ぜぜ日記

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7月8月に読んだ本:匂いの人類学、新宗教の解読、WATCHMEN

8月が終わるとなぜかぽっかりと穴が空いたかのような気分になる。なぜだろう。
強い日差しと蒸し暑さ、濃い緑の匂い、にじむ汗・・・しんどいのになぜか愛おしい。ただこれは夏かくあるべしというイメージがこびりついているためな気もする。どうだろうか?

とりあえず、読書の秋を前に夏に読んだ本や消費したコンテンツを振り返ってみる。

運は数学にまかせなさい

タイトルはライフハック的でよろしくないけれどけっこう読ませる統計読み物。編集者はこれが売れると思ったのだろうか。と思ってよく見ると原題がSTRUCK BY LIGHTNING The Curious World of Probabilitiesという微妙な感じなので難しそう。

ギャンブルから回帰分析、有意確率、世論調査からモンテカルロ法、進化とベイズ推論、量子力学まで統計について幅広く考えられる限り取り上げられている。

わりと知っているネタも多かったけれどたまに知らなくておもしろいことも書いてあった。
ひとつだけ、アンケートで答えにくいものでバイアスかかってしまうものを防ぐ手法を紹介してみる。

たとえば、大麻を吸ったことがあるかどうかという質問を考えてみる。実際に吸った経験があっても見ず知らずの調査員に対して吸ったとは答えにくく、そのままのアンケートでは実際に吸っている人の割合より小さい結果になってしまう。そこで、回答者に調査員に見えないようにサイコロを振ってもらい6が出たら質問に無条件で「はい」と答えてもらう。それ以外が出た場合には正直に「はい」か「いいえ」と答えてもらう。こうするとほんとうに大麻を吸ったのかたまたま6の目が出たのか調査員にはわからないので回答者は気兼ねなく答えることができる。そしてあとで母集団の6分の1を「はい」と答えた人数から取り除く。


統計というよりはアンケートのテクニックだけれどいろいろ応用できそう。

あまり数式は出てこないので数学怖い人が統計を楽しんでついでに統計リテラシーを得るによいだろうし大学で統計の授業をとるまえに3時間くらいでさくっと読んでおくと統計学を楽しめるし理解しやすいと思う。というか自分が読んでいたかった。そうすればもっと真剣に統計学を学べて年収も高くて結婚できてハッピーライフを送れたはず(嘘)

運は数学にまかせなさい――確率・統計に学ぶ処世術 ((ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ))

運は数学にまかせなさい――確率・統計に学ぶ処世術 ((ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ))


匂いの人類学

匂いについて科学・文化両面から解説している。多岐にわたっていて読みやすい。
ちょっと気になったところを抜き書きしてみた。

  • コカインは無臭だが空気や水分に触れると甘いプルーンのような匂いがする
  • 東海岸のマリファナはミントのようなオレガノの匂い。西海岸はスカンクのような匂いがする。
  • 人間に嗅ぐことができる匂いは限られている。
  • トマトは400以上の揮発性物質をもつがそのなかで人間の嗅覚閾値に達するのは16種類
  • アメリカ人の1-2%は無嗅覚症か嗅覚鈍麻。
  • 感染症や頭部で簡単に嗅覚を失う。
  • 心理学のあらゆる麺にセクシャルな見地を見いだしたフロイトがセックスと嗅覚とが無関係と考えたのは、フロイトは33才のころの病気で嗅覚を失ったからではないか?
  • 嗅覚検査で嗅覚障害をもったひとを調べることはできるが標準以上の優れた嗅覚をもったひとを評価することはできない
  • 嗅盲は2,30種類ある
  • 喫煙び習慣はある種の匂いに対しては鈍感になるがある匂いに対しては嗅覚感度を高める可能性がある
  • 視覚障害の有無は嗅覚に影響を与えていない
  • 自分の犬が寝ていた毛布と知らない犬が寝ていた毛布の匂いを89%のひとは区別できる
  • コカインの探知に使う安息香酸メチルに対する嗅覚感度は麻薬犬と人間ではほとんど差がない
  • 同じ匂いに触れ続けると嗅覚は順応するが、その他の匂いに対してはほとんど影響はない
  • 嗅覚は暗示や印象で容易に存在すると思わせることができる。たとえば、ラベンダーには一般的にリラックス効果が、ネロリには興奮作用があると言われているが逆に説明すると実際に逆の効果が測定された。
  • 5チャンネルしかない味覚に比べて嗅覚は350種類の受容体と2ダースの知覚カテゴリーを持つ。風味は味と匂いの交じったもの。
  • 各国の肉料理のレシピを調べたところ年間平均気温と使われる香辛料の数が相関していることが分かった
  • 嗅覚受容体遺伝子は過去1万年のあいだに飲食や新陳代謝にかかわる遺伝子とともに急速に進化してきた。最近の研究では人類の嗅覚レパートリーの変化は大部分がごく最近に起こった可能性があることを示している。
  • 人間は口内の匂いを嗅ぐ能力(レトロネイザル嗅覚)が発達している。
  • 犬と人間の嗅覚は相補的。犬は遠くのものを嗅ぎつける能力はすぐれているがレトロネイザル嗅覚はほとんどきかない。
  • 日本人が好む鰹節の匂いはドイツ人には食べ物の匂いとは思えない
  • 日本の香道ではときおり酢で口をゆすいでリセットする習慣があったり、香水店でコーヒー豆で嗅覚をリセットする文化もあるがこれで嗅覚をリセットできるかどうかは分からない。
  • 強烈なトラウマに結びついた匂いは消えない痕跡を残す
  • 二酸化炭素濃度を高めた匂い付きの空気を吸わせ不快感を抱かせ、その翌日の匂いだけを嗅がせると被験者はふたたび同じ不快感を経験し体調不良を催す。そして、高い二酸化炭素濃度だけでなく、先入観だけでも同じように不快症状を誘発する。
  • 「環境汚染に対する警告や反対運動は、自然環境に重要勝つ有益な効果をもたらす反面、同環境下の化学物質に起因する症状の発現、MCS(多種化学物質過敏症)や社会原因性の集団疾患などの蔓延を、意図せず助長する可能性がある」
  • 「バラの香りには耐えられないと思い込んでいたある女性は、友人がバラを持って訪ねてくると失神してしまった。だが、その危険な花はただの造花だった」
  • 死体腐敗の各段階にはそれぞれ特徴的な匂いがある。はじめは匂いがしないが第2段階の鼓腸は死後2日目からはじまりスカンクのような匂いが1日から2日続く。これは天然ガスの漏出に間違われることもある。
  • 第3段階の活発な腐敗ではまず甘い匂いを放ちその後すさまじい不快な匂いになる。6日目までにはアンモニアのような匂いへと移行する。
  • 第5段階の乾燥では濡れた毛皮や古い革を思わせる匂いがする。最終段階では
  • 死体が腐敗していく過程を詳しくまとめたのは暮れ無損大学の大学院生だったジェリー・ペイン。それが現在も犯行現場における法医学検査の基礎になっている。
  • 匂い付き映画の攻防
  • 匂いはマーケティングでも重用される。高級シャツメーカーのトーマスピンクはリンネルの匂いを漂わせているしハーシーの直販店ではおおげさに香りを充満させている。ラスベガスのカジノでは誘惑という名の香りを展開している
  • 匂いはマーケティングにも効果があるがどこでも購買意欲をそそる匂いはなく、店舗や商品との調和が必要
  • サブリミナル。匂いに気付かれなくとも行動に影響が出るのはサブリミナル的。もっとも画像になにかを埋め込んだり人間が認識できないよう一瞬だけ画像を表示するサブリミナルは眉唾だけれど。広告と同じレベルか。
  • 匂いが記憶を喚起することもあるが、これはほかの感覚刺激と比べて強いかどうか裏付けはない
  • 電子鼻の開発に取り組む研究者は多い。間違いないのは使用できるようにするためには背景臭の学習が必要なこと。そのため、電子鼻が正しいことを客観的に保証するのは難しい
  • アプローチとしては生物組織をセンサーとして用い、受容体が活性化するたびに電気信号をとらえる仕組みが主流。ラットの嗅細胞をすべて半導体チップに集積したりするところもある。
  • 嗅覚を増幅する薬だけでなく、嗅覚を追加する薬も構想されている
  • 最新の情報技術はまずゲームで利用されるし遺伝子導入は人体の美的向上を目的とされる。かもしれない
  • 最新の情報技術はまずゲームで利用されるみたいな感じで遺伝子治療もまず人体の美的向上を目的とされる。かもしれない。

匂いの人類学 鼻は知っている

匂いの人類学 鼻は知っている


プロカウンセラーの聞く技術

カウンセラーが、そこに来る患者さんの話をうまく聞くための技術。ではあるけれどいかに相手が話しやすくするかのテクニックが載っており一般の人の日常会話においても通用すると思う。ただ相づちの打ち方にしても、読んでみるとなるほどと思ってもこれを実践するのは結構難しい。
他者の感情を分かち合おうとしないであったり相手に助言しないであったり、違和感のあるものもあるが読んでみるとなるほどと感じた。問題解決という目的に直接無可能ではなく問題解決できる下地をつくるのが大事なのかもしれない。
人とコミュニケーションすることが苦手なので克服してみたい。どう練習したらいいんだろうね。

プロカウンセラーの聞く技術

プロカウンセラーの聞く技術


限界集落

題材がおもしろく取材先のそれぞれの集落も個性的なので読んでおもしろくないことはない。
ただ、限界集落への取材をそのまま文字に起こしただけであり、少子高齢化、過疎化、その最前線である限界集落という現象についての洞察もマクロな視点もない。そういうものを期待して読むと失望すると思う。
かといって限界集落というもの自体へも入り込んでミクロなものを観察するというのでもない。すこし浅いし外部からの取材にとどまっている気がする。NHKの無縁社会もそんな感じだったしテレビ系ジャーナリストのノンフィクションには傾向があるのかもしれない。難しいとは思うけれどこういう題材でいい本ないだろか。

限界集落

限界集落


秘録 陸軍中野学校

歴史の表には滅多に出てこない諜報機関、そのなかでも大戦中の日本のものはあまり知られていない。機関として組織だった大きいものはなく小さいものが多数あっただけであったけれど、そこに関わっていた諜報員の多くは陸軍中野学校の出身であった。そこの教育と出身者の活躍を描いている読み物。
大戦についての読み物に多く見られるようにこの本もわりと判官贔屓というか主観的。けれどエピソードの多くはおもしろい。
諜報員は軍人とばれないように名前も変えて軍服も着ずに天皇の名を聞いても敬礼しない、住み込みの学校で自由に議論して遊びもたしなむ。それが単身で海外にわたって現地の人から情報を集め工作をしていくために有用だったことが語られている。司馬遼太郎坂の上の雲にも登場した明石元二郎大佐の日露戦争時の工作から登戸研究所でつくられた秘密兵器(風船爆弾、殺人光線から録音機まで)、戦争末期に吉田茂をスパイした話、東南アジアに潜入して独立運動を支援した話などなかなか興味深い。

ただ、学校の教育内容については深入りしていないことと民俗学者を動員したとされる岩畔機関や昭和通称にについて読めるかと期待していたけれどあまり触れられていなかった。昭和通称にいたっては一時、諜報員のダミー身元に使用された民間の会社としか触れられていないのも残念。ここあたりは自分も佐野眞一の「旅する巨人」でしか知らないのでちゃんとした本ないだろうか。

あと岩畔豪雄(終戦時少将)は京極堂シリーズの堂島大佐のモデルの一人ではないかとこっそり思っている。

秘録・陸軍中野学校 (新潮文庫)

秘録・陸軍中野学校 (新潮文庫)



新宗教の解読

新興宗教ではなく新宗教。「新」といっても明治維新前後に生まれたものも含まれている。
非科学的であったり、信者からお金を集めたり、強引な布教(創価学会の折伏が有名)であったり、気味が悪かったりと蔑まれて見られがちの新宗教、しかしそれでも必要として入信する信者は多い。新宗教は社会の鏡。社会に受け入れられなかった人が入信する。この本は社会というシステムと新宗教の関連を解説している。たとえば新宗教が発生したり拡大する時期と社会の状態は関連しているであったりマスコミの影響、教祖のタイプなど。
オウムに関する一連の事件の前に書かれた本だけれど、そのまま通用するくらい宗教に対して公平な本。さらにこの手の本としてはかなり読みやすいので下の本を読もうとするならこっちがおすすめ。Amazonで中古1円なのはもったいない。
情報技術が発達しグローバル化が進み、経済も停滞しているこの時代にどういう新宗教が広がるのだろう。いますでに世間の目の届いていないところで広がりつつある気がする。

新宗教の解読 (ちくま学芸文庫)

新宗教の解読 (ちくま学芸文庫)



日本の10大新宗教

日本の代表的な新宗教の概要を紹介している。教祖と来歴、他の宗教との関係を簡単に解説していて新書っぽく軽く読めてよい。
終末論をかざす新宗教は信者を簡単に増やせるが「予言」が失敗したから求心力を失うとか、病気が治るとかの現世利益を約束する宗教は地味に強いなど。あと大本の出口王仁三郎がかなり精神的質量が大きい人間のようで興味深い。
ただけっこう主観的。著者がカルトのヤマギシ会に所属していたりオウムを擁護していたりと研究者としては深入りしすぎで話半分に聞いておく必要があると思う。
新宗教といいつつカルトと新宗教の線引きがあまりできていない気がする。エホバとか海外系の新宗教や、海外で流行している新宗教について取り上げた本があれば読みたい。

日本の10大新宗教 (幻冬舎新書)

日本の10大新宗教 (幻冬舎新書)


ライトついてますか

問題解決についての読み物。けっこうはっとさせられる。問題ってなんなんだろう。解決案や問題解決者自体もそれに含まれている、とのこと。文章自体は少ないし読み合わせて議論するとおもしろいかも。

ライト、ついてますか―問題発見の人間学

ライト、ついてますか―問題発見の人間学


WEB+DB 7月

特集は3Dプリンタについての説明。かなり身近になっているし一度つくってみるとおもしろそう。
システムを見通す力・・・日経SYSTEMSに載ってそうな記事かと思ったけど示唆に富んでる。大規模プロジェクトでいかにデータをとってそこから価値を見いだすか。メトリクスをとっていく負荷と
知覚と認識についての話が興味深い。うちでもやってみたい。落ち着いたら必ずやろう。

天地明察

かなりよいカタルシス。
20年をかけて日本の暦をあらためた渋川春海を主人公に江戸時代初中期の政治や文化を描いている。これまでに流行っていた時代物と比べるとあっさりと書かれているので自分のような軟弱現代っ子にもさらっと読めていいエンタメだと思う。光圀公や保科正之がよく描かれているのでさらに調べてみたい。

暦術だけでなく囲碁や算術についても実在の人物や事象をもとに、現代的なキャラ立てしていておもしろい。時代物だと武将系かお侍さんにフォーカスを置いているのばかりでこういう文化面にフォーカスをおいているのは珍しいと思う。ほか、こういうのは「へうげもの」くらいしか知らない気がする。どうだろう。


フィクションとはいえ史実をもとにこれだけつくれる冲方丁すごい。最近劇場でやっていた攻殻も観てみようかな。

天地明察(上) (角川文庫)

天地明察(上) (角川文庫)



WATCHMEN

このごろはあんまり漫画を読んでいないつもりなのだけれど、今年に入って「この漫画めっちゃおもしろい、今年読んだ中で間違いなくベスト」と思うの4回目でさすがに節操がない。
その4回目である本書はアメコミ最高峰と名高いグラフィックノベル。いわゆるヒーローモノなのだけれどダークでハードで読み応えがある。米ソ冷戦や政治の絡むなか個性的なヒーローたちそれぞれの正義を追求していく。繰り返し現れる終末への予感や重ねられる狂気に満ちた作中作、章のあいだに挿入される、物語に登場する新聞記事や本からの引用も物語を深く感じる一助になっている。神話のような印象を受けた。
これはたいへんすごい作品だと思う。ノーランのダークナイトが好きな人は読んでみると楽しめると思う。

WATCHMEN ウォッチメン(ケース付) (ShoPro Books)

WATCHMEN ウォッチメン(ケース付) (ShoPro Books)


パシフィックリム

熱血怪獣映画。すさまじい迫力と怪獣のかっこよさよ。細かい点はあれだしご都合主義というところもあるんだけれど、熱血ロボット感があって燃えるし良いと思う。彼女ができたらドリフトしたい。

風立ちぬ

ジブリの恋愛も
の。あざといんだけれどやられてしまった。
細かい点はあれだしご都合主義というところもあるけれど、エンジニアかっこいいと思えたし、うるっときたして良いと思う。
これを機に軽井沢に行ったのだけれどなかなかよかった。彼女がいれば軽井沢デートすると楽しいと思う。

海賊と呼ばれた男

スノーボールアース

こっちに書いた
人生に疲れたら地学系の本を読むといいと思う - うんこめも



ほか「あまちゃん」を習慣的に見てしまっているけれど明日からどうなるのか不安。
アジャイル開発の奥義」勉強会は隔週くらいのペースで続けてます。


こんな感じの夏でした。
けっこう残業あったりしんどかったけれどクソ暑い淡路島や伊豆大島を自転車で走れたり夏っぽいことできた気がする。あんまり勉強していないし、つくりものは低調・・・。

来月は勉強時間を確保していこう。