大津宿日記

@daaaaaai の日記です

「カウンターエリート(石田健)」政治の静かで大きな潮流

トランプや欧州各国、そして日本(兵庫県や東京都)で発生している既成エリートへの対抗が大きく票を伸ばしている政治現象の解説でたいへんおもしろかった。かれらが道徳的に誤っていると非難するのは簡単だけれど、なぜかれらが躍進しているかというのは重要な問いでどの立場であっても検討する価値はあると感じました。

なんとかかみ砕くと、社会を停滞させているのは、官僚機構やメディア、(教育機関としての)大学など既存のエリートが現状維持にとどまっており、本当の問題をみてくれようとしてくれない、と感じる人間が増えていることがこの現象の核心。ポピュリズム的手法をとっていたり、反Wokeやニューライトと混ざっているとしても、つつもその手法だけに着目していては抑えられないし危険だ、と読んだ。

第2次トランプ政権を支える思想、ピーター・ティール、J・D・ヴァンスらのシリコンバレーの変遷、Changeを掲げていたオバマ政権への失望、テクノ楽観主義もおもしろい。ただ、ヤーヴィンの陳腐な国家スタートアップ論にティールが引き込まれているのはなんだろう。エドマンド・バークが批判した理性主義より雑だと感じたんだけど・・・。

以下雑感

  • 官僚機構や、エリートへの反感としてのティールやヤーヴィンの思想に注目していて、これは重要だけれど、それに呼応する"大衆"の動きや、どういう層に支持されているかは気になった
  • 日本でこの思想に相当するものはあまりなく(しいて言えば世代対立煽りくらい?)、個々のポピュリストが動いている程度だろうか?
  • 個人的には、自民党権威主義と縁故政治、ルールの軽視にもうんざりしつつも、野党やメディアのだらしなさ(経済政策のずさんさや疑似科学の放置)がポピュリストを増長させているように感じていたけれど、どうあるべきだろう・・・
  • リベラルにとって、福祉国家挫折以降の旗印になるような思想がなく、アイデンティティ政治が悪目立ちしまう問題は難しい
  • 分配などによって労働者層・消費者層を再生産し、社会の平穏を維持していくことは資産家層にとっても意味あると思うんだけど、言語化できない

  • その他、気になっているのは、権威がかれらの口を閉ざそうとするとそれによって力を得てしまうように感じること(斎藤元彦とか、トランプのSNSアカウント停止とか)。これも大衆のカウンターエリートごころを刺激しているのかも

官僚機構は肥大化・複雑化していくし、草の根から始まったメディアも権威化していって、椅子取りゲームは縁故と対策が重要になって、受験産業が強化されていく。どうしたらいいんでしょうね

万博ソロ参加で待ち時間に読んでいたけれど、「肩をすくめるアトラス」(アイン・ランド)の紹介を読んだあとに、イタリア館でファルネーゼのアトラスをみて、これに社会を支える自負として共感するプライドやばすぎる、と思った

ファルネーゼのアトラス

孫引きメモ

大衆の貧困化、エリート過剰生産、それが原因で起きるエリート内対立によって、市民の結束力は少しずつ蝕まれてきた。国としての結束力が失われると、国家はすぐさまその内側から腐敗していく。社会的な脆さの増大は、国家機関に対する信頼の崩壊にくわえ、公共的な議論を司る社会規範、さらには民主主義的な制度の衰退という形で表面化してきた。

エリート過剰生産が社会を滅ぼす(ピーター・ターチン)

中国の王朝末期、旧ソ連圏の汚職縁故主義をみていると不可逆な気がして怖い。日本ではどう食い止められるでしょう・・・。

必要なのは適切な制度的枠組みと誘因で、それらを政府の政策により整え、建設的な語り方によって奨励して、民間部門が過度なオートメーションと監視から手を引いて労働者によりやさしいテクノロジーへ向かうよう誘導することだ。

技術革新と不平等の1000年史(ダロン・アセモグル、サイモン・ジョンソン)

資本の強力な力にどう手綱をつけるか・・・。

(ティールの幼少期に)世の中で議論の的になっていたのは、どうやってソビエト連邦を負かすかだった。今、大きな議論になっているのは、誰がどのトイレを使うべきかについてだ。私たちが抱えている本当の問題から、注意をそらしているだけだ。誰がそんなことを気にするのだろうか?

(2016年、ピーター・ティールの大統領選の共和党全国大会のスピーチにて)

これ、一面で切り取っている言説だけど、ナラティブとして強いし、そう信じてアンチエリートの思いを強化してしまう人もいそうだ