2013/5/6 文末に玉子屋の情報を追記
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昨日の夜、帰宅してテレビをつけるとNHKでサラメシという番組をやってた。
働く人のご飯に注目するという内容の、すこし変わった視点の職業紹介といった感じでおもしろい。
そのなかで、玉子屋というお弁当屋を紹介していたのだけれど、これに見入ってしまった。
ただのお弁当屋じゃなくて会社相手に1日に6万食もつくって配達しているお弁当屋さん。
なんでもご飯を1日に1.5tも炊くらしい。
すごいのは量だけでなくて、お弁当の発注数の予測らしい。
当日配達するお昼のお弁当をその日の午前10時まで注文を受け付けている。注文を受けてから作って車を出していたら間に合わないので、ある程度見込みでつくる。そして当然ながら会社まで運ぶときには不足を出さない。
もちろん許容廃棄率に余裕があればいいのだけれど、そこはけっこう厳しくしている印象で、販売数の予測に売りがあるという触れ込みだった。
お弁当屋さんの売り上げに関係しそうな変数ってどれくらいあるんだろう?データマイニングを使ってる現場の実際って気になる。
と、わくわくして観続けると、経営戦略室室長みたいないかつい肩書きの30歳くらいの人なつこそうな兄ちゃんが、すでにフル稼働で生産している弁当工場の事務室に現れた。
そしてPCを開き、データを確認するかと思いきや、天気を確認。まずは天気からだよね。お弁当の売り上げに一番影響あるよね。
と、観ていてもPCはもう画面に映らず、その兄ちゃんは受注一覧とでもいう紙とにらめっこして、工場と電話で数字をやりとり。
そのあと、注文を受け付ける部屋にカメラは移動。
PCを前にしてヘッドセットをつけた制服姿のオペレータが並んでキーボードを叩く、なんてことはない。10人ほどのおばちゃんたちが肩がくっついてるんじゃないかというくらい狭いところでひっきりなしにかかる電話を受けながら鉛筆と電卓を高速に動かす。そして飛び交う怒号。PC?そんなものはありません。みんな紙の伝票に書き込んで、机の上に立ち上がったおばさんが集計していく。まさに戦場。
そこからの室長の兄ちゃんはそことやりとりしてこのペースだと今日はこのくらいかな、と数字を出して工場に電話で連絡する。
アナログ*1というかアナクロというか。職人技。すごい。たぶんすごく洗練されている。
仮に発注数を予測する計算式がつくられていたとしてもテレビなんかに出さないだろうけれど、そんなのなさそうなくらい勘をつかってる感じ。
テレビに映っていた伝票はすべて紙だったし、2010年代になって、1日の売上が2500万円くらいありそうな規模の会社でこのローテクさは衝撃を受けた。自分の世界が狭いのはあるけれどその100分の1の規模の企業でもExcelで管理してるのに。
ただ、時代遅れの企業だし電子化すべき。という話ではない。
こういう洗練されたローテクで日々の業務を回しているところは、IT化でコストを削減できるかちょっと自信が持てない。まず要件を聞き出すのに死ぬし、導入でも死ぬ気がする。BIとかデータマイニング、ビッグデータのお高いパッケージを使うよりはいいのかもしれない。
ただ、この職人室長の計算と、入念に調整されたデータマイニングの予測値の差は気になる・・・。
(だれか学生さんが共同研究を持ちかけて調べないかな)
玉子屋について
テレビではアナログ企業であるかのように紹介されていた玉子屋が、野村総研主催の未来創発フォーラム2006にて講演していたみたい。
支払方法や料金の回収は、お客さんに任せており不都合はないと言うが、何故か、電話注文からインターネット注文に切り替えると客数が減るのだと言う。
未来創発フォーラム2006・・・玉子屋の革新経営 - 熟年の文化徒然雑記帳
電話受付は100人いるが、営業は配達人がやってくれるので営業の人間は一人もいない。
弁当容器は総て回収して洗って再利用する。
もひとつ、こんなのも見つけた。かなりおもしろい会社かもしれない。
- 仕出し弁当業「玉子屋」
- 社是「事業に失敗するコツ」
事業に失敗するコツ*仕出し弁当業「玉子屋」
- 旧来の方法が一番よいと信じていること
- もちはもち屋だとうぬぼれていること
- ひまがないといって本を読まぬこと
- どうにかなると考えていること
- 稼ぐに追いつく貧乏なしとむやみやたらと骨を折ること
- 良いものはだまっていても売れると安心していること
- 高い給料は出せないといって人を安く使うこと
- 支払いは延ばすほうが得だとなるべく支払わぬ工夫をすること
- 機械は高いといって人を使うこと
- お客はわがまますぎると考えること
- 商売人は人情は禁物だと考えること
- そんなことはできないと改善せぬこと
本当に同じ玉子屋だろうか・・・
*1:誤用