神保町の書泉グランデで一枚500円で売ってたのを衝動買いした。
元々はアメリカの古いドキュメンタリらしい。原題はChina -The Roots of Madness
観終わってから気付いたけれど蒋介石が80才らしいので1967年の作品らしい。もっと文化大革命の闇とか党の堕落を期待していたんだけれど、義和団事件から国共合作・国共内戦あたりの経緯を映像でわかりやすく説明していてたいへんおもしろかった。
日本だと終戦前後で歴史は分断されて捉えがちだけれど、ほかの国では東西冷戦に至るまでまだまだ緊張は続くことがよくわかる。
そして中国を中心にしているからこそ見えてくるものもある。
たとえば満州事変の折、なんで蒋介石は積極的に日本と戦わなかったのか、とか真珠湾攻撃が中国にとってどれだけ吉報であったのか、とかはあまり知らなかった。
やっぱり映像だとイメージ変わる。清朝皇帝の豪勢さと人民の暮らしのギャップもわかるし当時のファッションも文化、産業の発展のレベルも窺える。あと若い頃の蒋介石と毛沢東の強い眼差しとカリスマさは異常。
観ながら授業メモっぽく書いたものを公開しておきます。間違っているかもしれないので詳細はちゃんとした教科書読んで下さい。括弧内は自分のコメントです。
解説役で政治ジャーナリスト、歴史家、小説家であるセオドア・ホワイト氏は7年中国に滞在し、毛沢東や蒋介石とも話したことがあるそうです。
前置き
- 50年かけて7億の人民に埋め込まれた憎悪は世界平和にとって最大の脅威だ。それを理解するには経緯を知る必要がある
- 中国というのは独特の価値観を持っている
- 孔子の説く美と秩序
- 序列の最上位にいる天と交信できる天子
列強の進出と清朝滅亡
中国のリーダー
軍閥による分割統治と西洋人の進出
軍閥と帝国主義を打倒するのため孫文らは国民党を結成
- 三民主義(民族主義、民権主義、民生主義)を打ち出す
- 米仏英は頼らずロシアに頼る。派遣された顧問のボロディンはレーニン思想を持ち込んだ
- 1925年に孫文は癌で死亡。翌年、総司令官となった蒋介石は北伐を開始
- 愛国心を訴え、農民や労働者を味方に付ける。英国租界を襲い国民政府を樹立
- 一方で国民党左派、共産勢力が勢力を伸ばし、蒋介石を追い出そうとする
- コミンテルンの命により広州でクーデタ
- 「共産党を見分けるのは簡単だ。彼らは首に赤いスカーフを巻いていた。クーデタが失敗して慌てて外したけれど、暑さのために首に赤色が移っていたためにすぐに見つかって殺された」
- というわけで国民党がほとんどの左派・共産主義勢力を駆逐
- 政治構造そのものが革命で破壊され土台から作る必要があった
日本の進出と共産党の勢力拡大
国共合作
- そして36年、共産党は内戦の停止と抗日統一戦線を提案
- しかし蒋介石は態度を硬化させたまま、東北の軍閥(張学良ら)に共産党を攻めさせようとする
- 張学良は日本と戦うべきではないかと難色を示す
- 西安まで張学良の説得に出向いた蒋介石を張学良が誘拐、共産党員たちと説得し反日共同戦線を張ることに
- (ここは世界史有数の緊迫場面だと思。まえに行った9.18歴史博物館でもこのシーンのオブジェがあった)
- 1937年。日本は大陸制圧を目指し、戦争を開始。日中戦争である。
毛沢東
- 毛沢東の戦争観は特殊だった
- 「共産主義は敗れるとアメリカ人は思っている。山を草履で歩く共産主義者を軽蔑している。だが、バレー・フォージュのジョージ・ワシントンも圧倒的劣勢にあった。日本軍や蒋介石と違い、我々には飛行機も戦車もない。だが、すべてを持っていたイギリス軍に勝ったのは、電気すら持たないワシントンだ。」
- (これを話した瞬間、彼は電気が当時存在していたか疑問に思ったそうだ。)
- 毛沢東はアジアの戦争を熟知していた。
- 「ゲリラは人の海を泳ぐ魚だ」
- 1年で20万人の農民を集める。日本軍は都市に注目したが八路軍は北の辺境を抑えた。
- そして思想教育を重視
- 軍事訓練と思想教育は同じくらい重要だ。としていた
- 「報道の自由をどう思うか毛沢東に聞いた。」「報道や言論の自由は認める。国民政府とは違う。誰もが意見を言える。蒋介石のように検閲はしない」本当かと念を押すと彼はもちろんだと言った。あなたが権力を握ったとき、誰もが自由に記事を書けるのか?と聞くと、人民の敵以外はね、と彼は答えた。
- (毛沢東、戦略家としてかなり天才だ。政治は略)
国民党の対応と(日本にとっての)戦後
- 国民党は奥地重慶に撤退
- 日本の爆撃が最も苛烈であった1941年、蒋介石は「日本は皮膚病に過ぎないが、共産党は心臓の病だ」といった。
- そして日本が真珠湾を攻撃し、中国はアメリカと戦線を張ることになり強力な同名相手を得る
- 米軍から国民党軍を鍛えるために派遣されたスティルソン将軍はインドで中国兵の訓練を実施
- カイロ会談では蒋介石はルーズベルトたちと会談し戦後の中国の地位を確認
- アメリカの大使ハーレーは内戦を回避させるため共産党のもとを訪れる。「終戦だ。平和を」と
- 大統領特使のマーシャル(元陸軍参謀総長の元帥だ)が派遣され、周恩来と蒋介石の間で1946年に停戦協定に調印
- (アメリカがいかに中国和平に気を遣っていたかわかる。ただし目的が対共産主義なのかどうかはよくわからない)
- しかし2ヶ月後には緊張ふたたび
- 戦場の満州には日本の残した財産がある
第二次国共内戦
終わりに
感想
このビデオはここまでを描いている。ここから文化大革命があって、苦難のときを経て徐々に近代化して経済力を一気に高めていくと思うと感慨深い。義和団事件から共産党の完全勝利まで50年は1年と休まる時間がないし、近代以降にこれだけ長い戦火にあてられていて先進国入りしている国はないんじゃないだろうか。
この50年にわたる戦火が中国人の精神・考え方にどういう影響を与えているのかは気になる。中国共産党は、帝国主義を打倒したことの偉大さを喧伝しまくっているけれど、中国人のうちではどう捉えられているのだろうか。
しかし、この時代の中国の情緒は異常だな。山水画のような奥地、広がる田園風景は残っていつつ、一方では魔都上海あたりの雑然とした妖しさもある。
ここらへんを言葉で伝えるのは難しいので藤原新也が1981年に発表した「全東洋街道」から言葉を借りる。
上海の街を抜けると田園が広がった。
延々と田園風景が続いた。
田園の上に巨大な空が現れた。
光が満ち緑が輝いた。
時折山や川が姿を現し、湖が光った。
土色の集落が過り、竹林が揺れた。
大麻畑が匂い、蓮沼が濡れ葉色に光った。
白い芋の花が地表に浮き、鵞鳥の群が蠢いた。
人がぽつねんと立ち、木立のわきに紫煙が立ち昇った。
浮き雲が流れ、その下に水牛の背が見えた。
鉄錆色にくすんだ上海ばかりを見ていた私はその美観に驚いた。
人も鵞鳥も牛も家も田畑も質実な美しさで底光りしていた。この全東洋の旅で出会ったことのない質感の美景がそこにあった。
まあ、本書ではここからその美景を見るのにためらいがある、目をそらしたいと続くのだけれど。
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