細田守監督の「おおかみこどもの雨と雪」を観てきました。すこし思うことがあったので感想のようなものを書いてみます。
最初に予告も見ず、監督も知らずに、タイトルを聞いたときは、きっと狼男*1と人間のハーフが主人公で、狼男狩りをする話なのかと思った。ヴァンパイアハーフ*2の吸血鬼ハンターDとかダレンシャンとか、ブレイドのような感じなのかと。全然違いました。ごめんなさい。こういうの言うからキモいと言われるんですよね。
自分はいい作品であったとは思うけれど、おすすめかどうかと聞かれると、手放しにはできない。
見る人を選ぶ、というか、人によっては苦痛を感じたりもする気がする。けれど、いろんな人に見てもらっていろんな人の感想を聞きたいなと思う。
※以下ネタバレがあるのでご注意ください。
といってもストーリーについてはWikipediaに最初から最後までしっかり書いてあるのでてっとり早く知るにはそちらをどうぞ。でもこのあらすじを読んでも観に行きたくならないような気はするのでやっぱり読まないで欲しい。
おおかみこどもの雨と雪 - Wikipedia
映画には見入ってしまった。映像も綺麗だし、ストーリーも起伏は静かで起承転結もない感じだけれど見ていてはらはら、心配になる。アニメとしてもドラマとしても良かった。ただ、正直なところ、なんだかよく分からない、腑に落ちないところもある。楽しめたし、つい涙ぐむところもあったのだけれど。
公式によれば、テーマは「親子」とのことだけれど*3、自分は「孤独な子育て」がテーマのようにも感じた。
あんまり映画の内容と関係ない気がするけれど、終わってからすこし考えたことを書いてみる。
まず、孤独な子育て、シングルマザーは難度高すぎるなあと思った。特に実家と疎遠になってると無理なのでは、と。。ここを耐えていくからこそストーリーになるのかもしれないとはいえ。
自然出産・子育て・自然・田舎暮らし、とロハスでエコな方々が好きそうなものを扱っている。どれもデフォルメはされているけれど、厳しさと難しさも描いている。そうすることで母・花のたいへんさを浮き彫りになった。花は本で勉強して、苦労しながらも生きていくとはいえ、1人で子育てすることの難しさ、綱渡りの状態を描けてる。
その孤独な子育ては、それ自体もたいへんだけれど、それ以外の生活がなくなるというのが問題かもなぁと思う。
花がしていた自然観察員の仕事も、息子・雨を思ってのことであったし、はじめた農業は生きるためだった。子育てが生活の中心になり、すべてになる。そしていずれくる子の自立、親離れのときに親はどうなるか。子はいつの間にかに親離れするけれど、親離れは自然には行かない、のかも。
最後、花が雨を見送るときの視線は雨が幼いときと変わっていなかった。
花の今後が心配、自分の時間を生きて欲しいな、と・・・
随所随所にある雪のナレーションは、花の不幸を暗示してるようにも思える。母は強し、けれどなにか脆いような・・・。そんなことを考えた。マザコンかもしれない。。
と、花視点から考えることが多かったけれど、雪と雨から花を見ると、庇護者・奉仕者でありながらずっと幼いときと同じように接される辛さもある。雨は独り立ちしたけれど、このまま生きていけるか、いい関係を築けるかは気になる。
そしてこれから、異端者として人間社会で生きていく雪は、どうしていくのか。花という人間視点であったドラマは、仲間もいない異端者・雪の葛藤のドラマになっていく。観たいけれど、観たくないような・・。せめて平成狸合戦ぽんぽこのエピローグのように、仲間と会えるといいのだけれど。
あとは蛇足。
・・・
ストーリーや設定に気になるところはたくさんあるけれど、観ているときはあまり気にならなかったのはストーリーに力があるからかな。*4
ちょっとメモ代わりに羅列してみる。
- オオカミ男と花の出会いから受け入れるまでの間(気にするのは野暮か・・)
- どうして産もうと思ったのか、あるいはなぜ避妊しなかったのか・・
- 田舎暮らしですんなり受け入れられてる。自分ならつい韮崎のおじいちゃんと一悶着→解決、というのをいれそうかも。
- 喧嘩以降に姉弟の会話もお互いへの言及もなく離れてる。姉弟同士は依存しないのか。
- 農作物ができるまでの時間・・
- 雪山で滑落してなんで止まれたのか。。
- もしかしてタイトルは「(おおかみこどもの雨)と(雪)」なのではないか・・・
- 草平くんの秘密と、雪の秘密とがなぜ釣り合うのか。
どれをとってもサマーウォーズよりはマシか。
もし、もうちょっと盛り上げようとするなら最後にオオカミに変身せねばならないところを入れると思う。そうすれば草平くんと雪との関係に変化が出ると思う。終盤の大雨で草平くんがなんらかの原因で川に流されるピンチに陥り、そこで雪がオオカミになって助ける、とかありかもしれない。というより大雨になったときにこうなるのではと思っていた。そして雪原を走ったときに雨を助けたことをフラッシュバックする。とか。
もちろんこれはありきたりすぎるので脚本を書いていた人も考えていたと思う。それをすると盛り上がりはしても安っぽくなるかも知れない。淡泊だけれど、その分、深いような。(美味しんぼみたいなコメントであれだ・・)
おしまい。観て良かったです。