梅雨ですね。5月ごろよりは涼しくて過ごしやすいですが野菜がちょっと心配。 また7月に入って1週間ほど経ってしまいましたが先月に読んだ本を書いてみます。先月に続いて低調なうえに読んだ本以外にほぼ記事をかけていない。
戦後世界経済史

- 作者: 猪木武徳
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2009/05
- メディア: 新書
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個別の歴史も主要国だけでなく南米でのインフレ、東西ドイツ再統合における問題、アフリカ各国独立と独裁、東欧のそれぞれの社会主義などにも触れられていて、調べていくきっかけになった。
ひとつ興味深かったのは、ユーゴスラビアではチトーによる社会主義からの経済改革によって企業は労働者自主管理制度となった。これは、労働者の無記名の直接選挙で選ばれたものたちが企業運営する制度で、製造・販売・価格設定・賃金を自分たちで決定できるようにするという、かなり自由市場に近い経済。 ただ、労働者たちが自分の取り分をできるだけたくさん奪い合い、企業の資本形成や社会の資本形成をも取り崩し投資自体を阻害してしまったために失敗しているという。
ここのポイントは2つ。ひとつは短期の利益を求めることで長期的な投資ができなかったと読めるけれど、それは株式会社であっても同じ要素はあるため同じ問題が起きるのではないか、ということと、労働者自身による民主主義が非効率をもたらすのではという示唆。
特に後者はけっこうつらくて、理想主義的なコミュニティによる運営はやっぱり理想でしかないのかもしれない。 これらの歴史からわかることは、トップダウンな計画経済の失敗は明らかになっているけれど、資本主義と市場システムにも欠陥があること。 貪欲さが人々を豊かにしてきたのだけれど、これをどう制御するかは市場のデザインが課題と指摘されている。ここらへんはマクミランの名著「市場を創る」を想起するけれど、実際には制度変更すごく難しそう。
また、国家が成長するにあたりパターンがあるという指摘も重要。 まず、農地改革で土地が農民に解放され、自分で耕作し利益を得るというインセンティブから効率化が進む、これによって農業から軽工業へ労働力が移転し、これが輸出産業となって工業化が進み重工業へ投資できる資本が形成されていくという流れ。これは日本、韓国、台湾などに見られるもので、国内の有効需要を広げながら工業化にシフトしている。 ただ、これは、ボーダレスな経済で軽工業がすべて中国に抑えられている現在、最貧国はもうこのステップバイステップのパターンをとれないようにも思える。人材の育成や市場の制度、インフラの整備をしたり資本を投下するだけではなかなか軌道にのれないのだろうか、と思った。
前回のサブプライム住宅ローン危機での世界的恐慌のあと景気がわりと早く立ち上がった(ように見える)ことは、1920年代の世界恐慌における、保護主義に走ってしまったり効果のない対策しか打てなかったのと比べて経済学が進んでいるのかな。。
トヨタ生産方式

- 作者: 大野耐一
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 1978/05
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戦後間もない時期から、米国BIG3の少品種大量生産に対抗するには多品種少量生産しかないと読んで、これに対応する工夫を重ねて実現したのはほんとすごい。 ただ、トヨタであっても、その文化を根付かせるのに20年かかったのは気が遠くなる。一日にしてならず、ということか。これは、自動車が複雑な機械であるということも取引先が多いこともあるけれど、部品の生産から販売の現場まで一気通貫して変えていかなければいけないということでもある。
そして、なぜ一見不合理なカンバンを考え出して、数十年かけなければ成果が出ないものを確信をもって進めていくことができたのか、というのが気になるところではあるのだけれど、あまり書かれていない。
ほか気になった点として、最近ではどの業界でもよく言われる、なぜなぜ分析がだれだれ分析にならないように、と書いているのはみんなに伝えたいところ。 トヨタウェイが人を育てるとは聞くし、これが、人が育つ理由の一つとは聞くけれど、ほかのことも知りたい。
あと、これを読んで、著者が尊敬し傑物と評する豊田佐吉翁や豊田喜一郎よりもヘンリー・フォード一世をすごいと思えた。 この2人は、米国の自動車を目標とした、優れた発明家・企業家であることは疑いないけれど、馬車の時代に自動車を作り上げ、工場労働者を変え国民所得を押し上げたヘンリー・フォードとはビジョンの大きさが違う。 ヘンリー・フォードの話、もっと調べよ。
リーンスタートアップ

- 作者: エリック・リース,伊藤穣一(MITメディアラボ所長),井口耕二
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2012/04/12
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価値を持つ最小の製品/サービスをつくって仮説を検証する。 そのためにでバッチを小さく、A/Bテストやスプリットテストでお客様の反応を計測する。というのが概要。
ネット上にいろいろと概要が転がっているので探してみるといいと思う。 本文「リーンスタートアップ」を検索(人気順) - はてなブックマーク
仮説→構築→検証→ときとしてピボット、というサイクルをまわしていくことで素早く価値あるものをつくれるとのことだけれど、さいしょの仮説だけはやっぱり人次第。 ただ、アイデアを思いつくだけの人は無数にいるのでそれをきちんとつくってまわせるかどうかが分かれ目なのかも。
実感としては、初期の、アーリーアダプターを獲得したときの成長エンジンと、マジョリティに訴えかけるときの成長エンジンのかけかえが難しいし苦しんているところ多そうだなー、と思う。 なまじお客様や文化人とかから評価されていて、そこをかけかえられず、ずるずると行ってしまっているベンチャー多いような。
教養としての宗教入門

教養としての宗教入門 - 基礎から学べる信仰と文化 (中公新書)
- 作者: 中村圭志
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
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モーセの出エジプトの構造についての話はおもしろかった。これは、栄えているエジプトの地で外国人労働者として搾取されていたユダヤ人(ヘブライ人)が、苦難の道とはいえ搾取構造から抜け出して新天地にて新しい共同体をつくる話であり、正義の神が民に戒律を与えた話とのこと。出エジプトと違い民族は同じではあるけれど、現代日本でもニートやブラック企業労働者が抜け出すことはあるのか・・と妄想してみたけれど、これこそ村上龍の、希望の国のエクソダスそのものか。
発達した資本主義と科学の間で既存宗教はどこに向かっていくんだろうか。
映画
マルコムX
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- 出版社/メーカー: パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン
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一言でいえば純真なカリスマの遍歴。その半生はWikipediaを見てもらうとして、強烈で純粋さのある個性には神話的な魅力的があるし、当時のアメリカの人種差別の状況は凄惨。幼いころに白人にあこがれつつも、KKKに父親を惨殺され、ハーレムでチンピラとなっていて窃盗で逮捕。白人優位社会に疑問を抱き、戦闘的なブラック・ムスリム運動に改修、辞書を写し本を読み学習を重ね、戦闘的な黒人解放運動の弁士として頭角を現す。そして・・・
まったく印象違う作品だけれど、北斗の拳の次回予告、「凄まじい男の執念が天地を揺るがす。強き男は、死しても愛を語らず!」(CV千葉茂)を連想してしまった。
もうひとつ、(半)非合法組織についての示唆もあった。日本の過激派と同じように内ゲバに走るのも、先鋭化した強力な組織の必然なのかもしれない。
「コーヒーとミルクはよく混ざる(意味深)」
そういえば、昨年にふとした興味ではてな人力検索してみた回答にもあったな。 若い持期に大病していたり入獄・服役していたにもかかわらず大成… - 人力検索はてな
今後
2015年も半分経過。 先日、干支が一回り上の12歳年上の人としゃべっていて、12年後の2027年はどうなっているかを考えてみた。技術の進歩は生活をどう変えているだろうか。そこにどういう立ち位置でかかわれるだろうか。あるいは少子高齢化がますます進む日本でどう暮らしているだろうか。
外に出て学問しよう。