ぜぜ日記

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いくつか育児本を読んで気付いた共通点

2020年に生まれた子をどう育てるとよいかを学ぶためにいくつか育児本を読みました。

育児は初めてだしやり直せないものなので先人の知恵に学んでおこうという作戦です。 とはいえ、さまざまな人がさまざまな根拠をもとに育児論を語っていて玉石混交。中には相反するものを言っている人もいたりするので、専門家が書いたものや、データや論文をもとにしたもの、ロングセラーを優先して目を通しています(おすすめあれば教えてください)。

「子どもへのまなざし」期待に応えること

1冊目は1935年生まれの児童精神医、佐々木正美先生の「子どもへのまなざし」。 いろんなところで言及されているし1998年の出版以来、50刷を越えているロングセラーなので目にした人も多いかもしれません。

ブリティッシュコロンビア大で臨床訓練を受け、ノースカロライナ大でTEACCH(自閉症治療教育プログラム)などを学んでから日本各地でフィールドワーク敵に臨床に取り組み、保育園や地域で勉強会などをしている経験をもとにした知見を書いています。保育士さん向けの20回もの勉強会のはなしをまとめたものなので育児を母親中心とする前提など古いしやや主観的かなと思うところもあるんですが、多数の経験をもとにしているしエリクソンなどを引用して納得度はあります。

以下読書メモ。カッコ内は自分の感想です。

  • 子どもは子ども同士で育ちあう。大人からの教育だけでは足りないものがある
  • 育児のもっともたいせつなところは子どもが失敗したときに親や家族がいちばん頼りになるメッセージをどう伝えるかということ
    • (topisyuさんのブログでも近いことが書いてありました)

失敗したことを周囲に伝えない大人にするための育て方 - 斗比主閲子の姑日記

  • 望んだことを満たすことが大事。期待にこたえることが大事
  • 夜、泣き続ける子を放置すると2日か2週間で泣かなくはなるが、逆に我慢が弱くなる。親がすぐ反応することが我慢強さをもつことにつながる
    • (ほんとか?もっともらしいけれどこの仮説を検証するのは難しそう。うちは夜は放置して1分くらい泣いてから寝るパターンになっている)
  • 行動に反応することで自尊心が育つ。ソーシャルレファレンシングという。
  • 過保護というものはないが過干渉はある
  • 強圧的な過剰干渉のもとでは親の前ではよい子になるが親の目のが届かないところで羽目をはずすことになる
  • しつけというのは子どもの自尊心を傷つけるやり方でしてはいけない。それは反逆心・敵意・憎しみを内在化させるだけになる
  • 大人と子どもは対等ではないのでいい子でいてくれたら言うことを聞くというのも違う
  • 自分が大切にされていることを実感できなければ意欲的にはなれない
  • 家にやすらぎの場がないと不登校になりやすい
  • アイデンティティについてエリクソンは「自分を他人の目をとおしてみつめる」ことで確立されると言っている
  • 喜びや悲しみの感情が希薄で怒りを感じやすい若者が増えている
    • (ほんとか?戦後の殺人件数とかみるとそうでもない気がするけれど)
  • 豊かな社会に住んでいるほど外罰的・他罰的になる
  • 人を信頼することができない子供は、保育士さんたちの注意をひくためにいやがることをすることもある。子どもの注意獲得行動
  • 育児の上手なお母さんは、たいていいろんな人との関係がうまくいっている。だから、育児のうまくいかないお母さんを支援しないといけない。子どもの味方をしようとして親を敵にしてはいけない
    • (こういう親への支援、社会全体でできればとも思うのだけれど、個人個人ではなにができるだろう?)
  • 子どもがおもちゃ屋などでだだをこねるのは、たいていは家ではだだをこねられない子ども。
  • そういう問題が起きたときによくないのは、さんざん叱った後で子のいうなりにゆずってしまうこと。最善は叱らずにゆずらないこと。この中間。叱ったけれどゆずらなかった、ゆずったけれど叱らなかったのが中くらい(難しそう・・・)

子の期待に応えるというのが繰り返されていた。これは、かつてあった泣いても甘やかすべきではないという反本能ともいえる風潮への反論なのかもしれない。 期待に応え続けるというのは、自分の解釈では、泣いたら抱き上げるとかそんな程度なのではと思う。育休中で時間があったとしても、四六時中ひとりでやり続けるのは精神的に負担が大きいので余裕がある瞬間とか、親が2人いるときくらいでいいとは妥協して解釈しています。

シアーズ博士夫妻のベビーブック」アタッチメントを育むこと

680ページで大判の本。分厚い。各月数での成長の目安から、離乳食のあげ方、病気の対応方法まで書いてあってこれが一冊あると困ったときにひけて、玉石混交のWebよりは混乱しなさそう。 ただ、食事とか文化はなかなかアメリカン。そこらへんの食文化がすけてみえるのもおもしろいです。

これまたベストセラーの松田道雄の育児の百科と構成も似ているし、母乳推しなところも同じです。

そのなかでも、一番最初に紹介されているアタッチメント・ペアレンティングという考え方が特徴。括弧書きで「愛情あふれる絆をはぐくむ子育て」と説明されていて両親と赤ちゃんからベストの状態を引き出す心構えとのこと。これは、こんなゴールと方法のことらしい。

3つのゴール

  • 自分の子どものことを理解すること
  • 子どもが健康に過ごせるように助けること
  • 子育てを楽しむこと

7つの方法

  • 出産を通して絆をはぐくむ・・・出産直後の数か月はなるべく一緒にいる
  • 赤ちゃんが出すサインを理解し、信じる
  • 母乳で育てる
  • おんぶや抱っこで子どもに寄り添う
  • 添い寝をする
  • 無理をしない
  • ゆったり構える

最初は与えることが多く、赤ちゃんとの我慢比べにみえるかもしれないけれど与え合うようになっていく。依存する子にはならない。生まれて最初の1年でアタッチメントを築けたら自然に自立していける。とのこと。 ただ、母乳育児や添い寝ができないといってもダメということではなく、7つの方法はよいスタートを切るためのヒントであってそれがすべてというわけではないそうです。 そのほか10数ページかけてQ&Aが書かれているので、ちょっと気になるものがあれば読んでみると答えがあるかもしれません。 この赤ちゃんのサインを理解し信じるというのは「子どもへのまなざし」の期待に応えるというのと同じなのでは、と感じました。

ちなみにうちでは、まず逆子で帝王切開だったしいくつかの事情で粉ミルクメインだし布団がかぶって窒息するのを恐れて添い寝もしていません。というわけでこれを読んだからといって行動が変わっていないけれど、なるべく要望に応えて反応したりはやっています。

ちなみに、山口慎太郎の『「家族の幸せ」の経済学~データ分析でわかった結婚、出産、子育ての真実~ (光文社新書)』によれば、母乳育児は生後1年間の子どもの健康面に好ましい影響を与えており、知能面でも6歳半時点では好ましい効果が見られたものの、16歳時点では効果が消えてしまっているとのこと。この本はさまざまなデータをもとに子育てや家族の統計を紹介していておもしろいです。

「私たちは子どもに何ができるのか」非認知スキルをはぐくむ環境

原題は Helping Children Succeed。さまざまな学校や地域で取り組まれている事例のなかで、成功しているものを分析し、どういう原理と実践のもとで明らかにしようとしています。無理やりまとめると、やりぬく力、好奇心、自制心、楽観的なものの見方、誠実さといった非認知スキルというものが安定した社会生活を送るためには必要になるけれど、これは読み書き計算のような認知スキルのようには教えられない。特に家庭の不和や貧困など逆境にいる子どもは欠きやすい。しかし、教育者や地域の補助で改善できうるというもの。いくつか引用します。

子供の健康的な発達を最も深刻に脅かすのはネグレクト、すなわち親や世話人からの反応の欠如であり、それを示すエビデンスは相次いで報告されている。とくに乳児のころにネグレクトを受けると、神経システムがそれを深刻な脅威として受けとめる。研究者らの発見によれば、ネグレクトは肉体的な虐待よりも長期にわたって害を及ぼすこともある。

これは、「子どもへのまなざし」やシアーズ博士が言っていることの逆ですね。

レジリエンス、好奇心、学業への粘りといった高次の非認知能力は、まず土台となる実行機能、つまり自己認識能力や人間関係をつくる能力などが発達していないと身につけるのがむずかしい。こうした能力も、人生の最初期に築かれるはずの安定したアタッチメントや、ストレスを管理する能力、自制心といった基幹の上に成り立つ。

というわけで自尊心を育むことは大事。 これの逆として思い浮かぶのは、小学校の「お受験」や幼少期からの過度の習いごと。

停学処分の多く出たところでは、停学になったことのない生徒の数学と読解の学期末試験の結果が、人種にかかわらず落ちていた。もしかしたら、厳しすぎる規律のほうが、問題行動のあるクラスメートよりもストレスと不安の原因になったのかもしれない。

さすがに最近は罰でなんとかする学校はないのではないかな。自分の小学生のころは先生からの体罰はまだあったけれど。どうでしょうか(いたずらをしておばちゃん先生を怒らせた悪友の小林くんに先生がセロテープの台を振り下ろしたところ、かれがよけたので後ろでにやにやしてた別の悪友松田くんの頭に直撃した光景を思い出した・・・)。

生徒たちが教室で「自律性」を実感するのは、教師が「生徒に自分で選んで、自分の意志でやっているのだという実感を最大限に持たせ」、管理、強制されていると感じさせないときである。また、生徒が「有能感」を持つのは、やり遂げることはできるが簡単すぎるわけではないタスク──生徒たちの現在の能力をほんの少し超える課題──を教師が与えるときである。さらに、生徒が「関係性」を感じるのは、教師に好感を持たれ、価値を認められ、尊重されていると感じるときである。

というふうなことを書いていて、納得もするのですが、教師の観察力が重要だしケースバイケースで難しそう。今の日本では過重労働になっている教育現場の負担を下げて生徒に向き合える時間を増やすことが重要で土日の部活を教師がみるのをやめたり、事務スタッフを増やすことが必要なのではと愚考いたします。 そういうの支援する政治家を応援するし、教師への負担を求める親御さんを牽制するのが一市民にできることかな。

「AIに負けない子どもを育てる」人間だけの力のはぐくみ方

これについては別に記事を書いている。ここまでの本は自尊心・自立心にフォーカスされていたけれど、もうちょっと踏み込んでリーディングスキルという具体的なスキルについて書いている。

dai.hateblo.jp

後半に具体的な方法論が書いてあって、ちょっと著者の主観がすぎるようにも思うけれど、まあそうだろうな、ということが多い。幼児編の8つある項目から3つを引用してみる。ほか小学校高学年編まであるので興味ある方はめくってみてください。

1.身近な大人同士の長い会話を聞く機会を増やすこと。特に多様な年代の大人同士の会話を聞く機会があるとよい。
2.身近な大人が絵本を開いて、繰り返し読み聞かせをしてあげてほしい。大人にとって繰り返しは往々にして苦痛だが、幼児にとっては繰り返しが楽しい。
3.信頼できる大人に、自分は守られている、という実感を持てること。

感想

いくつか読んでみると、言葉は違っても共通して子の自立につながる自尊心の確保のためには親のアタッチメント・愛着が重要だと書かれているように思えます。 そう難しいことではないけれど、フルタイム共働きで忙しいとちゃんとやれているかは不安なところ(逆に都内の保活激戦区とかで入園失敗して親が1人でみるのはストレスすぎてたいへんそう・・・)。

さて、冒頭にどう育てるか学ぶために本を読むと書きましたがこれはHowの習得でしかありません。 目的・理由を考えると、どういう子になってほしいかという問いに行きつくのですが、これはコントロールできるかどうかはさておき、親の価値観がもろにでてくるところです。 こう育ってほしい、というのは、こうは育ってほしくないという思いの裏返しでこれは自分の中の差別感情でもあるし、夫婦ですり合わせることすら難しいようにも思えます。 そろそろ言葉を発するようになってきていて、どういうスタンスで子育てしていくのか整理しないとな、と感じました。

その他

書いている途中に、 id:gasuuu さんのこのエントリも発見。自分になかった視点がたくさんあって気になります。保育士向けの本などより実践的なものが多そう。本屋さんで探してみよ。

mamagasuuu.hatenablog.com

dai.hateblo.jp