うんこめも

自律分散うんこ製造システムについてのメモ

来年のことを言えば鬼が笑う

アーキテクチャの生態系」という本を読んだ。新進気鋭の若手社会学者、濱野智史氏が書いたwebサービスとその文化に関する分析。

やや主観的な記述が目立つけれど、視点と考え方はおもしろい。Googleがいかにネットを変えたか、2chのスレッド制が2chの文化にどう影響しているか、ニコ動の疑似同期性について、など書いてあるのでこれまでにどういうサービスが流行ってきたか考えたい人は読んだらいいと思う。



けれど、2008年の本なだけあって残念な記述も多い。
特に、今後、どういったサービスが流行るかという記述はわりと外れいるような。
執筆当時から4年たっているいま、自分が批判するのはドラえもんでのび太くんが過去にタイムトラベルして神様扱いされるくらい茶番だけれど、未来を予想することについて考えてみたいので、すこし長いですが引用してみる。

はたしてフェイスブックは日本上陸に成功するでしょうか?
筆者の回答は、九九パーセント以上の確信度で「否」というものですが、その理由はきわめてシンプルです。なぜなら、すでに日本ではミクシィが確固たるポジションを築いているからです。ほとんどのミクシィユーザにとって、同サービスを利用する価値は、「周囲の知人・友人がすでにミクシィを利用している」という点、つまり「ネットワーク外部性」にあります。すでにミクシィは、フェイスブックなどの米国型SNSと異なる形で、「ソーシャルグラフ」(人間関係)を扱うアプリケーションとして日本の若者達のコミュニケーション文化に深く根づいており、今後も日本では、フェイスブックのような新興SNSへのスイッチングが直ちに起こるとは考えにくいといえます。


濱野智史, アーキテクチャの生態系, p149より)

ツイッターの日本のユーザ数は、二〇〇八年現在、(正式には公開されていないため、推測された数字ですが)十数万程度だといわれてい
ます(ツイッター全体では、こちらも推測値ですが約百万ユーザーとされています)。この数字は、ツイッターが元々英語圏のサービスであったことを考えれば、きわめて大きいともいえますが、日本ではこれ以上の成長はあまり望めないのではないかと筆者は考えています。
その理由は簡単です。なぜなら、日本のネットユーザー(特にモバイルユーザー)の多くは、すでにツイッターが登場する以前から、「選択同期」的なコミュニケーションにいそしんでいるからに他なりません。ツイッター以外にも、多くの類似したサービスが日本語圏で登場しましたが、こちらも現状では、ツイッターの規模を超えるものはまだあまり見られないのも同様の理由です。そのため、「選択同期」型のサービスが、少なくとも日本でいまよりもさらに普及するためには、何か別の要素が加わる必要があると思われます。


濱野智史, アーキテクチャの生態系, p208より)

FacebookTwitter、どちらもばりばりに流行っていますね。。

2012年7月6日の時点で、Facebookの日本の推定ユーザー数は1004万人で7位。まだまだ増加している。
ニュース - 2012年7月のFacebookユーザー数で日本はアジア7位、セレージャテクノロジー調べ:ITpro


Twitterは2012年7月時点で日本のユーザは3463万アカウント、2012年6月の日本語のつぶやき1億1214万tweet。
Twitter、今年6月にユーザー5億人超か―ブラジル急成長、ツイート数では日本語が依然英語に次いで2位
アクティブなユーザがどれくらいいるかはさておき、巨大なことはたしか。


未来を予想するのは、難しい。。*1

気になるのは、当時、まだまだユーザの増加率も高かったのにもかかわらず、かなりの確信をもって成功しないだろうと発言するに至った論理。


後々になれば、なにを馬鹿なと思えることでも、当時の、限られた情報で正しい判断はできない。
シャープが2007年に着工して2009年に稼働開始させた堺の巨大な液晶工場をつくったことも、新興国でガンガン生産して価格が下がっているいま検討するととなにをやっていたんだ、と思うだろうけれど、たぶん、当時はリスクに見合うリターンも見込まれた合理的な行動だったと思う。


魔法少女まどか☆マギカで言うなら、魔法少女の残酷な仕組みを知っているほむらちゃんから見るとまどかの行動も不合理だけれど、まどかが得られる情報からは合理的になる。流行のレモン市場みたいに競争しているわけではないけれど、情報が非対称で、自分の情報の正確さを伝えることができない。まどマギはそういったコミュニケーションの失敗が中心にあると思う。悲しい。コミュニケーションがうまくできればマミさんは死なずに済んだしさやかもきっと恭介とうまくやれたのに。不憫すぎる。


・・・ちょっと話がずれた。



過去の判断が誤っていたからそれを批判するというのは非生産的で空虚だけれど、なぜそれが当時の合理的な判断だったのか考えることは有益だと思う。どういった情報があれば防げたか、どういう前提が誤っていたのか。あとは中の人しか分からないけれど、リスクを回避したり受容することを適切に検討できていたか、そもそも合理的に判断しようとしていたのか、などなど。


シャープの場合は専門家の方々にお任せするとして、ほむほむ、じゃなくてTwitterFacebook(本文中ではなぜかカタカナだけれど、サービス名で表記します)。Twitterの記述については当時読んでも一面でしか判断していない憶測だとしか思えないので、Facebookについてちょっとだけ。


Facebookmixi、どちらが勝っているか、簡単には判断できないけれど、2012年の夏には、アクティブユーザ数でFacebookmixiを抜いてしまった。
TECH SE7EN : Facebookがmixiの月間ログインユーザー数を逆転!1480万人を突破

一時期は大学のメディアセンターのPC前に座っている学生のほとんどがポップなオレンジ色の画面を表示させているほど広がって国内SNSの覇権を握っていたmixiが、いつのまにか日本語して急速に勢力を伸ばしている外国産のFacebookに抜かれるなんて、4年前の人に伝えてもこいつ何言ってるんだ、で終わると思う。


なぜそこに至ったか、後付けではいろいろ考えることはできるけれど決定的なことはわからない。ここではそのことではなく「アーキテクチャと生態系」ではなぜ予測が誤ったかについてすこし考えてみる。

はたしてフェイスブックは日本上陸に成功するでしょうか?
筆者の回答は、九九パーセント以上の確信度で「否」というものですが、その理由はきわめてシンプルです。なぜなら、すでに日本ではミクシィが確固たるポジションを築いているからです。ほとんどのミクシィユーザにとって、同サービスを利用する価値は、「周囲の知人・友人がすでにミクシィを利用している」という点、つまり「ネットワーク外部性」にあります。すでにミクシィは、フェイスブックなどの米国型SNSと異なる形で、「ソーシャルグラフ」(人間関係)を扱うアプリケーションとして日本の若者達のコミュニケーション文化に深く根づいており、今後も日本では、フェイスブックのような新興SNSへのスイッチングが直ちに起こるとは考えにくいといえます。


濱野智史, アーキテクチャの生態系, p149より)


これは典型的な三段論法になっている。すこし整理・補完するとこんな感じ。

  1. ネットワーク外部性のあるSNSでは、スイッチングコストが高いため確固たるポジションを築いたサービスが覇権を握りつづける。
  2. mixiは確固たるポジションを築いた。
  3. よってmixiは覇権を握り続ける。


3番目が間違っているということは原因は三段論法の1段目か2段目。つまり、

  1. ネットワーク外部性のあるSNSで確固たるポジションを築いても盤石ではない。盛者必衰。
  2. mixiはまだまだ確固たるポジションを築いていなかった。


1.については、windowsやofficeのように弱小なライバルがいない黎明期に確固たるポジションを築けるとデファクトスタンダードになるけれど、SNSではそうではないかもしれないということ。これについて、我らがひろゆき氏がするどい指摘をしている。

ひろゆき氏:
こういうコミュニティって,だいたい2,3年でつぶれるんですよね。つぶれる理由ってやっぱり,常連が幅を利かせるからです。

4Gamer.net ― [OGC2008#03]「2ちゃんねる」と「ニコニコ動画」のひろゆき氏が語る,ゲーム・コミュニティ・文化

2.については、変化の早い業界で数年メジャーになっただけでは確固たるポジションとはならない、のかもしれない。


なぜFacebookmixiに拮抗するまでに至ったかには、当然ほかの要因もあるだろうけれど、「アーキテクチャと生態系」での論理についてはこんな感じだと思う。過去の判断を振り替えることですこしは知見が得られたかもしれない。だからどうこういうわけではないけれど・・。


自分も過去の判断をちゃんと文章に残しておけば、あとあとその判断を検証して次に活かせるかなと思う。いまは結果だけ見て、いい判断だった、悪い判断だったと言っているだけ。


あと個人的な希望をいうと、Facebookmixiでうまくすみわけできればいいかなあとは思ってる。mixi、おもしろいとおもうんだけどな・・・。けれど今後どうなるか予想することは、控えておきます。未来を予想するのはむずかしいのです。鬼が笑うわけだ・・。



(蛇足)
表題の「来年のことを言えば鬼が笑う」の英語版はこんなのらしいです。
Fools set far trysts.(愚か者は遠い先の会合の約束をする)*2

そういえばなぜかFacebookのイベントで2037年の飲み会に行く約束をしてしまっている・・・。

*1:ラプラスの悪魔とか不確定性原理なんて中二病ワードを持ち出さなくとも、社会は複雑すぎて正しく予測することは不可能。それでも、なにかしら判断を下さないといけない以上、現時点で利用可能な情報から未来を想定してリスクを織り込むことは可能ですし必要です。とか偉い人なら言うと思う

*2:http://www.geocities.jp/tomomi965/ko-jien08/ra01.html