※このブログ記事は素人が感じていることを2020/12/20時点に書いた文章です。鵜呑みにしないでください。事実誤認があれば訂正しますのでお知らせいただけますと幸いです。
緊急事態宣言が出てから9か月、日本でも第3波が広がりつづけてGOTOトラベルを止めるという報道があった。 長期化して収まる目途がたたないなかで日々数字が流れていくニュースに感覚が麻痺したり、身の回りでは発生していないことからリスクを過小評価してしまいそうになる。事実、すでに第1波のときに感じていたことをちゃんと振り返れない気がする。そんなときに立ち止まれるようにいまの理解といま思っていることを書いておく。
1.COVID-19について
一部に新型コロナウイルスがたいしたことないし経済への影響が大きいから経済を再開させよう、という人もいるけれどアメリカでは死者数が累計30万人、1日に3000人が死ぬようになって、スウェーデンも100万人当たりの死者数が700人を突破し、イギリスやオランダでは再びロックダウンされるようになるなど、各先進国は存在しているものとして対応している。 これを無視してCOVID-19がたいしたことないとするのはかなり危ないと思う。
第3波の様子をみるに、一時期に山中伸弥教授が言っていた日本人が重症化しにくいのは未知の原因「ファクターX」があるのではという説もなさそうにも思う。一部で流行ったBCG接種が効いているのではという仮説も、パラメータが多いわりに結果のデータが少ない場面に陥りがちな罠、データ分析でいうところの次元の呪いの類ではないだろうか*1。
第1波、第2波が収まったのも緊急事態宣言と国民の行動変容によるところが大きいように思う。そのため、周りでは発生していないという状況に麻痺したり我慢も限界にきて油断してしまいがちな長丁場では行動変容で流行を抑え続けるのは難しい。毎年猛威を奮うインフルエンザがほぼ広がっていないほどの対策をしているにもかかわらずじわじわと伸び続ける新型コロナウイルスはやばすぎる。
短期的にロックダウンしても一時的にしか止められないし、欧米の様子をみるに長期的にはますます被害が出るしでどうするといいんでしょう・・・。
GoogleさまのCOVID-19予測、ちょっとまえまで1/5ピークだった気がするけれど今見ると増え続けることになりそうhttps://t.co/yQlqbWVhxE pic.twitter.com/9b1H2rPdBR
— だーい(*Д*) (@daaaaaai) December 19, 2020
2.政府の対応・GoToトラベルについて
感染リスクが高いことから利用者が減ってダメージを受けている観光・飲食やそのまわりの膨大な関連産業を救うためのGoToトラベルは、その見切り発車などプロセスに不透明なところがあって批判がある。
とはいえ、大きな産業で雇用や文化を守るためには有用だと思う。直接給付よりも裨益するひとも多い。もちろん、家にいるよりは感染リスクはあるけれど、これまでの運用と状況をみるに、すくなくとも非拡大時期/地域には感染拡大にはそうつながっていないのではないか、とも思う。そういう意味でそう悪い政策ではないと思うし、これ以上の政策は思いつかない(細部の運用面ではいろいろ問題もあるけれど)。リスクがあるからやめよう、というのは、放射能の危険があるから福島のもの食べないでおこう、というくらいゼロリスク信仰でよくないと思うのです。ほかの合唱コンクールやカラオケや居酒屋のほうがリスクは高そうだし。
ただ、GOTOトラベルを継続しているということは外に出ていい、というメッセージに受け取られる節もあるので、政府がちゃんと少人数で安全にやってね、とメッセージを出し続けてほしい。
あと、過酷な勤務のなか、病院から旅行を禁じられたり、世間から穢れ扱いされるなど過度なストレスのもと働いている医療者が安易に旅行して感染した人の対応をするなかでなんでいまGoToするのと恨みごとをいって反対する気持ちも少しはわかる・・・。 経済かコロナ対策かというのはナンセンスな二項対立だけれど、ここまで広がったCOVID-19をなんとかするのを待っているといろんな産業が不可逆に死んでしまうので、短期的にも感染拡大させずに経済を動かすにはどうしたらいいんでしょう。ほんとは、ニュージーランド・台湾のように第1波での緊急事態宣言・ロックダウンをもうすこしこらえていたら・・と思うけれど、そのときの見える情報では仕方ないしたらればなのでやめておきます。
また、このあたりは党派性(安部のやったことは全部悪いことだ、とか、政府の取り組みに反対する人間は足を引っ張る愚かものだ、とか)があって、ネット上での議論は難しい。 少なくとも、政府としての姿勢を示して、専門家を重視して、失敗したときに備えてプランBを用意して、(関係者の納得度をあげるためにも)意思決定のプロセスをなるべく透明化してほしい、とは思う。これは自民党を支持している人も、そうじゃない人も合意できるとは思うんですがどうでしょうか(インターネット党派性バトルにならないように自分の支持は書かないようにしておきます)。
ここらへんは危機管理のノウハウの基本だと思うのです。かつて自民党政権下で内閣安全保障室長を歴任した佐々敦行の危機管理本を政府の中の人には読んでいてほしい・・・。
- 作者:佐々 淳行
- メディア: 単行本
3.専門家について
未知の事象でデータも足りない問題でたくさん学説や提案が出るのは当然。だけれど、立派な肩書を持ちつつも論理的に議論できなかったり、社会的な影響を軽視する学者や医師もSNSでよくみられた。
具体的な例をあげると、K値というたまたまデータにあった予測曲線を提示して無責任な予測をする専門家がいたこと。メディアや一部の自治体がとりあげたのは暗澹たる気持ちになったし、それを自分も尊敬する経済学者がとりあげてそのあと、予想が外れたことが明らかになったあとに何も発現しないでいるのはちょっと残念だった(これは5月時点に得られる情報で、仮説として提示するのはあってもよいけれど、国民の行動変容による効果を無視しているのでなにかの意思決定に利用されるべきではない*2)。
とはいえ、その人なりに見つけた仮説、それも政府の専門家が気付いていないと思ったものを社会全体のためにと提示するのはいいことだとは思う。だれでも意見交換できるインターネットでそれを提示して議論され補強されたり穴を指摘されることは、昔夢見ていたインターネットの理想ではある。けれど、実際には、意見ではなく人格を批判してしまったり、またそれによって頑なになってしまったりでオープンで自由なコミュニケーションは学のある方たちでも難しいという現実を再確認できた。
4.検査について
Twitterを眺めていると、検査についても広げるべきか広げないべきかという議論が何度も繰り返されて、何度もかみあっていなかった。 これも問いの立て方で変な対立になってしまっていたのかな、とあとあとになっては思う。 医師が必要と判断したときにすぐ公費で検査できるような体制にされるべき、というのはだれも反論はないと思う。 クラスターを抑えるための一定のエリアでの一斉検査もできるようするかどうかや、陽性と出てもなにもアクション出来なかったり、陰性と出ても一時的な免罪符にしかならないというのが伝わりにくい民間の検査をどうするかは個別に議論されるべき。
検査能力がいま十分かどうかはわからないけれどその拡充がいまの保健所・医療現場の逼迫具合のもとの無数にやるべきことがある中でどれくらい優先度があるかの判断難しい。都道府県が調整していそうだけれど、予算規模からなかなか思い切ったことはできていないように見える。
5.医療について
医療現場や行政の方はかなりストレスもあるし支援も少ないし、ほかの市民からも穢れのようにみられてしまっているし過酷。 まだまだ終わりの見えないCOVID-19のなかで根性と自己犠牲だけでは収奪的にすぎて短期的には現場が回っても長期的に医療のレベルを大きく下げることになりかねないのでは・・・と思う。
コロナ禍のまえから日勤後に当直して当直明けにまた一日働くという医師の異常な働き方に触れてちょくちょく書いているけれど、スタッフが持続的に働けるレベルまで医療のサービスレベルを落とさざるを得ないと思う・・・。医療のサービスレベルを落とすというのは、休日や夜間に事故があったら緊急手術が手配されにくくて死亡率が上がるとか、予約がとりにくくなるとか、自己負担があがるとか、町の病院では分娩はできないとか、そんなことで市民としてはつらいけれど仕方ないと思うのです。これは医療者からはなかなか言えないと思うので外野から言っておきます。
6.メディア
もともと期待していなかったけれど、データの読み取り方・出し方が雑だったり、謎のデマをしゃべる疑似専門家を登場させたりで、これが世論をつくっていってそれをベンチマークに政策が決まるのか・・・と思うと暗澹たる気持ちになった。とりあえずワクチンについてはHPVワクチンを誤報した新聞会社は撤回・謝罪して、その轍を踏まずに報道してほしいと思っています。
いまの安全とされているワクチンでも一定確率で発熱やけいれんの副反応はあるので、その一部のケースの悲惨さをとりあげて全体のよしあしに印象付けるのは危険。 承認プロセスに問題ないかとかを調査して、データのみかたとかをわかりやすく報道してほしい。
でも、市場経済下で視聴率/購読率をKPIにしている民間企業にこういうのを求めても仕方ない気もするけれど。
7.社会
急に箇条書きにしてみる。
- 学生や新社会人はいろいろ制限されてたいへんそう。人生を翻弄されている
- 男女の出会いも大きく制約されて、婚姻率や出生率もかなり下がりそう。自分も妻と出会う前にコロナ禍があったら出会えなかったし、いまも孤独に無聊を慰めていた気もする
- オフラインでのコミュニケーションの価値の大きさを知った。社会参加できないことでネット以外で社会の広がりを持ちにくくなっている・・・
- オンラインコミュニケーションで関係構築し知的生産するスキルをもった人は強い(これからのデジタルネイティブはそういう人が多くなる?)
いっぽうで、ニュートンがペストを避けて故郷に戻っていたことで微分積分、万有引力の着想を得たように、なにか新しいものが生まれる時期でもあるかもしれない。 *3
8.自分
7月に子が生まれて妻も育休・産休でずっと家にいるのが自然な生活で保育園もはじまっていないこと、コロナで仕事がマイナスになる業界でもないことから世の中的にはもっとも影響を受けなかった層のひとつだとは思う。 妻は、出産前後の入院にだれも見舞いにこれないことを悲しんでいたけれど、これと実家に子の顔を見せに行きにくいくらい。恵まれているほうだとは思って居心地の悪さもある。
若い人が重症化しにくいとはいえ、母が間質性肺炎で在宅酸素療法のすえ数年前に亡くなったのをみているからか呼吸器系の苦しみはわりと死の恐怖としてはあって不安は続いている(とはいえ、3-4月と比べたら慣れでか薄まっている気もする・・・)。
9.その他
- 株高すぎ。世の中にお金余っているのもあるし、日銀が株を持ちまくっているのもある?健全ではないようにも思うけれど、どうなるんだろう・・・。なんらかの破局があるのか、意外とないのか。
- 中国、あれだけ人口がいて、大都市が多いのにコロナが広がっていないように見える。なんでだろう?と思ったら物量の動員力が違うのもありそう。
- mRNAワクチンすごい。このスレッドみんな読んでください。
米ファイザーと独BioNTechの新型コロナウイルスに対する革命的なmRNAワクチンの接種が明日から始まるが、このワクチン開発にいたるまでの経緯が実に感慨深いので紹介してみる。まさに、大逆転ストーリー。1/22
— Hironori Funabiki (@HironoriFunabi1) 2020年12月13日
- 基礎研究はなにがどう役立つかわからないしで選択と集中は危険・・・ということで研究にちゃんと社会でお金を出すようになってほしい。
終わりに
100年前のスペイン風邪は集団免疫によって数年で鎮静したけれど、今回はそれが微妙だとするとワクチンの普及を待つしかない。日々流れる数字に麻痺してこれからどうなることかはわからないけれど、地域にお金を落としつつ自分は自分の仕事をするしかない。
仕事じゃないけれど最近 #つくりおき という料理ブログに投稿した記事を紹介しておきます。みんな料理しましょう。 tsukurioki.hatenablog.com
あと、先週末に近所を散歩してみつけた先の見えない紅葉の階段を貼っておきます。
*1:参考)忽那先生のBCGについての記事 news.yahoo.co.jp
*2:この記事が詳しかった www.covid19-jma-medical-expert-meeting.jp