ぜぜ日記

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ありそうでなかった「20世紀の独裁者列伝」

「20世紀の独裁者列伝」を読んだ。

20世紀の独裁者列伝

20世紀の独裁者列伝

著者は桂令夫、瀬戸利春、司史生、中西正紀、福田誠、松代守弘ら戦史系?のライターさんで原案は鳥山仁。

なにかの記事がきっかけで独裁者のことを知りたくなってネットで「独裁者 列伝」と検索したらヒットして見つけた本。 意外と最近の2020年9月に出版されているわりにAmazonでも(当時は)レビューがなくSNSでも書評どころか販促も見当たらなく謎だったけれど購入した。

各地の独裁者67人が2-4ページずつ経歴と功罪が紹介されていています。
まず、独裁者、何人思い浮かびますか?自分もWikipediaサーフィンで夜を明かしたり、いろいろ読んでそれなりに知っているつもりだったけれどヨーロッパ15人のうち7人は知らないしアフリカに至っては22人中名前を知っているのが3-4人くらい。その3-4人もどういう人かはちゃんと知らなかった。

特に印象に残ったのは、ポルトガルで36年も独裁をつづけた経済学者、アントニオ・サラザール。まず、経済学者としてはじまったのも珍しい。そして蔵相として国家財政を立て直した勢いで権力を集中させて独裁するようになり第二次世界大戦を乗り越えてからは古き良き時代にこだわり近代化に遅れるも、晩年、事故で意識を失った間に政権を失ってしまう。しかし、後継者はそれに気付かれぬようかれが死ぬまで偽の新聞を届け続けていたというのも創作。これ、映画「グッバイ、レーニン」の元ネタなのかも。

dai.hateblo.jp

ほか、孤児から独裁者までのぼりつめたトルクメニスタンのサパルムラト・ニヤゾフ。出世とバランス感覚の果ての独裁以降は奇行に走って、自分の好物のメロン記念日をつくったりしている(これは本書で数少ないほっこりエピソードです)。

国ごと、ひとりひとりに物語と歴史があるのだけれどそれぞれが傑物というか精神的質量が大きいとでもいう魅力がある。

そして、読んでいくと、独裁者になるのにもパターンがあることがわかる。 だいたいは元々しいたげられていた側が不満を起こしてクーデターを起こして簒奪する、特に、軍のクーデターが目立つ。 ヒトラーのように、民主主義を利用して独裁に至るのはほかジンバブエムガベや少数、スターリンのように権力者から禅譲を受けてさらに独裁を深めるものも少ない。目立つのはアメリカの暗躍。中南米では共産主義に対抗させるために援助されたりお目こぼしを受けた独裁者がたくさんいる。そして、権力を維持するために圧政に走っていき、クーデターで失脚していく・・・。

著者は6人のライターさん。なかには実話系雑誌のような書きっぷりの人もいるけれどおおむね淡々と書いていて好感。 欲をいえば編集がいけていないのか余白が多いのと、代表的な伝記や参考文献を書いてほしいこと。それぞれの独裁者の思想をもうちょっと知りたいけれどこれは1人2-4ページの紙幅で事実ベースで書くのは難しいだろうから仕方ない。

本書は20世紀の独裁者が対象だけれど、まだまだ世界には独裁者もいて苦しめられている人は多い。 その国の独裁ゆえに安価に産出できた資源などを輸入できているものもあると思うと日本も無縁ではないし、いちど権力を独占する独裁に陥った国は独裁者が退場しても腐敗で中長期的にだめになっているという歴史は先進各国も他人事ではない。とはいえ、21世紀は20世紀よりは前進していることも確認できる。いい本でした。

あなたの推し独裁者は誰ですか?