ぜぜ日記

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農業について調べてみたことメモ

ふと、農業が気になった。
農業のことは義務教育で習ったのに毛が生えた程度しか知らないし農業をやっている知人はほぼいないし実家は田舎だけれど農業はやっていない。ひょっとすると農業系宗教組織のヤマギシ会についてのルポを読んだことも原因かもしれない。


とりあえず以下の項目について答えるために調べてみて、ついでに国内外の農業の状況について簡単に箇条書きで調べたことをメモを貼っておきます。

  • 自給率ってそんなに大事なのか
  • TPPってどうよ
  • 農業で食っていけるのか


アナログ人間なので図書館でそれっぽい本を借りて調べました。あまりインターネッツは使っていません。まだ借りている本があるので追記していくかもしれません。

いい本とかイベントとかあれば教えて欲しいですし間違いなどあればご指摘いただければと思います。


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加古川の農業風景(俺氏撮影)

自給率ってそんなに大事なのか

市場と比較優位について知った大学生のころは単純に市場化すれば万能の市場が解決してくれると思っていた。自給率が低くなっても輸入すればいい、ただ、命に関わるものなので基本自由経済で検査・安全基準は国主導できっちりがいいんじゃないかな、と。ただ、そう単純ではない。

  • 命に関わるためお金ですぐには買えない。
    • プランテーション作物などを除けば基本的に自国消費。穀物生産量に占める貿易率は10%強に過ぎず各国は余剰作物を他国に販売するのみでお金を出せば買えるわけではない
    • 供給が減って価格が上がっても需要は簡単に減らない
    • 自国生産がないと価格が不安定に
      • 食料を輸入に頼っていると食料価格が高騰した際に社会不安から暴動や民主主義体制の崩壊などのリスクがある
  • 一度失われればすぐには戻らない
    • 暗黙的なノウハウがあり継続性が必要
    • 価格が上がっても作付けから生産まで時間がかかりすぐに対応できない

つまり安全保障のためには自給率は高いほうが良い。

もちろん補助金頼りで生産性が低いという問題はある。ただ、アメリカや中国も補助金は入っているし日本が特殊なわけではなく(関税はきわめて高いが)、補助金なしにすれば市場の力で全部解決というほど単純な話ではない。補助金を振り分ける制度設計については各国とも試行錯誤している様子。

TPPってどうよ

利害関係者多すぎてかプロパガンダが溢れているため判断できません。

Wikipediaにリンクがたくさんあるので読んでいけばわかるかもですがバックグラウンドの知識がないので・・・
環太平洋戦略的経済連携協定 - Wikipedia


ただ上記の自給率にも絡む話で、安価な農作物がはいってきて自給率の低下するデメリットと国内生産を売ることのメリットどちらが大きいかという判断になると思われ。

ただ、FTAEPAより強力なTPPに参加するにあたりFTAの話をひとつ引用する。

メキシコでは1994年にアメリカ、カナダ、メキシコで結ばれたNAFTA(北米自由貿易協定)によって輸入農産物の関税が取り払われ、補助金に支えられて価格が安いアメリカ産トウモロコシが国内に流入した。市場を奪われたメキシコの農民たちは、職を追われ農地を手放すことになった。また、糖類や加工食品、動物性食品の輸入も増え、アメリカからの豚肉の輸入が700%も増加し、メキシコの豚肉生産者の多くが失業した。
さらには食肉生産や商品加工、流通販売においても米企業が進出したため、アメリカ的な肥満を促す環境とフードシステムがメキシコに輸出された形になった。今やメキシコは、成人の約3割が肥満という、OECD加盟国のうちアメリカに次ぐ肥満体国となっている。

図解 最新 世界の農業と食料問題のすべてがわかる本

後半はさておき、前段。
消費者がアメリカ産の安価な食物を得られることになったメリットに触れられていないので一方的ではあるけれどこういったリスクもある。


農水省のなかのムードとしてはTPPに傾いている、らしい。いい条件で入れればいいんじゃないかなと思うけれどこのペースだと締結いつになるんだろうか・・・

農業で食っていけるか

規模の経済・範囲の経済が強く働くアグリビジネスで零細はどう戦っていけるのだろうか。
農業周辺(農薬・種子・農機・流通・加工・飲食店)は大企業が占めているが、農業本体はあまり大手はいない。それは以下の問題によると思われる。

  • 農業の特性
    • 貯蔵性が悪い。劣化が早く場所をとる
    • 自然の制約の影響で不確実性が大きい
    • 生産しようと思ってから出荷まで時間がかかる
  • 農地法などの参入障壁
    • 民間企業の参入しにくさ
    • 桃鉄でも農林物件は売れない
  • スケールしにくい
    • 労働集約型でノウハウも必要
  • −環境ごとに違う
    • まとまった土地がない
  • 販路が限られている
    • 農協
    • 規格品しか売れない


この問題のどこかのスキをつければいける気がする。例えば最近は6次産業というキン肉マン並のアイデア*1があってそれなりに広がり利益を出しているケースも多い(今月のaffで特集されている)。

いくつかアイデアはあってけんとうちゅうだけれどむずかしい・・・

どれくらい作付けして収穫したらどれくらいの利益になるのか、どういったリスクがあるのか、どういう補助金をいくらもらえるのか。どう計算するといいんだろうか。




以下はおまけです

調べたことメモ

日本の農産業の状況と課題
  • 農地の放棄
    • 2010年度の全国の耕作放棄地は292,000ヘクタール
    • 東日本大震災で被災した農地24,026ヘクタールのうち除塩などの復旧が完了したのは2013/3/11時点で7,894ヘクタール

−農業者のプロ化に向けて

    • 改正農地法で参入規制を緩和しているがどれだけ参入しているかは不明
    • 農村の高齢化などは進行中
今後の食糧供給リスク
  • 需要の増加
    • 2050年には93億人
  • 水資源の制約。地下水のくみ上げすぎによる地盤沈下や枯渇
    • 日本自体は水不足はあまりないが、海外では地下水のくみ上げすぎや塩害で水不足の地域が多くなっている。日本は食料の輸入を通して海外の水に依存して生きている。
  • 原油価格のコストによるコスト向上
  • 投機マネー。2002年は7700億ドル。2007年には7兆ドル。穀物価格の高騰につながっている。
  • 土壌劣化(土壌浸食・表土流亡)・塩類集積による農業に不適な土地の増加
    • 過度の放牧・塩類集積で年に500万ヘクタールの農地が砂漠化している。(2002から2004年の平均で世界の農地は6.7億ヘクタールなので1%近く)
  • BSE・鳥インフル
  • 取引の8割が5種類の作物で単一化が進んでいる
    • 少数の害虫・病気で大きな被害が出ることも・・・
  • 市場の薄さ
    • プランテーション作物などを除けば基本的に自国消費。穀物生産量に占める貿易率は10%強に過ぎない。各国は余剰作物を他国に販売するのみ
    • 価格が上がっても需要は下がりにくい
    • 穀物の輸出国が限られている
世界の状況
  • 各国の農業政策
  • EUの共通農業政策(CAP)
    • 一時はEU予算の7割、2008年は45%程度
  • 中国は最低生産者価格制度
  • アメリカではほぼ5年の1度改正される米国農業法、現在は農家への保証金に多くを計上するなど保護主義的でWTOの現行農業規定に違反している可能性もある。
  • 世界の食糧生産
    • 小規模農家が5割。工業的農業が生産した食料3割
    • 世界の食糧貿易の4割を多国籍アグリビジネスが占めている
    • 流通などのボトルネックを一部の大企業が占めている砂時計モデル
    • 日本の対外経済政策の基本はWTOを中核とする多角的貿易体制。2002年以降はEPAFTAを拡大している。
種目別の概況
  • 穀類
    • 国内消費仕向量は減少中
    • 7割は輸入
    • 国内消費仕向量の43%は飼料用
    • 輸入トウモロコシのほぼ100%が飼料用。うち9割がアメリカからだが値段が不安定になっており飼料用稲が注目されている。
    • 米の生産量低下は減反政策や生産調整の影響もある
    • トウモロコシと小麦はシカゴ商品取引所の先物価格で決まるが米だけはタイ国家貿易取引委員会で決まる
    • いずれの価格も高騰気味
    • 穀物メジャー(カーギル、ADMなど)と呼ばれる上位5社で世界の取引量の8割
      • 流通マージンで利益を出している
      • 日本の総合商社も出資して穀物供給網を構築している
  • 野菜
    • 国内消費仕向量は減少が止まらない
    • 輸入量の割合はやや増加傾向
    • 8割が国産
  • 果実
    • 輸入量が60%
    • 国内生産は減少中。
  • 肉類
    • 国内消費仕向量は微かな増加傾向
    • 6割が国産
    • 牛肉の6割はオーストラリアから。鶏肉の9割はブラジルから。
    • 現在の関税は38.5%。TPPでの関税撤廃の例外に入らなければ業界は大打撃を受ける可能性がある
    • 世界全体で見ると牛肉消費量は減少。2008年から2013年で3.4%減。豚肉は5.9%増。増加の91%は中国。鶏肉は12.6%
  • 牛乳/乳製品
    • 国内消費仕向量は減少傾向
    • 7割は国産
  • 魚介類
    • 国内消費仕向け量はピーク時の7割ほどで減少は止まらない
    • 国内生産は6割
    • 1998年から2008年で輸出額は2倍の1020億円になっている
    • 漁獲量の上位を占める水産資源は十分に開発された状態にあり、これ以上漁獲量を増やせる可能性はない。
小ネタ
  • 農産物の輸出において金額ベース上位6品目はタバコ、ソース混合調味料、アルコール飲料、播種用の種など、清涼飲料水、豚の皮
    • 海外ではブランドバッグなどの材料に豚の皮の評価が高いらしい。
  • 豚肉価格にはピッグ・サイクルという豚の年齢に合わせた価格サイクルがある
  • 飼料のほとんどを輸入に頼るに日本で国産の米を飼料にする計画が進んでいる。
  • 大豆はすごい。まじですごい。
  • 食品廃棄物を飼料にする活動も増えている
  • 国際会議とか協定とか多すぎでは
  • 農協について
    • 筒井康隆の「農協月へ行く」などでかつての金満ぶりを知っていたけれどその実態はどうなんだろう。たまたまかもしれないけれど農業業界の入門本の何冊かにもほとんど触れられていなかった。


農業なかなか奥が深い。
サラリーマンが農業始めると言い出すの、人生ゲームの開拓地感あったけれどそうではないのかもしれない。ただ、食べ物をつくるのにこれで食っていくのは難しそう。


参考文献

史上最強カラー図解 最新 世界の農業と食料問題のすべてがわかる本

史上最強カラー図解 最新 世界の農業と食料問題のすべてがわかる本

  • 食糧ビジネスのしくみ
    • 丸紅のひと2人が書いている著者のひとりは25才・・・

絵でみる 食糧ビジネスのしくみ (絵でみるシリーズ)

絵でみる 食糧ビジネスのしくみ (絵でみるシリーズ)

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