ぜぜ日記

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「戦術と指揮」から学ぶマネジメントの話

戦術と戦略の違いについては一般の高校生がぶち当たる問題だと思うので、わからない人は辞書で調べておいてください。


どうしても戦略という上位構造はかっこよく見えるし、そういうものを題材にしたコンサルタントや経営者によるビジネス書の類はちまたに溢れていて、よく売れているように見える。

たしかに戦略の失敗は戦術によって取り戻すことはできないほど大事なものなんだけれど、戦略の成功は下部構造たる戦術、ひいては一将校一兵卒によってなっている。それに自分のようなソルジャーサラリーマンの使命は戦術と遂行なので戦略を考えても仕方ないという側面もある。


み★ほ銀行の更改だってコンサルタントやストラテジストによってではなく現場の無数のSEによってなっているのだ(書いてから思ったけれどこれは適切な比喩ではない)。



というのは前置きで本書は元自衛隊陸将補による戦術読本。文庫でさっくり読めます。
副題は「命令の与え方・集団の動かし方」となっている。表紙のセガアドバンスド大戦略が目を引く。



戦術と指揮についての本だけれど、中身は戦術シミュレーションと解説がメイン。

原則の説明から灰って、前半は、特定の地形と状況でどういう戦術をとるべきかを2-4択から選ぶという、麻雀のどの牌を切るかみたいな頭の体操でわりとおもしろい。

中盤は、緊張関係のある某国に国連平和維持軍として派遣された部隊の分隊長(軍曹)として状況をこなしていく形式。これはけっこうきつい。まずはじめに、敵が来ないと思われていた海岸線を担当していたら敵が上陸してきて障害物をのけはじめた。小隊長には報告したが、応戦、発砲の命令が来ない。さあどうする?という問題からはじまるのだ。

選択肢はこんなの。
1. 独断で射撃を開始する
2. 敵が陣地に射撃するまで、射撃を待つ
3. 小隊長から射撃命令がくるまで待つ


解説では交戦規程がどう定まるかなどに触れるのだけれど、ストーリー上、発砲することになる。
そして、敵は地雷原を乗り越えて交戦し、部下1名が戦死する展開に・・・。


ほか、孤立した観測点へ夜間救援にいくためのルート選びや、捕虜の輸送車列のなかでどこに装甲車を配置するか、脱走者を発見した時にどうするか、対戦車地雷が少ない時、どこに設置するか*1など実戦/実践的すぎる。
途中で部下の伍長が闘争したことがさらりと触れられていたり。



後半は4000名の戦闘団の指揮官大佐としてのロールプレイングになる。
ここも多数の部隊をどう配置するか、急な事態にどう対処するかがテーマでなかなか興味深い。
複数の相手の指揮官がどう考えているかを読みながらのかけひきは若干のストーリー仕掛けになっているのもあって緊張する。


特に、敵の急襲など緊急事態の際し、自分の責任範囲以外の仕事を命じられた場合にどうするか。
とくにあとになって許可を得てからでは戦術的に不利な状況に陥り、部下将兵の生命を少しでも多く失うことは指揮官失格としている。動く権限はなくとも、どんな事態にも対応できる選択肢を広げておくことが重要だという。これはビジネスでも同じだよね。


ほか、参謀が戦死したり、本国のジャーナリストがだれが発砲許可もないのに撃ったのか、と探りをいれられたり官僚的な駐在武官からいやみをいわれたりと・・・。本国、いったい何国なんだ・・・。

最後は不完全情報で測れないものばかりの状況での選択は指揮官の人生観にもよる。としている。


ちなみに、これらはノルマンディ上陸作戦に際したドイツ、ナポレオンのワーテルロー会戦、モントゴメリーとアイゼンハワーにはさまれたチュニジアのドイツ戦、第4次中東戦争をまぜあわせてつくられたシチュエーションらしい。



たくさんあるコラムもけっこう読ませる。
いくつか引用・孫引きしてみる。

戦術の基本は「主力をもって敵主力の弱点を撃つ」

明確な対戦相手がいる状況ならではだけれどどこに力をかけるかは考える必要あるよね。

戦史における失敗の原因は、ほとんどすべての場合、ひとことでいえる。それは「遅すぎた」である。

プロジェクトマネジメントでも同じかも・・・。

指揮系統:軍隊では指揮官が1人で決心する。けっして合議しない。参謀には一切の指揮権は無く、指揮官を補佐することが使命。
参謀は一般参謀と事務参謀にわかれる。一般参謀は「監理・行政」、「人事」、「情報」、「作戦」、「兵站」に区分され担当となるが、これらすべての領域に発言権がある。また、特別参謀は専門的分野にわけられ、これらの分野について禅一般参謀に対しての調整権をもっている。こうしてマトリクス型の組織にすることで官僚化の弊害がおこらないようにしている。

理念はわかるけれど、個々の参謀の負担が高く結果として薄くしか把握できないような気もする。発言権、調整権の意味と参謀の割合がわからないとなんとも言えないけれど。実際にはどうなんでしょう。

軍隊の命令は、原則として、「後命は自動的に前命を取り消す」である。前命を取り消さない場合はかならず、前命が生きていることをつけくわえる

これは民間企業でも通用するようになってほしい。

命令をあたえる場合は、任務遂行に見あう「義務」「責任」「権限」をいっしょにあたえなければならないことは当然であるが、同時に任務を遂行するに見あう戦力も、あたえなければならない。さらに、命令者は部下が「もっとも自発的にその任務を達成しようと選択した」ように感じさせることが大切である。

せやな。それがマネージャーの腕の見せ所なのか。

防御任務に防御すべき時間を設定しないことは世界の常識である

これは現場の意識と、敵にすきを与えないために必要なんだと思う。


命令のコツ(要約)

  • 命令をするときには背景を説明せよ。
    • たとえばスターリングラードに包囲されたパウルス元帥の第六軍の救出を命ぜられたマインシュタイン大将は、命令をだすときは、時間の許すかぎり、自分の状況認識を、現状と予測を加えて説明していたそうだ。そして、この予測と異なる情勢になれば、部下の独断を期待すると述べている。こうして服従と独断について発令者と受令者の取引条件を明示するという。
  • 命令に当たって与える時間・空間・戦力を示し、過不足がないかを部下に確認する。そして交渉する。
    • 実施者が見積するべきなのはビジネスでも同じかな

「軍事指揮官は、首相や国防大臣のために、軍事に関して筋を曲げたり、自分の失敗を逃れる権利はない。なぜなら、首相や国防大臣は、戦場から離れている。だから、首相や大臣の規則・計画・命令が戦場の実態とかけ離れているときは、その実行を引き受けるな。規則・計画・命令の変更を執拗に要求せよ。端的に言うならば、将軍が、軍の破壊の道具になるよりは首を切られた方がましである。戦いの指揮官は、勝利に自信の無い命令を受けることは、勝利に自信のない命令を発することと同様、罪悪である(ナポレオン)」

営業は勝手に仕事を受けないでください。

「戦闘において敵情の4分の3は霧の中(クラウゼヴィッツ)」

考えの正しさを検証できないのに部下僚友の命を危険にさらすしでほんと孤独で難しい仕事だと思う。

プロシャ建国功労者のフレドリック・ウィリアム皇太子の逸話
皇太子「なぜお前は作戦に失敗したのか」
少佐「私は皇太子からの直命のとおり作戦しました。間違っておりません。」
皇太子「階級はなんのためにあたえてあるのか?命令違反をするときを判断できる者にあたえられているのだ。規則どおり、命令どおりするだけなら、貴様は将校ではなく兵士でよい。」

コーポレートガバナンスによって意志決定コストが重くなるのってけっこう足かせだよね・・・



わりと抽象的だけれど、第二次大戦時に米軍が開発したというアマチュア将校でも戦術策案を考え出せる思考順序を引用する。たぶん孫引きだけれど、原本はなんなんだろう。

アマチュアをすぐに実戦に送り出すテクニック

  1. 命題
    • 通常、上級部隊指揮官から与えられる任務
    • これを子細に任務分析し、達成する事項の優先順位を決める
  2. 前提
    • 作戦刷る地域を規定する。地域の特性を明らかにして認識し、戦術的に分析する
    • 現在までの敵情を解明し、将来の敵の可能行動を列挙して。採用公算と弱点を見積もる
    • 自分の部隊の状況を掌握し、敵戦力と相対比較して、勝ち目と問題点を明らかに認識する
  3. 分析
    • すべての敵の可能行動と、すべての味方の行動方針を総合的に組み合わせて戦闘シミュレーションを実施し、行動方針の選択のためのカギとなる要因を見出す
  4. 総合
    • 比較のための要因に重要度の順位を定める
    • 行動方針を比較する
    • ついで、時間と空間の要因について考える(英国式。理論的ではないが、経験的に誤りをすくなくするために繰り返す)
  5. 結論
    • 選択の腹構えを定め、最良案を選択し、その問題点と対策をあきらかにする

「戦闘においては、いかなる場合においても”大胆な案”を採用せよ。大胆な案は一か八かの案とは異なる。大胆な案は、最悪の事態における代替案をもち、それに転換できる予備を保有していることである(ロンメル元帥)」

適切な大胆な案を出せるようにしたいものです。受託開発では必要な状況なさそうだけれど。

名将の格言によれば、兵力が不足したときは、主要な部隊を動かさず、各部隊から適切に小部隊を抽出したほうがよい。経験則であり、説明のしようがない。

ひとりずつではなく、小部隊ずつ抜き出すということ。知的産業では難しそう(システム開発は知的産業かつ労働集約)。

鉄則:現場指揮官がもっとも現場を知っている

部長は黙ってろってことです。

毛沢東「特殊性の原則は一般性の原則に優先する」

はい。毛主席はあたりまえのことをかっこよく言うこと多い気がする。



なんだか一部でグチが交じったかもしれないけれど気のせい。


基本は軍事関係なんだけれど、これを読んでおくと大河ドラマでも架空戦史でも三国志とかもマンガでも戦記物でももっと楽しめるようになるかもしれない。


補足

戦争の話をいろいろしてみたけれど自分は戦争反対。平和が一番です。
だけれど、これは歌を歌えば解決する者でも軍隊をもたなければすむものではないと思う。抑止も宥和も不完全ということは世界史をならった高校生ならみんな知っていること。
本当に戦争をなくすためには人類を滅ぼすかマトリクスのように完全管理された家畜化するしかないと思っている。

なので、この社会では狂信的な武装集団から自国の被害を減らすためには訓練して備える人たちが一定数必要だし、ある程度の尊敬されないといけないとは思う(クーデターをおこされないためにという意味もある)。
そして適切に運用できるようにシビリアンコントロールと有事に適切に対応できる法整備は必要。曖昧な指示と雰囲気とで現場の指揮官に全責任をおっかぶせるのは最悪だ。

「戦死」もしくは「戦場での殺人」、「原発事故」、「倒産」、「デフォルト」をありえないもの、考えるだけで不謹慎なものとして議論を避けるのはなんだかなあと思うのです。


以上。FFTやりたくなってきた。

*1:国際条約では組織的地雷原はすべて記録し、その記録を保管する義務がある

株屋で成功するコツをウルフオブウォールストリートで学んだ

株屋で成功するコツがある?大金持ちになるコツがある?


このごろ、近所に住んでいる友人が映画を借りてきてはうちで観るという文化があってついつい観ているのだけれど、そのなかでも、ウルフ・オブ・ウォールストリートがクソ最高だったので紹介してみる。


悪徳証券会社を立ちあげて大成功した実在の男を天才ディカプリオが演じたクソ映画。3時間とタイタニックと同じくらいクソ長いんだけれどおもしろすぎるので苦にならない。


なにも経験の無い新人時代から、外務員資格をとって初日に会社が倒産、クズ株を売る小さなクソ会社へ転職という苦難を経てから会社をつくる。そしてヤクの売人やらチンピラやらを集めて営業トークの技を鍛えて急拡大。豪遊してクスリをキめまくってあばれまくるしインサイダー取引はするしイケナイことをしまくるクソ絶好調時代を経ての、FBIの捜査・離婚からの没落、そして再起という英雄の旅を思わせる神話的な構造。

Wikipediaによるとf**kを500回以上使っているらしい。実際に使いまくっていた。褒めるのにも貶すのにもf**k。クソという形容詞を多用しているのはそのクソ影響です。


特に印象に残った場面は一番初め、新人として証券会社にはいったディカプリオが入社初日に冷静に狂っている上司と高層ビルの高級そうなランチをともにする場面。


まず、その会って初日の上司が公衆の面前、ディカプリオの前で鼻歌を歌いながら匙でコカインをすくって鼻で吸うところからはじまる。

昼間からアブソリュートマティーニをストレートで2つと注文、きっちり7分半後おかわりをもう2杯を、と。さらに5分毎に2杯ずつどちらかが潰れるまでとオーダー。ディカプリオがことわると、初日だから勘弁するかということになるけれどいきなり度肝を抜く。


ディカプリオ「(小声で)昼間からクスリをやって仕事になるんですか?」
上司「他に何をする?コカインと娼婦は友だちだ」
ディカプリオ「・・・この会社で仕事が出来てワクワクしています。顧客もすごく-」
上司「客なんていい。君は家族のために稼げばいい。彼女は?」
ディカプリオ「結婚してます。嫁は美容室で働いています」
上司「なら余計にだ。客に財布から金を出させ、自分の財布に入れる」
ディカプリオ「でも、もし客が儲かればみんな喜ぶ。でしょ?」
上司「違う。株屋の第一のルール。たとえ、君がバフェットでも、株が上がるか下がるかグルグル回るか分からない。我々にもだ。”バッタもん”だ。分かるか?」
ディカプリオ「”バッタ”、まがい物」
上司「そう、まがい物、バッタもん、パチもん。幻だ。存在しない。物質じゃない。元素票にも載らない。まったくの幻だ。だろ?いいか、我々はクソもなにもつくらない。1株8ドルで買った客がいる。それが16ドルになる。客は喜んでー金に換えて家に持ち帰りたい。それはさせるな。現実になる。どうする?もっと名案がある。素晴らしい案だ。ほかの株を買わせる。儲けにプラスアルファで再投資。それを繰り返す。中毒状態だ。それを何度も何度も繰り返す。そうして彼は金持ちになったと思う。書類の上では。だが我々には、現金が手に入る。手数料としてだ」
ディカプリオ「素晴らしい。ワクワクします」
上司「当然だ。株屋で成功するコツは2つある。1つ目は常にリラックスする。・・・マス掻くか?」
ディカプリオ「マスを掻くか?ええ、します」
上司「週に何回?」
ディカプリオ「たぶん3〜4回、5回かも・・」
上司「増やせ。それは新米の回数だ。おれは1日最低2回はマスをかく。朝、運動の後とランチの後だ」
ディカプリオ「ほんと?」
上司「いいか。やりたいからじゃない。必要だからやる。おれたちは1日中数字と戦っている。小数点がチカチカ。・・数字、数字、脳ミソが酸で侵される。だろ?頭がおかしくなる。マスって血の巡りをよくする。下半身のリズムを保つ」
ディカプリオ「すごい」
上司「ウソじゃない。絶対だ。やらなきゃバランスを崩す。役立たずになって倒れる。へたをすれば自殺することに」
ディカプリオ「それはお断りです・・」
上司「当然だ」
ディカプリオ「長く続けたい」
上司「トイレで、いつでもシコれ。慣れてくると金を考えながらできる」
上司「2つめのコツ。この世界での成功には・・・こいつコカイン。頭の切れが良くなるし電話も素早く押せる。分かるか。これがポイントだ。回転だよ」
ディカプリオ「回転ですか」
上司「客を観覧車に乗せ続ける。遊園地は24時間、年中無休。何十年も、何百年もだ。それがすべてだ」
上司、マティーニを一息で飲み干す。
そして胸を叩きながら鼻歌を歌い出す。

はじめ英語字幕で観てみたけれど、スラング多すぎて意味不明だった。この会話の間だけで、F言葉を15回くらい使っている。表情も身振り手振りも最高で狂気に充ち満ちている。



あ、ちなみにドラッグはダメゼッタイ。

カス野郎ばかりなことが痛快すぎるなかで軽蔑と嫉妬でいっぱいになる。本当の証券銀行でリテールやってる方々はどう思うんだろ・・。


こういう狂気の男だらけがなにかやらかすというのは、ナンパ師たちがハリウッドで成功に溺れて狂っていく「ザ・ゲーム」を連想した。他にこういうのあれば読みたい。


ウルフ・オブ・ウォールストリート [Blu-ray]

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ザ・ゲーム 退屈な人生を変える究極のナンパバイブル (フェニックスシリーズ)

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銀座にできた石川県のアンテナショップでひゃくまんさんと遭遇した話

金木犀の花も散り、肌寒さを感じるようになってきた。そろそろ鍋で暖まりたい季節だ。

先週末、うちで鍋開きをしたのだけれど、そのときどうしても足りないものがあった。味噌である。


それもただの味噌ではなく、石川県を中心に食されている、とり野菜みそだ。
*1


通販でも買えるんだけれど、東京でも石川県アンテナショップなら売っているはず!と思い調べると、これまであった店舗はしばらくまえに閉じていて、10月8日に新しい店舗がオープンするのだということがわかった。

これはいかねばと休みの申請をし(別件ですこし用事もあった)、先週末にはじめたingressをやりながら出かけてみた。


いしかわ百万石物語 江戸本店

百万石物語である。なんだか大江戸温泉物語を連想する名前だ。
場所は銀座と有楽町の間、外堀通り沿いにある一等地。
この通りにはほか、北から茨城、高知、沖縄と個性的な県のアンテナショップが並んでいて、それぞれ独特の雰囲気があっておもしろい。

ここらへんは以前少し書いた。




さっそく行ってみると、広めの歩道上には人があふれかえっている。バズーカみたいなテレビカメラも何台か見えるしたいへん賑わっている。車道脇に臨時通路をつくっていて、スタッフさんや警備員さんがそちらへ誘導しているようだ。



そして遠くからでも異彩を放ちまくってるあいつ。
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人混みのなかでも目が合った気がしてどきっとした。
ミス加賀友禅の美人さんや遠藤関を押しのけている圧倒的存在感・・



つよい(確信)
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座るとなぞの存在感がある。まどマギの魔女にいそう。
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あんた、背中も輝いているぜ。
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まだ100人にはいったようですこし待つだけで入れたし、100人までに配られる記念品ももらえた。ちなみに中身は塩。今週いっぱいやっているらしいのでぜひ寄るとよいと思う。

綺麗な店内には、地場ブランドの野菜や魚介類からレトルトのゴーゴーカレーまでおかれている。
太いキュウリがけっこう気になる。レジもフル稼働だった。
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2階には雑貨や漆器、移住相談のブースまで用意されているようだ。
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地階ではお菓子や地酒など、カウンタータイプのイートインスペースもあった。きれいでシックでなかなかよい。
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買い物をすませて店内を見学していると北國新聞の方からインタビューを受けた。
何買いに来たんですか、と聞かれたのでとり野菜みそ買いにきましたと答えると、え、ほかで売ってないんですか、と言われてしまった。かるちゃーしょっく。ほか3,4点くらい答えた気がする。
フルネームも聞かれたし載るかもしれない。載ってたら誰か教えてください。


帰り際、あいつがちょうど黒スーツの男たちとともにトラックに乗り込んでいくところを目撃した。目が合ったとたんに手を振られてひやりときた。
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終わった後、すぐ近くの、ただし裏通りの端で人通りは少ないところにある帝都福井のアンテナショップ「食の國 福井館」にいってみる。シンプルな装飾と人の少なさに安心する・・・平日の昼間だし仕方ない・・とも思う。
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せっかくだしおろし蕎麦を食べる。
東京の蕎麦屋でおろし蕎麦と注文して出てくる、おろしの山付きざる蕎麦ではなく、おろしとかつおぶし、ネギのうえにツユがかかった、ぶっかけおろし蕎麦である。歯切れの良さと出汁のきいたさわやかさがとてもよい。
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石川県、なかなかやるじゃねーか。



いしかわ百万石物語・江戸本店
しかしSEOたいへんなようで「石川 アンテナショップ」とかで検索しても古いお店のほうのサイトやニュースばっかりでこのページはなかなか見つからない(2014/10/8現在)。
建物つくるのにお金かけちゃったからむずかしいんだろうね・・・。

*1:ただ、自分はもしかすると地元スーパーのユース、現バローとかで売っているインスパイア商品?的なもののほうが好みかもしれない。こんどメーカーを調べよう

消費したコンテンツ-2014年7月-9月

金木犀の香りが漂ってくると夏が本当に終わってしまったことが実感として沸いてきて毎年毎年悲しくなる。

夏でおでかけしたりおしごとしたりで忙しかったけれど何冊かは読めたのでメモを記録しときます。

ちなみに前期(4-6月)はこんなの読みました。



ノンフィクション

良心をもたない人々

サイコパス・ソシオパスの読みもの。それっぽい事例を紹介しているけれど、だいたい去年読んだ「診断名サイコパス」とかぶっているかな。進化論的な解釈はわりと興味深い。
9月10月に読んだ本:羊の歌、神々の山嶺、解剖医ジョン・ハンターの数奇な人生 - うんこめも

人の心につけこむ天才である彼ら彼女らから学ぶこともあるかもしれない。できる営業マンとか経営層とかみんなサイコパスに見えてきたり、この手の本って著者がサイコパスに見えてきて不思議(被害妄想)。

良心をもたない人たち (草思社文庫)

良心をもたない人たち (草思社文庫)


謎の独立国家 ソマリランド

内戦の続くソマリアの一角に、一地域だけずっと平和を保っている民主国家、ソマリランドがあるらしい。国連にも認められずほとんど情報のないこの国を、現地での取材を重ねて現状や歴史をがたいへんわかりやすく描かれている。

ソマリアはいま、首都モガディシュを中心に筆者の言うリアル北斗の拳状態となっている南部ソマリア(ここの首都、モガディシュは米兵が19名戦死したブラックホークダウンの舞台だ)と、ソマリアの海賊の拠点になっているプントランド、そしてソマリランド、その他細かい勢力に別れている。


このソマリランドでは、選挙による民主的な手続きで政権交代も起きているというアフリカでも珍しいほどの民主主義国家。複数政党による民主主義が成立しているというだけでもすごい。

まず、氏族の力が強いためにこれをコントロールするように国会議員の選挙とは別に10年に一度、政党の選挙があるという。政党を三つまでに制限し、国政に出るためには6つの地域のうち4つ以上で20%以上の支持を集める必要がある。こうして単独氏族だけでは政党を成立しがたくすることで過去に繰り返されてきた氏族の対立を封じ込めたとか。

また、国会には、選挙で選ばれた議会と、各氏族の長老による会議もあり、ここで拒否された法律は通らない
少数政党が乱立して参議院の存在感がなさすぎる日本よりよほど成熟しているかも。


おもしろかったのは北部のソマリランドが平和で南部のソマリアが内戦続きなのは、南部は戦争が下手だかららしい。逆説的にも聞こえるけれど、だからこそ北部では停戦交渉のプロセスが定まっていて、南部では戦争の止め方を知らないという。これは、産業や資源が南に集中して北部が貧乏だからということもあるけれど、北部を植民地にしていたイギリスはもとの氏族の長老たちの権力を利用した間接支配だったのに対し、南部を植民地にしていたイタリアでは権力機構を解体してしまったというのも大きいようだ。
国連や先進国が多額の援助をしたりしても空回っている感があって興味深い。


南部では武装した護衛なしに外を歩くことはできない状態で、海外からの訪問で多額のお金を落とすことになる。つまりトラブルが銭のタネでもある。だと、なかなか平和にしようという動きは生まれない。ゲーム的だ。



金融について。大きな買い物ではドルが使われるけれど、日常ではソマリア・シリングが’使われている。
それも15年以上までの型のお金をイギリスで刷って空輸しているらしいんだけれど、当時と比べて安定しているんだとか。それは内戦時に無政府状態になり中央銀行もなくなってから新しい札を剃らなくなってインフレ率が下がり、安定するようになったんだという。中央銀行の役割、むずかしい・・。



もうひとつ、現地で強勢を誇っていたアル・シャバーブアルカイダなどのイスラムの一派、世間でいう原理主義者はマオイズム毛沢東主義と被っているのではないかというのはかなり鋭い。アルコールはだめ、サッカーもダメ、女性はヴェールで顔を隠さないとダメという厳格な規則は、貧しい地方では別に苦にならなく、氏族の差別がないために歓迎されるのではないかと。そして氏族の差別がないために支持されるという。
また、サウジアラビアなどのイスラム国家が原理主義者を敵と見なし、キリスト教国のエストリアが支援するという政治の不思議もある。敵の敵は味方ということかな。
サウジアラビアなどイスラム国家の独裁者の最大の敵はイスラム原理主義者というのはたいへん興味深い。
あとはイスラム原理主義について、ニュースではわからない現地の感覚も知れた。いまのイスラム国とはまた毛色がだいぶん違いそうだけれど共通点もあるかもしれない。

現地の空気になじんで取材をすすめて行った高野さんほんとすごい。親類からの送金を頼りに現地人とカートという覚醒植物を嗜んでだらだらしている適当さも素敵。

誰も知らないようなことをしているの、ほんとすごいと思うけれど安全に気をつけて欲しい。現地でコミュニケーションツールとして根付いている覚醒植物のカート、あるいはチャット、日本では合法らしいし栽培してみたいな。

謎の独立国家ソマリランド

謎の独立国家ソマリランド



錯覚の科学

時間つぶしにと本屋で表紙買いした割りにはかなりおもしろかった。

簡単にメモ

  • 注意の錯覚
    • 普通はないものは、注意しているつもりでも気付かないことがある
    • 例)潜望鏡で海上を監視していた潜水艦長は、えひめ丸が「見えていた」のに「見落とした」。人間はバスケの試合に乱入したゴリラにさえ気付かない。
  • 記憶の錯覚
    • 記憶は容易に改竄される
    • 「あるべきこと」と「本当にあったこと」を混同する。
  • 自信の錯覚
    • 人は自信をもっている人を有能だと錯覚する
  • 知識の錯覚
    • 専門家さえ肝心のことがわかっていないことがある
    • 見慣れたもの・日常で触れているものを過大に理解していると評価しがち
  • 原因の錯覚
    • 偶然を必然ととらえたがる、相関関係を因果関係と錯覚
    • ワクチン接種で自閉症になる、9.11陰謀説、セックスで若返る、雨が降るとリウマチが痛む
    • 個人の体験を、データよりも重んじがち
  • 可能性の錯覚


これらのことを多くの実例をもとに解説している。
これらの錯覚のいくつかは直感のダークサイドでもある。直感を頼るべき場面もある。たとえば、味覚なんかは直感に頼った方が適切に評価できる。

いくつかの錯覚は、人間が複雑なものを単純化して楽に生きるために役立っているものではある*1のだけれど、人間の不完全さと弱さがよくわかる。
ふつうに生活している分には、これらの錯覚はせいぜい車で人をはねたりするとか仕事でちょっと失敗するくらいだろうけれど、大組織の力や科学技術によって人の力がレバレッジされる場合にはとんでもないことになる気がする。
原子力発電・航空・ITシステム・議会・裁判などなど・・・。


工学的・制度設計的にシステムを制御するためにテストを重ねてフールプルーフに設計してだったり独裁を防ぐようなルールはつくられてはいるけれど、それでも人間が設計し人間が運用せざるを得ない以上、これらの錯覚を克服することはできえないんじゃないだろうか。
物理的にできることは広がったけれど、それに伴って精神レベルが惰弱なままなのなんとかできないのかもな、とか考えると暗黒ディストピアSFっぽくなるのでここらへんまでで。


ただ、錯覚しうることを前提にシステムは設計すべきだし、自分の自由意志があるという考えはおこがましいかもということを肝に銘じておくとすこしは失敗も減るかも。

錯覚の科学 (文春文庫)

錯覚の科学 (文春文庫)


実録 中国共産党

秘密警察 KGB

実録 中国共産党と同じく、本屋で500円で買ったDVD。60年代のアメリカの番組だろうか。
世界一有名な悪役スパイ機関でありエピソードごとにはかなりおもしろいこともたくさんあるんだけれど、中国共産党と違って、時系列でもないし体系だってもないしどういう内容をどういう順序で話すのかの説明もポイントもなくてけっこうわかりにくくて少し寝てしまった。

気になったことのメモ。

まず一番印象的だったのはヘードマッシングという女スパイ。
国防省の高官や国務長官の政治顧問などの要職にいる人間をスパイに勧誘した大物で必要だったら技術者も女も勧誘した。女スパイで優れた勧誘者というからには峰不二子的なアクティブな美人かと思いきや、アメリカのどこにでもいそうな太ったおばさん。こんなひとまでスパイで高級官僚を勧誘していたというのほんとすごい。

話していた勧誘術としてはこんな感じ

  • 信頼関係を気付いてから追い込む。決してソヴィエトのスパイとは言わない。

例外は相手に思想を説く時だけ。

  • 対象を落とすために嫌いなワーグナーも聴き、(おそらく相手の興味分野である)フロイトも読んで勉強したという。
  • 女はハンサムをあてがって身体の関係までもっていければほぼ100%だとか。でも、ファシズムという敵が目標になっていたからこそできたそう。
  • 労働階級を勧誘するのは不可能、でも知識層や中間層を勧誘するのは簡単。永遠の自由、社会主義、農場、新しい医学、新しい世界


ルーズベルトの顧問で国連の設立にも関わったヒス、ソ連駐在のカナダの大使のワトキンスもスパイだったとか。

大使館や国連はスパイの温床だ。
国連職員は米国内を自由に移動できるからスパイとして格好のポジション。あるソ連出身者が幹部の部署には、その人物の意図ではなくKGBのスパイが大量に入ってきたがKGBの上官の命令しか聞かずスパイばかりしていて国連の仕事をまったくしないものが大量にいたという。

ほかにも民主主義と社会正義を標榜したキューバ革命計画経済を導入)でもその後はKGBが介入し完全に掌握。
60年代に起きた黒人の暴動は、自主的なものではあったが武器の使い方や火焔瓶の作り方を教えたのはKGBケベック解放戦線にも関わっている。

あとアカデミーでもスパイ。ソ連にいる米国人科学者のすべては人文系だが、米国にいるソ連人科学者は大勢いるというのもなかなか。

亡命者や捕まったスパイが誰かはスパイであると証言したり告白すると対象はその数日後に心臓発作で亡くなったりとかまじKGBだわ。



ほかにも高級官僚のスパイは米国から蒋介石政権への支援も大統領と議会の決定があったにもかかわらず無視して遅らせたりとかかなり歴史にも影響を残していそう。自由の女神を爆破する計画まであったそうだ(警察のガサ入れで未然に防げた)
60年代末からのカリブ海の左派独裁政権成立あたりの事情はキューバ独立以外ほとんど知らないので調べてみたい。
東西冷戦、やっぱりおもしろいぞ!

さて、日本国内に潜伏しているという北朝鮮工作員はどうしているんだろう・・・。

秘密警察 KGB THE KGB CONNECTIONS CCP-898 [DVD]

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聞き書き にっぽんの漁師

沖縄から北海道までの日本各地のベテラン漁師13人からの聞き取りを書き起こした本。
それぞれ捕る魚も規模も違うけれどみなプロフェッショナルだ。その考え方は何十年もの経験からのみ得られる重みを感じる。

同じ場所でずっと同じものを狙っている人、時代に合わせてターゲットを変えている人、遠洋で捕りまくっている人。

(海の)底の硬い所とか柔らかい所とかありますさかい。海底は実際には見たことがなくてもわかるわ。だいたいヒトデが違うてくる。ヒトデの形でここは柔らかいか硬いか、また中間ぐらいのザレの石か濃いしか。みんなヒトデが違うておるわ。ヒトデを見たら海の底がどうなっとるかわかる。


気になるのは、ほとんどの人が「昔は良かった。今の若いもんはたいへんだよ」と言うこと。魚の値段が下がったり、漁獲が減っているからだそう。魚群探知機や強い繊維など漁具は進化したけれどとれる漁は減っている。
高齢化も進むし遠洋だと外国人船員に頼らざるをえない。鰻の漁獲高が減っていることはニュースで知ることが出来るけれど、ほかの漁業全般もあんまり継続的じゃないのかも。

陸(おか)で勤めた場合は何十年か勤めな一人前の給料は出んがいね。漁師の場合は、一年経てばもう一人前や。みな漁師になったのは、それが魅力でなかったんやないかな。今は違うわ。みなサラリーマンや。自分のところも三人息子があるが誰も後継者はおらん。高校生の勉強の嫌いな孫がやる言うてるが、やれんわ。遅い。高校出てからでは遅い言うんじゃなくて、俺が教えるには年がいき過ぎた。もうみんなそんな人ばっかりや。


恵みの海をみなで漁するというのは共有地の悲劇感もあってむずかしい。ホタテとかだと地区を決めて稚貝を育てて4年ごとに採るという方法をとっている農家のようなところもあるけれど、回遊魚ではそうもいかない。国内で厳格に漁獲量を定めていても他国もとるし、密漁をするインセンティブも強い。そしてみんな苦しむ。

また、多くのところで出てくるのが漁業権の話。港をつくるであったり資源保護するためにそれまで漁業を営んで来たひとに家がたつほどの補償金を国から払って漁師が減る。そしてそれにより港の好立地でもある魚の産卵場である藻場が減って漁業資源に影響をもたらしている様子。漁業資源、どう管理していけばいいんだろう。


もちろん、そんな後ろ向きな話じゃなくて熱い話もある。


オホーツクでサケ定置網やっている人がソビエトの監視船の目をくぐって密漁して大漁をあげた話や、紀州の伝説的マグロ漁師。これについてすこし書いてみる。

紀州の漁師は漁法や漁具を改良して日本の隅々まで魚を追い、そしてその漁法を各地に伝えた。三陸の漁師も房総の漁師もその漁法に驚き、教わったそうである。

この本で紹介されているマグロ延縄漁の寺本正勝さんは19トンの船で年間1億円くらい揚げていた名漁師なんだけれど東シナ海魚釣島、喜屋武岬、沖ノ鳥島、硫黄島、小笠原など日本中の海に縄を下ろしているし漁具に工夫も重ねている。で、いろんなところに行くと現地の漁師とトラブルになったりするけれど、逆に、なんでこんな金みたいな魚がこんな値段しかせんのよと怒って、魚の扱いやら何やら教えて魚の買い取り価格が上がって喜んでもらったという話もある。

名漁師と呼ばれるひとの多くは、勘と経験だけでなく、進取の気性と工学的な考え方も持ち合わせていてすごくかっこいい。

農家編とか畜産、猟師、林業家などの類書があれば読みたいな。そういえば漁師や猟師は「師」だけれど、それにそうとうする農業者を指す言葉ってなさそう。

聞き書き にっぽんの漁師 (ちくま文庫)

聞き書き にっぽんの漁師 (ちくま文庫)


パーソナリティ障害がわかる本

パーソナリティ障害とはなにか。米国精神医学会の発効する「精神疾患の診断・統計マニュアル第4版(略称 DSM-IV)」によれば「著しく偏った泣いてきた意見や行動の持続的様式」ということで著者は「偏った考え方や行動パターンのため、家庭生活や社会生活、職業生活に支障をきたした状態」と説明している。
ひとくちにパーソナリティ障害といっても、10種類に分類され、有名なところで境界性パーソナリティ障害(俗に言うボーダー)から回避性パーソナリティ障害、妄想性パーソナリティ障害がありそれぞれ大きく異なっているようである。

「偏っている」という表現は、「偏っていない」・「正常」なものの存在を前提にしているようであまり好ましくないと思うけれどある枠組みでとらえることで認識でき、対処することで本人にとっても周囲の人間にとってもよい結果となるというのは素晴らしいことだと思うし医学の成果としては直接に病を取り除く外科手術の技術や難病を癒やす薬に優らぬとも劣らぬものだろう。

この本ではそのパーソナリティ障害の紹介に留まらず、パーソナリティ障害をそれを個性として活かす、つまりパーソナリティ・スタイルに昇華するための方法であったり周囲の人間がどう対応すべきかという点まで盛り込まれていて参考になる。

また、興味深い指摘をメモしておく。
こういったパーソナリティ障害は遺伝か環境かという議論はあるが、二元論ではない。自閉症スペクトラムなどで遺伝的にすこし育てにくい子だと、親や先生からも否定的な反応をとられることが多いなど環境にも影響を与えるというもの。また、著者によればほとんどのパーソナリティ障害では親の影響があるということである。核家族化・少子化が進み子にとって親の存在感が相対的に大きくなっている現代ではある種の先進国病として増えつつあるのかもしれない。

先に挙げたマッカーサーはこの本の分類でいう自己愛性パーソナリティ障害に強くあてはまっていると思う。彼の英雄気質もこういったものからもたらされているとすればある種の天才には逆に必要な要件なのかもしれない。


家庭の科学

書きました。

日本の経済

新書。明治から高度経済成長、オイルショック・バブル・平成不況と歴史を概観し、国際関係・産業・企業経営・雇用と職場・財政と社会保障・日本の金融と各論を簡潔に整理している。
わりと知っているつもりであったけれど高度成長のあとに成熟した社会へのシステムの切り換えに失敗したということを整理されて勉強になる。

これまではフリードマン的に自由化がいいんじゃないかな、規制撤廃して市場に任せたらえんちゃうかなと無垢にも思っていたんだけれど、保護にはそのメリットもある。産業を育成できる。日本の自動車産業も5,60年代に保護していなかったらつぶれていたかもというのはある。いま、アメリカなどすでに成熟した産業をもっている先進国中心に発展途上黒に門戸開放を迫っているけれど、ご都合よすぎなのかも。ソマリランドにしてもほかの最貧国でも資源やプランテーション以外はなかなか産業が育たないよね・・・。


これからどうしたらいいんだろう。本書から考えると、経済成長は見込めず、共同体が不可逆に縮小しているなかでは個々の経済主体に多くを任せることが難しいので小さな政府ですませることはもはや不可能。無理にすれば大幅な格差のもとで社会矛盾が噴出する。そのため、あるていどの負担は覚悟する必要があるという。しかし政府任せのどんぶり勘定ではこれも不満が噴出するため正当性・納得性が確保されるようにする必要がある。具体的には、能力に応じた負担、必要に応じた受益を基本とし、権限・根拠を明確にしたルールを透明に運用する。これは企業などの組織でも同じで、コンプライアンスを厳しく追及し、不当な身分的差別の解消に努め、不払い労働に頼らない経済水準の維持を目指す、というものだろうか。それでも難しすぎる。
問題が複雑で錯綜しすぎていて無力感高まってる・・・

日本の経済―歴史・現状・論点 (中公新書)

日本の経済―歴史・現状・論点 (中公新書)


マッカーサー大戦回顧録

長らく絶版だった朝日新聞版からフィリピン戦から日本占領政策までを抜粋して一冊にまとめている。

やっぱりマッカーサーはすごい。自伝の行間から窺えることは英雄的とも言えるカリスマ性と、自身を英雄に見せようとするその強烈な自己顕示欲。主観的な自伝で客観的な歴史ではなく資料でしかないけれど、物語としておもしろい。ちなみにマッカーサーの思い違いや、過大に記述しているところを解説で指摘しているので安心して読めます。


読んでいると、大統領選に出馬しようとするなどの誇大な自己顕示欲、マニラホテルのスイートルームを占有する特権意識、他者を利用すること、共感の欠如、キング提督など批判者への過度な反撃、厚木空港への降り立ちや戦艦ミズーリでの降伏式、どう見られるかを強く意識した演技性の行動などなど自己愛性パーソナリティ障害を思わせるようなところが多い。もっとも、その希代の才能と戦場や組織での経験からそれは障害というよりはスタイルに昇華している感じはあるかな。というよりもこういった、命も関わるし国家内外の利害が絡む複雑な近代戦で支持や信頼を集めスムーズに行動するにはこういう性格は必須なのかも知れない。


太平洋戦争であまり知らなかったフィリピン戦(米軍を先制攻撃した1941年のM作戦時と1944年末からのレイテ戦)についても知れたし米軍が戦いながら英国やロシアとどう連携し、牽制していたか、またマッカーサーが自国政府や各国とのあいだで巧みな外交をしていたことが興味深い。こういう人物は平時には育ちえないなあという気もする。


彼がいなければ日本はどうなっていたか。北海道はいまもソ連領かもしれないし分割統治も本気であり得るし今よりも精神的封建制が強く残っていただろうことはわかる。


チャーチルルーズベルト、またオーストラリア首相のカーティスやフィリピンのケソン大統領、ほか軍のトップやはては日本軍の将官の、マッカーサーを褒め称える手紙をたくさん紹介していて古風なレトリックがなかなかおもしろいし自分もこういう手紙を書いてみたい。


それも含めて何カ所か気に入ったフレーズを抜粋してみる。

彼は攻撃に際しては敏速で確実であり、防衛に当ってはねばり強くたじろかず、勝利を得た時は謙譲で慎み深かった。敗北した場合にどうかは私は知らない。なぜならクルーガーは一度も破れたことがないからだ。

こういう褒め言葉のオンパレードである。批判も多いけど。こういった褒めフレーズ辞典になるかもしれない。

私はいつも、戦闘に先立って細かい計画を立てることは危険だと考えている。なぜなら、敵の反応ないしは敵のイニシアチブといった不安定的な要素で予期しない状況が出てきた場合、指揮官の判断を狂わせるおそれがあるからだ・従って私は、作戦に当たっては、それをいつはじめるかということ以外に日程を立てたことはない。こんどの作戦では、進展が非常に早くて、はじめの希望や期待をはるかに越える戦果があがった。野戦の指揮官にとっては、上級の司令官からあまり細かい”くちばし”を入れられたり、あまりきびしい”時間表”を強いられたりすることほど、危険なものはない。
どのような部隊にも、それぞれに特有の長所や弱点からくる自然の制約があって、それが部隊の作戦行動に影響することになる。それがどう影響するかを知っているのは、その部隊の指揮官だけであり、時にはその指揮官でさえわからず、推測を働かせねばならない場合がある。従って作戦の現場に居合わせない者が、あれこれと強制的な判断を加えることは、ものごとをぶち壊しにしてしまうおそれが多分にある。

日本の大企業ではよくあるよね。ということだけでなく、まま当たり前のことではあるけれどこれだけ堂々と言語化できるということに驚く記述も多い。

日本はいまや、国民を全体主義的な軍部の支配から解きはなち、政府を内部から自由化するという実権の一大研究所となったのである。日本での実験は、日本の戦争再開能力をぶちこわし、戦争犯罪者を処罰するという連合軍主要目標よりはるかに先に進んだものでなければならないことが、私にははっきりしていた。
同時に、近代において被征服国の軍事占領が成功したためしはないということも、私にはよくわかっていた。(中略)
その弱点とは、民間人の支配が軍にとってかわられるだけであること、非占領地の住民がいや応なく自尊心と自信を喪失してしまうこと、自由社会のもつ地方的な代表制とは逆に中央集権化された独裁的で専横な権力がどんどんのさばりはじめること、外国兵の銃剣に支配された国民の精神的、道義的風潮は、次第に低下するものであること、権力という病気が次第に占領軍部隊にしみ込み、占領することはある種の人種的優越を示すものであるかのような有害な錯覚が兵士たちの間に生れるにつれ、占領軍自体も次第に堕落してしまうことなどだった。

イラクやアフガンで統治にあたっていた現地のトップはどう考えてどう行動したのか、記録を読んでみたいな。


そういえばむかし、「女子学生会長 マッカーサー大戦回想記に目覚める!」というラノベみたいな某書の二番煎じを読んだなあ。高専×ロボコン×マッカーサーというどうしてこうなった感があって二番煎じにしてはおもしろかった。
ただ、本家は苦手です為念・・・。



エッセイ

茶の間の正義

硬派な保守のコラムニスト、山本夏彦氏によるエッセイ。
1967年に初版なので随分と昔の本だ。保守観念も今読むと時代がかかっているようにすら感じる。けれど世間一般の通念や識者・マスコミの言葉に一味違う視点から鋭く、しかし考えてみるとまっとうな風刺を投げかけている。現代でいうと誰だろう?小田嶋氏とかだろうか。

電車のなかで読んであまりメモはとっていなかったのだけれど2つ気にいったことを紹介してみる。


売血や売春を批判する流れで、職業には貴賎があると断言している。職業に貴賎はないと教え込まれた自分はオヤと思ったけれど読んでいくと、職業に貴賎はないと言う人は多いが、誰しも子供を一流校へいれたがり、やがては一流企業にいれようとする。してみれば貴賤はあるとは白状しているも同然ではないかと続く。そして腹と口が違うことに皮肉をかける。

また、核家族礼賛を排す。という話を紹介する。核家族では過去の知恵や技量が受け継がれにくいとしている当時、世間にどう受け止められていたかはわからないけれどいまはよくある話。
そのなかで下記のように書いている。

私は年寄のいない家庭は家庭ではないと思っているーと言えば年寄りは喜ぶ。核夫婦はいやな顔をするだろうが、早合点である。何度も言うが、核家族という造語は新しいが、実物は早く存在していた。今のインテリ老人の多くは、その先駆である。あれは本物の年寄りではない。にせの年寄である。彼らは若夫婦と縁を切る前に、または切られる前に、ご先祖と縁を切っている。肉声で昔話一つ話してやれなかったのは彼らである。


ほか、昔話を改竄するな、犬のふり見て我がふり直せ、ラーメンと牛乳で国滅びるなど興味深いタイトルのエッセイがあるので気になる人は読んでみるといいかも

雑誌の連載コラムのようであるのでその初出を載せて欲しいなあという気持ちはある。

茶の間の正義 (中公文庫)

茶の間の正義 (中公文庫)



人望の研究

空気の研究や偽ユダヤ人問題の山本七平氏の本であること、「二人以上の部下を持つ人のために」というサブタイトル、Amazonでの高評価からぽちってみた。
中身を簡単に言うとこんな感じ。

  • 能力と徳の両方が必要だよ(このあとは徳の話だけになる)
  • 四書五経の入門としての近思録に学ぼう
  • 九徳に達するために中庸を目指そう

最近の自分は徳が足りないので訓練しようかな。



全東洋街道

たぶん70年代くらいにトルコから日本まで旅した藤原新也の写真ポエム。よい。
フィルムのしめっぽさ、とてもよい。
インターネット時代でいろいろ変わっちゃったなー、と思ったりする。

上下巻でこれだけいい感じのパターンの表紙の本はあまり知らない

全東洋街道 上 (集英社文庫 153-A)

全東洋街道 上 (集英社文庫 153-A)

全東洋街道 下 (集英社文庫 153B)

全東洋街道 下 (集英社文庫 153B)



技術書

プロが教える農業のすべて

カラーで現場のミクロな話から国家間のマクロな話もあって概要を知るにはよかったかも。
米や野菜の畑作りからはじまって種まき、収穫まで簡単に説明している。あとは補助金とか具体的にどのくらいもらっているもので、もらうためにどう工夫するのか知りたいなー。
ただ、こういうのはある程度の実践がないと机上での学習も非効率だしな・・・

史上最強カラー図解 プロが教える農業のすべてがわかる本―日本農業の基礎知識から世界の農と食まで

史上最強カラー図解 プロが教える農業のすべてがわかる本―日本農業の基礎知識から世界の農と食まで


インフラデザインパターン

整理されていて便利。求められる非機能要求のレベルに応じて比較して選べるというのがよい。ただパターン化しすぎなきらいはあるかも。クラウドデザインパターンAWSなどの具体的なサービスでやっていかないとわからないかな。
あたらしく構築するときに、どういったポイントがあるかメモ的に見てみるとよいかも。インフラむずかしい(小並感)

インフラデザインパターン ~安定稼動に導く127の設計方式 (WEB+DB PRESS plus)

インフラデザインパターン ~安定稼動に導く127の設計方式 (WEB+DB PRESS plus)


パーフェクトJavaScript

これまで、ちょっとしたおもちゃをつくるくらいにしか使っていなかったJavaScriptをようやくちゃんと勉強してみた。
言語仕様から、クライアントサイドでの使い方、web APIの関連、Node.jsを用いたサーバサイドまで触れられていて、自分みたいなコピペプログラマにとって筋の通った理解への大きな助けになったと思う。
ファットクライアントで速度を出すみたいなのがどれくらい効くのか調べていないけれど、どうなんでしょう。

それよりサーバサイドをNodeで書くのが楽すぎてびっくりした。もっとちゃんと書けるように勉強したい。

パーフェクトJavaScript (PERFECT SERIES 4)

パーフェクトJavaScript (PERFECT SERIES 4)



実践Node.js

原題はNode in Actionで日本風の名前になっている。
nodeおもしろいと思って読んでみた。わかりやすいし開発現場を意識していて実践的でインスタントに効果ありそう。
ExpressやそのコアのConnectにかなり紙幅をさいているのだけれど、これが出た前後で新しいバージョンの、がらっと変わったExpressがでてつらい感じ。作者にExpressつくったひとがいるのに訳者には連携されていなかったのかな。
あと訳者と監訳者のコメントどころか紹介もない技術書ってめずらしい。なんか後ろめたいことでもあるのかな。

実践Node.jsプログラミング Programmer's SELECTION

実践Node.jsプログラミング Programmer's SELECTION



マンガ

サルでも描けるまんが教室

表紙のインパクト買い。
なんだこれ、天才過ぎる。

まず表紙をめくってすぐの、マンガができるまでカラーコラムが異常。
インドネシアの木材業者のインタビューからはじまってパルプや紙の加工を学研マンガかってくらい解説してから、険しい顔をした漫画家が真剣にエロ漫画を描いて、これまた真剣な編集者から「もっと食い込みを強調して!」と鋭い指摘を受ける。そして写植屋さんがインタビューを受けながら、ひわいなセリフを打ち込む写真。それが製版され、ふたたび編集部で校了し、厳しい顔をした印刷会社の職人さんのまえをエロ漫画が流れていく様の写真とインタビューがある。そして、それを読む若者。それは読み終わった後、断裁されパルプになり、再生紙へ。そしてトイレットペーパーとしてさらにエロ漫画を読む若者の右手に置かれる。死と再生の雄大な仏教的景観・・・。
ひどすぎる。


はじめは漫画の書き方を項目ごとに4-8ページずつ書いて、ジャンルごとに攻略法がのっていてるんだけれどパロディ・諷刺だらけでいちいちおもしろい。
枠線の項では「陰毛」をつかって枠線をつくってみたり(なに言っているかわからないと思うが本当だ)、ポーズの項では竹熊センセのあられもない姿が描かれていたりいろいろひどいんだけれど、少年漫画で大事なのはメガネくんだと喝破したり、少女漫画と相撲の関連性について洞察していたりとするどい。

後半、彼ら自身が持ち込みして連載がはじまり、苦心と努力?の末に大人気漫画となってアニメ化・グッズ化して絶頂をむかえる。そして人気低迷からどん底まで落ちてホームレスになるところまでを漫画家視点で描いていて、まるで創世と終末を描いた神話のようでもある。


これも上下巻ともに異常な存在感のある表紙だ・・・



アニメイション・特撮

喰霊

同居人が借りてきて予備知識なしに見たら驚きのあまり呆然としてしまった。いいから何もググらずに一話を見ろ。話はそれからだ。アニメでこれだけショックを受けたのは初めてかも・・・。


ジョジョの奇妙な冒険

いま、深夜アニメで3部をやっている。前半が終わったところで、1月からまた後半が始まるらしい。分割4クールでかなりの長編だ。

結末まで知っていて予定調和的ではあるんだけれどついつい見てしまう。いいアレンジはあるとはいえ、話の筋は原作に忠実すぎてテンポが悪いけれど長旅を追体験できてよいのかもしれない。

これの原作をリアルタイムで読んでいた世代はほんとうらやましいな。
アブドゥルさんが亜空間に***されたシーンとか、ディオの能力***だとわかった前後あたりはもう翌週が待ち切れなさすぎるだろうし、どうなるかの予想や議論はほんと盛り上がりそう。


仮面ライダー鎧武

フルーツ×戦国という謎デザインでかつ虚淵玄氏が脚本を書いているということで話題を呼んだ鎧武もとうとうおしまい。そもそもが対象が子供向けで販促番組であり、タイアップも多いし制約だらけでほんと難しいと思うんだけれどよくつくりきったと思う。

賛否両論ではあるけれど続きが気になるというのはおもしろかったということかな。
とりあえずしばらく続いていた、新しい敵怪人に苦しめられる回と、弱点の発見orパワーアップによる敵怪人を倒す回の繰り返しをほとんどないものにしたのは大きな功績だろう。

しかしデザインださすぎではないだろうか。いや、これがいまのちびっ子に受けるとすればこれからの時代は・・・。むしろおれの感性が老化しているということ?


イベント

深川八幡祭り 本祭

3年に一度の本祭りに参加してきた。朝5時集合で夕方17時解散まで御神輿担ぎっぱなし、沿道で水かけられっぱなしでかなりしんどかったのだけれどかなりおもしろい。地域コミュニティにもかなり入れたしなかなかよかった。

1年近く付き合った彼女と別れた

原因は自分の徳が足りなかったとでも言っておこう。


以上。わりと人生の悩みどころ。

*1:人工知能でいうフレーム問題を解決するようなのと近いかな

売切続出!京都でもっとも人気なお土産は意外なあいつ

金曜日の19時半ごろの京都駅の様子です。

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京都駅にも赤福あるのか。ひさびさに食べたいし買って帰ろかな。













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もう売り切れか、人気だなー。京都駅お土産屋たくさんあるし待ち合わせまで時間あるから少し回るか。




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ここも・・・




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あれ・・・



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お、ここはまだ残ってる??


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せやな・・・



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全滅・・・




京都駅でこれほどまでにプッシュされているお菓子がどこでも売り切れているということは、赤福こそが京都(駅)でもっとも人気なお土産であると言っても言い過ぎじゃないと思う。



しかし、なんたる幸運か、翌日に実家に帰ると、同じタイミングで帰ってきた弟が赤福を持ってきてくれていた。普段の感性は全然違うのにここだけあうのは気持ち悪いけれどさすが俺より稼いでるだけある。
ちなみにこの日、4年半ぶりくらいに兄弟全員揃ったんだけれどその話はまたこんど。



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口の中に吸い付く舌触りなめらか餡子が、柔らかくて弾みの良い餅とあわさってほんと最高。熱い日本茶と本当に合う。

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関連情報

赤福がたまたま入荷が少なかっただけかもしれないし、そもそも日持ちしないから在庫を持たないという理由もあるからもっとも人気というのは言い過ぎだけれど、京都での赤福押しと売り切れっぷりがおもしろかったので書いてみた。


京都のいいお土産はちゃんとあります。



東京土産はド定番があんまり好きじゃないのでけっこう難しい。だれか47都道府県のお土産で打線組んでくれないかな。

実録 中国共産党(1967年)を観た

神保町の書泉グランデで一枚500円で売ってたのを衝動買いした。
元々はアメリカの古いドキュメンタリらしい。原題はChina -The Roots of Madness


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観終わってから気付いたけれど蒋介石が80才らしいので1967年の作品らしい。もっと文化大革命の闇とか党の堕落を期待していたんだけれど、義和団事件から国共合作国共内戦あたりの経緯を映像でわかりやすく説明していてたいへんおもしろかった。


日本だと終戦前後で歴史は分断されて捉えがちだけれど、ほかの国では東西冷戦に至るまでまだまだ緊張は続くことがよくわかる。


そして中国を中心にしているからこそ見えてくるものもある。
たとえば満州事変の折、なんで蒋介石は積極的に日本と戦わなかったのか、とか真珠湾攻撃が中国にとってどれだけ吉報であったのか、とかはあまり知らなかった。


やっぱり映像だとイメージ変わる。清朝皇帝の豪勢さと人民の暮らしのギャップもわかるし当時のファッションも文化、産業の発展のレベルも窺える。あと若い頃の蒋介石毛沢東の強い眼差しとカリスマさは異常。


観ながら授業メモっぽく書いたものを公開しておきます。間違っているかもしれないので詳細はちゃんとした教科書読んで下さい。括弧内は自分のコメントです。

解説役で政治ジャーナリスト、歴史家、小説家であるセオドア・ホワイト氏は7年中国に滞在し、毛沢東蒋介石とも話したことがあるそうです。


前置き
  • 50年かけて7億の人民に埋め込まれた憎悪は世界平和にとって最大の脅威だ。それを理解するには経緯を知る必要がある
  • 中国というのは独特の価値観を持っている
    • 孔子の説く美と秩序
    • 序列の最上位にいる天と交信できる天子
列強の進出と清朝滅亡
  • 陶磁器などの中国からの輸出に対する貿易赤字を打ち消すため英国がアヘンを密輸
    • (イギリスはまじで冷酷だなあと世界史読むといつも思う)
  • アヘン戦争の勃発と、眠れる獅子中国の敗戦
  • その後の列強による割譲。西太后など政治トップの腐敗で国民の不満は募る
    • 海軍の予算で遊覧船をつくらせたとか
  • そして義和団事件での白人虐殺が発生。さらなる列強の進出を許す
  • 1911年、孫文らによる辛亥革命で幼い溥儀を残し清朝は事実上滅亡する
中国のリーダー
  • この時代から中国には2つのタイプのリーダーが同時に現れることになる
    • すなわり武力を重んじるタイプ、思想を重んじるタイプ
    • 軍閥代表としての袁世凱と、孫文であり、後に、蒋介石毛沢東に変わる
      • (国民党が思想重視の孫文から、武力重視の蒋介石にシフトしている。どちらの場合も、思想を重視したほうが勝っている)
  • この2つのリーダーがこのあと50年間、西洋との関係を複雑にした。
軍閥による分割統治と西洋人の進出
  • 当時の中国は大部分が軍閥に支配されている
    • (こいつらがけっこうタレント揃いでおもしろい)
    • 好色が語りぐさとなった張宗昌、麻薬中毒の閻錫山、花と庭園に耽った呉佩孚・・・
  • 軍閥同士の争いは茶番
    • 雨の日は戦わず、晴れの日も10時以降に開戦し夕方には停戦するとか
  • 命が軽視され死は見世物。安全なのは外国の植民地か外国人居留地
  • 一方で産業は西洋人に支配され繁栄を謳歌
    • 観光地やレース場にいる中国人は召使いだけ
軍閥帝国主義を打倒するのため孫文らは国民党を結成
  • 三民主義民族主義民権主義民生主義)を打ち出す
  • 米仏英は頼らずロシアに頼る。派遣された顧問のボロディンはレーニン思想を持ち込んだ
  • 1925年に孫文は癌で死亡。翌年、総司令官となった蒋介石は北伐を開始
    • 愛国心を訴え、農民や労働者を味方に付ける。英国租界を襲い国民政府を樹立
  • 一方で国民党左派、共産勢力が勢力を伸ばし、蒋介石を追い出そうとする
    • ここで対立が深まり、共産主義者や軍閥を巻き込んでいくことになる
  • コミンテルンの命により広州でクーデタ
    • 共産党を見分けるのは簡単だ。彼らは首に赤いスカーフを巻いていた。クーデタが失敗して慌てて外したけれど、暑さのために首に赤色が移っていたためにすぐに見つかって殺された」
  • というわけで国民党がほとんどの左派・共産主義勢力を駆逐
    • (ちなみに蒋介石の奥さん宋美齢夫人はまじで洗練された美人で怖い。 106才まで長生きしている・・・)
  • 政治構造そのものが革命で破壊され土台から作る必要があった
    • 蒋介石は軍人だったしやり方を知らなかった。博士号をもつアメリカ人顧問も理想主義者だらけでつくりかたを知らなかったし、共産党と日本の圧迫も有り十分に内政できなかった(ここでGHQクラスの官僚たちがいれば・・・)
    • このあいだ、中国では工業化がおおいに進む
日本の進出と共産党の勢力拡大
  • 1928年張作霖爆殺事件
  • 引き継いだ張学良は国民党か日本を選ぶ中で国民党を選び、焦った日本は満州事変を起こし傀儡国家満州を建国
  • 南での内政・各軍閥との対応に追われる蒋介石もなにもできない
  • そのすきに、1932年に共産党は軍を復活させる
  • 毛沢東たちはソ連の理論を見限り、都市ではなく農村に目と付けた。
    • 毛沢東の発想は単純。富裕層や外国人に対する怒りを表面化させ、報復するようにたきつける。ここからゲリラ戦の発想が生まれる
    • 情勢の緊迫に乗じ、規模を拡大させる
  • 1934年までに蒋介石共産党を囲い込む、しかし共産党は次々に拠点をかえる長征を展開。
国共合作
  • そして36年、共産党は内戦の停止と抗日統一戦線を提案
  • しかし蒋介石は態度を硬化させたまま、東北の軍閥(張学良ら)に共産党を攻めさせようとする
  • 張学良は日本と戦うべきではないかと難色を示す
  • 西安まで張学良の説得に出向いた蒋介石を張学良が誘拐、共産党員たちと説得し反日共同戦線を張ることに
    • (ここは世界史有数の緊迫場面だと思。まえに行った9.18歴史博物館でもこのシーンのオブジェがあった)

  • 1937年。日本は大陸制圧を目指し、戦争を開始。日中戦争である。
毛沢東
  • 毛沢東の戦争観は特殊だった
  • 共産主義は敗れるとアメリカ人は思っている。山を草履で歩く共産主義者を軽蔑している。だが、バレー・フォージュのジョージ・ワシントンも圧倒的劣勢にあった。日本軍や蒋介石と違い、我々には飛行機も戦車もない。だが、すべてを持っていたイギリス軍に勝ったのは、電気すら持たないワシントンだ。」
    • (これを話した瞬間、彼は電気が当時存在していたか疑問に思ったそうだ。)
  • 毛沢東はアジアの戦争を熟知していた。
    • 「ゲリラは人の海を泳ぐ魚だ」
    • 1年で20万人の農民を集める。日本軍は都市に注目したが八路軍は北の辺境を抑えた。
  • そして思想教育を重視
    • 軍事訓練と思想教育は同じくらい重要だ。としていた
  • 報道の自由をどう思うか毛沢東に聞いた。」「報道や言論の自由は認める。国民政府とは違う。誰もが意見を言える。蒋介石のように検閲はしない」本当かと念を押すと彼はもちろんだと言った。あなたが権力を握ったとき、誰もが自由に記事を書けるのか?と聞くと、人民の敵以外はね、と彼は答えた。
  • 毛沢東、戦略家としてかなり天才だ。政治は略)
国民党の対応と(日本にとっての)戦後
  • 国民党は奥地重慶に撤退
  • 日本の爆撃が最も苛烈であった1941年、蒋介石は「日本は皮膚病に過ぎないが、共産党は心臓の病だ」といった。
  • そして日本が真珠湾を攻撃し、中国はアメリカと戦線を張ることになり強力な同名相手を得る
  • 米軍から国民党軍を鍛えるために派遣されたスティルソン将軍はインドで中国兵の訓練を実施
    • ただし無能な上官が多く、変えるように国民政府に要求するがのれんに腕押し。むしろアメリカとの同盟に安心しきっていた
    • 都市育ちの幹部たちは重慶(山水画の舞台みたいなところだった)の田舎暮らしで倦怠感が高まっていたとか
    • (ここらへんは水滸伝に出てきそうな山中の街で魅力的)
  • カイロ会談では蒋介石ルーズベルトたちと会談し戦後の中国の地位を確認
    • その間、共産党毛沢東も戦後のことを考えていた
    • スティルソン将軍は中国兵を日本軍と戦うために鍛えた。内戦には興味ない、とするも蒋介石はこれを戦後まで温存
    • ミズーリ艦上の降伏文書調印には中国も参加。国民政府からであり共産党は不在。ここからが戦いの始まりだった
  • アメリカの大使ハーレーは内戦を回避させるため共産党のもとを訪れる。「終戦だ。平和を」と
    • 毛沢東蒋介石は軍を統一させようとする重慶で会談
    • 1927年の蜂起以来、毛ははじめて国民党と顔を合わせた。
    • 6週間もの交渉ののち、蒋は笑顔で見送った。
    • しかし国民党か共産党は日本軍の手放した各地の武器をどちらが引き継ぐかなどで小競り合いが多発
    • 国民党は米軍の移動手段を用いて各地を素早く占拠、そして満州を狙うが共産党も狙っている
  • 大統領特使のマーシャル(元陸軍参謀総長の元帥だ)が派遣され、周恩来蒋介石の間で1946年に停戦協定に調印
    • (アメリカがいかに中国和平に気を遣っていたかわかる。ただし目的が対共産主義なのかどうかはよくわからない)
  • しかし2ヶ月後には緊張ふたたび
    • 戦場の満州には日本の残した財産がある
第二次国共内戦
  • 蒋介石は1946年に首都を南京に戻し憲法を制定しようとする
    • しかし内戦の戦費のためにインフレが進行。蒋介石の主要な支持層であった中間層を直撃。人民の不満は募る
  • 48年、ついに満州で戦火がおこり、南進。蒋介石は辞任。
    • 共産党は無条件降伏を求め、国民党は拒否。3週間後には共産党軍は長江を渡るが国民党軍に戦意がなく、国民政府は台湾まで撤退
    • ほとんどの西洋人は大慌てで撤退。共産党はいっきに全国を制圧
終わりに
  • なぜ中国は共産党の手に落ちたのか。
    • 戦争や恐怖や絶望が、50年の蛮行が精神をむしばんでいた
    • そこに共産党が土地を分け与えると甘い言葉を触れ回ったから
  • 中国という国について
    • 製紙・印刷技術・火薬・羅針盤を開発した偉大な国はインスリンの合成・原爆実験に成功し近代化している。しかし人民は飢えている
    • 毛沢東は老いてなお憎悪を説き、台湾を攻めるように説く

感想

このビデオはここまでを描いている。ここから文化大革命があって、苦難のときを経て徐々に近代化して経済力を一気に高めていくと思うと感慨深い。義和団事件から共産党の完全勝利まで50年は1年と休まる時間がないし、近代以降にこれだけ長い戦火にあてられていて先進国入りしている国はないんじゃないだろうか。

この50年にわたる戦火が中国人の精神・考え方にどういう影響を与えているのかは気になる。中国共産党は、帝国主義を打倒したことの偉大さを喧伝しまくっているけれど、中国人のうちではどう捉えられているのだろうか。

しかし、この時代の中国の情緒は異常だな。山水画のような奥地、広がる田園風景は残っていつつ、一方では魔都上海あたりの雑然とした妖しさもある。


ここらへんを言葉で伝えるのは難しいので藤原新也が1981年に発表した「全東洋街道」から言葉を借りる。

上海の街を抜けると田園が広がった。
延々と田園風景が続いた。
田園の上に巨大な空が現れた。
光が満ち緑が輝いた。
時折山や川が姿を現し、湖が光った。
土色の集落が過り、竹林が揺れた。
大麻畑が匂い、蓮沼が濡れ葉色に光った。
白い芋の花が地表に浮き、鵞鳥の群が蠢いた。
人がぽつねんと立ち、木立のわきに紫煙が立ち昇った。
浮き雲が流れ、その下に水牛の背が見えた。


鉄錆色にくすんだ上海ばかりを見ていた私はその美観に驚いた。
人も鵞鳥も牛も家も田畑も質実な美しさで底光りしていた。この全東洋の旅で出会ったことのない質感の美景がそこにあった。


まあ、本書ではここからその美景を見るのにためらいがある、目をそらしたいと続くのだけれど。


実録・中国共産党 CCP-916 [DVD]

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毛沢東語録 (平凡社ライブラリー)

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全東洋街道 上 (集英社文庫 153-A)

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防災の日なので備蓄棚卸ししてみた

今日は関東大震災から91年で防災の日らしいです。
東北地方太平洋沖地震からはや3年、阪神大震災から19年とあっというまですしその間には大雨・台風・洪水などの災害は毎年のように各地を襲っている。自然は人間を越えて荒れ狂っています。それが当然だとでも言わんばかりに。

その前では人間はちっぽけで無力で虫けら同然なのだけれど、災害に遭遇して幸運にも生き延びてもそこから生活リズムを取り戻すためには準備が必要と思っている。

日頃の備えというやつ。ついでに一人一人が備えておくことで社会全体の安定にも繋がるはず。


というわけで今している備蓄を棚卸ししてみた。

想定している災害

M7クラスの首都直下地震

この資料がたいへん参考になる。
首都直下地震の被害想定と対策について(最終報告 平成25年12月)(PDF)

南関東地域でM7クラスの地震が発生する確率は 30 年間で 70 パーセントと推定

  • 揺れによる全壊家屋:約 175,000 棟
  • 建物倒壊による死者:最大 約 11,000 人
  • 地震火災による焼失: 最大 約 412,000 棟、 倒壊等と合わせ最大 約 610,000 棟
  • 火災による死者: 最大 約 16,000 人、 建物倒壊等と合わせ最大 約 23,000 人

湾岸の大部分の火力発電所被災した場合、最悪、5割程度の供給が1週間以上継続することも想定される。

なお関東大震災として知られるマグニチュード7.9の大正関東地震などのM8クラスの海溝型地震は今後30年間で0~2%ということである。0%ってあるのだろうか。

富士山噴火

地震よりは予兆がわかりやすい分、短期予測はある程度できるとはいえ恐ろしいもの。まだ確定的なことはわかっていないけれど、1年後に噴火してもおかしくはないともいう。
噴火すると都内でも10cm程度火山灰が積もる可能性がある。長期の停電や交通機関のマヒで地震よりもたいへんかもしれない。灰燼の被害が多そうである。

大雨浸水

区のハザードマップによるとS川が氾濫してもうちは1m以下の浸水だし地階じゃないから問題なし。


準備していること

目標

1人月*1くらい自活できること

食べ物

原則としてファーストインファーストアウト。つまりキュー構造。

  • 米5kg、パスタ1kg、小麦粉1kg
  • ツナ缶400g・トマト缶2つ・ビーツ缶1つ
  • レトルト食品 6食分(ほんとは山で食べるように買ったんだけれど・・・)
  • 調味料若干
  • 水12リットル
  • お酒5リットルくらいたまってる・・・

1人月にむけてはけっこう厳しい。もうちょっと缶詰・水増やしたいところ。

道具
  • カセットコンロ・ガスボンベ3缶
    • 鍋も出来るし便利。1缶で60分くらいしかもたない気がするので増やす必要がある。
  • 着替えの入ったザック
    • しかしこの37リットルザックは前の登山で後輩に貸したままだ!
  • 消毒液・包帯・絆創膏の応急処置セット
  • 金属製のバケツ
    • 普段はゴミ箱。持ち手がついてて便利。お湯も沸かせる。
  • 防塵マスク一箱(50入り)
    • 富士山噴火したら、役立つかな・・・
ITシステム
ソフト・その他
  • 近所の人と仲良くなっておく
    • マンションの新年会・お祭りなどで顔を売っておく
  • 避難場所
    • 公園を調べておく
  • 家族との連絡先
    • 独り身なので問題なし。親はなんとかするでしょ
    • 築2X年のRFC。多分頑丈。
  • 会社からの帰宅
    • よくいる場所からは徒歩2時間半
    • たまにいく場所からは徒歩35分。もっと近くに引っ越したい。
  • 普段持ち歩くもの
    • 荷物減らし中だけれどモバイルバッテリー・携帯の充電器
  • SASサバイバルマニュアル
    • 中学生のころ、お年玉で買った本。読んでておもしろい。姉妹本の都市型サバイバルももっている。
その他
  • トイレが鬼門。
  • とげの付いた肩パッドとか

こうしてみると多少準備しているつもりでもけっこう厳しいかもしれない。


災害、感情的には怖いんだけれど守るべきものもない自分という存在を考えると流される葉っぱのように諦観するしかない感じもある。グレートリセットとか破局なんかを期待するほど青くはないしその災害時のハイテンションが過ぎ去ったあとにふたたび終わりなき日常が始まることは期待できないのでなんとか生きていくしかないようにも思う。簡単に言うと単純におなかが減ったら辛いので備蓄しておきましょうということです。みんなが備蓄しておくと、買い占めとかそれに対応する略奪・暴徒は減るだろうのでみんな備蓄しましょう。

以上です。

SASサバイバルハンドブック〈新装版〉

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SAS都市型サバイバル

SAS都市型サバイバル

*1:1人月:1人なら1ヶ月、2人なら2週間、4人なら1週間ってことだよ!

最悪男の科学的日常「家庭の科学」

なんの前提条件もなく本屋で手に取った本がおもしろかったので紹介する。
身の回りの出来事を科学的に説明するというのはブログや学研のマンガから新聞のコラムまで類書はたくさんあるんだけれどそのなかでも最高クラスだった。


家庭の科学 (新潮文庫)

家庭の科学 (新潮文庫)


ある男の一日の流の中で起こる災難を科学的に説明しているのだけれど、そのためにその主人公は数々の災難に見舞われるという構成がいい。


まず、目覚まし時計が鳴ったのに寝過ごす朝7:00からはじまる。男の夢の内容と起きて時計を見たときの悲嘆を導入として描いてから人の睡眠について詳細に説明される。それもレム睡眠とノンレム睡眠だけみたいな浅い話ではなく、断眠が11日以上続くと死ぬであったり明晰夢を見る方法であったり不眠症いついても10ページのあいだに触れられている。


その後、シャワーを浴びる際にはシャンプーで滑ってしまうところから始まって、石けんの歴史に軽く触れてシャンプーはなぜ汚れを落とすかということを親水性の部分と親油性の部分があり界面活性剤であると説明し、だからこそ滑りやすいと説く。


さらにカミソリで皮膚を傷つけてしまい人間の防衛機構について説明し、トースターでパンを焦がしてしまいなぜ電熱線が熱くなるか、燃焼とはなにかを解説する。電子レンジでお湯を沸かしたら突沸するし、腐った牛乳を飲んでは腐敗と発酵の違いについて学べMP3プレーヤーを洗濯してしまいバッテリーの仕組みについてもわかるという具合。

ちなみにこれだけのトラブルを経てまだ家を出ていない。


出社しようとすると鳥の糞にぶつけられて鳥の消化の仕組みを学び、鞄を忘れては記憶について学ぶ。車がスリップして、ゴムタイヤ、ABSディファレンシャル・ギアについてまで学べてたいへん便利。


そこからガスステーションでガソリン車に灯油をいれてしまって車が使えなくなり内燃機関の仕組みが解説され、バス停まで走ろうとして転ぶことで走るために脳と身体はどれだけ工夫しているかがわかる。バス停では髪にガムがくっついてしまって乗り過ごし、にわか雨には降られてハチにさされ、靴がやぶれたので接着剤でつけようとしたら指をくっつけてしまうしエア入りスニーカーを買って走ろうとするとパンクする。わけがわからないくらい厄日。


ちなみにここまできてもまだ出社できていません。
ようやく出社するとボールペンのインクが漏れてシャツを汚してその仕組みを学び、ワイシャツの袖をひっかけて破くことで組織の力を学べる。PCではスパムを開いてしまい社内にウイルスをまき散らし、HDDがクラッシュするという過程でIT的なものも学べる。そして、さらに布団に入るまでトラブルは続く・・・。


おもしろいのは鍵を溝に落とすところから重力の話になって星系誕生・ブラックホールの歴史まで触れられること。ニュートンのリンゴのロマンチックさとは大違いだけれど。

あと落雷でテレビが壊れた際に雷の仕組みが解説されるのだけれどこれがよかった。ほどんどのサイエンス読みものでは、雲が電荷分離して地面との間の電位差を解消するために絶縁が破壊される程度の説明だけれど、本書ではなぜ電荷分離が起きるのかがまだわかっていないことと代表的な仮説を説明している。また、そのなかでほとんどの雷は雲の下部の負に帯電した部分と地面の間で発生する負極性雷だけれど、上方の正に帯電した部分が風に流されてそこと地面の間で発生する正極性雷は負極性雷より5倍ほど強いということや、その際に発生する電磁パルスで電子機器が破壊されうること、さらに高高度核爆発による人為的な電磁パルスとその防御まで触れられている。これだけでご飯おかわりできそう。


ほかさまざまな災難とその科学的な解説がなされ主人公の一日は終わる。
ひどい一日であるが、われわれはたくさんのことを学べる。ありがたい。


著者は遺伝アルゴリズムの研究で博士号をとったコンピュータサイエンスの研究者らしい。これだけ多岐にわたることをわかりやすく解説していてサイエンスコミュニケーターとしても一流だ。市民が身近なものを科学する、覆面科学者になることを推奨していて自分も触発されそう。


科学の楽しさを改めて発見できた。理科の副読本として高校生が読むと触発されそう。目の前の現象から推論して調べることができると日常生活も楽しくなりそう。


この手の類書、昔は学研の大判の本でかなりわくわくしたけれどタイトル失念。ほかいいのあったら教えてください。
料理編だとマギー キッチンサイエンスがちら見した感じすばらしいんだけれど高くて読めていない。

マギー キッチンサイエンス -食材から食卓まで-

マギー キッチンサイエンス -食材から食卓まで-

豚骨魚介最強伝説 つけ麺 ろぉじ

つけ麺は好きですか。おれは大好きです。

締められた麺に絡みつく濃いめのスープ、魚介系の芳醇で豊かな香り、肉のうまみを凝縮したチャーシュー。つけ麺は、味・匂い・食感ともにおよそ既存の料理に類を見ない奇怪な料理だと思う。

起源を中華そばに持ち独自の進化を遂げガラパゴス文化の先端をなすラーメン、その落とし子であるつけ麺は近年、急速な進化と普及を重ねてどこの地域でも食べられるものになっている。

詳しい歴史はWikipediaにまとまっているので読むといい。ここ数年の進化の急速なスピードが感じられると思う。
つけ麺 - Wikipedia



おれは京都で(大学院に)入院していた時期につけ麺の魅力に目覚め、数年前に東京に来てからその人気と趣向を凝らした変化を発見している。

雑誌やwebのランキングを上位から攻めるように体系的に食べているわけではないけれどつけ麺激戦区亀有や有名店の連なる松戸、強豪の集まる神田や三田、際立つお店を持つ大門や木場、名店を集めた東京駅のラーメンストリートや品川達人、その他、訪れた地域地域の味を楽しみつつ血肉にしている。

その中でももっとも好きなつけ麺はなにかと問われれば、考えることなく「ろぉじ」を挙げる。これは初めて食べたつけ麺でもありいまなお頂点に君臨し続けるドラゴンボールでいうところの悟空のようなつけ麺だ。

その店は下宿「白い家」からほど近く、良く目の前を通っていたにもかかわらずひとりラーメン文化がなかったおれはその店をほとんど意識したこともなく、後にラーメン師匠と一部で呼ばれるようになる友人から誘われてはじめて食すこととなった。

最初は世の中には美味しいものがあるんだなあ、と思ったけれどほかのつけ麺を食べるようになるとその精緻さと暖かみを併せ持つその味のすばらしさを知るようになる。

もしかしたらつけ麺ファーストインプレッションのバイアスがかかっているかもしれないけれど、東京の名店を知ってからも年に2,3度訪れる京都でほぼ必ず寄って味わっていることを考えるとそれだけではない。

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その麺をまえにして手が震えたのでうまく撮れていない。


香り高さをもつ全粒粉麺と濃厚だがくどさを感じさせない芳醇なスープ、ほろほろの厚切りチャーシューに食感と甘さが冴えるメンマ。さらに山椒やにんにく粉をかけて味の変化を楽しむこともできる。また、各席にはヒーターが備えられており、麺をつけて冷めてしまったスープをアツアツにすることもできるのだ。ヤカンが汗をかくほどに冷やされているさわやかなジャスミンティーは口腔内と気持ちをリフレッシュしてくれる。狭く明るい店内の清潔感、料理人たちの動きがわかるカウンター、提灯。欠点があるとすれば自転車を止めるスペースがないことくらい。

このうまさについては自分の語彙では表現できない。とりあえず最高とだけ言っておこう。


ただ、公平のため一部のつけ麺フリークスの中にはあれはつけ麺ではないと言う人もいることを付記しておく。
たしかにその全粒粉麺は蕎麦のようだし濃くてもやさしいスープは東京の濃厚をアピールしているパンチの効いたつけ麺と比べるとあまりパンチがないかもしれない。だからすべての人に最高とは言わないでおくけれど、マイベストつけ麺であることは確か。主観であるが主観だからこその究極。

そして、このお店がすごいのは常に進化していること。麺をゆず麺と通常の麺を選べるようになっていたり、スープに創意工夫が加えられたり割り出汁をタンブラーで出したりとあらゆるものに工夫を重ねている東京から季節ごとに行くたびに変化を発見し、最強のつけ麺屋であるろぉじが進化しつづけているのにおれはこの数ヶ月なにをやっていたんだろうと自己嫌悪するほどだ。



冒頭にも書いたように今でもつけ麺やラーメンはよく食べるのだけれど、それはそれが美味しいから食べるというよりは、つけ麺ろぉじが最強で至高であることを証明するために食べている気がする。もちろんそれを越える店が現れることは期待しているもののこれまでには現れていない。




さて、なぜこの記事をいま書いたかというと、このつけ麺ろぉじが今月末で店を閉じ、集客力のある木屋町三条にて新ブランドとして再出発するらしいとの話を聞いたからだ。新しくなったら絶対行くけれど、あの店がなくなることはすこし悲しい。ただ、これは世界中の神話でよく見られる破壊と再生のモチーフそのものである。人類の物語のプロトタイプである神話をなぞるなんてさすが最強のつけ麺だぜ。

今月中に京都による機会があればぜひそのお店を訪れて欲しい。
場所は京都風に表現すると左京区鞠小路通今出川上ル。わかりやすく言うと今出川通りと東大路の交差点である百万遍から北西にはいったところ。

京都駅からは行きにくいのだけれど銀閣寺や京都大学、鞍馬やけいおん聖地巡礼などでお立ち寄りの際はぜひ。

参考エントリ:京都お土産問答(嘘) - うんこめも



蛇足その1:もっとも天に近いつけ麺たち

せっかくなので、参考までに今まででもっとも最高クラスに近かったラーメン・つけ麺屋を紹介する(順不同)。
もし協調フィルタリング的におすすめなつけ麺屋やラーメン屋がヒットすればぜひ教えて欲しい。

八柱:めん屋 一期一会

閑静な住宅街で一見、巨大な霊園があることくらいしか特徴のない松戸市八柱には恐るべきラーメン屋がある。
それがこの一期一会だ。鮮烈で味わい深い豚骨魚介の和風豚つけ蕎麦はあまり類をみないものの万人受けすると思う。まずはそのスープの美味しさと完成度の高さに目を奪われるだろうけれど、もちもちとコシがあってプッツンと切れる麺も最高なんだよな。自分がよくいっていたときには行列がないのも良い。もっと評価されるべきとは思う。

ただ、もしかするとこれもバイアスかかっているかもしれない。
プライベートな話で恐縮だけれど、就職して一年目のころの自分は八柱にある社員寮に住んでいた。その遠さとそれ故の独自の雰囲気から八柱<ヘルクライムピラー>と一部で呼ばれていたところだ。
ここに住んでいたころ、終電ごろに会社から帰って駅前のこのラーメン屋によるとだいたい同じく遅くまで働いた同期や先輩がいて社会の機微を学んだものだ。
この寮はもう閉鎖されてしまったけれどあの一期一会の日々を忘れる事はないだろう。

麺や 六三六(大阪、名古屋など)

独特の濃厚スープ。煮干しと昆布と鶏ガラでダシをとって野菜を煮込んでつくられたという甘く濃厚なスープはさりとてくどさがなく簡単に飲み干せる。ぷっちんと切れる太麺もスープに絡んでスープを飲んでいるのか、スープに飲まれているのかわからなくなる。高級な天下一品という感じ(最上級の褒め言葉)すらある。ここも高みに届いている味だ。東京に支店ができて欲しい。

ラーメンTHANK(東京 大門)

美大のそばにあるカフェといっても通用する明るく暖かなウッド系装飾が特徴。
鶏ポタという鶏のダシと野菜の甘みがよく出ている濃厚なスープは身体にも心にも染みこむ。博多系のようなハリのある細麺もなかなかよい。特徴的なラーメンが多い大門でも屈指だと思っているので東京タワーにデートしたあとで行くと最高だと思う。


ほか好きなお店はこんなの、天天有(京都)、夢を語れ(京都)、東龍(京都)、さすけ(東京:大門)、一蘭(福岡、日本各地)、魚雷(東京:本郷)、トナリ(東京:木場)、吉左右(東京:木場)、いし井(東京:銀座)、ラーメン凪(東京:新宿など)

また、食べるときは軽くお酒を飲んでからが最高。昔、渋谷のバーで美女と飲んだあとになぜか一蘭によったところ多幸感で死にそうになった。


蛇足その2:昔話。自分とラーメン

ここまでつけ麺とラーメンの話をしてきたけれど、じつは自分は大学を卒業するまであまりラーメンを食べてこなかった。

自分のラーメンの原体験は中学校のとき。所属していた柔道部にて、新入生10人勧誘できたらラーメンおごってやると顧問の先生に言われてがんばった結果、連れられて食べに行った8番ラーメンは美味しかったなあ。けれど、いかんせん北陸の田舎町ではラーメン文化を知ることもなかった。
大学に入ってからは久留米出身の友人にして好敵手の豚骨先生と呼ばれる男に連れられた梅田の一風堂が最高だったし研究室に入ってから先輩に連れられていった天下一品も衝撃でどれもすごく美味しかった。ただ、学部生のころはロケーションと体育会系な食生活と金銭事情もあってあまり外でラーメンは食べなかった。4年間で20食は行っていないと思う。


それが豚骨先生や、大学院にて薫陶を受けた替え玉先輩、先に挙げたラーメン師匠といった優れたビジョナリーと出会う幸運に恵まれ、いろんなラーメン屋やつけ麺屋に連れて行ってもらうことでその魅力を再発見、まだまだファンのレベルだけれど各地のラーメン屋に行く生活を送っている。

いまや、国民食でもあり、1人でも気軽にはいれる気軽さと、ある種の格調高さを併せ持つこの食べ物はまだまだ可能性があると思う。大好きなラーメン屋、夢を語れがボストンに進出したり、東南アジアに展開しているお店が多いように和食の最右翼であるこの料理は日本の宝だ。

だからラーメン三銃士のこと、たまにでいいから思い出してあげてください。
ではなくて、ろぉじの至高さを知って欲しいと思いこの記事を書いている次第です。

2014年4月-6月に摂取したコンテンツ 「山・動く」「情報流通革命」「世界屠畜紀行」「靴ずれ戦線」

定期的な棚卸し作業としてつけている読書メモ+αです。
今期は本だけではなくアニメだったりゲームだったりも含んでいるのでタイトルを「摂取したコンテンツ」としています。消化できているかどうかはわかりません・・・。

前期はこちら

2014年1月-3月に読んだ本:ヤクザの文化人類学、世界が生まれた朝に、ITエンジニアのためのビジネスアナリシス - うんこめも


ノンフィクション

書くことについて

スティーブン・キングの自伝であり書き方教室的な本。自身の作品にあるような、パクスアメリカーナな平和でのんびりしたアメリカ郊外の感じというかアーヴィングの作品のような空気が出ていてRPGっぽさを感じる(自分に語彙がなくてこの時代自体を表すいい言葉が思いつかない)。書き方教室的な部分を要約すると、いい物語を書くにはよく読んでよく書くこと、という、まあそうでしょうね、という内容。でも自伝の内容も書き方もほんと読ませる文章だし物書きとか考えていなくても楽しめると思う。

しかし、自分がスティーブン・キングをちゃんと小説で読んだのはスタンドバイミーだけだな。それもジョジョの影響で高校の頃に。物語自体よりどういう人が生み出しているかに興味があるかもしれない。

書くことについて (小学館文庫)

書くことについて (小学館文庫)

日本赤軍とのわが「七年戦争」 -ザ・ハイジャック

大戦後、それまでの陸軍青年将校などの右翼テロと変わって左翼暴力革命の動きがさかんになっている。
日本共産党朝鮮総連の武力蜂起、第一、第二次安保闘争・・・。そしてあさま山荘安田講堂占拠、各テロ事件などの暴力革命運動と10年ごとに大きな動きがある。本書ではその第4の波、70年代のハイジャックと外事警察の対応に焦点を当てている。当時、外事課長や警備局課長として現場の指揮官であった著者の裏話は迫力がある。これだけのトラブル対応を現場指揮官としてやってのけるタフさと頭の切れはなんなんだろう。一方での政府の「命は地球より思い」的な問題の先送り・責任回避のずるさが気になる。あと、当時の警察官僚の文化は興味深い。今だと怒られそうなものもある・・・。

いまの日本は平和でそれは良いことではあるのだけれど、平時の能吏と乱世の将は求められる能力が異なることと経験がないことから危機管理者が育っていないのではないかという気はする。あと、これだけ日本人が海外でテロ・ハイジャックしまくっていて各国政府に迷惑をかけていたとは・・・。日本赤軍がなんでこの幼稚で自分勝手な計画を実行するにいたったのかは気になる。本気で社会革命を実現できるとでも思っていたのだろうか。70年代の空気がわからないとわからないのかも。日本赤軍については「宿命 『よど号』亡命者たちの秘密工作」とかの個別にしか知らないので調べてみよう。
「危機管理のノウハウ」は3巻読んで誰かにあげてしまったけれどもう一度読みたい。
佐々淳行はすごいなあ。


記者会見のノウハウ

佐々淳行はすごいなあ(繰り返し)
コンプライアンスとは組織防衛である、と定義し、そのコントロール手段としての記者会見についてとりあげられている。近代日本を中心に古今東西の記者会見の事例を多数とりあげていて参考になる。トラブル時のコンプラ対応ってほんと難しい。自分はしばらくはタッチすることはないけれどマスメディアのコミュニケーションについて楽しく読めた。あと巻末の記者会見の心得10箇条とソフィスト的詭弁術講座がよい。
ちなみに一章はまるまる東日本大震災時の民主党の対応のダメさっぷりを避難しまくっています。しかし佐々淳行の本は同じことをよく書いている。気がする。


山・動く

湾岸戦争において軍の後方支援・ロジスティクスの責任者であったガス・パゴニス中将の自伝でもあり湾岸戦争の裏方解説本でもある。サブタイトルは「湾岸戦争に学ぶ経営戦略」とついていてビジネス書っぽい感じもある。

100時間戦争と言われる湾岸戦争は、米軍が一気に戦力を投影して短期決戦で終わったという先入観があったけれど、かなり泥臭いものだった。なにせ40万人もの人間と700万トンもの物資を基地の近くにないサウジアラビアに配備するのだ。


フセインクウェートに侵攻した後、サウジアラビアに米軍を展開させることが決定してから筆者がサウジで後方支援・サウジ政府との折衝を担当すると決まる。準備していないなか、直後に輸送されてくる数万人もの兵士をどう受け入れるか。宿泊できるところはあるのか、水や少量は確保できるのか、荷揚げにはどう対応するのか、空港から宿泊地までどう移動させるのか、対応が必要なことはいくらでもある。後方支援部隊より戦闘部隊が優先されているため準備も少ない。ここで新たに編成された組織をどう指揮したかの話は普段日の目に当たらない場所名だけにかなり興味深い。

さらに湾岸戦争では撤退も難しかった。36万5千の兵士を帰還させ全物資を欧州・米国に輸送するのだ。兵士は90日間、物資は
1年間というと長いようにも感じるけれど、流通は貧弱だし戦車を含めた10万台を超す車両は泥を落として検疫も必要だし気が遠くなる作業。

ちなみに米軍が撤退に際して戦域の閉鎖をするのは20世紀で初めてらしい。ドイツでは物資をさび付くにまかせ、朝鮮戦争では日本に物資が流れるなどし、ベトナム戦争では急な撤退で数億ドルの機材を残してきた。

この配備と撤退のノウハウはは兵站:ロジスティクスという軍だけの活動ではなく物流として多くのビジネスにも関わるものだ。
例の女子高生も学んだという経営学者のピーター・ドラッカー先生が雑誌で書いていたなかにたいへん含蓄のある言葉がある。「物流はコスト削減の最後の辺境だ。われわれは物流について、ナポレオンの同時代人がアフリカ大陸の内部について知っていた程度にしかわかっていない。そこに問題があって、大きな問題であることは知っているが、ただそれだけのことだ」


物流網の構築と組織の構築ってほんと難しそう。わりとヒントと陸軍の教訓が得られると思う。

それと、後方支援部隊では7割が予備役なのだそうだけれど、その中に民間企業のCEOを務めている准将も数人いたそうだ。人員配置や若手への裁量の持たせ方といい世界一巨大な官僚組織はなかなかすごい。

ちなみに本書の前半は著者の自伝なんだけれど、50ページで中尉から少将まで昇進していて麻痺しそう。
また、著者は湾岸戦争後退役して民間企業の副社長になっている。(そういえばコリン・パウエル統合幕僚会議議長・国務長官もセールスフォースの取締役になっている。)


ロジスティクスといえばマンガ「大砲とスタンプ」もよかった。
流通系についてちゃんと勉強してみたいものです。

山・動く―湾岸戦争に学ぶ経営戦略

山・動く―湾岸戦争に学ぶ経営戦略


流通情報革命

流通についてちょろっと調べていて見つけた本。

1,2章はソーシャルメディアの紹介やそれによるこれまでなかったマーケティング手法の紹介がメインで退屈な感じだったけれど後半はなかなかおもしろかった。気になったところのメモ。

「覇権化・アナーキー化・民主化の相克」というサブタイトルがつけられている政治学者広瀬克哉氏による「『情報革命』と権力」によると情報革命によって進む世界観には3種類あるという。

1.覇権化・・・分権化・分散化から覇権化へ。インターネット技術の普及とともに、それを政府や大企業が自己の体制内に取り込む動きが進む。
2.アナーキー化・・・情報爆発と暗号化技術の普及が管理能力の限界を生む。安定した社会的統合や秩序形成からの離反。公共件の消失。
3.民主化・・・万人の平等な発信能力と直接的参加の可能性。素朴な楽観論への反省から、局所的なアナーキーを認めつつ、マクロ的な社会秩序の形成を目指す。

*1

1.覇権化について、インターネットは軍がはじめたものとはいえ普及初期は自発的な参加者による自主的な運営を重んじる独自の文化があった。これは、その初期段階、既存の権力は新しい技術の革新的意義を十分に理解できず、その運用の能力にも欠けていたためでもある。しかし、この新技術の社会的利用が広がり、その持つ革命敵意義が理解されてくると、動員できる豊富な資金を持ち、新技術の採用と利用に向けての集中的な投資が出来る、大企業や政府などの既存の権力組織が覇権化の主体となって登場してくる。日本だとNTT、欧米だとIBMMicrosoftGoogle・・・

2.情報の匿名性によるアナーキズムについて


3.素朴な民主化のシナリオは覇権化とアナーキー化の2つの攻撃を受けている。ただ、そういった否定的な要因を含みながらも大筋において、分権的で自主的な情報発信が続けられており、局所的な破綻はあるにせよ、それが全体的な崩壊をもたらすにはいたっていない。局所的なアナーキー化が生じればそれだけその闇の部分を押さえて民主的な秩序維持を強めようとする認識と努力は高まる。(自動車による個別的な事故は毎年数万人の人名を奪っているがそれは自動車交通という社会システムそのものを崩壊させているのではない)


ハーバーマスのいうような公共圏にインターネットはなるか?(吉田純氏の「インターネット空間の社会学」)

  • 知識のWikipedia化、オープンソース化という平等への理想と覇権化、市場化による格差の拡大という現実
  • オープン化という理想はデマや監視、個人情報の流出にもつながる

境真良は「Kindleショック」にて次のように警告している。

GoogleAppleの提供するスマートフォンAmazonキンドルは)あらゆる人々が平等なかたちで結びあっているネットワーク構造は、サーバーとクライアント、供給者と利用者という非対称的な形に縮減され、デバイスはコンテンツやプログラムを作成する機能を大きく制限される

この覇権的な大企業によるインターネットの分断を「スプリンターネット(splinter + internet)」 と呼ばれる。この分断はデバイス・クラウド生態系に独占・ベンダーロックという高付加価値をもたらし高い利益をもたらす以上、その流れを抑制するのは容易ではない。

が、それが独占することはなく、平等と共同の世界である純インターネット生態系と結びつき、両者でひとつの経済系をなしている。

それに対しての覇権化・監視。2010年にヤフーがGoogleから検索エンジンの提供を受けた際に、独占禁止法に抵触するかどうか。
公正取引委員会は両社の自己申告をそのまま受け入れて問題なしと判断している。覇権化はすすむだろうか。

知らない概念もわりとあって楽しめた。インターネッツはどこに向かうんだろう。
個人的にはタオバオ、アリババあたりのBtoBtoCについてもうちょっと紙幅をさいてほしかった。



リエンジニアリング革命

バブル期、ジャパンアズナンバーワン時代にアメリカで注目を集めた日本の経営術の発展的解釈としてのリエンジニアリングを提唱した象徴的な本らしい。漸進的なカイゼンではなく既存の組織やビジネスルールを見直してプロセスの視点で業務フローや組織、情報システムを再設計することだという。


わかりやすく言うとしがらみをとっぱらって理想の組織とプロセスをつくりなおしましょう、そうすることで顧客へもっと価値を提供できて儲かりまっせ、ということ。

とはいえ、言うはやすしで組織を変えるというのはめちゃめちゃむずかしいと思う。古の知恵と妥協の踏襲が混在し全体を把握しているひとはいず、ゆえにみな変化を恐れ自分の職務でいっぱいいっぱいになる。この本では、リエンジニアリングという概念の紹介だけはなく、どうやったらリエンジニアリングを成功させることが出来るかも書かれていて考えるヒントになる。

気になったこと

  • チームはトップダウンでないと成功しない。
  • 成功するチームは半分のメンバは内部から、半分を外部から
    • (内部はより抜きで外部は専門家。こういったチームを用意できるトップの決断があるだけで成功しそう・・・
  • いまのプロセスを観察する必要はなく、顧客を見る。顧客が欲しい物を明らかにする
    • これまでやっていたそのプロセスはほんとうに必要か?
  • 情報化は必須。段階的改善ではやっていかねい
    • 20年も前の本だからモダンなシステム化がはじまりつつある時代?いまのIT化が行き渡っている時代だと別の方法論が必要かも。

最後の三枝匡さんの解説もいい感じ。
いまはBPMLとかBPMNとかビジネスプロセスを記述するための方法論が出ているけれど、業界では普及しているんでしょうか。
会社ごとに違いすぎて一般化は難しそうである。ただ、インクリメンタルな改善では決して届かないところに行くためにはリエンジニアリングしかないし、それがとても泥臭いということを知っておくことは重要かも。

しかし、これの結論だと大企業にはいった末端にはリエンジニアリング出来ないってことになるんだよなあ。

リエンジニアリング革命―企業を根本から変える業務革新 (日経ビジネス人文庫)

リエンジニアリング革命―企業を根本から変える業務革新 (日経ビジネス人文庫)


世界屠畜紀行

「最近の小学生は、魚の切り身がそのまま海で泳いでいると思ってる」というのがちょっと前に毎日新聞のコラムにのっていたというのが話題にな った。スーパーに売っているものしか見ていなく、海で泳ぐ魚が食卓に上るまでのプロセスが分からないから、ということである。

これを笑うのは簡単だけれど、自分も普段食べている焼肉にしろハンバーガーにしろ、生きている動物がどういうふうに流れているかは想像つかない部分もある。日本ではそのプロセスは屠畜場のなかにブラックボックスとなっている気がする。

本書は韓国、エジプト、バリ島、インド、チェコ、沖縄、東京、アメリカと世界各地の屠畜場を取材して回って屠畜について考えられた記録。知らない分野のことを、それも世界中でまわって調べているというのはほんとすごいし読ませる。

屠畜プロセスの違いだけでなく、屠畜を残酷だと思う人がいるのはなぜか、日本ではなぜ屠畜に従事する人が差別されるのか、世界ではどうか?といったことをインタビューをもとに考えている様子が良い。イスラム圏での肉屋は稼いでいるから偉いという合理主義、生きるに必死なモンゴルでの羊と命を共有するように屠畜する文化、社会主義時代のチェコでは肉屋が偉い人にいい肉を流して稼いでいたと文化がさまざま。


ちょっとおもしろかったのは仏教の不殺生について。
仏教では出家者も在家者も人を殺すことを固く禁じているほか、出家者においては草を刈る、動物の命を奪うなども軽罪とされている。ただし、戒律が否定するのは無益の殺生に限られる。チベットやモンゴルで盛んに研究された「摂大乗論」には、人々に利益をもたらすための殺生は罪ではなく悟りだと説いているのだという。羊を殺すことによって人々に食物を提供すれば、それは活命といって殺すことは菩薩行になる、と。だからモンゴルでは屠畜を行う技術を持っている人は経緯をもって遇される。

これは生活の知恵であり安定化のための規範といえばそうなんだけれど、生きるために他者の生命を奪わなければいけない業を意識させるような文化は興味深い。あとこの流れだと日本では仏教が被差別民を生んだという論理も通らないのも注目。

かつての日本では屠畜したりその皮を鞣したりするのは特定の部落に住む被差別民と決まっていて蔑まれていた。
これは肉食の文化が新しいものであったり仏教の不殺生も関係あるかもでよくわからないけれど今なお残っている。その命をもらっていながら直視しない、他人にやらせて美味しいとこどりしていながらそれを差別するというのはなんだかなあと思える。可愛そうだからやめようとか、痛みのないように殺しましょうみたいな動物愛護の考え方も難しい(ちょっと皮肉)

タフな取材スタイルが行間ににじみ出ていてこれもよい。あと、ご本人のお人柄かコミュ力かで各地のおじさんから話を聞き出せているの羨ましと思った(その分、ナメられたりたいへんなことももちろんあっただろうけれど)。愛嬌あるのいいなあと思う。

品川から歩いてすぐ(インターシティラーメン二郎のそば)には日本最大の屠畜場がある。

併設された「お肉の情報館」も一度行ってみたいなあ(だれかデートしましょう)
「お肉の情報館」案内


植物は命がけ

花が咲くことの条件とはなにか。
朝顔は朝開く、けれどどうやって朝を感じているのだろうか?夜開く花はどう時間を計っているのか。気温が下がることで開花するもの、長い間くらい時間を過ごすことで開花するものなどいろいろある。たとえば67年に一度それも同じ兄弟株が日本各地で同じ年に咲くタケ。巧妙な戦略を持つものもある。

あと最終章ではきのこについて触れている。普段よく食べているシメジはじつは栽培しやすい木材腐朽菌のヒラタケやブナシメジでしかなく本物のホンシメジは人工栽培されない。マツタケやホンシメジのように球根菌といい生きている木でしか育たないそうで人工栽培が難しいがいろいろと研究が進んでいるとか。実家近辺とかでわりと土地に余裕のあるところに住んでいたらキノコ育成実験とかしてみたいな。まだまだ可能性がたくさんある分野だと思った。こういう、植物・農業系のこと、けっこうおもしろいんだけれど実地で学ぶ機会が少ない。今年の秋はきのこ狩りについていきたいなー。


病気の話

HIV感染者へのインタビューと闘病記を読みました。詳細はこちら。
病と人について 「感染宣告」、「ペコの闘病日記」 - うんこめも

技術書

技術書は読み切ったものだけ。読みかけはどんどん増えている。

パーフェクトJava

だらだら昼休みに3ページくらいずつ読んでいたのをようやく読み終わった。
Javaの文法的なところだけじゃなくて「いい」書き方にも言及されていていい設計てなんだろうとすこし考えることが出来た。
けど、うーん。

パーフェクトJava (PERFECT SERIES) (PERFECT SERIES 2)

パーフェクトJava (PERFECT SERIES) (PERFECT SERIES 2)


達人に学ぶDB設計 徹底指南書

正規化と論理設計を中心に、パフォーマンスとのトレードオフ、リカバリ設計、インデックス設計とちまたに溢れる各バッドノウハウ、グレーノウハウを紹介している。最終章はなぜかSQL木構造を扱う話でこれはかなりおもしろかった。どう使うかよりも入れ子区間モデルの綺麗さが良い。なんちゃってITエンジニアなのでわりと参考になった、かな。さらりと読める入門書です。

効率的なSQLもあまり書けていないので同じ作者による達人に学ぶ SQL徹底指南書も読んでみようかしら。
ハードの進化で論理設計最高になるようになればいいなあ。

達人に学ぶDB設計 徹底指南書 初級者で終わりたくないあなたへ

達人に学ぶDB設計 徹底指南書 初級者で終わりたくないあなたへ



マンガ

NEW GAME(1)

twitterで見かけた「今日も一日がんばるぞい」の元ネタを探してみたらけっこうおもしろそうだったので購入。
今日も一日がんばるぞい!の元ネタ - Togetterまとめ

高卒でゲーム制作会社にデザイナーとして就職した女の子が主人公。若い女の子しか出てこないゆるふわ日常系マンガなんだけれど、たまにきらきら働いていて眩しい。今日も一日がんばるぞい。

NEW GAME! (1) (まんがタイムKRコミックス)

NEW GAME! (1) (まんがタイムKRコミックス)


靴ずれ戦線 速水螺旋人

Twitterでイケメンヤングスターリンの写真がRTが回ってきた。
https://twitter.com/RASENJIN/status/467460958885912577

へー、と思ってプロフィールを見るとらこの人は漫画家らしい。しかも赤地のアイコンもキリル文字の名前も含めてかなりの通っぽいし調べるとミリオタ度も高いっぽい。そして独ソ戦ソ連側からは大祖国戦争と言われている)を扱ったという2巻完結の本書を書いていたと知り、気付いたらポチっていた。

凄惨な独ソ戦をコミカルなタッチで描いていてたいへんおもしろい。
魔女という共産主義的にはありえないもの(むしろナチスの領分だ)を赤軍が雇って対独戦線にあてるというメルヘンでミリタリーなストーリー。とはいえ最近流行の萌え×ミリタリーではなく戦争の過酷さや死からも目をそらしていない。

話は、NKVD(内務人民委員部)の少尉ナディア(ナージャ)とベルリンを目指す関西弁ばりばりの魔女の娘ワーシェンカとがベルリンを目指して行軍するというもの。そして行く先々の戦線でスラブの伝承や民話に出てくる妖怪みたいなものと遭遇してなんとかするという流れ。それぞれのエピソードは切ないものから笑えるものまでよくできている。ナチ側魔女(親衛隊の高級中隊指揮官少佐)がたいへんかわいらしくてよい。出てくるたびにワーシェンカにやられて、眼帯になったり左手を鉤爪義手になっていたりと・・・

あと、話の合間に2ページ分、機械だったり文化だったりの紹介が丁寧なイラストと手書きのびっしりとした解説がまじっていてこれがなかなかおもしろい。T-35などのソ連の名物兵器から当時の飛行機、世界各地の女傑、時計や電卓まで取り上げていてその知識の吸収欲に驚かされる。ソ連ジョークはなぜおもしろいんだろう・・・。

同作者の「大砲とスタンプ」は冷戦前の東欧っぽい雰囲気な世界を部隊に兵站部に所属する新人士官の兵站話でこれも巨大組織の官僚主義的ユーモアがいい感じ。ロジスティクスとか日陰者は好物です。

ロジスティクスと言えば最近読んだ、山・動くもおもしろい。これは魔女なんてまったく関係ない現代的なヤンキーどもが湾岸戦争の兵站を担うという話。

靴ずれ戦線 1 (リュウコミックス)

靴ずれ戦線 1 (リュウコミックス)


ドロヘドロ19巻

前巻では次号完結と仰々しく告げられていたがふつうに続く。いつにもまして絶望的ななかあの男が復活か・・・というところがピーク。やっぱり狂ってる。煙さんが元気だったころのギャグテイストが楽しかったなあ。

ドロヘドロ 19 (BIC COMICS IKKI)

ドロヘドロ 19 (BIC COMICS IKKI)


ホラー系

某コミュニティでたまに開催される呪いのビデオ鑑賞会にひさびさに参加してきた

本当にあった!呪いのビデオ57

取材系の投げやり感がよい。

本当にあった!呪いのビデオ58

7月頭に発売された作品。渋谷のTSUTAYAでは8本あったけれど7/4の時点ですべて借りられていたらしい。すごい人気。
わりと「アレ」の存在感が増していて時代を感じる。「お炊きあげ」は理解できなかった。やっぱ廃墟系はゾっとする。
本呪Tシャツ欲しいので積極的に動画を撮っていきたい。

初めて知ったのだけれど、呪ビって夏は毎月出るんだな・・・

怪談新耳袋劇場版

いろんな監督のショートショート集という感じ。脈絡のなさが良い。たまにドキっとするのもあった。

  • 監督が吉田秋生というギャグテイストな話があってBANANA FISHの人こんな副業してたのか!と思ったら同姓同名の別人だった。
学校の怪談

ホラーというよりは定番エンタメ。内容については特に言うことないんだけれど、出ている主役級の女の子のかわいいほうは女優として成功していて、そうでもないほうはまったく無名でつらい感じがある。4はもうテレビ不可能だしガチホラー系らしいし一度観てみたい

映画

V フォー ヴァンデッタ

全体主義国家で覆面で匿名のヒーローがテロを起こし、抑圧された大衆がそれを支持し行動していく作品。
いまやハッカーグループ、アノニマスのイメージになっている仮面
特典映像のナタリー・ポートマンのラップが最高だった。

アニメイション

サムライフラメンコ

だいたい3ヶ月遅れくらいで観ました。
はじめのだらだらヒーローあこがれものから徐々に狂気とスピードのインフレを起こし、最後は・・・。途中はなんてひどいアニメだと思ったりしたけれど付き合いで観ていたら徐々にその狂気に魅了されてしまった。すごいアニメだと思う。メタヒーローモノ的。アニメだとグレンラガンとかノーランのダークナイト好きだと楽しめたりするはず。

凪のあすから

これも3ヶ月遅れくらいで観る。そういうのばっか。
最初は観るのつらかったけれどこれも付き合いで・・・。中盤からの展開でのかみあわなさが観ていてつらい。
ただ豊かな気持ちになりました。

ただ、もうちょっと頭空っぽで観ることができるアニメイションが望まれる。

シドニアの騎士

あるキャラが死亡したところで非常な衝撃を受けた。さんざんフラグはあったのに無意識のうちに目をそらしていたかもしれない。その前の話の漂流シーンがいい感じすぎた分、ギャップでショックでつらい。これからどうなるのか気になるので原作読んでみようかな・・・

あとは閉鎖社会ものとしての設定が知りたいところ。

その他

パンデミックボードゲーム

協力ゲームでなかなかおもしろかった。紙一重で人類滅亡する感じが最高。

人狼

都内某所のマンション内で知らない人と人狼した。知らない人と話しながらやるのはけっこう緊張感があっていい。
4戦して人狼しか勝たなかったのと独自ルールもなかなかおもしろいしまたいってみたい。


まとめ

娯楽モノばかりなので来期は心を豊かにするような作品を読んでみたい(棒)

*1:近未来SFの分類に使えそう。覇権化はまんま1984のような監視社会で、アナーキー化は攻殻ニューロマンサー的なサイバーパンク。3.は皮肉的な感じかな。

AKB×ゾンビのセーラーゾンビが傑作かもしれない

セーラーゾンビという金曜深夜にやっているドラマがじつは大傑作になるんじゃないかと思って観ている。

たまたまつけたテレビでやっているのを観て知った自分のように、たいていの人は知らないだろうから簡単に紹介してみる。

あらすじはこんな感じ。世界中にゾンビが溢れてから数ヶ月後、ある女子高校では生き残った十数人や近所の人が立てこもって学校生活を送っている。そこに、アイドル志望の女子高生の舞子が保護され一緒に生活していくことになる。そんな中、外からは入れないようにされているはずの校内で、一人ずつ襲われていく。人と見分けのつかない特殊なゾンビが紛れているのではと疑心暗鬼になっていく・・・


【テレビ東京】 セーラーゾンビ 第一話「転校生」 - YouTube


AKB×ゾンビというイロモノかと思ったけれどポップでキッチュな演出とシリアス風な展開はかなりいい感じ。セーラー服を着た女子高生が無表情にスコップを振り下ろしてゾンビの頭に打ち付けたり、かわいい女子高生がゾンビに食われて血しぶきあげるスプラッタさもありつつもコメディ展開もあってメリハリ効いている。


なかでもゾンビじゃないかと疑われた百花(AKBの川栄李奈)に対して開かれた学級裁判の演出のうまさ。普段自己中心的な彼女に対してみなが不利な証言をしていくなかで投げやりな彼女の態度と睦美(AKBの朱里)による擁護があったあとの感情をさらすところは演技もうまく、手作り裁判所の意図的な適当さと相まって緊迫感があった。。


【テレビ東京】セーラーゾンビ 第6話「糾弾」 - YouTube


ほか、いろいろあって学校にいられなくなってキャンピングカーで放浪するなか、過去の、平和だった時代の幸せだったころの話をするところは従来のゾンビものではあまりないところで新鮮。そこでの会話で「過去の話は楽しいけれど、未来の話はする気にならない」というものが印象的。思春期の不安定さと捨て鉢さがゾンビ世界とマッチしている気がする。

崩壊後の社会なのになぜかみんなメイクもパッチリ、衣装もパリッとしているのはご愛敬。演技が下手なのもB級感あってかえって好感度高い。AKBやっぱりすごいぞ・・・

この世界の行方なんて誰も気にせずに日々を生き抜くセーラーゾンビがどう結末を迎えるのか、かなり楽しみなような怖いような。


あんまりゾンビ映画を観ているわけではないのでゾンビ業界での評価が気になるところではあるけれどドラマもAKBもあまり知らない自分が観てもおもしろかったのでみなさんもぜひ観ましょう。

イントロダクション|セーラーゾンビ:テレビ東京

蛇足

ちなみにゾンビ映画のレビューと言えばこれが最高だった。この才能がねたましい・・・。
このゾンビ映画を作ったのは誰だ!:『ワールド・ウォーZ』と『ウォーム・ボディーズ』 - 冒険野郎マクガイヤー@はてな

あと、これは思いつきなんだけれど、クリスマスにゾンビ映画を観るという習慣を流行らせたい(提案)

ディストピアと人間 「すばらしい新世界」「一九八四年」

人はSFになにを求めているのか。科学的興奮?少し不思議(SF)なものへの好奇心?緻密な設定と世界観?ただ物語を消費する?まあ、そういう小難しい理屈はなくてただそれがおもしろいからというのが理由だと思う。それを掘り下げていっても人間が何に楽しみを感じるかという主観的で哲学的な問題といくばくかのマーケティング的なトピックに帰着するだけだろう。

最近、自分はSFを読んでその描かれた世界から自分たちの世界への皮肉みたいなものを楽しんでいるかもしれない。別に学びを得るというわけではなく予言の占いがありえなくともどきっとするような感覚。


そんなことを思ったのは「すばらしい新世界」を読んでみたから。
1932年に初版がでたこの小説はいわゆるディストピア小説。反ユートピア。一見、平和で満ち足りた世界のようだけれど、それはかなりの制約のうえに成り立っているというものを描いている。


このSFの世界観を簡単に紹介する。まず、すべての人間は受精卵の段階から培養ビンで育てられ生まれながらに階級が分けられている。それも下級は意図的に酸素供給を減らして体格を小さくしたり知能を抑えたりするほど念のはいった階級社会。しかし睡眠学習と条件付け教育で、それには疑問を持たせないようにし、すべての階級の人間は自分はこの階級で良かったと思うようになっており上の階級を嫉妬することはないようになっている。また社会を安定化するために小説や宗教は忌避されるように条件付けられ、かわりにスポーツや娯楽消費、フリーセックスと爽快な気分になる薬剤ソーマが奨励されている。家族の解体は「親」という言葉が下品にとられたりするほどだ。

そんな社会に、不運から隔離された未開社会で育ち、たまたま現地に残されていたシェイクスピアを読んで育った野蛮人が入っていったらどう写るのか。その野蛮人と、現代社会の中でもつまはじきにされていた上位階級の男、そして世界統制官との対話はかなりシニカル。

その進んだ人間たちの末路はガリヴァー旅行記のラピュタの話に近い印象を持った。
これはかなり完成された平和で安定した社会。しかしその平和と安定と、自由と自立といういわば人間らしさのようなものは両立できないのだろうかと疑問を投げかけている。




さてそんな中で読んでみたのがいろんなところでオマージュされているジョージ・オーウェルの一九八四年。超有名ディストピア小説の新訳です。こちらは未来の全体主義的な監視社会での絶望とその絶望的な仕組みを描いている。

で、これもただの監視社会ではなく、安定と権力を求めた末の監視社会。人の考えをも取り締まるという思考警察、党の絶対的正しさを証明するために過去の歴史・資料をも改竄する国家。党を代表するビッグブラザースターリンを模しているし全体主義的だ。

主人公は党の発表や発生した事象に合わせて資料を改竄する真理省の役人。社会に反感を持つなか、自由な考えを持つ女性と恋に落ち、思考警察に知られれば即連行される状況でどうなるか・・・。

この抑圧の中での恋愛やその後の心理描写もいいんだけれど抑圧の方向がすばらしい世界とは大違いである。
例えば、すばらしい新世界で1行目から触れられる世界国家のモットーは”共同性”,”同一性”,”安定性”に対してこの一九八四年で5ページ目で触れられている国家オセアニアのスローガンは"戦争は平和なり","自由は隷従なり”,"無知は力なり”。
後者は抑圧社会ということに自覚的すぎて子ども向け作品の悪の組織かとも思えるくらい。

ただ、後半で明らかになるようにこのオセアニアのスローガンは世界と権力の維持のための必須な条件であることがわかる。そしてすばらしい新世界との大きな違いは、そのアプローチではなく求める安定が、「人類社会そのもの」か人間の権力追求によるものかだと思う。人間の業というか欲深さを制御する方向か、それによって制御される方向かと言ってもよい。

満ち足りた世界、というのはなにかを失わざるを得ない。コンドラチェフの波、繁栄と停滞と革命の循環を克服するべきなのかどうか。今の世の中のポピュリズムナショナリズムを見るとちょっと暗澹とした気分になるけれど・・・どうだろう。読んだ人同士で話をしてみたい。


すばらしい新世界は物語や人間像は古びるものではなく、ガリヴァー旅行記と合わせてこれからも読まれるだろうし、一九八四年はこの技術が発達し容易に監視社会が実現できるようになったいま、新たな風刺としての力が生まれているようにも思う。



ほかのディストピアとして思いつくのは貴志祐介の「新世界より」、「銃夢」のザレム、「Vフォー・ヴァンデッタ」、「未来世紀ブラジル」あたりだけれど、どれもSFのフィクション要素が強すぎてディストピア感はないかな。現実世界がすでに繁栄のピークを過ぎて退廃感があるからもう流行らないのかもしれない。


すばらしい新世界 (光文社古典新訳文庫)

すばらしい新世界 (光文社古典新訳文庫)

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)

どちらも新訳で読みやすいです。

蛇足1.

あと「すばらしい新世界」も「一九八四年」、「Vフォー・ヴァンデッタ」にしてもイギリスのロンドンが舞台というのは興味深い。ディストピア的発想は大英帝国の繁栄と大陸のファシズムへの恐怖にあったのかも。

蛇足2.

どちらも性的な表現があるのだけれど、すばらしい新世界のがよかったです。
フリーセックス社会に生きるレーニナ(レーニンのもじり)が未開の地でシェイクスピアを読んで育ったジョンに求愛しそれを拒否するシーンとか。

人造国家「満州帝国」の夢と闇 「阿片王」「甘粕大尉」「満州事変から日中戦争へ」

満州*1という言葉にどんなイメージを持っているだろうか?
自分は世界史の授業で習ったことくらいしか知らなかった。満州事変、語感が良くて覚えやすい張作霖爆殺事件、映画にもなったラストエンペラー溥儀くらい。

けれど、当時の世界情勢の中でのそれらの事件の位置づけやその渦中にいた人々を少し調べてみると、この満州という地域がかなり興味深いところであることがわかってきた。

建国後13年で地上から消滅した人造国家である「満州帝国」。そこには戦後の高度経済成長のプロトタイプが存在していたという。最高時速130kmの超特急「あじあ号」、合理的な集合住宅、アジア初の水洗便所まであったそうだ。しかしその陰では統治のためになんでもやったという国策会社や特務機関の暗躍。素性の怪しい大陸浪人たちも大勢いたし現地民の虐殺や土地の収奪もあった。

なぜ日本は侵略しようとしたのか、どうして独立国をつくろうとしたのか。そしてずるずると日中戦争まで進んでしまったのか。
・・・


すこしまえに中国の9.18歴史博物館に寄る機会があってから満州という国への興味が沸いていろいろ本を読んでいる。知らないことが多くておもしろかったので簡単にまとめてみます。

行ってみたときの感想はこちら
九・一八歴史博物館に行ってきた話と満州事変について - うんこめも



まず満州国の成り立ちとその概要について詳細はWikipediaにわりとちゃんと書かれている(出典不詳)。ここを読んでみて気になる項目に飛び続けていると週末をつぶれそう。なので本稿では詳細には立ちいらずに気になった点を対象とします。まだ点と点をつなげられるほど咀嚼できていない・・・
満州国 - Wikipedia



満州を巡る争いと満州国

20世紀初頭、当時の中国では欧米列強と急速に近代化していた日本が帝国主義的な領地戦争を繰り広げていた。
第一次大戦を期に英仏露連合国が日本にドイツ植民地を攻めさせようとしたら日本がこれ好機とばかりに攻めすぎて逆に止められようとしたり、ロシア革命後にはチェコ兵を救う名目で出兵(シベリア出兵)していたりで牽制しあって隙を見せれば攻めるような状態。中国は帝国主義国家間の戦略ゲームの舞台という感じもする。これは陣取りゲーム的なダイナミズムと、人間や他国の領土を資源としかみない自信過剰さも含めてのゲームっぽさがある。その流れの中で日本が出す第21箇条の要求や、満州を支配するであったり人種差別などは当時の日本のかなりの傲慢さが窺える(今はどうだろう?)。これは新聞が部数を伸ばすために国民を煽ったことや陸軍が威勢を保つために行った宣伝が自家中毒しているような印象もある。


そして日本人が糸をひいて建国された満州帝国とその虚構。王道楽土と五族協和*2をうたって建国され、形の上では三権分立だったものの立法院は最後まで開設されず、政治は国務院が担っていた。その長である国務総理は溥儀の天津脱出から従っていた側近ナンバーワンの鄭孝胥だったけれど実権はなく、実質的には日本人が就任した国務院総務長官(のち総務庁次長)が首相に相当する権力を持っていた。また国務院の下には民政・外交・財政など八部が置かれその長を総長(のち大臣)として満州の実力者が就任したもののこれも実権は次長が持ちすべて日本人であった。さらに、じつは総務庁も重要事項については関東軍参謀長の承諾が必要で関東軍司令官満州国の独裁を担っていたという。

のちに海軍の青年将校に暗殺される犬養首相も満州建国には難色を示し、一方でマスコミは関東軍の勇猛さを賞賛していたというのは当時の空気の難しさを表している。


さらに、人口の10%にもみたない日本人だけれど学校では宮城遙拝を求めて日本語を教え、神社では脱帽・最敬礼を強要。1940年も日本に先駆けて主食穀物の配給制度が始まったものの、日本人はコメや小麦粉、朝鮮人にはコメとコウリャンを半々、中国人には官僚や医者などを除いてはコウリャンだけ。コメを食べたことがわかると経済犯として拘留されたという。それでいて王道楽土を謳うというなかなかのディストピアぶり。
日本の貧村から送られる武装移民による農地収奪も残酷だった。それもその行為だけではない。彼らへ日本から送り込まれた志願による花嫁は、後の戦争の激化で男がとられたあとは母と子どもとで敗戦を迎え残留孤児としてかなりの辛酸を嘗めている。


ここらへんは図説 満州帝国という世界史の資料集みたいな本がよくまとめていた。
本書では日清戦争からはじまってシベリア抑留や残留孤児までの満州の歴史と実情を豊富な写真で解説している。

図説 満州帝国 (ふくろうの本/日本の歴史)

図説 満州帝国 (ふくろうの本/日本の歴史)



さらに、脇道に入って調べると国家建設に携わっていた人間たちの魅力に気付く。表立っていた満州の建設に関わった石原莞爾ら陸軍の参謀連中や満鉄初代総裁のちの東京市長後藤新平満州の産業化を強力に推進し後に総理となる岸信介ら。
しかし表舞台に出ないなかにこそ魅力がある。


さて、満州国は建国当初の予算の見積を6400万元としいたのだけれどその15,6%は阿片の専売収入から計上していたという。その阿片の販売を一手に引き受けた日本人についての話がある。

阿片王 満州夜と霧

この本でとりあげられている里見甫は日本の統治政策の裏側、軍の嘱託を受け宣撫工作をすすめ阿片王と呼ばれるまでになった男だ。簡単に彼のことを紹介する。

福岡の中学を卒業後に留学生として上海の東亜同文書院に入学、卒業後は新聞記者からはじまり中国の地下組織や政治家、軍とのコネクションを厚くする。そして満州に聯合と電通の通信網を統合させた満州国通信社をつくり主幹兼主筆となる。このとき36才。軌道に乗せたところで職を辞し上海へ。ここで軍の資金調達のために大量の阿片を密輸し捌いていく。ここでの利益は特務機関や日本の傀儡であった汪兆銘政権の資金だけでなく蒋介石政権にも流れていたという。
さらっと書いたけれど、海外で大量の阿片を仕入れてそれを異国で販売するというのは当時でもかなり危険な仕事だしよほどの組織を構築し人心を掌握していないとできない。

彼を中心に混乱期だからこそ頭角を現した人物たちが描かれていて現代版の三国志か何かと錯覚するほど。しがらみもモラルもほとんどないところだけでしか開花させ得ない能力というのがあると思う。ほぼ統治がなされていなかった大地につくられた人造国家とそこに群がる人と金というのはITバブルでの狂乱騒ぎに似ているかもしれない。


阿片王―満州の夜と霧 (新潮文庫)

阿片王―満州の夜と霧 (新潮文庫)

この佐野眞一によるノンフィクション。まっとうな人物伝であった「旅する巨人」といった作品から実話誌系のあやしさをもつ「誰にも語られたくなかった沖縄」など書いている彼も満州にのめり込んでいるようだ。書き方としては佐野眞一後期の作品に見られるように下品な感じがあるし取材過程を前面に出しすぎて人物伝としては筋が見えないきらいもあるけれどテーマがいいから読ませる。



本書にもう一人、謀略者としてあげられていた男がいる。満州の夜の帝王と呼ばれた甘粕正彦である。

甘粕大尉

ほとんどの人は甘粕正彦のことを知らないと思うので簡単に紹介してみる。

1891年生まれで陸軍士官学校を卒業後に歩兵となるも怪我で憲兵に転科。麹町憲兵分隊長となった直後に発生した関東大震災の折に、アナーキストの首魁、大杉栄伊藤野枝、その7才の甥を殺害し遺棄したとされる。そして禁固10年の判決を受け、2年後に出獄、その後2年間フランスに留学する。その後に満州に渡り調査・謀略にかかわり偽装テロ事件や皇帝溥儀を極秘裏に移送し満州国樹立に関係する。建国後は警務司長や満州の唯一の政党である協和会の総務部長などを経て大陸での映画の配給や制作を担当する満洲映画協会の理事長になる。敗戦直後に自殺。


まず、大杉栄の虐殺について。これは裁判では甘粕が犯人という結論になっているけれど軍上層部からの命令でありその泥をかぶったのではないかという説が強そうでもある。これは事後に軍がフランス留学の費用を出したことなどからも推測される。ただ、この7歳児まで殺したという汚名は晩年まで付きまとい、それが彼の人生・考え方に大きな影を残しているようだ。その後の一見華やかなイメージがあるフランス留学はしかし、当時の手紙などからはフランスの田舎でやることもなく孤独でただ時間を消費するだけであった姿が浮かんでくる。

彼を慕うひとがその魅力としてあげた謹厳さと大局観には刑務所時代やこの留学時代のことが影響しているように思えてならない。

そういう訳ありな人たちが新天地としての満州にわたっていたようだ。
彼は皇帝溥儀を苦力に変装させたり行李に隠して運ぶような陰謀の担い手であるかと思えば、映画制作・オーケストラの結成や文化活動にも尽力し満州を本気で五民族の国にしようとしていたようだ(ただし、当時の一般の日本人と同じく、日本が主であるという考えからは抜け出せていない)。また、満州国関東軍司令部に好きなときに入れるような権勢をもちながらも、その硬骨漢ぶりから関東軍からは疎まれていたこともある。それまで利権機関として腐敗しきっていたという満映に理事長としてはいったあとの徹底した改革の経営センスとリーダーシップもあってそこで生み出した資金工作活動に使っていたということである。

ほか、満州建国ののち、欧州に5民族の代表を引き連れてムッソリーニナチスドイツ、イギリスなどに挨拶回りにいった際も低く見られないように服装にかなり気を遣っている描写もあったし。戦争末期、燃料が足りない軍が、北京の街路樹を切り倒そうとしたときに、美観を損ねないよう軍を止めたりしていたという美意識もおもしろい。彼は満州の多くの民族からも尊敬され、その死後は、当時の日本人には珍しく弔意を集めたという。


ほか柳条湖事件満州事変を起こした関東軍参謀の板垣征四郎(後の大将、陸相東京裁判にて死刑)や石原莞爾などとの話や、東条英機との師弟関係など興味深い話題が多い。人柄と満州の空気を描いた名人物伝。

しかし、弟が三菱信託銀行の社長にまでなっていたり、息子が三菱電機の副社長になっていたりするしこの時代に活躍した人から辿れる血脈の強さはなんなんだろう・・・。


甘粕大尉 (ちくま文庫)

甘粕大尉 (ちくま文庫)

ほか謀略にかかわっていたものとしては大手財閥が出資した軍のダミー企業である昭和通商や民俗学者を集めた植民地統治を研究する機関、有名なところでは満州鉄道調査部などもあるようでこれらもかなり興味深いところ。



さて、そこにいた人々も興味深いけれど、なぜ日本は満州事変日中戦争という泥沼に突っ込んでいったのか。

満州事変から日中戦争

高校の世界史の授業では日中戦争がどういう戦争だったのかよくわかっていなかった。
単なる侵略戦争だとしたらなぜ始まったのか。そもそも日本はいったいなにと戦っていたのか。軍閥時代の中国には国家的なものはあったのか。満州からはじまりすぐに南京、上海と足を伸ばすもののぜんぜん終了しない。ソ連が関わってきたりリットン調査団が訪れたりいまいち経緯が見えなかった。

広く太平洋戦争の一部としてとらえられることもあるけれど1937年の盧溝橋事件から開始でそのきっかけも1931年の満州事変に遡る。それも日露戦争日清戦争講和条約にすでに火種が埋め込まれていたり国民党を支援したりソ連が絡んだりとたいへんに複雑である。大きな流れとしては一番目に挙げた本を読むのが一番わかりやすいのだけれど、なぜ引き返せなかったのか知るには本書が詳しい。

まず、日本政府も中国国民党も、欧米各国も戦争を避けようとしていたというのだ。日本政府は関東軍を制御しようとしているし中国政府とも交渉しようとしていた。中国(国民党)も日本を刺激しないように現実的な対応をとろうとしていた。リットン調査団の報告書でも、満州事変以降を日本の侵略行為と断定しつつも実効的な対策として日本に道理はないものの緊張を避けるために譲歩すべきと主張していたようだ(ただし、日本国民からは逆に厳しすぎだとして国際連盟に反発されている)。詳細はここにまとめきれないくらい複雑。

日中戦争は不思議な戦争だった。日中双方ともに宣戦布告を行わないまま戦闘が続けられるいっぽう、裏面では太平洋戦争末期に至るまで、種々の対中和平工作が執拗に続けられていた。

双方が相手国に対し、国際不法行為を行ったと主張し、自らのとった強力措置は違法ではないと論戦し合う二国、それこそが1930年代の日本と中国の姿であった。

柳条湖事件のあと、命令なしに越境しての軍事行動をおこした関東軍の幹部はほんとは軍法会議ものなんだけれど閣議で「必要限度をこえないこと」「この趣旨に則り善処せよ」という曖昧対処でお茶を濁したから関東軍はどんどん口実を見つけて作戦地域を広げていったというのもね・・・。赴任したばかりの本庄繁軍司令官板垣征四郎石原莞爾らの参謀に説得されて「空気」に流されてしまったようにみえる。

これは個人的な印象ではあるけれどいろいろと裏目裏目に出ている。直接和平交渉を狙うことで逆に孤立していたり、中国側の穏健派交渉担当者と接触を厚くすることで彼が中国内で排斥されたり都合の良い方向にいこうと国民を扇動した結果、それに振り回されてしまった陸軍。中国に近づけば近づくほど抗日の勢いは増し、ついには国共合作を招く。


あと、天才戦略家と言われた石原莞爾が占領したあとの民衆の反感を過小評価していたというのがわかった。彼は戦術家としては天才的だけれど戦略は任せられない・・・という甘粕正彦の評価もうなずける。

どうすればよかったかも、まわりの国がどうすればその流れを止めることができたかもわからない。
過度の楽観主義と驕慢が無茶な行動を起こしてお互いに酷い目にあったことからは自分に都合の良い前提を持つのは危ないようには思えた。


まとめ

散漫といろんな本を読んでみたけれど満州には人を引きつける乱世と開拓地の魅力があるかもしれない。そしてそれが一方では日本人による虐殺や残留孤児である大地の子ら、シベリア抑留など悲惨なところにもつながり現代にも遺恨を残しているところも気になる。
自分は歴史からはあまり学べていないし教訓も抜き出せないしエンターテイメントを消費するような形でしか満州のことを受け止められていない。けれど、そこで人々が経験したことは知っておく価値はあるように思える。
次は石光真清あたりか残留孤児方面しらべてみようかな。


中国に行ったときに見た、どこまでも平らな大地に沈む大きな夕陽に取り付かれてしまったかもしれない。

*1:中国のポリティカリーコレクト的には偽満州中国東北部とするそうだけれど本エントリでは満州とします

*2:満州民族・蒙古民族・漢民族朝鮮民族日本民族

病と人について 「感染宣告」、「ペコの闘病日記」

たまたま病気系の本を続けて読んだのでメモ

感染宣告

HIV感染者とその周囲の人たちの苦悩を切り取った石井光太によるインタビュー集。
宣告・家族・花嫁・夫婦・妊娠と5章にわけられ患者やその家族・パートナーによって語られており数字だけではわからないリアルが重い。

もはやHIV感染は正しく治療を受ければ死ぬことはないし管理していれば性行為でも移すことは滅多にない。それでもHIVが大きく人生を狂わせるのは、それが性行為によって感染するからだと思う。パートナーにとってみれば裏切りの証でもある。特に、男性では同性愛による性行為で感染することが多いため結婚しているなかで発覚すると二重の裏切りになる。それについて本人だけでなく妻の視点でも語られておりやるせない気持ちになってしまう。


一番印象に残ったのは薬害エイズの男性患者とその恋人、家族の話。
まず彼はHIVになってからのほうがモテたという。これは、好意を寄せる女の子の中には、“死にゆく男性と恋をして傍に付き添いたい”と願って近づく人がいるからだそうだ。その倒錯に悩む彼の苦悩とHIV感染が分かってから付き合いだしたその彼女のヒロイン思考が気になるところ。彼女には知的障害者だった妹さんがいてつねに尽くして生きてきたということだがその人格形成にどう影響しているのだろう。そして重いのがお互いの家族の悩み。HIVに感染していて血友病のために働いていない無職の息子が女性と結婚することについて直接インタビューを重ねてエゴと苦悩を引きずり出している。先立たれた妻の残した愛娘がHIV患者のそれも無職の男と結婚したいと伝えてきた父親。もう想像するだけで暗澹たる気持ちになる。


HIVエイズについてはこちらが詳しい。年間1000人以上が感染しており数も増加中。
HIV・エイズって何? | HIV検査・相談マップ

ぼくたちのまわりには病や死は驚くほど満ちあふれている・・・。


若年性乳がんになっちゃった!ペコの闘病日記

若年性乳がんになった方のブログ書籍化。帯によると余命半年と宣告されてから2年以上生きているということでその道程の苦しさと希望が得られそうであった。ちょっぴり、癌を克服した人の話を期待していた。

この方はトリプルネガティブという治療法が限られたタイプの乳がんだった。定期検診を受けていたにも関わらず発覚が遅れたとのことだ。手術、放射線治療、抗がん剤と多くの苦しい治療にあたっている姿は前向きさと辛苦がにじみ出ている。治療の末、がんが縮小して日常生活に戻ったと思ったら数ヶ月後に転移が見つかるところは希望からの絶望の落差が読んでいてかなりつらい。

よく勉強していてるようで医療の問題への示唆も興味深い。日本では治療薬の認可が遅く、欧米で効果がでたとされる治療法がなかなか使えないドラッグ・ラグという問題、マンモグラフィーをとっても専門医でないと適切に読影できない問題。ピンクリボンの運動が患者を傷つけることになっていたり(なんだよチャリティーヌードって)。

また、その合間合間、旦那さんやペット、友人との交流や香港や韓国への旅行での楽しそうな姿の差もまっすぐ見れない。iPhone4が発売されて予約した話に、なぜか重い現実感を覚えた。


旦那さんの献身も透いて見えるけれど、ほんとたいへんだと思う。どうやって向き合っていたんだろうか。
結婚してすぐ、まだ若いのに嫁が癌だと宣告されて克服するにしても一生がんと付き合っていかないといけない。生死に関わる本人が自分には想像も難しいけれど肉体的にも精神的にも一番辛いとは思う。ただそれを支えるパートナーには別の種類の、やり場のない苦しさがあるだろう。
自分ごとだとしたらどうだろう。もし親が病気になったら、パートナーが病気になったら、自分が病気になったら、想像するだけでも自分の弱さが露わになって現実から目を背けようとしてしまう。



以前に「エボラ―殺人ウイルスが初めて人類を襲った日」とかを読んだときはその体中の穴から血の混じった泡のような体液を垂れ流し1週間で死ぬこの病気かなりの恐怖を感じたけれど、それは実話誌的というかポルノ的な恐怖であって、自分ごととして考える現実感はなかった。水俣病や地方病、原爆症の話も深刻ではあるけれど社会問題と数字の視点でしか見ていなかったかもしれない。



・・・
読後、このブログを探してみたところ当初にもっていた生き延びるのかもという希望はうっすら感じていたとおりに裏切られた。著者はこの単行本が出て2日後に亡くなったということ。お悔やみ申し上げます。
若年性乳がんになっちゃった! ペコの闘病日記/ウェブリブログ

若年性乳がんになっちゃった!―ペコの闘病日記

若年性乳がんになっちゃった!―ペコの闘病日記



動機について

近頃、闘病記とか貧困ルポをよく読んだりする。
この記事を書くときに、なんで手に取ったかを説明しようと考えてみると、べつに読んでいて楽しくもないし直接問題意識を持っているわけでもないしでよくわからない。無理矢理ひねりだすと、五体満足で衣食住にも(勤務時間を除けば)そこそこ恵まれた単調な生活をしている自分が、死に直面している彼ら彼女らに感情移入することで生きている実感を得るために読んでいるのではないかという考えが浮かんできた。
なんだかできの悪い中二病作品みたいで最低だし、自分としては違うつもりではあるのだけれど記録として共有しておく。

ヤマザキ春のパンまつり攻略記録2014

30年以上続く歴史ある祭りである「ヤマザキ春のパンまつり」に初めて参加し、かつ一定の成果を得ることができたのでその記録を残しておく。

もうみんな知っていると思うけれど、簡単に説明するとヤマザキ春のパンまつり(「祭り」ではないことに注意)は1981年からはじまっているイベントで応募者全員にお皿が必ずもらえるというものだ。

今年で34回目だし、累計で4億2900万枚も交換されているというからもはや国民的なフェスティバルといっても過言ではないと思う。春と言えば「出会いと別れ、桜とパンまつり」である。

山崎製パン | 2014年 春のパンまつり | 「白いお皿」ヒストリー

ニコニコ大百科にも詳しい。
ヤマザキ春のパンまつりとは (ヤマザキハルノパンマツリとは) [単語記事] - ニコニコ大百科


きっかけとしては店頭でたまたま応募券を目にしてマーケティングにのせられただけなのだけれど、たいていのことはきっとささいなことがきっかけになっているに違いない。さて、さっそくその攻略記録に入っていく。

戦略

1.効率的購買
100円程度の菓子パンで1ポイント、180円から200円程度のダブルソフト(6枚切り)で3点。つまり食パン最強である。自分は8枚切りとかより分厚い方が食べやすいので最初は超芳熟、そして後半にはダブルソフト戦略をチョイス。

ちなみに25点集めるにはダブルソフト8袋と菓子パン一つ。ダブルソフト8袋だと48枚。1日に2枚食べるとして1ヶ月程度で達成可能だ。8袋だと1600円。これで美味しいパンが食べれてお皿がついてくるのならわりかしお得なんじゃないだろうか。


2.協力プレイ
パンを食べていても本気で集めるつもりがない人はいる。そういった人からもらう。職場とか部室とかに貼っておくと自然と集まることもある。貼ってくれた人にはお礼にお菓子をあげるとよい。食コミュニケーションは偉大なり。


食パンレシピ

食パンばかり食べると飽きるのでレシピを工夫する。食パンは真っ白なキャンバス。あなた色に染めよう。


1.チーズ&ミートソース
食べる前から分かっていたけれど、普通に美味しい。ミートソースはご飯に載せてもパスタに絡めてもパンに塗っても美味しいし出来る子だ。量産して凍らせたらけっこう持つし素敵な食べ物です。
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サンドイッチにしてモスバーガー感を出そうと思ったけれどこぼれそうになって食べにくい。
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2.ネギトロオンザトースト
スーパーでまぐろのたたきが半額になっていたのでつい。
焼いた食パンに海苔を敷いてまぐろのたたきを塗る。そして刻んだ大葉と醤油をかける。なかなか美味しいんだけれど、ご飯にのせたい感じがあった。
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3.しらすトースト
これまたスーパーで半額だったしらす干しをパンにのせて、そこにバターをひとかけして焼く。

ネタ元は吉田秋生海街diaryのこの食べ方はなかなか美味しいけれど海街でとれたてのを使うともっと美味しいんだろうな。ただししらすがぽとぽと落ちてしまいなかなか食べにくい。作中ではデート中に食べていたけれど危ないんじゃないだろうか。
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海街diary 1 蝉時雨のやむ頃

海街diary 1 蝉時雨のやむ頃



4.ピザのように
学生の頃からよくやっている食べ方。
ケチャップをのせてチーズ、そしてハムやピーマン、タマネギをトッピングする。手軽で美味しくて野菜もとれる。
市販のピザより油っ気が少なくて食べやすいのもよい。ただケチャップだとなにか物足りない感じはするんだよな。
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5,ツナコーン
ツナ缶とコーン、タマネギとミックスハーブをまぜて塗る。トーストした後のツナの香ばしさがたまらなくて何枚でも食べられそう。見た目よりさっぱりしていて美味しい。
ただ、コンビニのツナサンドにある謎のジャンキー感がなくてもうちょっとパンチが欲しい感じはある。美味しいんだけれどね。
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こうしてみた見るとパンに塗ったのばかりであまりパンの力を引き出しているとは言いがたい。
最近この記事を見つけて自分の視野の狭さを恥じている。
サンドウィッチに秘められた力が目覚めるレシピ「本当に旨いサンドウィッチの作り方100」のサンドウィッチをいろいろ作ってみました - GIGAZINE


ただ、食パンは白いキャンバス。あらゆる可能性を秘めていることはわかった。まつりは終わったがこれからも戦いは続く。

成果

フランス製のフレンチボウルをもらった。フレンチボウルってなんなのかわからないけれどサラダ皿とかによさそう。
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蛇足:自分と食パン

学生の頃、食パンは好きじゃなかった。
というのも大学1回生のころはあまりお金に余裕がなく、また、お弁当スキルがあるわけでもなくお昼ごはんとして食パンをそのまま持って行ってお昼に食べていた時期があったのだ。

生協の食堂で学友たちは定食を食べているなか、自分は一番カロリーのありそうな小鉢をひとつ買って、主食には食パンに醤油をかけて食べるという生活。友人たちからはかわいそうに、という目で見られるが腹が減っては勉強できないので仕方ない。恥ずかしい気持ちもあったけれど、自分としては温かいご飯はすぐに悪くなるけれど食パンは常温でおいても悪くなりにくいしそのまま食べてもけっこういけると思っていたことを覚えている。

その頃は生協で食べるにしても120円のうどん(香川県人が言うにはこれはうどんではなく練り小麦であるし小麦に失礼な代物らしい)に山のように天かすと七味をかけて食べるという食生活を送っていた。夏休みは1kg198円の素麺と卵ばかり食べていて飽き飽きしていた。

2年目からは生活は改善し学食で定食を食べられるようになって胸をはって大学生活を送れるようになったけれど、そのころの食生活の象徴として冷たい食パンがあった。今でも、焼かないでなにものせていない食パンを食べるとその頃のことを思い出してしまう。

今回のまつりで、いわば食パンマラソンをすることでそうした食パンへの負の感情を昇華することができたかもしれない。

このパンまつりは自分の過去を赦す道程であり改めてパンに感謝する機会であった。
人はパンのみに生きるにあらず、かといってパンがなければ生きていけないのだ。ぼくはトルネコ*1山崎パンからそれを学んだ。

*1:ドラクエ4のスピンオフ、トルネコの大冒険では空腹度が設定され、パンか草を食べて空腹度を回復しないと死んでしまうというシビアな世界観であった