ぜぜ日記

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カンニング一考。京大入試カンニング事件を受けて。

京大でのYahoo!知恵袋を使ったカンニング事件が起きた。
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20110227k0000m040075000c.html
自分のところでの事件ということと、Yahoo!知恵袋などのQ&Aサイトをちょうど調べているときだったのでけっこう印象的であった。というわけでカンニングについて考えてみたことをいろいろ書いてみる。どこが悪いかではなくてカンニングを防ぐには、程度の思考実験。

論点は

  1. カンニング(cheating)を防ぐためにどうすればいいの?
  2. 大学に入学する人を選ぶ上での適切なテストとは?

それと今回の事件についてのメモを少し書いてみた。

1.カンニング(cheating)を防ぐためにどうすればいいの?
たぶんどの高校の英語でも先生が自慢げに教えてくれるように日本語ではカンニング(cunning)という言葉を使うけど英語的にはcheatingが日本語のカンニングを表わしている。とりあえずカンニングは日本語として定着してるのでこの文章ではカンニングを使っていく。

ハインリッヒの法則*1に従うならば、おそらく、カンニングはすでに横行している。センターや他大の試験においてさえ。今回はたまたま発覚したけれど、発覚していないものもたくさんあるはず、特に携帯などで特定の個人と連絡をとっていれば発覚はしないだろう。韓国の集団カンニング事件も人ごとではない。

カンニングを防ぐにはどうしたらいいだろうか。
そもそもなぜカンニングが発生する原因を考えてみる。どうしてカンニングをしたいのかと、悪いことだとわかりつつもなぜやってしまうのかに分けて考えてみる。

カンニングをする人のインセンティブとしては、試験をパスすることだろう。入りたい大学、欲しい単位などいろいろある。たぶんこのメリットが個人のモラルやカンニング発覚に対する危険性(の認識)を越えるとカンニングしてしまう。

カンニングの原因
A.カンニングがばれない
試験監督の数が少ないことによりカンニングをすることが容易になっている。
B.カンニング用の機材の発達
携帯端末の性能向上により隠れてカンニングをすることが容易になっている。
C.罰則が十分でない
見つかってもその大学を落とすだけで終わるのならばついやってしまう。
D.カンニングができる問題である
小論文などと違い、解答が同じものになる。たとえ記述式であったとしても。

それぞれを解決しようとするなら次のような感じだろうか。

A.カンニングを見つけられない
監督体制を強化する。例)学生バイトを動員
問題:学生の信頼性確保やバイト確保でコストが拡大する。受験料が制限される国立大学ではしんどい。
私立大学ならかなり確保できているらしい。
B.カンニング用の機材の発達
携帯を回収する・妨害電波など
問題:回収は携帯の保管方法などの問題や2台目以降を把握できないということから現実的でない。
携帯ジャミングシステムというものもある。ポータブルで1万円台というのは実用に耐えるかも。試験中だけ使い、緊急時にはOFFにもできる。
問題として、現状では研究室の隣の講義室で試験をしたりしているので危険性がありうること。
共通教育棟などフルに使えれば可能性はある。入試だけならなんとか我慢してもらえるか。
C.罰則が十分でない
カンニングが発覚した者の情報を他大学と共有し入学を許可しないようにする。
問題:個人情報保護の観点からどうなのか。刑罰は難しいので大学間の連携による自発的なルールで。
D.カンニングができる問題である
小論文や面接などカンニング不可能な問題にする。
問題:採点コストの増加。米国でもトップスクールでのみやっている、らしい。

いずれも金銭的・事務的なコストがかかるうえに金銭的なメリットがないためどう実行するかは難しいけれど、こんなものだろうか。
無難にはカンニング発覚時に個人・高校に懲罰を与えると周知することかな。

普段の単位取得テストのカンニングなら携帯を使わないアナログなカンニングが横行しているのでA.,C.あたりが効果的だろう。

2.大学に入学する人を選ぶ上での適切なテストとは?

日本の大学入試制度は本当に間違っているのか - My Life After MIT Sloan(My Life After MIT Sloan)
404 Blog Not Found:news - ソーシャル・カンニング? いいね!(404 Blog Not Found)

ここらへんでも書いてあるようにテストの選択は難しい。
まずどんな人材を大学に入れるべきなのかはわからない。国としては将来、仕事をつくれる人間、税金をたくさん納めてくれる人間、科学技術に貢献してくれる人間、文化芸術を創造できる人間に投資したいとは思う。大学もそういった人間、の中でも授業・研究についていける人間をとるべきな気がする。
社会に人材を送り出す上でのシグナリングの機能もある。


今の受験システムは、知識、論理的思考能力や事務作業は必要だけど、中でも知識に偏重し、特にテクニックが必要なため受験勉強にお金をかけられる人に偏っている問題はある。*2

高校生があまり生産的でないこと(古文とか)に時間をかけまくっていることは日本の国力のためには良くないので、カリキュラムの刷新が必要なのだとは思う。

下手をすると次の事件みたいなのが発生する。
懲罰的授業料を苦に、「天才」は自殺を選んだ:日経ビジネスオンライン(日経ビジネスONLINE)

日本の教育システムに関する今の私の考え - 発声練習(発声練習)
この記事はさまざまな論点を示唆していておもしろい。

対症療法だけど簡単に個人にあった教育ができるといいのかな、と思う。
飛び級を認める
・義務教育についていけない生徒への補習
・プログラミングができる人を情報学科に入れることができるように
など

問題意識はあってもデータがなくて主観的だし論点も明確じゃないな・・
大学のカリキュラムについては長くなるのでまたこんど。

3.今回の事件についてメモ

まあうえの2つが主題でこれは蛇足なのだけど、最初カンニングのニュースを聞いたときは、(あまりの稚拙な手口から逆に)自分は京大の入試を試験中にハックできるんだぜという自己顕示かと思った。それならおもしろいけど残念ながら違うみたい。

それと「こういう能力が社会で必要」的な意見が数多くtwitterやブログに流れていることに違和感を感じる。世間ではルールを破ってでも他人を利用して成功するべきという考えがあるのだろうか。高校生が言っているならともかく、いい社会人や年配の方が当然のように書いている。
ルールのもっともらしさとルールを遵守すべきかを混同してるんじゃないだろうか。


それと逮捕する流れだけど、これはどうなんだろ。
(準備はしていたみたいだけど)出来心で、前科がついてしまうのは余りに重すぎる気がする。
警察も動きが俊敏だし。
こっちのほうが大事でしょ。警視庁公安部の国際テロ関連文書流出について - Togetter(マスコミのサイトもアーカイブされてていいまとめさいとがなかったのでtogetterで)

モラルの問題にしても解決しない気がするけれど、どういった考えでやるに至ったかは調べてほしい。罰則は今年どの大学も落ちる、ていどでいいんじゃないかな。

大学内では残念ながらカンニングも横行しているし、中には卒論コピペもあるらしい、http://hamusoku.com/archives/4145098.html。こっちのほうが取り締まるべきだと思うのだけど、それだけ大学のブランドが神格化されているのかな。かといって単位取得を厳しくすると教育の質がさがるとの報告もあるし(そんな論文があった気がするけどみつからなかった・・)、むずかしい。なにかいいアイデアあったら教えて欲しい。


あと事件のニュースをちょっとまとめてみる。
個人名流出もあったけどリンクは貼ってません。ネット恐い。

*1:1:29:180の法則とも。1つの大事件・致命的な事故の裏側には29の中規模な事故、180のヒヤリ・ハットする小事故(通称ヒヤリハット)があるという経験則。ヒヤリハットの段階で対策する重要性を示唆している

*2:そのおかげで受験勉強やテストは得意だけど日常生活は苦手な高機能 障害を持っている人が来やすいという面もある。良くも悪くもだけど研究者の素質がある人も多いので良いことかな