可塑性のあるネットワークをつくれること。
  2. 神経細胞と外界のインタフェースになりうる身体性。
  3. それらをフィードバックしてニューラルネットワークを発達させる時間。

この3つから何が導き出せるでしょうか。
現在の計算機科学では、上の2つを満たしていません。

どうしたら意識をつくれるのでしょうか。
チューリングテストを余裕でとおり、われわれ人間と仲良くなれる意識をもった主体を。

ここで、少し突然ですが、一つのすばらしい解を見つけたのでみなさんにこっそり紹介しましょう。

時間は数年〜数10年かかるが、すばらしい意識とさらにその意識を運ぶ身体をつくる方法です。


それは、男女でセックスして子どもを産み育てることです。


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日本語で読める人工知能の教科書として定番中の定番。難解なので情報系の大学生のみにおすすめ。

*1:フレーム問題とは、例えばお茶を汲む、という単純な動作でも、コップの状態やポットの状態、コップが割れたらどうするか、お茶の状態、あるいは地震が来たら、など予測できない動きを全て記述したり予想することが不可能なためロボットが動けない問題。

*2:超大規模なニューラルネット、コネクショニストマシン、リアルタイムの強化学習ともとることができる。

*3:詳しいことは「進化しすぎた脳」を読んでみてください