ぜぜ日記

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読書メモ「日本の教育はダメじゃない ――国際比較データで問いなおす」(小松光,ジェルミー・ラプリー) 日本の教育すごいじゃん

かなりよい本だった。 自分がいかに教育について先入観をもっていたか知ることができてよかったし、著者らのデータへの向き合い方からは、国際的なデータを比較することや、データでわかること・わからないことを分けて考えることなど学びも多かった。

TIMSS(ティムズ)という「学校で習った内容をきちんと覚えていて使えるか」を測るテストや、PISA(ピザ)という「学校で習った基礎的な内容を、新しい目的に対して創造的に使えるか」を測るテストなど国際的なデータでは日本の教育のレベルはかなり良いことがわかる。一方、理想としてあげられがちなフィンランドは低下しているという。

また、2015年、2018年のピザテストに参加した世代は、脱ゆとり教育を受けてきた世代であるにもかかわらず、ゆとり教育をばっちり受けた世代(2012年のピザに参加) よりも点数が低いというのもおもしろい。

悪い結果になっていることで引っかかったのは2点。まず、日本の10 代の自殺率が29カ国中、低いほうから数えて16位ということ(成人の自殺率はいわゆる先進国の中ではかなり高いことのほうが重要だが)。そして、教員の労働時間。資源のなく人的資本に頼るしかない日本では教員の労働環境はほんと改善されて欲しい。いや、日本の先生、ほんとすごいよ。

そんな状況でも、アクティブラーニング(日本よりピザテストなどで点数の低い、アメリカでは主に大学生を対象にしている)を中高生に導入しようとしていたり、改革しようとしつづける日本の教育行政の問題を感じた。これは敗戦後、現状否定をしつづけてきた文化があるのかも。

本書でも参照されている、「教育改革のやめ方」(広田照幸)、「追いついた近代 消えた近代」(苅谷剛彦)にヒントが書かれていそうで興味ある。日本の教育行政の問題点についてはだいぶ以前に読んだ「滝山コミューン一九七四」でも東大教育学部学閥の専横を感じたのも連想したのだった。

本書では主に義務教育・高校を対象にしているけれど、大学の教育効果についても同じような分析はできないかな・・・。国際間の比較データがないので難しいのだろうか。

また、本書でも、ピザテストの成績で測ることができるのはあくまで教育効果の一側面でしかなく、どういう教育がよいか、という問いにこたえるには、子にどう育ってほしいかという問い答える必要があるという指摘は重く、まだ十分向き合えていない。