ぜぜ日記

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子どもの名付けで気をつけたい5つの観点

※ 本稿は、人の名前についての文章です。誰かの名前を揶揄したり批判するものではなく、名付けの際になにを気をつけるべきかを考えたものですのでご留意ください。

※ 2015/1/13 22:00 2項目追加しました。タイトルは変えてません。


年末年始、子供につける名前に悩んでいる友人と話す機会があった。

当然だけれど、名前はほんと大事。アイデンティティの記号として一生使われ続ける。けっして書類上のものだけでなく、名前があることでそのものは認知されて存在する。それなのに自分ではほぼ変えることはできず、たいていの場合は親が勝手に決めてしまう。親というのはすごい権力を持っている、とかなんとかかんとか。


これまで生きてきた人間の数だけその命名が行われているということで少なくとも数百億の知見が貯まっているはずだし、書籍もたくさんあるから命名なんて簡単だ、と思いきやそうではなさそう。知見は共有されていなかったり、変な本やサイトもあるし流行廃りがあって難しい。


たとえば「子ども 名前 付け方」でGoogle検索して一番上に出てくるこのサイト。

  • 子供の将来を考えて名前を付ける
  • あえてひらがなにする
  • 姓名判断で良い名前を見つける
  • 子供の名前ランキングを参考に
  • 夫婦の名前から
子供の名前付けで大事にすべき5つの基本の考え方|Wedding Parkマガジン for新婚生活

「5つの基本の考え方」と銘打っていることで期待したんだけれど見出しからしてコレジャナイ感がある・・・。将来を考えた名前の条件を細かくして欲しい。あえてひらがなにするって基本的な考え方なのか。。



名前を付けることはそれだけ難しいということなのだろう。
それに名前を決めるのは常用漢字表人名用漢字表に載っていさえすれば親の自由でもある。イメージなり、願いなり、好きなキャラなりなんでもよい。ただ、そんな中でも苦労する名前と苦労しない名前はあると思っていて、いい音・字面が思い浮かんだ後にでも注意すべき観点がいくつかあるように思う。


図書館で命名の本をさらっと見た感じ、ここらへんの注意点は体系化されていないようだったので僭越ながら書いてみました。
多くの方々はすでに考えていることばかりでしょうのでご笑覧の上、補足・注意点などあれば共有していただければ幸いです。



1.可読性

漢字の名前があったときに正しく読めるかどうか。18歳以上の人のうち、どれくらいが読めるだろうか。単純に読めないと時間もとるし訂正も必要だし、トラブルのタネにもなる。名前を正しく読まれず毎回訂正するのは本人にとっても周囲の人にもストレスだろう。

例えば2014年の男の子の名前ランキング、ここ数年人気でこの年も2位の「大翔」くん。これはなんて読みますか?

明治安田生命 | 名前ランキング2014 - 名前ベスト100 - 男の子*1

読み方をみると「ひろと」、「はると」、「そら」、「やまと」、「たいが」、「たいと」と6パターンもあってくらくらする。教室で名前を呼ぶ先生やお役所の人が苦労するし本人も訂正がたいへんだろう。

対処としては、当て字や無茶な読みをさせないこと、また教養深すぎて読み手を選ぶものも考えものかもしれない。せめて漢字辞典の名乗りに載っているか慣用であるべき。

ただ、あえて変わった名前とすることで名前をネタに会話が広がってよいという説を聞いたことがあるけれど、人に会うたびに同じことを聞かれる本人はつらそう。身を削る営業マンならありかもしれない。


2.伝達性

公共サービスの登録・名義変更やビジネスではいまだに電話を使う場合も多い。このとき、名前を口で説明しやすいかどうかが伝達性。

たとえば、「たくや」という名前はたくさんあるけれど、「開拓のたく」に「なり」です、と伝えたり、「キムタク」と同じですと伝えて分かってもらうためには多少のリテラシーが必要だ。時代時代で変わるもので難しいけれど、あまりに伝えにくいものは避けた方がよいだろう。

ベストは同音異句がないこと。耳で聞いて、この音ならこの字しかないと分かるとスムーズ。


3.画数

これは漢字文化圏古来からある姓名判断の大きな要素だし、苗字と合わせてのバランスもあるもので意識している人は多いと思う。
それだけでなく、まだまだ手書きが必要な場面は多いため、自分の名前の書きやすさという効率性にも影響がある。

ちなみに、これまで出会った中で苗字を合わせて一番画数が少ないのは10画、最大60画*2。たぶん書くのに10数秒程度差があると思う。また、画数が10画とかなり少ないと、たくさんの名前が並ぶ名簿でも目立つので有利のようだ。


4.かな漢字変換

これはワープロ普及後のここ20年で急速に必要になっている指標。可読性や伝達性とも関わっているけれど、Microsoft IMEなど主要な日本語入力システムで変換にどれくらいキーを押す必要があるかというもの。自分だけなら自分のPCに覚えさせればいいけれど、周りのひとへの影響が大きい。

たとえば、ジョジョの奇妙な冒険第3部の主人公「空条承太郎(くうじょうじょうたろう)」、「承」は「じょう」とは普通読まないのでサラのIMEだと変換のためには、「しょうたろう」か「うけたまわるたろう」とする必要があってなかなか手間である。この時代、一発変換できることを狙う必要がある。


5.検索性(ググラビリティ)

これも近年急速に浮上してきた観点で、名前をGoogleやBingで検索したときに本人の情報が上位に出るかどうかというもの。

まず避けたいのは、犯罪者や有名なキャラクター、また芸能人(作家・役者、特にポルノ俳優など含む)と同じ名前となること。もちろん子どもが大きくなる数十年で情勢は変化するけれど、わかるだけでも避けておくべき。そして次に考えるのは、その名前が複数ヒットするか、まったくヒットしないか。
ヒットしない、つまりユニークな名前の場合は、政治家でも目指すのならSEO度高くてよいけれど、もし炎上沙汰をおこしてしまえば一生その呪縛から逃れられないだろう。逆に多数ヒットする場合は、そこそこ一般的でありふれた名前ではあるということだけれど、炎上・ネットストーキング耐性は高いかもしれない。




書き損ねていた観点を思いついたので追記します。5つどころじゃないですね。

(追記1)発音容易性

名前の発音が容易かどうか。日本人にとって口に出しやすいかどうかはほとんどの方が気にするだろうけれど、英語話者が話しやすいかは気にした方がよい。アメリカ人になったつもりで口に出してみるといいんじゃないだろうか。
たとえば「つ」、「っ」、「ラ行」は発音しにくいとされている。

参考)
英語圏の人にとって発音しにくい日本語 | 英語 with Luke


(追記2)多言語での意味

外国人をおもねる必要はないけれど、このグローバル化が避けられない時代、子どもがどういう人生を送るかわからないため、メジャー言語圏において名前で誤解/軽蔑されるものは避けた方がよい。名前の読みを検索するといいだろう。
福井出身というだけで笑うアメリカ野郎もいるくらいなので例えば、福美さん(仮称)はお察し・・・。

参考)
このNAVERまとめがいろんなQAサイトなどから情報を集めている様子。

まとめ

これらの観点は命名で必須のものでもないし、これらの条件がよければいい名前というわけでもない。けれど、これらの条件がわるい名前はそれだけ面倒ごとが増える可能性を持っている。いったん思い浮かんだいい名前を変えるのは難しいかもしれないけれど、いったん考えておくとみんなすこしだけハッピーになれるかもしれない。また、名前を付ける時にはそれがその子の将来にどういう影響をもつか考えると、その名前を持った人間がどう大きくなっていくか想像できて楽しいと思う。

もちろんどの観点も苗字の影響を強く受けるもので、名前だけでどうにもならない場合もあるのでそのときは甘受するしかない。ただ、難読の、珍しい苗字は、奇抜な名前よりもはるかに格好いい(無責任)。



あとがき

そういえば、幼いころ「ある人のものなんだけれど、それを使うのは他人ばかりで本人は使わないものなーんだ」というなぞなぞがあったことを思い出した。答えはこの記事の主題である「名前」で、今思うと本人もたくさん使うんだけれど、当時はなるほどと思ったのを覚えている。自分のものだけれど人がよく使うという意味で、使いやすさは気をつかってもよいと思うのです。

*1:毎年URLを使い回すの辞めて欲しい。

*2:特定されそうだけれどもし特定してもインターネッツには書かないでね!

おもしろノンフィクション2014年

いつのまにか終わりそうな2014年も思い返すといろんなことがあった。
イスラム国の樹立とアメリカによる空爆、ロシアのクリミア編入と世界地図にも影響を与えかねないものもあり、スコットランド独立の住民投票と香港のデモなど民主主義の新しい波もあった。一方でエボラ出血熱が猛威をふるったニュースは近代社会に恐怖を与えている。

国内では集団的自衛権の行使容認、衆院選での自公3分の2確保といった路線のなかで景気回復の兆しがありつつも、それが表面的なだけではないかという観測もある。そして、STAP細胞や佐村河内ゴーストライター、PC遠隔操作などの自己愛こじらせたような犯罪が目立ったのも特筆に値すべきだと思う。


Google unofficial - Year in Search: 検索で振り返る 2014 - YouTube



やっぱり現実はおもしろい。
小説もおもしろいけれど、現実はもっとおもしろい。

その現実のおもしろさの結晶たるノンフィクションはたいていのフィクションよりもよっぽどおもしろい、と思っている。


というわけで今年もいろんなノンフィクションを読んだので振り返ってみる。


※ノンフィクションと銘打っているけれど末尾にはノンフィクション以外のものも触れてみます。あと2014年とタイトルについているけれど2014年に読んだという意味です為念


去年の記事

2013年最高におもしろかったノンフィクション13冊 - うんこめも




マッカーサー大戦回顧録

エンタメ度:★★
登場人物の精神的質量:★★
自伝がノンフィクションかどうかはさておきマッカーサーの自伝はエンタメとしてもレベル高い。今年になって出た抄訳版では自伝特有の冗長さを省いて読めるのでたいへん便利。
彼は日本で一番有名なアメリカ軍人にして日本に最も影響を与えたアメリカ人だと思う。連合国軍司令官という役職によるものだけでなく、彼の人格や考え方が制度や人事となって後の日本に広範い影響を与えている。


本書ではフィリピンでの日本軍からの敗走と立て直し、飛び石戦略での連勝。そして日本統治までの間をまとめている。戦略や組織掌握、本国との交渉など軍記としてもおもしろいのだけれど、ヒロイズムに溢れた性格と実力を兼ね備えたマッカーサーの人物像が透けてみえるのが興味深い。


第二次大戦ものにはほかにもたくさん読ませる文章があるので興味があれば読んでみるといいと思う。ヨーロッパ戦線だと、マンシュタイン回想録とチャーチル第二次世界大戦(未読了)。太平洋戦争だと失敗の本質とか山岡荘八の小説太平洋戦争とかかな。エンタメとしては陸軍中野学校とか満州とか調べると楽しい。

戦争が科学工業を進歩させるというのはよく言われるけれど、それだけでなく傑物を世に出し、名文を残すという機能もありそう。これはもしかすると室町時代みたいな感じかもしれない。



山・動く 湾岸戦争に学ぶ経営戦略

山・動く―湾岸戦争に学ぶ経営戦略

山・動く―湾岸戦争に学ぶ経営戦略

ビジネスに役立つ度:★★
大企業病度:★
装丁のかっこよさ:★★★

例の女子高生も学んだという経営学者のピーター・ドラッカー先生がこんなことを書いていたという。

物流はコスト削減の最後の辺境だ。われわれは物流について、ナポレオンの同時代人がアフリカ大陸の内部について知っていた程度にしかわかっていない。そこに問題があって、大きな問題であることは知っているが、ただそれだけのことだ


いきなり米軍人の自伝が続いてあれだけど、湾岸戦争において軍の後方支援・ロジスティクスの責任者であったガス・パゴニス中将の自伝でもあり湾岸戦争の裏方解説本でもあるこの本を紹介する。サブタイトルは「湾岸戦争に学ぶ経営戦略」とついていてビジネス書っぽい感じもある。

100時間戦争と言われる湾岸戦争は、米軍が一気に戦力を投影して短期決戦で終わったという先入観があったけれど、かなり泥臭いものだった。なにせ40万人もの人間と700万トンもの物資を基地の近くにないサウジアラビアに配備するのだ。手前味噌感はあるけれど、そういった兵站/ロジスティクスの苦労を記述しており興味深い。



甘粕大尉

甘粕大尉 ――増補改訂 (ちくま文庫)

甘粕大尉 ――増補改訂 (ちくま文庫)

登場人物の精神的質量:★★
大陸浪人度:★★
また軍人で恐縮だけれどこれもなかなかの人物。本書で紹介されている甘粕正彦は日本軍関係の特務機関のうち、もっとも引きつけるものがある人物だと思う。
まず、アナーキストの首魁大杉栄を虐殺したとされ禁固10年の判決を受けたところから表舞台に名前が出てくる。しかし、これは陸軍の上層部の命令の泥を被ったという説もありいまだによくわかっていない。2年後に出獄し軍のお金で2年間フランスに留学し、その後に軍を離れて満州に渡り調査・謀略にかかわり偽装テロ事件や皇帝溥儀を極秘裏に移送し満州国樹立に関係する。建国後は民間人ながら警務司長や満州の唯一の政党である協和会の総務部長などを経て大陸での映画の配給や制作を担当する満洲映画協会の理事長になる。

謀略に関わっていながら本気で満州の文化を振興しようとし、現地民からも信頼され、ときに軍と対立しても筋を通す硬骨漢ぶりはおもしろくもあり、キワモノ揃いの日本軍関係者の中でも異様に浮いている。

特務機関、謀略関係では、謀略の昭和裏面史が幅広い話題を紹介していて導入としてはよいと思う。



謎の独立国家 ソマリランド

謎の独立国家ソマリランド

謎の独立国家ソマリランド

未知の世界度:★★★
エンタメ度:★★★
高野秀行による探検録。内戦の続くソマリアの一角に、一地域だけずっと平和を保っている民主国家、ソマリランドがあるらしい。国連にも認められずほとんど情報のないこの国を、現地での取材を重ねて現状や歴史がたいへんわかりやすく描かれている。

ソマリアはいま、首都モガディシュを中心に筆者の言うリアル北斗の拳状態となっている南部ソマリア(ここの首都、モガディシュは米兵が19名戦死したブラックホークダウンの舞台だ)と、ソマリアの海賊の拠点になっているプントランド、そしてソマリランド、その他細かい勢力に別れている。

このソマリランドでは、選挙による民主的な手続きで政権交代も起きているというアフリカでも珍しいほどの民主主義国家。複数政党による民主主義が成立しているというだけでもすごい。その秘密や成り立ちにも触れられていて社会の成り立ちについて考えることもできそうで、ガリバー旅行記くらい現代社会への風刺を感じた。エンタメとしてふつうにおもしろい。



山谷ブルース

山谷ブルース (新潮OH!文庫)

山谷ブルース (新潮OH!文庫)

未知の世界度:★★
暗澹たる気持ち度:★★
他人事じゃない度:★★
東京に来るまで日雇い労働者の街、山谷のことはなにも知らなかった。
アメリカ人の文化人類学者が山谷へ入っていって日雇いの仕事もやりながら山谷のことを観察・記録しているこの本は数ある山谷本のなかでも異色。

山谷の労働者、そこに住む人、支援する人たちへのインタビューは現実の重さを突きつけられる。戦災で家族と住む場所を失って以来山谷にいる人、事故で仕事が続けられなくなった人、裕福な家庭を持っていたけれど不義で出て行かざるを得なかった人などなど・・・。人情的なところと無慈悲さが同居する街という印象もありまだまだ興味は尽きない。政治家・官僚の方にはこの問題は知っていて欲しい感じはある。

詳しくはほかの山谷本と合わせてエントリを書いている。

ドヤ街、山谷についてのメモ - うんこめも



カニは横に歩く 自立障害者たちの半世紀

カニは横に歩く 自立障害者たちの半世紀

カニは横に歩く 自立障害者たちの半世紀

文庫本にして欲しい度:★★
暗澹たる気持ち度:★★
他人事じゃない度:★★

日本でもっとも戦闘的なポリシーを掲げる集団がある。

一、我らは、自らが脳性マヒ者であることを自覚する。
一、我らは、強烈な自己主張を行なう。
一、我らは、愛と正義を否定する。
一、我らは、健全者文明を否定する。
一、我らは、問題解決の路を選ばない。

全国青い芝の会 新行動綱領説明文

この読むだけで鳥肌が立つポリシーを書いたのは脳性マヒ(CP)者たちによる青い芝の会だ。CP者たちの権利獲得までの闘いの歴史は異世界すぎて暗澹たる気持ちになる部分もあるのだけれど非常に読ませる。病気や介護といった話題に興味はなくとも読むべき。また、組織形成とコミュニティ形成に興味があれば読んで得るところは大いにもあると思う。60年代に流行った新左翼系組織よりも切実さが桁違い(これらでは実際に人が殺されたけれど、それは切実さが足りなくて現実感がなかったからだと思う)。


機会があれば、東京ではたまに上映会やっている映画、「山谷 ー やられたらやりかえせ」を見るとよいと思う。これは撮影中と撮影後に監督2人が殺されたという血なまぐさい映画。

この本も詳細は記事を書いている。

障害者による過激な組織「カニは横に歩く」 - うんこめも



世界屠畜紀行

世界屠畜紀行

世界屠畜紀行

未知の世界度:★★
エンタメ度:★
食欲度:★★

本書は韓国、エジプト、バリ島、インド、チェコ、沖縄、東京、アメリカと世界各地の屠畜場を取材して回って屠畜について考えてきた記録。

屠畜を残酷だと思う人がいるのはなぜか、日本ではなぜ屠畜に従事する人が差別されるのか、世界ではどうか?といったことをインタビューをもとに考えている様子が良い。イスラム圏での肉屋は稼いでいるから偉いという合理主義、生きるに必死なモンゴルでの羊と命を共有するように屠畜する文化、社会主義時代のチェコでは肉屋が偉い人にいい肉を流して稼いでいたと文化がさまざま。
肉が好きな人ほど。



聞き書き ニッポンの漁師

聞き書き にっぽんの漁師 (ちくま文庫)

聞き書き にっぽんの漁師 (ちくま文庫)

登場人物の精神的質量:★★
エンタメ度:★★
沖縄から北海道までの日本各地のベテラン漁師13人からの聞き取りを書き起こした本。それぞれ捕る魚も規模も違うけれどみなプロフェッショナルでその考え方は何十年もの経験からのみ得られる重みを感じる。やっぱ、漁というのは自然を相手にした博打という性格をもつものもあってわくわくしてしまう。名インタビューだと思う。

プロフェッショナルの話ってなんでこうおもしろいんだろう。
ホットな話から漁業への後ろ向きな話もあって魚好きならぜひ読むべきだと思う。市場とか寿司職人のプロの話も読んでみたい。






おまけ

あとはノンフィクションじゃないけれどみんなに読んで欲しいよかった本を挙げてみる。

世界が生まれた朝に

世界が生まれた朝に

世界が生まれた朝に

文庫化して欲しい度:★★★
神話度:★★
すごい本。神話といってもいい。今年ナンバーワン小説。

アフリカに生まれたひとりの男の一生が語られている本書。すさまじいのはその一生がアフリカの歴史・悲劇とリンクしていること。文字も年代という概念もなく祖先の霊や呪術、自然が支配する伝統社会に生まれ育つ青年期。そして白人たちの到来と征服を受け、彼らの力に驚く植民地時代。都市で仕事を得、世界大戦での退廃を経験。独立闘争と急激な近代化を見ていく老年期までを描いている。

一生にこれだけの激変を経験した国はコンゴ以外にあるのだろうか。創世記をなぞるようなスケールだ。


もうひとつの魅力は、知と力の追求。主人公は伝統社会での知を身につけつつも自然を観察し伝統社会での祖先の力や呪術を疑い世界の裏にある知を追求する。そして白人の力に圧倒されつつもそれをさぐっていく。終盤、彼らの近代科学の到達した遠く宇宙の事象や科学にとてつもなさを感じる一方で機械主義的な考え方は意味を与えないことに気付き、アフリカの全体的で物事の意味を問う考え方の価値が示唆される流れははっとさせられる。


著者のエマニュエル・ドンガラ氏はコンゴ生まれでアメリカに留学し、いまもマサチューセッツの大学で化学の教授をしている。彼の弟が東大に留学していたり、本書の一部は浅草のホテルで書かれたりなどなにかと日本に縁があるようだ。

訳もたいへん読みやすく緩急のある幻想的な空気をよく伝えていると思う。アフリカ版「百年の孤独」と評され、著者もその影響を語っている。けれど「百年の孤独」と比べてメリハリがついていて読むのに使うエネルギーは5分の1くらいな気がする。登場人物の数が10分の1くらいなのもあるかもしれない・・・。
訳者の高野さんのうまさもある。ドンガラさんに絡む話は、高野さんの「異国トーキョー滞在記」という本で触れられておりたいへんおもしろいのでぜひ。文庫化して欲しい作品。



靴ずれ戦線

靴ずれ戦線 1 (リュウコミックス)

靴ずれ戦線 1 (リュウコミックス)

赤軍度:★
ユーモア:★★
萌え度:★
これもフィクションなんだけれど今年ベストマンガのひとつ。
凄惨な独ソ戦スターリンのいうところの大祖国戦争をコミカルなタッチで描いていてたいへんおもしろい。魔女という共産主義的にはありえないもの(むしろナチスの領分だ)を赤軍が雇って対独戦線にあてるというメルヘンでミリタリーなストーリー。とはいえ最近流行の萌え×ミリタリーではなく戦争の過酷さや死からも目をそらしていない。

話は、NKVD(内務人民委員部)の少尉ナディア(ナージャ)とベルリンを目指す関西弁ばりばりの魔女の娘ワーシェンカとがベルリンを目指して行軍するというもの。そして行く先々の戦線でスラブの伝承や民話に出てくる妖怪みたいなものと遭遇してなんとかするという流れ。それぞれのエピソードは切ないものから笑えるものまでよくできている。

あと、ナチ側魔女(親衛隊の高級中隊指揮官少佐)がたいへんかわいらしくてよい。出てくるたびにワーシェンカにやられて、眼帯になったり左手を鉤爪義手になっていたりと・・・
著者の速水螺旋人さんがいま連載中の大砲とスタンプも要チェック。これは兵站をあつかった紙の兵隊さんのどたばたコメディ。舞台と思しき場所が現在きな臭くなっている・・・。(12月のサイン会行きたかった)


サルでも描けるまんが教室

ユーモア:★★★
神話度:★
装丁凝っている度:★★

実用書の仮面を被ったドフィクションなんだけれど今年ベストマンガのひとつ。
まず表紙をめくってすぐの、マンガができるまでカラーコラムが異常。
インドネシアの木材業者のインタビューからはじまってパルプや紙の加工を学研マンガかってくらい解説してから、険しい顔をした漫画家が真剣にエロ漫画を描いて、これまた真剣な編集者から「もっと食い込みを強調して!」と鋭い指摘を受ける。そして写植屋さんがインタビューを受けながら、ひわいなセリフを打ち込む写真。それが製版され、ふたたび編集部で校了し、厳しい顔をした印刷会社の職人さんのまえをエロ漫画が流れていく様の写真とインタビューがある。そして、それを読む若者。それは読み終わった後、断裁されパルプになり、再生紙へ。そしてトイレットペーパーとしてさらにエロ漫画を読む若者の右手に置かれる。死と再生の雄大な仏教的景観・・・。
ひどすぎる。


はじめは漫画の書き方を項目ごとに4-8ページずつ書いて、ジャンルごとに攻略法がのっていてるんだけれどパロディ・諷刺だらけでいちいちおもしろい。
枠線の項では「陰毛」をつかって枠線をつくってみたり(なに言っているかわからないと思うが本当だ)、ポーズの項では竹熊センセのあられもない姿が描かれていたりいろいろひどいんだけれど、少年漫画で大事なのはメガネくんだと喝破したり、少女漫画と相撲の関連性について洞察していたりとするどい。

後半、彼ら自身が持ち込みして連載がはじまる部分のマンガがおもしろすぎる。苦心と努力?の末に大人気漫画となってアニメ化・グッズ化して絶頂をむかえ、そして人気低迷からどん底まで落ちてホームレスになるところまでを漫画家視点で描かれている、まるで創世と終末を描いた神話のようでもある。
間違いなく傑作。



その他の本

ポピュラーサイエンスでは、錯覚の科学、良心を持たない人々あたりがおもしろかったかな。サイエンスエッセイではカオスの紡ぐ夢の中で。これは後半に収められている小説 進物史観がだいぶよい。SFではすばらしい新世界が古いながらも楽しめた。マンガでは子供はわかってあげない、マスターキートンReマスターがよかったかな。ビジネス書ではリエンジニアリング革命。これはもっと考えたい話題。

映画ではウルフオブウォールストリートが最高すぎてほかはあまり覚えていない。
あとはぼちぼち。


読んで記録に残した本の数

マンガは除いています。
1-3月:16冊
4-6月:17冊
7-9月:14冊
10-12月:23冊
計70冊


2015年に読みたい本も山積みだけれど、もっと専門書を読もう


過去記事

タイトルの統一感のなさといったら・・・



批評ってなんだ

「批評」という言葉にはマイナスなイメージを持つ人も多いと思う。
大学入試の国語の難解な問題であったり、なにも創っていない外野が無責任に作品をあげつらったり。
ただし、ときには鋭い視点にはっとさせられたり、自分が信じていたことに疑いの目を向けるきっかけを与えてくれたり、その批評された作品を深く味わう材料をくれたりもする。

そうした批評のプラスの面を知りたくて、また自分もそういった批評をしてみたいと思い「高校生のための批評入門」という本を手に取ってみた。

高校生のための批評入門

高校生のための批評入門



これは1ページから8ページ程度の古今東西、種々の文章が51編入っている批評集。ところどころ「批評」についてもコラムもあり、これもたいへんおもしろい。



本書の冒頭の言葉によれば、批評というのは評論を読んだり論説文を書くことではなく、もちろん他人の欠点をあげつらうことでも知性を示して利口ぶることでもない。

それは違和感から出発するものだという。他人に対して、物事のあり方に対して、あるいは自分自身の言動に対してふとつまづくようにある抵抗の正体を追求していくことが必然的に鋭い批評になり、ひいては「私の流儀」を確立することになる。

高校生のための、というタイトルではあるが大学受験に出てくる難解な評論を解くためのものではなく、先人の考え方を読むことで自己を確立するためのヒントやきっかけとすることを狙っているとのことだ。


批評家が書いたものだけというわけでない。有名どころでは、藤原新也森毅チャップリン安部公房中上健次水木しげるボーヴォワール手塚治虫黒澤明澁澤龍彦岩井克人、阿部謹也、カフカサン=テグジュペリなども書いている。これだけ羅列するだけで作者買いしたくなってくる。もちろん名前だけではない。さらっと書いてあるのに、これまでの常識をなにかしら揺さぶられる文章ばかり。


ひとつ印象に残っている言語と文化についての文章を簡単に紹介する。
brotherという英語は日本語では兄か弟か区別されない。これは日本文化では長幼の別に気を遣っているということを示している。一方で、日本語で女性を呼ぶときには「だれだれさん」で済ます一方で英語圏ではMissとMrsで既婚かどうかを識別する文化になっている(現在はMsという言葉が人為的につくられて流通している)。これらの例から言語と文化が不可分であることがわかると思う。そして、差別用語でも差別する側に立つ人は無意識に、悪意なくその言葉を使ってしまう。つまり一般化している言語/思考のパターンに身をまかせていると自分の誤りが見えなくなることがあるという。この結論は当たり前ではあるんだけれど、言語が自分の考え方を縛っている具体例を簡潔に指摘していて考えるヒントになった。


また、本書は1987年出版ではあるが、51編中一番最後にチェルノブイリ事故が起きた後の原子力発電のリスクについて触れたものを置いているのには、なにか震撼させられる。特に、脚注のチェルノブイリ原発事故の項では事故の概要について説明したあとに「わが国の原子力産業界は、事故が発生した直後、原因についての情報はないまま、タイプの違いを理由に『日本ではあり得ない事故』と強調した」と締めくくられているところにぞっとする寒気を覚える。

思考停止に気付き、違和感を掘り下げて言語化することができるということの大切さと、その難しさを本書とは別に現実が教えてくれていて暗澹たる気持ちになる。



これきっかけで読んだ藤原新也の「東京漂流」もよい。

新版 東京漂流 (新潮文庫)

新版 東京漂流 (新潮文庫)

読んだ本 2014年10月-12月

この3ヶ月はわりとめまぐるしい日々でいろんなことがあった。ただ、仕事は忙しかったけれど貯まっていた本をいろいろ読めたと思う。これを書いているのは12月25日のクリスマスでまだ12月は終わっていないけれど年末年始には書けなさそうなのでこの聖なる日に記憶を辿ってみる。


あと、本がたくさんたまっているので欲しい人はあげます。

東京の清澄白河あたりまでお越しいただければ100円で、送付の場合は応相談です。

本ゆずります - Google スプレッドシート
一覧タブをご参照ください。



住宅政策何が問題か

住宅政策のどこが問題か (光文社新書)

住宅政策のどこが問題か (光文社新書)

住宅政策というよりは住宅事情の実際とメイン。
年齢・性別・各世代(コーホート)・収入ごとに住宅の事情がどうなっているのかを実データをもとに記述している。

戦後に増えてきた持ち家と、これを資産形成の手段にする話も興味深いのだけれど、一番おもしろいのは住宅政策の目標。

低利率のローンの提供など戸建てへの支援やかつての公営住宅などハコ形成が主で、これはいずれもある程度の所得がある人を対象にしている。簡単に言えば小金持ち優遇。これは、住宅政策と言うよりは内需のなかで大きな割合を占める住宅建築を通して景気を刺激するという経済振興が元になっている。

低所得者層の住宅政策はあまり十分に出来ていない。よっぽど低所得者生活保護があるか、今後、納税増が見込まれる新婚層のみくらい。低所得者層にとっては住宅がないことが労働をはじめとする社会進出の大きな妨げとなっている。そこで社会保障として住宅が必要になるだろうけれど、その手段はなにが適切なんだろうか。

空き家の利用がカギになりそうだけどどうだろうかと思うけど、本書にはあまり書かれていなかった。



ビブリオバトル 本を知り人を知る書評ゲーム

たにちゅーさんのご著書。じつはけっこうまえに手に入れていたのだけれど読み損ねていたのは内緒。
ビブリオバトルというのを簡単に説明すると、何人かで本を持ち寄って各自が5分間、本の紹介をしてから誰の本が一番読みたいかを決める書評バトルである。
最近はテレビやメディアでも取り上げられていたり日本各地で大小種々のイベントが日々開催されているので知っている人も多いと思う。

実際にやるとただ本を知ることが出来るだけでなく、初対面の人でも人となりが知れて話が盛り上がったり、身近な人の意外な一面を発見したり、自分の考えを言語化することで自分のことすらわかってくる。
そう漠然と思っていたんだけれど、この本を読んでコミュニティを開発する機能があるというのが説明されていてなるほど、と思う。簡単なルールなんだけれど、そこから秩序が生まれてくるのおもしろい。

大学院に入院していたころによくやっていたんだけれど、最近は職場の雰囲気や、自分の引き籠もり力の高まりのためにあまりできていない。またやりたいので興味ある人ご連絡ください。



カオスが紡ぐ夢の中で

金子先生の複雑系エッセイ。前半が複雑系や科学や研究についての読みもの。後半は小説、進物史観。これが最高。
進化する物語史観を意味し、遺伝アルゴリズムで物語を生み出していく研究が社会に影響を与えていく様を描いている。架空の作家として「円城塔」という言葉が出てきて調べてみると、ほんとに名前の由来らしい。読み終わって後書きのまえに本物円城塔による解説がついていてさらに驚く。なんでも金子先生の研究室にいたらしい。

そういえば高校生くらいのときに読んだ、『「複雑系」とは何か』はけっこう考え方に影響を与えている気がするな。いま思うといい加減なとこもあるけど。



ホームレス入門

人間ドキュメント ホームレス入門―上野の森の紳士録

人間ドキュメント ホームレス入門―上野の森の紳士録

バブル後あたりに失業して上野公園のホームレスたちと交流していた風樹茂さんの日記。
彼は若い頃は政策提言をしていたりODAの海外コンサルタントをしていたようで、いまは文筆業っぽくて結局ホームレスはしていない。

けれどいろんなホームレスの人との交流や、団交、都による追い出し、韓国のキリスト教系教会による炊き出しなどの様子を主観で描写している。
決して自堕落だからホームレスになっているわけではなく、社会状況から仕方なくなっている人も多いことがわかる。公共側や一般人がどう関わっていくか、難しいところです。明日の我が身と考えることが出来るかどうか・・・。
あと己の悟り・解脱のみを目指す仏教は支援しなく、キリスト教系ばかり支援しているというのは山谷でも聞いた話で興味深い。

ホームレスの人がどう生計をたてて、どこでどう生活しているかはもっと知りたいな。



京都と闇社会

京都と闇社会~古都を支配する隠微な黒幕たち (宝島SUGOI文庫)

京都と闇社会~古都を支配する隠微な黒幕たち (宝島SUGOI文庫)

  • 作者: 一ノ宮美成,湯浅俊彦,グループ・K21
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2012/10/04
  • メディア: 文庫
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京都に集まる富と権力を巡るお話でたいへん興味深い。
暴力団がノンバンクから同和事業、警察まで絡んでいたり、10数年前に市内で銃弾が飛び交う抗争があったことも知らなかった。

特に京都駅前の地上げを巡る崇仁協議会と武富士暴力団の絡みはほんとえげつない。崇仁協議会はWikipediaの項目も消されているけれど巨額の地上げと怪しい融資、不動産投資と黒すぎて死にそう。

まっとうなビジネスしていてこんな連中に絡まれたらつらいなー、と思う。


この本でとりあげられている関係各位
許永中 - Wikipedia
高山登久太郎 - Wikipedia
佐川清 - Wikipedia
細木数子 - Wikipedia
山段芳春 - Wikipedia
裏千家 - Wikipedia
西本願寺 - Wikipedia



ユダヤ人とダイヤモンド

ユダヤ人とダイヤモンド (幻冬舎新書)

ユダヤ人とダイヤモンド (幻冬舎新書)

ダイヤモンドという至高の宝石の歴史と、それと交差するユダヤ人のディアスポラ遍歴読みもの。
ダイヤモンド市場の度重なる不況や、中世ヨーロッパでのキリスト教徒による迫害、ナチスユダヤ人虐殺など多くの惨禍を経てきたなかでどう生き延びてきてデビアス社という一大カルテルを築き上げたかをわかりやすく説明している。
セシル・ローズあたりの帝国主義ロスチャイルド家の金融操作、オッペンハイマーのビジネスの駆け引きはそれぞれ調べるとおもしろそう。

こういう、ひとつの商材を中心に歴史を紐解くというのはいろいろと興味をかき立てられてよい。類書だと「コーヒーが廻り世界史が廻る」とかもよかった。ほかに何があるだろうか。

ただ、著者の経験も内容もいいし、新書向きにわかりやすく書いているのになぜか頭に入りにくい。半端に一人称ストーリー仕掛けにしてるからだろうか。



石油がわかれば世界が読める

石油がわかれば世界が読める (朝日新書)

石油がわかれば世界が読める (朝日新書)

石油・・・現代でも最もよく使われるエネルギー源であり、プラスチックからシャンプーまで日常のどこにでもあらわれる製品の原料であり、太平洋戦争開戦の直接の原因でもある最重要戦略物資。

その石油について社団法人石油学会がまとめたのが本書。もっとも利用されているエネルギーである石油についてさまざまな面からわかりやすく描かれているので関連業界やエネルギーに興味がある人は読んでみるといいと思う。


あまり知らなかった話をいくつか紹介してみる。
まず、サーマルリサイクルとマテリアルリサイクルの話。ペットボトルからペットボトルをつくると石油からペットボトルをつくるのの3倍エネルギーがかかるが、質量あたりの発熱量は石油もペットボトルもかわらないからサーマルリサイクルに使った方がよいのではということ。
また、ペットボトルのリサイクルでは、回収された容器は国外に売られることが多い、それによってリサイクル設備の稼働率悪化にもつながっているけれど、海外では詰め綿などの低品質用途につかわれているため、ふたたびペットボトルにするためにエネルギーをかけるよりは環境面に貢献できているのではという話があった。
ただ、ドイツや昔の一升瓶のようにリユースにつなげたほうがよいだろう、とも。


ここしばらく流行のバイオマスについて、食糧と競合することによる安定供給の面から、食糧と競合しないセルロースなどからのバイオマス技術の開発が待たれるとしている。また、本当に環境に優しいかどうかは、生産までのCO2排出や移動効率性などもあり石油と比べて本当に優位かは条件を精査しないといけないと思う。代替エネルギー化石燃料を代替できるものはまだ存在しない。

日本は中東産の石油に90%ほど依存しているけれど、これは中東の不純物や硫黄化合物が多く相対的に安いものを仕入れて、国内のそれに対応した精製設備で処理するからで経済合理性はあるがリスクがあるそうだ。
そして遅れてやってきた化石燃料である天然ガスLNGにしてもパイプラインにしても巨大でサプライチェーンの構築には大がかりなプロジェクトファイナンスが必要になる。

ほかの化石燃料も検討されているけれど石油ほど安くて取り扱いの便利なエネルギーはほかに存在しない。オイルサンド、オリノコタール、メタンハイドレートなどもまだまだ採掘コストが高くて、本当に石油が枯渇しないと利用されない・研究費が投じられないのではとも思う。


あと、おもしろちのは石油を通じてみた産業史。
19世紀末にロックフェラーが興してリベートや価格決定などに影響力を行使するにいたった石油産業の垂直統合帝国企業のスタンダードオイル、それが米国で初めて独占禁止法の処罰対象になって33の企業に解体されて、石油産業の7人の魔女、セブンシスターズの時代になったりしていた話や彼女らがどうカルテルを形成し大戦中に莫大な利益をあげ続け、そして産油国が形成したOPECによる抵抗と地位の逆転。ロシアとウクライナの政治的駆け引きも含めて、ここらへんの、ただの需要と供給から決まらない価格のメカニズムは興味ある。今後、どうなっていくんでしょうね。


ほか、石油に限らないけれどこれらを原料とした化学工学では副生物や効率の問題だけでなく、インドで2万人前後が死んだというボパール化学工場事故のような危険性もとりあげられていて、難しい分野なんだといまさら感じる。プラントエンジニア、偉い。
メキシコ湾のBPの流出事故なんかはどうなっているんだろう。


今はかなりの原油安になっているけれど、これも中東の産油国が新エネルギーの開発をつぶすためのダンピングだという話も考えられるなー、と思う。



総括せよ!さらば革命敵世代

総括せよ! さらば革命的世代 40年前、キャンパスで何があったか

総括せよ! さらば革命的世代 40年前、キャンパスで何があったか

産経新聞取材班による全共闘世代の現在を取材した話。
体系だってはいないけれど、各セクトのリーダー層から一般層までにインタビューしていて学生革命家のその後はなかなかおもしろい。
かつて革命を目指してゲバ棒を振るっていた全共闘世代の多くがいまの格差社会の問題には特に声をあげていないことに揶揄的。自分も同感です。

なんで彼らは革命を目指したのか。日大のように大学の腐敗を糾すためというのは納得できるし共感する、安保闘争は共感はしないけれど理解はできる。けれど、どこで、どうして世界革命を目指すようになったのか。ロシア革命キューバ革命を夢見ていたのだろうか。たぶん、多くは熱狂していただけだと思う。理想に燃えて、より過激な方向に進んだだけ。組織なき議論は誰でも自由に議論できるという魅力はあるけれど、無責任なまま妥協が排除されて元気のよい強硬な意見に支配されがちになる。
その結果として内ゲバで100人超の死者を出し、学生が労働者を啓蒙するという自信過剰が発生し、大衆の支持を失っていたのだと思う。

ただ、これらの諸問題は今も続いている。
早稲田は最近になってようやく学内から革マル派を追放したけれど、いまもすぐ近くに拠点があるらしいし、いまの反原発デモでも大衆の危機感を利用して扇動・オルグしているセクトがあると聞く。これらに関わることがあるなら本書を読んでおくといいと思う。

60年代から70年代前半までなにがあったかを簡単に体系だって知るには新書「全学連全共闘」がおすすめ。



戦術と指揮

戦術と指揮―命令の与え方・集団の動かし方 (PHP文庫)

戦術と指揮―命令の与え方・集団の動かし方 (PHP文庫)

期待せずに買ったけれどなかなか頭の体操になるしおもしろい。



謀略の昭和裏面史

謀略の昭和裏面史 (宝島社文庫)

謀略の昭和裏面史 (宝島社文庫)

また陰謀モノかよ、と思ったけれどわりときちんとした本だった。未確認情報を未確認と明言し、事実と推測をわけているのが好感。

各事件についても短い項目ながら幅広く紹介していて事典的でもある。
まず戦前では張作霖爆殺などの満州絡みの事件から各クーデター、ゾルゲ事件から特務機関の暗躍まで取り上げ、戦後にはGHQ内の日本人やジャパンロビーにはじまり東京裁判から帝銀事件、下山・三鷹松川事件、ラストボロフ事件や三無事件あたりの未解決事件。そして三島由紀夫の自決やよど号ハイジャック、金大中拉致事件の裏側に焦点を当て、ロッキード事件や各疑獄と関連するフィクサーや事件を紹介している。

陰謀史観にありがちな巨大な仕組みというのはほとんどなくて、誇大妄想が殺人に繋がったりただ自分や組織の利益のためにやりすぎたようなのが多いかな。

そんな中でもやっぱり満州関連は眼を引く。

「平成経済事件の怪物たち」あたりに続くかな。



快感回路

快感回路---なぜ気持ちいいのか なぜやめられないのか (河出文庫)

快感回路---なぜ気持ちいいのか なぜやめられないのか (河出文庫)

麻薬や酒、セックスやギャンブルに依存してしまう際、体内でいったいなにが起こっているかを科学的な知見をもとに概説している。悪徳美徳も依存する。快感が人を導いているのはさもありなんだけれど、化学的メカニズムとその実験に項数を割きすぎている感ありでポピュラーサイエンス的なものを期待していると残念かも。



会社法入門

会社法入門 (岩波新書)

会社法入門 (岩波新書)

2006年に施行された会社法についての概要。
会社にまつわる機関や資金調達あたりについて。株主訴訟の判断や運用について興味深かったけれど、解釈・理論についての話がメインでこの分野の教養が無いのもあって薄い新書のくせにけっこう苦労した。(3分の1くらいはざっくり)
会社といってもそこにいる労働者の扱いは驚くほど記述されていない。そういうことは労働法に書かれているとのこと。


デフレ化するセックス

デフレ化するセックス (宝島社新書)

デフレ化するセックス (宝島社新書)

最悪な感じだった。セックスで稼ぐ仕事も競争率が高くなり、稼いでいるのは容姿だけでなく教養のある若い女性ばかりに限られているのだとか。正職につけないなかでも、そういうところでまともに稼げる女性は恵まれていて、そうでない女性は「最貧困女子」になっているのだろーか。

同著者だと「顔のない女たち2」がもっと最悪な気分になったの思い出して最悪な気分になった。



卒業式まで死にません 女子高生南条あやの日記

1999年に自死した高校生の日記本。
中学生のころからリストカットを繰り返して向精神薬を飲んでいて俗に言う「メンヘラ」なのだと思う。
本書はHPや雑誌に掲載した文章やメールの文面を集めたものだけれど、ネットでいわれるメンヘラが持つ強烈な自己愛はあまり感じず、過度といってもいい明るい振る舞いと、読者への献身のような気遣い、ふと見せる頼るもののない不安さが感じられた。生々しくみずみずしい言葉遣いに危うさを覚える。あとAmazonのレビューがなかなか興味深いことになっていて闇。

やってしまいました自傷行為。鞄のサイドポケットかに入っていた使い捨てメスで、ブスブスブスブス。手首の肉を刺してえぐって、ブチンと肉を切り裂きながらメスを抜きます。

同じく若くして自死した高野悦子二十歳の原点の内省的な文章と、印象は全然違うんだけれど人への気遣いになにか通じるものがあるように思える。
あと、巻末に用語集がついているんだけれどうち21項目のうち20はずらずらずらと向精神薬の商品名が説明されているのに最後のひとつのテレホーダイだけ浮きすぎである。



マルクスだったらこう考える

マルクスだったらこう考える (光文社新書)

マルクスだったらこう考える (光文社新書)

ちょっと読んでみて資本主義を目の敵にしすぎだろと感じた。憎みすぎていて、既存の共産党労働組合も貶しているくらい。誘導的だったり賢しぶるレトリックが目に付くけれど、たまにおもしろい発想があった。

自国内の多国籍企業を保護するためには自国の労働者や農民を保護するわけにはいかなくなる。
家族も同じ。家族は資本へ労働者を提供する場。だけれど、世帯主の賃金がグローバリゼーションによってさがれば、教育に関する費用が家族にゆだねられている現状では、子供たちを早々に働きに出すしかなくなる。と。

生産力至上主義を背景にした合理化の嵐が労働者を巻き込もうとしている今、それが本来の人間のあり方を否定するものであることを認識する必要があります。
P63

こんな文章が「人間のあり方」の説明もなしに使われる。扇情的・誘導的といってもいい

ソ連は党が資本家である国家独占資本主義だった。これはマルクスが予想した共産主義ではなかった、これは当時の資本主義がまだ未熟だったなかで革命を起こしてしまったからだとか。

グローバリゼーションは共産主義への移行の始まり。世界のすべてが資本主義になったということは、マルクスが前提にした資本主義社会における二つの階級への分離がはじめて起こる時代は来たということ。

ロシア革命は時期尚早だったのは資本主義がまだ完成されていなかったからという。

国内での搾取こそマルクス主義が浸透する背景なのですが、国外での搾取が強くなると、国内のマルクス主義は衰退するという皮肉な現象を伴います。

本当かよ、という気もするけれど、こういった無根拠だけれど鋭いようにみえる断言は魅力的に映る


資本主義は外部からの搾取でなりたつ。欧米は後進国を外部として、ソ連は、国内のプロレタリアートや衛星国家を外部としてなりたっていた、としている。欧米はどうだろうか。

資本主義を嫌いすぎて、批判しているんだけれどそれと対抗するなにかの欠点や実現性についてはなにも言及しない。うーん。



ハイコンセプト

ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代

ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代

大前研一訳。なにか行動の指針となるような魅力的なコンセプトをつくるためのヒントになるかなと思ってタイトル・訳者買いしてみたけれど中身は自己啓発な感じだった。

簡単に概要だけメモしておく。

  • 状況はじり貧
    • 成熟した資本主義社会において賃金の安いアジアの勃興やオートメーション化で先進国のビジネスマンの地位は脅かされている。
  • 対策は右脳!
    • 機能ではなくデザイン
    • 議論より物語
    • 個別よりも調和
    • 論理ではなく共感
    • まじめだけでなく遊び心
    • モノよりも生きがい

そう、右脳を押しているんです。
自分は右脳思考とか左脳思考とかは懐疑的、というかどっちで考えてようが、右脳か左脳か一般人には計測できないので関係ないと思っている。文脈をとらえるのに右脳が働くからといって右脳を意識する必要はないし、文脈をとらえる力を鍛えるのにも右脳を意識する必要はない。というより意識してどうなるというのだ。

ほかの項目は、いまでこそあたりまえのようになっているけれど、もしかしたらこの本の出た2005年には一般的ではなかったのだろうか。
ポストモダンというかポスト還元主義・ポスト機械主義な自己啓発という感じだろうか。


デザインを学ぶためのデザイン誌や美術館を紹介しているのがけっこう参考になった。
美術館としてはこんなのが挙げられている。

  • クーパー・ヒューイット国立デザイン・ミュージアム(ニューヨーク)
  • デザイン・エクスチェンジ(トロント
  • デザイン・ミュージアム(ロンドン)
  • イームズ・ハウス(ロサンゼルス)
  • ハーバード・ルバリン・デザイン・タイポグラフィ研究所(ニューヨーク)
  • ニューヨーク近代美術館の建築デザイン部門(ニューヨーク)
  • ナショナル・ビルディング・ミュージアム(ワシントン)
  • ビクトリア&アルバート美術館(ロンドン)
  • ヴィトラ・デザイン・ミュージアム(ドイツ、ヴァイル・アム・ライン)
  • ウィル・アイズナー広告デザイン・ミュージアム(ウィスコンシン州ミルウォーキー

日本にデザイン系のがないか調べてみたけれどなさそう。
大前研一が都知事選に出馬した時に、東京都が現代美術館建設に数百億かけようとしていたことを批判していたけれど、せめてデザイン系の美術館つくればよかったのになーとは思う。いい展示があったら教えてください。


史上最大の発明アルゴリズム

史上最大の発明アルゴリズム: 現代社会を造りあげた根本原理(ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ) (ハヤカワ文庫 NF 381)

史上最大の発明アルゴリズム: 現代社会を造りあげた根本原理(ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ) (ハヤカワ文庫 NF 381)

衒学的で文学的な表現だらけで肝心なところも曖昧でつらい。あと訳者あとがきで原著者を婉曲的に非難してるのと小飼弾氏が裏表紙しか読んでないだろって内容の解説をつけてるのもつらすぎた。もうちょっとわかりやすいアルゴリズム発見者列伝はないのでしょうか。



文鮮明自叙伝 平和を愛する世界人として

けっこうおもしろかった。


anan No.1925

男のセクシー特集。すずともさんに買ってもらってしまった。

セクシーは漏れるもの。その人の心の余裕が色気につながっている。

らしい。



雪山登山

雪山登山 (ヤマケイ・テクニカルブック―登山技術全書)

雪山登山 (ヤマケイ・テクニカルブック―登山技術全書)

滑落停止法とか雪崩対策など興味深いことを学べた。ホワイトアウトの中でのロープワンダリングとか、ほんと死を覚悟すると思う。冬山、おそろしいところだ。

最近行った冬山では登山的なことはしなかったので肉体的には安全でしたが精神的には危険でした。



赤いヤッケの男

山岳ホラー短編集。なかなかいい感じでこれにインスパイアされて上の記事を書いたりした。
よく考えたらひさびさの小説かも。それがホラーか・・・



田舎力

田舎力―ヒト・夢・カネが集まる5つの法則 (生活人新書)

田舎力―ヒト・夢・カネが集まる5つの法則 (生活人新書)

離島農村漁村のおもしろ取り組み事例集。
エコツーリズムや有機栽培系で活気が出た事例が目立つけれど、これができるのは限られてるんだよなあ。農業だけで継続的に食っていくのは難しい。



林健二の軽快詰将棋

小林健二の軽快詰将棋 (将棋パワーアップシリーズ)

小林健二の軽快詰将棋 (将棋パワーアップシリーズ)

3手詰めからはじまり9手詰めまで。トイレに置いて一日一題〜三題くらい解いてみたけれど、まあまあおもしろかったと思う。やっぱ強くなるには訓練するしかない。


映画

このごろ、近所に住んでいる友人が映画を借りてきてはうちで観るという文化があってついつい観ている。

ウルフオブウォールストリート

ウルフ・オブ・ウォールストリート [Blu-ray]

ウルフ・オブ・ウォールストリート [Blu-ray]

間違いなく2014年最高の映画。



THE NEXT GENERATION パトレイバー 1

自分「へー、パトレイバーって実写化していたんだ。」
・・・
自分「・・・なにこの設定・・・?なにこの歌・・・?」
友人「監督は押井守なんだよね」
自分「あっ・・・(察し)」


ダイバージェンス

近未来、戦争後の荒廃した社会を安全に運営するために素質によって派閥(fraction)に分けられる社会。
そこでどこにも含まれていない異端者(ダイバージェンス)だと指摘された主人公はどう振る舞っていくか・・・。小道具も空気感もけっこうよくできていた。せいぜい2時間程度の映画で主人公の悩みながらの成長と意志の形成がうまく描かれていたのよい。終わりも社会を変えるといった青い方向にならなく、今後の想像が広がる。
地味でシンプルだけれどよい映画だった(小並感)



グランドイリュージョン

マジシャン VS FBIというスタイリッシュ映画。
マジックな演出と殺陣はほんとかっこいい。ハリウッド・ドンパチ・アクション映画とは一線を画している。
ただ、ストーリーはちょっといただけない部分もある。ヘレンが空気だし最後のとってつけたようなどんでん返しがつらい。ただフランス人刑事はかわいいしマジック演出はクールだしで観て楽しめるとは思う。


たまこラブストーリー

同居人が買ってた。甘酸っぱすぎて死にそう。


幸福の黄色いハンカチ

テレビでやっているのを見た。
人も会話も舞台も時代感あってよい。公害まっさかりとは思えない。ストーリーはシンプルだけれどそれがいいのかな。省略の仕方もうまくて観ていて気持ちいい。
山田洋次監督の、ほかにも観てみようかな。



ほんとにあった!呪いのビデオ 59

まあまあ。前回からの続き物はけっこうよかったけれど、増本くんの使えなさが・・・


ほんとにあった!呪いのビデオ 60

レビューをみると評価が高い。けっこうドキッとするの多くてよかった。
史上もっとも使えない増本くんはどうなってしまうんや・・・




コミックス

子供はわかってあげない

上下巻で完結する不思議ものがたり。なんだけれど、ゆるい絵のわりに台詞回しのテンポがよくて探偵モノでそこそこミステリしていてキャラが安易な類型ではなく立っていてよい。好き。甘酸っぱさもある。

同居人が上巻を渡してくれて読んだ翌日に下巻を買わざるを得ないような出来。のせられていたと思う。



マスターキートン Re:マスター

うおおお!2014年になってマスターキートンの新作が読めるなんて!!しかもふつうにおもしろい!!
雑学のきっかけの多くは美味しんぼマスターキートンから学んだのだ。東欧の血みどろ近代史はもっとおさえておきたい。

そういえば実家に残してきたマスターキートン全巻(キートン動物記含む)がいつのまにかなくなってたのけっこう悲しい。




編集後記

このだらだらと長い書評を読んでくれてありがとうございます。ここまで読めば分かるけれど、私は文学的作品とか本格的な知性の詰まった専門書は読んでいない。いや、じつはこっそり読んではいるけれど全然読み進められていなく、ここで挙げられているような軽いエンタメ作品ばかり消費している。
それは悪いことではないけれどそれに時間かけ過ぎな感はあるので来年はもっとちゃんと本を読んで軽薄な知識だけでなく、なにか価値あるもの(それがなにかはいまだにわからない)を身につけたいものだ。

繰り返しになるけれどビブリオバトル友だち募集中です。

参考記事

山小屋をさまようもの

山小屋で不思議なものを見たんです。


神保町のカレー屋でひさびさにあった後輩のKとひとしきり話をしたあと、彼女はぽつりぽつりとしゃべり出した。

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あれはクリスマス前の寒い週末のことです。
私は友人に誘われて中部地方のD岳中腹にある山小屋に泊まっていました。

—登山なんてしてたっけ?
いえ、私はあまり登山をちゃんとしているわけではありません。
その山小屋も幾分か前に近くにスキー場ができたことから車で降りて数十分で辿り着けるので、私のような登山経験の浅いものでも冬山の体験が安全にできるんです。

・・・そのときは前の週に12月には珍しいドカ雪が降って、このまま行っていいものか不安もすこしはありましたが、当日は気温が上がる予報であったことから問題はないと考えていました。

前日に仕事を無理矢理切り上げて、みんなでレンタカーで向かったのですが、途中のサービスエリアでは雪がしっかり積もって、東京とは異質な寒さで、防寒具が十分かすこし心細く感じたのを覚えています。


除雪された道を通ってたどりついた麓の宿で前泊しましたが、このとき一番不安だったのは泊まった宿をGoogleで調べると、「心霊」という言葉がサジェストされたことです。

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ただ、高度経済成長期感のある宿は落ち着いていてお湯も最高でゆっくりきてもいいかなとは思えました。


翌朝、山へとりかかりましたが、はじめは細い雪だったのが、山にとりかかるころには雨に変わり、気温の高さを恨むこととなりました。

スキー場のわきから山荘までの道に入ると、林は一面の雪にこんもりと覆われており雪が降ってから誰も入っていないことがわかります。一歩踏み出すとずぶりと2,30cmくらい嵌まり歩くのにかなり苦労しました。私は前を歩く友人の後を追うだけだったのでまだ楽でしたが、もし先頭なら、一面の林と雪面ですこし足下に気を遣ったすきに方向を失っていたかもしれません。すぐにびしょ濡れになった手袋と、雨具を伝う冷たい水、足下の悪さと荷物の重さはなかなかつらいものがあります。冷たい風から逃げらず、雪庇を踏み抜く危険がある稜線と比べるとまだましだとは思いましたが、雪林の中の行程は先の見えない不安さがありました。

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雪の中というと静かなイメージがあるかもしれませんが、雨の音と木から不定期に雪が落ちる音はどきりとするものがあります。障害物が多く、なにか潜んでいるんじゃないかという感覚は私たちしか見えないからこそかもしれません。


そんな状態だったので時間をかけて歩いて山小屋の赤い壁が見えた時は嬉しかったです。


ただ、玄関は重い雪に閉ざされており、入るためには2階に設置された扉の雪を払う苦労がありました。ようやく人心地ついたのは暖炉に火を起こしてからです。
濡れた手袋と靴下を乾かして、ようやくまわりを見ると、整然と薪が積まれ、道具が並べられており工夫と整理が行き届いていることがわかります。外の雪と寒さを思うと安心がありましたが、電気がないため、ヘッドライトに頼らないと自分の荷物も整理できないほど暗く、思ったより広い空間にも不気味さを感じてもいました。1人では絶対にいたくない場所です。

ご飯をつくって食べて、暖炉に集まって談笑していると山小屋のよさがわかってきました。灯油ランプの頼りないけれど暖かい明かりと、暖炉の上においたやかんのならすコポコポという音は都会の喧噪では気付けないものかもな、と思えます。


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ホットカルピスがこれほど美味しいとは知りませんでした。


それでも、屋根から雪がおちるどさりという音や、暖炉で不意に薪がはじけるパチリという音は、私たちだけしかいないはずの山小屋に誰かいるんじゃないかという恐怖をかきたてましたが気付かないふりをしていました。



・・・ごおおおお・・・

そんなことを考えていると急に強い風が吹いてきました。そして、あれが現れたのです。

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おわかりいただけたでしょうか。
鎌と槌のマークはソ連赤軍に間違いありません。共産主義の幽霊がいまだに山中をさまよっている、とでもいうのでしょうか。

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いつのまにか、赤旗の幻覚まで見えてきました。

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さらに恐ろしいことに、どこからか現れたダッチワイフを抱き寄せてご満悦の赤軍兵士の様子です。



その後、持ち込んだPCで「ほんとにあった!呪いのビデオ」の59巻と60巻を一緒に見て寝袋にくるまって寝てとなんやかんやありました。


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これは翌朝、山小屋の雪下ろしをしている中で現れた兵士がダッチワイフを掲げて飛び降りる様子です。


ほんと、山小屋はとんでもないところでした。
そういって外を眺め続けていた彼女は、山小屋をなつかしそうにしているように見えました。



京都旅行、VIPな朝の過ごし方

そうだ、京都いこう!ということで京都までふらっと行ってしまう人は多いと思います。

関西の方ならお京阪や阪急、自家用車という方もいるかもしれませんが関東からだと新幹線を使うのがメジャーです。
東京駅から京都駅まで2時間10分で行けてしまうのでたいへん便利。ただ、のぞみの場合13710円かかってしまいます。ブルジョアの手段と言わざるをえません。さらに夜は21時20分終電で、朝は6時始発なので時間をあわせるのがナカナカめんどうくさい。朝早くから京都で活動するために前泊する必要があるし、朝一の新幹線に乗るために早起きするのもだるいです。


そこで、これを解決する最近の京都旅行朝の過ごし方の知見を共有します。

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夜行バス

夜行バスを使えば23時半に東京駅発、朝6時半に京都着と睡眠時間をつかって疑似テレポーテーションが可能です。前日は夜まで東京で活動して、翌朝も素早くシームレスに行動できてしまいます。

ただ、夜行バスというと狭いバスに押し込められてうまく眠ることも出来ずに体力を消耗するというイメージがあるかもしれません。
しかし、最近(ここ10年くらい?)は、3列シートも普及し、カーテンやリクライニングもなかなかよくできてきるのでかなり快適に過ごせます。4列シート時代のように、隣に存在感のある方が来て足を伸ばせずつらい思いをすることもありません。

ちなみに自分は空気で膨らませるマクラがあると快適度が全然違うと思っています。気になる人はアイマスクと耳栓もあるとよいでしょう。


値段も平日だと4500円程度、金曜の夜は8000円くらいで乗れてしまい実際安い。
需要にあわせて値段を動的に変更するの混雑をコントロールするなかなかいい仕組みです。JRでは難しそうですけれど。

私は東京駅鍛冶橋駐車場発のものをよくつかうので時刻表を乗せておきます。ちなみにここは東京駅とついてはいますがメトロ銀座駅から歩いていくのも便利です。

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VIPな夜行バスのラウンジ

夜行バスの問題として、到着した後に顔を洗ったり、着替えたりする場所がないことが挙げられます。特に女性だと化粧なども死活問題だと聞いています。

それを解決する画期的サービス、VIPラウンジを紹介します。

パウダールーム完備の新しいバスの待合室 VIPラウンジ|高速バス・夜行バス・深夜バスの予約はVIPライナー


2chっぽさを連想せざるを得ないネーミングですがふつうに便利。
洗面所から充電、雑誌やなんやかやがあってゆっくりすることができて学生時代に使いたかった。
また、京都だけでなく東京駅、新宿駅、大阪駅、なんば駅名古屋駅のバス発着場に近い位置にあり、乗車前や降車後は無料で過ごすことができます。一般の利用でも300円/hで使えるので変に時間が空いたときはカフェとかよりもいい気がします。これを使うために自分はVIPライナーをよく利用しています。


朝風呂

さて、ラウンジを使うのは、もうひとつ意味があるのです。それは、7時オープンの京都タワー温泉を使うため。

実際には7時は高速バスでついたばかりの連中が並んでいて混んでいるので上記ラウンジですこしゆっくりしてから行くのがよいと思われます(徒歩8分くらい)。


ここは、なかなかいい銭湯で、基本料金を払えばタオル1枚貸してくれてドライヤーやシャンプー類も使えます。湯船も広々でまあまあ気持ちいい。ロッカーも広くて、38リットルのザックも入ります。スーツケースなどは受付で預かってくれますし、スタッフの気遣いもしっかりしている印象もある。待合室でゆったりできるのもよいです。地下2階でソフトバンクの電波は入りませんがdocomoは入った気がします。

基本料金は750円ですが以下のページをスマフォで表示すれば700円で使えます。
【50円割引】タワー大浴場 ~YUU~(京都)の店舗・クーポン情報 | H.I.S.クーポン


ちなみに近くには朝6時からあいているサウナ・仮眠施設もあります。自分は行ったことはないですが、友人のデコ氏によると、殺伐とした雰囲気で社畜の巣窟という雰囲気らしいです。
ベルデクラブ



朝食

お金に余裕があれば駅前地下街ポルタのイノダコーヒが幸せです。なければポルタのロッテリ屋でもサブウェイでもいいんじゃないでしょうか。
朝8時から開いています。サブウェイは7時半からあいています。それとポルタのくまざわ書店も朝8時からあいていて偉い。話が分かる。


すこし歩けば醤油系ラーメンの第一旭もあります。スタンダード醤油ラーメンで朝でもするっといけるでしょう。


探せば和食とか洋食のモーニングを出すシャレオツなお店もありそうですので興味があれば探してみてください。

観光

あまり知りません。


関連書籍

京都と闇社会~古都を支配する隠微な黒幕たち (宝島SUGOI文庫)

京都と闇社会~古都を支配する隠微な黒幕たち (宝島SUGOI文庫)

  • 作者: 一ノ宮美成,湯浅俊彦,グループ・K21
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2012/10/04
  • メディア: 文庫
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本書では京都に集まる富と権力を巡るたいへん興味深いお話をいくつか紹介している。
暴力団がノンバンクから同和事業、警察まで絡んでいたり、10数年前に市内で銃弾が飛び交う抗争があったことも知らなかったし、家元ビジネスや山段芳春が支配した某信用金庫、各メディア、さらには西本願寺の内紛など黒いのばかり。

特に京都駅前の地上げを巡る崇仁協議会と武富士暴力団の絡みや謎の弁護士がいてほんとえげつない。まっとうなビジネスしていてこんな連中に絡まれたらつらいなー、と思う。

明るい選挙 メカニズム編


GO!GO!選挙 明るい選挙 カラオケ字幕動画 - YouTube



衆院選が来週に迫っています。みなさま行きますか??
この選挙というものは支持する候補者か政党を書くだけの一見単純な仕組みに見えます。けれど、すこし調べるだけでもその仕組みはけっこう複雑です。われわれ国民がもつ参政権をうまく行使するためには選挙のことをちゃんと知っておく必要があるし、なにより、選挙の仕組みはゲームっぽくてすごくおもしろいので調べておもしろかったことを紹介してみます。


基本はこの本と、Wikipediaが情報源です。

日本の選挙―何を変えれば政治が変わるのか (中公新書)

日本の選挙―何を変えれば政治が変わるのか (中公新書)

日本の選挙の概略から各理論、世界との比較、またコラムとしてこれまでの日本の各総選挙を紹介していておもしろい。


(注意)この記事で書いていないこと

  • 中学校の社会の教科書に書いてあること
  • 法学部生が知らないこと(もし間違いがあればコメントください)
  • 今回(2014/12)の衆議院選の展望
  • 自分の政治信条
公正ってなんだよ(哲学)

小選挙区死票*1が多いから公平ではない。比例代表制にすれば(詳細なルールはあるけれど)公正だ!というのは、有権者数に比して議員を選択するということで公平でわかりやすい話ではあります。


ただ、比例代表制では小党も議席を得ることになり、小党乱立から連立政権が不可避となる懸念があります。小党がキャスティングボートを持つことから、妥協的な政治運営から政治責任も不可避になってしまいがち。


少数派に配慮して決定を下す時期が遅れたり、決定をくだせなければそれが公正か、という議論もあり簡単には判断できない問題です。(本当は議論と妥協のプロセスを円滑にできるとよいのだけれど今の人間では無理そう・・・)


ただ、小異をすてて重要な利益のために結合することが政治の根本でもありますよね。この結合を、議会のレベルで妥協がなすか、小選挙区などの多数代表制では有権者レベルで妥協がなすかの違いでしかないという指摘もあり公正がなにかは単純には決まらないのではないと思われます。



また、ここですこし比例代表のオプションについて簡単に触れます。
完全な比例代表制では小党が乱立して議会の運営に支障をきたすことから、足切りラインとして阻止条項を設けている国も多いそうです。たとえば5%ルール、こうして極左勢力と極右勢力を排除するのだとか。これは戦前のドイツでは少数の議席からナチスが台頭したきっかけをつくった選挙制の反省でもあるそうです。

ひとくちに比例代表制といっても議席配分方法は世界で運用されているだけで300以上もあるといわれています。大きく次の2つに分類できます。

  • 最大剰余法
  • ドント式
    • 各党の得票数を1,2,3と整数で割っていき、その商の大きい順に定数に達するまで議席を配分する

また、選挙区の規模、全国区かブロック制かでも影響が出ることが知られています、ブロック制ほど有力な党に有利になります。さらに比例代表制の大きな特徴として、非拘束名簿か拘束名簿かで大きな違いがあります。細かいパターンはほかにもありますが、非拘束にすると政党本位ではなく人本位で選べるメリット(?)はあるけれど全国にファンのいるタレントや芸能人、全国的な利権団体がバックについている候補者が強くなるという欠点もあり難しいところです。


あいつら二大政党制

日本もアメリカのような二大政党制にしようぜ!という動きがあります。
これは2つの政党が実力伯仲しているべきという言葉の印象があって自民が大勝した時にはもっと二大政党制にしないといけない、と言われたりもしています。

けれど、もし2つの大政党が議会で近い勢力をふるっていると議会は紛糾して運行はストップするでしょう。
二大政党制を考える上ではまず、政権交代制について考える必要があります。カール・ポパーの「開かれた社会とその敵」によれば、民主主義の基準とは「流血を見ることなく、投票を通じて政権を交代させる可能性」とのこと。
そして、小選挙区というのは、すこしの支持率の差で議席に大きな影響を与えるもので政権交代を容易にする仕組みなのです。
国民の投票とは、代表を選ぶというよりもむしろ、現在の政権を転落させる可能性をもつという機能が強い。政権から落とされることを恐れる政府は、国民目線となるでしょう。
もうひとつポパーを引用します。

追い出される可能性のある政権は、人々を満足させるべく行動(政治運営)する、強いインセンティブを有している。追い出される可能性がないとわかると、このインセンティブは働かなくなる。


もちろん短期的な目先の利益を誘導するようになり、長期的な展望を考えることがなくなるという指摘もあるけれど、政権交代の可能性がなかったら長期的なことを考えるかというとそうでもないし、哲人政治は絵に描いた餅のうえに独裁にもつながるのでそら無難なほう選ぶよねという感じではあります。



ガラパゴス選挙

じつは日本は「選挙制度のデパート」と言われるくらい種類が多く、かつ理念に欠けています。いまも衆院選では並立制をやっているけれど、なんでそれをしているのか理念がよくわからない。いや、かつての中選挙区(3人とか5人区での単一投票制)なんてもっと意味がわからない。
世界的に見て、3人区ならひとり3人まで書ける連記制が一般的です。それを3人区でも1人しか書けないから与党が何人も出して争い出すしお金を使わざるを得なくなって派閥の温床になって腐敗する。
日本は長いあいだ自民党の単一政権だったけれど、55年体制ではひとつの政党というよりも複数の派閥の集合体といった常態で、これが中選挙区が原因のひとつと言われています。


参議院、こいつ強いぞ・・・

衆議院の優越というのは中学生の教科書にも載っています。しかし、ふつうに一般の二院制の国に比べて参議院の権力は実際強い。衆院の優越は、首相指名や予算、条約の承認くらい。法議案の議決は、参議院が拒否しても衆議院が3分の2の賛成で再可決できるけれどそんなの通常ではできないので実質的に参議院が拒否すれば立法機能は正常には動かなくなります。「ねじれ国会」というやつです。


参議院衆議院に対するチェック機能という名目もあるからと、別の選挙体系にしようという声もあるけれど、全く別にすると衆議院とのねじれが常態化することにもなります。そもそも参議院の理念が曖昧だけれど、全国比例オンリーなど選挙方法を変えてチェック機能とするなら衆院の再可決を過半数程度にするなど必要ではないか、というの考えもあります。もちろんこれには憲法改正が必要になるけれど。

政治システムの中での役割と権力を検討せずに選挙制を変えようとするのは表層しか見ていないように思えます。


あれは装甲ではなく党議拘束

党議拘束とか意味わかんない。国会で議員の良心に従って議決できなくて党という私的な組織がものごとを決めるっておかしいでしょ、と思っていました。けれど、それは単純すぎる見方でした。アメリカでは党議拘束はなくて法案ごとに党を越えて賛成か反対かで分かれることになるけれど、それは大統領制で大統領の権力が強いから。また、デメリットとしてロビー活動が活発になることが挙げられます。議院内閣制のもとでは内閣の基盤は議会にあるため、政権を運営するためには党議拘束が必要になるのです。


まとめ

ほかの選挙の話題として、地方は大統領制に近く、一方で政府は議院内閣制で統一されていない問題や、議員が議員がどう選ばれるかという選挙のルールを決める自己言及的な話もあったりまだまだ選挙は深みがあるんだけれど、ひとまずわかりやすい話題だけ軽く触れてみましたがいかがでしょうか。


選挙っていうのは民主主義そのものでもあります。みんな大好きオルテガさんだってこう言っていますしもうちょっと気を遣ってもいいかも。
>>民主主義は一つのとるに足りない技術的細目にその健全さを左右される。・・・選挙制度が適切なら何もかもうまくいく。そうでなければ何もかもダメになる。<<


ただ、選挙というのはすこしでも興味がある人なら自分の考えがあって、専門家の知見を軽視して思いつきを語ってしまう問題もあると思うのです。自分もそこそこ知っているつもりだったけれど、この本を読んでいろいろ調べてみて自分が何も知らなかったと分かりました。

さらによくないのが、自分みたいな素人だけでなく、ジャーナリストや政治家までもが(意図的か無意識かはさておき)そうしているようにのは問題でしょう。これは選挙のほか、教育とかも同じで専門家の意見やデータを無視して思いつきレベルの思い込みで語ってしまっているように思えます。



あと、選挙というのは仕組み・アルゴリズムとしてけっこうおもしろいことがわかりました。あるルールから多様な戦略や問題が生まれていくさまはけっこう燃えます。意志決定論との絡みの話もあるみたいで調べてみたい。


ひとまず、法学部生の方々には常識かもですが自分がはじめて知った選挙の話を紹介してみました。
衆院選、みんな行きましょう。

*1:落選した候補者の票や、その選挙区で圧倒的に票を集めても1人だけというオークションでいう勝者の呪いみたいなもの

上野公園で押し付けられた統一教会教祖の本を読んだ

3年ほど前に、就活で東下り*1してきたdecobisuくんと上野で会う約束をして、上野公園をふらふらしていたら女性からもらった、というより押しつけられたのが本書「平和を愛する世界人として 文鮮明自叙伝」。行為自体に驚いたからかその人のことはあまり覚えていないのが残念なのだけれど、押入を整理していたらでてきたのでせっかくなので読んでみた。持っているだけで誤解を受けそうなので早く処分したいところでもある。




文鮮明を知らない人も彼が立ちあげた統一教会(正式名称世界基督教統一神霊協会)は知っていると思う。世界的なカルトとして知られ、芸能人も巻き込まれた合同結婚式や、各大学の原理系サークル、霊感商法やマインドコントロール、はては救世主(教祖)とのセックスにより肉体の原罪が清められるとする考え方が有名だ。


また統一教会反共団体としても有名でその縁で日本の右翼の黒幕であり戦後最大のフィクサーとも言われる笹川良一も信者、そこから政財界にも広まっていると聞いていて若干の興味はあった。



内容はどこまで脚色されているかはわからないしお察しなのだけれど、数万人を虜にするカリスマ的な説法(出典なし)にもとづく自信に満ちあふれた文章は教祖志望のひとは読んで損は無いと思う。祖父の代から貧者に施しをする家であったこと、自然を愛していたこと、困難を乗り越え、常に持てるものを貧者のために使ってきたこと、預言/予言を受けたことなど、アラファト議長ゴルバチョフ金日成に会って信頼を勝ち得た話、世界中の漁民、農民と交友した話などなど。グローバル新宗教の教祖はかくあるべしか、という感じ。自己愛性パーソナリティ障害の気がある(これは軽蔑ではなく、よくもわるくも英雄の気質だ)。



とはいえ、太平洋戦争中に早稲田に留学して、特高に拷問を受けたり、朝鮮戦争前に北に渡って布教しては2年間監獄にいれられてソ連流の強制労働をしたりとなかなか苦労をしているし、この時代に多感な時期を過ごしたからこそ見ているものもあるんじゃないかと思う。特に北朝鮮の監獄話はなかなか迫真。大部屋のトイレのそばで寝るから液便をひっかけられるとか。
もちろん教祖だけじゃなくて信者も先の見えない激動の時代だったからこそ引きつけられたとは思う。創価学会立正佼成会もPLも世界救世教も戦後すぐに拡大している。


ほか、当時の韓国から見た日本との関連も興味深い。

こうして生きるか死ぬかの苦労を1年半ほど続けた末に、崔奉春(日本名は西川勝)が日本に教会を創立したのは1959年10月のことでした。その時代、韓国と日本は正式に国交を結んでいないばかりか、圧制政治のつらい記憶ゆえに、誰もが日本との修好に激しく反対していました。そのような恩讐の国日本に、密航させてまで宣教師を送ったのは、日本を救うためであると同時に、大韓民国の未来を開くためでもありました。日本を拒否して関係を断絶するよりも、日本人を教化した後、私たちが主体となって彼らを味方につけなければならないと考えました。何も持たない韓国としては、日本の為政者と通じる道を開いて日本を背景にしなければならず、また何としてもアメリカと連結されてこそ、未来の韓国の生存の道が開かれると見通したのです。

アメリカで布教に利用していたボストンの修練所に日本の赤軍派が侵入してきて、FBIにつかまえられたこともあったようだ。
あとは、北朝鮮に行く前に、相手が啓示を得て結婚し一児をもうけているにもかかわらず、40歳くらいにしれっと啓示を得たといって13歳の少女と結婚していたり。そして21年間に14人子供をつくったあとに、子供の純潔教育マジ大事と説いているのも感慨深い。はじめに結婚した奥さんは結局最後まで出てこなかった。

さて、そういうモラル面はさておき、文鮮明事業家としても知られているらしい。世界への布教にはお金がかかるということで、使い終わった切手の回収から始まり、アメリカにて組織的なマグロ漁と加工工場、レストランまでつくったとか。ここらへんを深掘りした資料があれば読んでみたい。ナショナリズムを宗教に応用し、これをビジネスに応用していくやり方はもしかしたら参考になるかもしれない。


統一教会のことを知っていたから話半分に読めたけれど、もし予備知識がない人がいたら、なんて素晴らしい人なんだろうと感化されかねないとは思う。
けっこうおもしろかったので時間ができたらほかの新宗教の教祖の話も読んでみたい。出口王仁三郎とか。


平和を愛する世界人として―文鮮明自叙伝

平和を愛する世界人として―文鮮明自叙伝

統一協会の素顔―その洗脳の実態と対策

統一協会の素顔―その洗脳の実態と対策



おまけ(再掲)

家に大量にある本を処分しようと考えています。(このための整理がきっかけで本書を発掘しました)
リストにしたので欲しいのあれば1冊100円でゆずります。詳細はGoogle Sheetsをみてみてください。

本ゆずります - Google スプレッドシート

*1:京都の人が東京にくること。決して上京するとは言わない

2014年使ってよかったもの

流行っているらしいので身辺整理を兼ねて便乗。


本や映画はAmazonのレビューがあったりいろんな人が紹介したりしていてよいものを見つけやすい。けれど、日常生活でつかうものはなかなかいいものを見つけられない。そういう普段使うものをわざわざ時間をかけてレビューしてくれるのは、明らかな欠点があってストレスのはけ口にする場合だけ。いいものは当たり前のように使われる。


そんななかでいいものを共有するために使ってよかったものを紹介してみます。みんなもいいものあったらブログ書いてください。


お湯沸かし器

ティファールの湯沸かし器が便利というのは広く知られている。保温式の電気ポットと違って、軽いし毎回その場でお湯を沸かせるというのは省電力。
ただ、中身が見えないという欠点がある。このTESCOM製の湯沸かし器は、ガラス製で中身が洗えて衛生的だし、中身の沸騰の様子が見える。たいへん便利。コーヒーをいれるのにもインスタントスープをいれるのにも最適。

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タッパー

炊きすぎたご飯。あると思います。タッパーかボウルにいれてお冷やにすると思うんだけれど、よくあるタッパーは溝があって洗いにくい。その欠点を克服したのがこちら。写真だとすこしわかりにくいけれど、溝がないので洗いやすい、どっかの100円ショップに入荷してるやつを大量に購入しました。

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ちなみに美味しくお冷やご飯を食べるには、炊いてすぐにタッパーに詰めて蓋をする。そしてある程度冷めるまで室温においてから冷蔵庫にいれるとよい。食べるときは蓋をしめたままレンジで暖めるとしっとりとして美味しい。もちろん炊きたてと違うので、チャーハンなりおじやなりにするのもありです。


タイマー付きプラグ

布団の中で本を読んで寝落ちする経験。みんなあると思います。朝起きると照明付けっぱなしで自己嫌悪。よくあります。それを克服するのがこれ、タイマー付きプラグ。切れるまでのタイマーではなくて24時間でオンオフを選べるので朝つけて寝覚めをよくする効果もあり。

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ちなみにこの照明はIKEAで買った。軽くてそこそこ便利。電球はLED。いま部屋にある家具はこれと敷き布団だけ



その他

生活必需品以外では、Blu-rayプレイヤーはよかった。近くに住んでいるひとがよく映画を借りてうちで観ていくので自然と観れる。ただし時間を奪われるので諸刃の剣。
オーブンレンジはピザとかクッキーがやけてよい。家で作るピザはインスタント食品並みに手軽で楽しい。土鍋とカセットコンロはたいへん捗っている。そのくらいかな。


つかってないもの

逆に手に入れたけれどうまく活用できていないものもあります。ホットプレートもヨーグルトメーカーも燻製機(これはもらいもの)も圧力鍋(これももらいもの)も稼働率低い。なかなかものを選ぶの難しい。読んでない本もたくさんある。



本について

さて、ものの整理と並行して家に大量にある本を処分しようと考えています。リストにしたので欲しいのあれば1冊100円でゆずります。詳細はGoogle Sheetsをみてみてください。

本ゆずります - Google スプレッドシート


じゃっかん恥ずかしい本もあるのは気のせいです。
しかし、本棚を晒すのは裸を晒す以上に自身を露わにするので恥ずかしい行為だと思う。本棚だけで友だちになれそうとか好きになってしまいそうになる場合ある。


ちなみにいまの寝室の様子です。誰か引き取ってください。これのほか、本棚が3つくらいいっぱいになっている。
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「戦術と指揮」から学ぶマネジメントの話

戦術と戦略の違いについては一般の高校生がぶち当たる問題だと思うので、わからない人は辞書で調べておいてください。


どうしても戦略という上位構造はかっこよく見えるし、そういうものを題材にしたコンサルタントや経営者によるビジネス書の類はちまたに溢れていて、よく売れているように見える。

たしかに戦略の失敗は戦術によって取り戻すことはできないほど大事なものなんだけれど、戦略の成功は下部構造たる戦術、ひいては一将校一兵卒によってなっている。それに自分のようなソルジャーサラリーマンの使命は戦術と遂行なので戦略を考えても仕方ないという側面もある。


み★ほ銀行の更改だってコンサルタントやストラテジストによってではなく現場の無数のSEによってなっているのだ(書いてから思ったけれどこれは適切な比喩ではない)。



というのは前置きで本書は元自衛隊陸将補による戦術読本。文庫でさっくり読めます。
副題は「命令の与え方・集団の動かし方」となっている。表紙のセガアドバンスド大戦略が目を引く。



戦術と指揮についての本だけれど、中身は戦術シミュレーションと解説がメイン。

原則の説明から灰って、前半は、特定の地形と状況でどういう戦術をとるべきかを2-4択から選ぶという、麻雀のどの牌を切るかみたいな頭の体操でわりとおもしろい。

中盤は、緊張関係のある某国に国連平和維持軍として派遣された部隊の分隊長(軍曹)として状況をこなしていく形式。これはけっこうきつい。まずはじめに、敵が来ないと思われていた海岸線を担当していたら敵が上陸してきて障害物をのけはじめた。小隊長には報告したが、応戦、発砲の命令が来ない。さあどうする?という問題からはじまるのだ。

選択肢はこんなの。
1. 独断で射撃を開始する
2. 敵が陣地に射撃するまで、射撃を待つ
3. 小隊長から射撃命令がくるまで待つ


解説では交戦規程がどう定まるかなどに触れるのだけれど、ストーリー上、発砲することになる。
そして、敵は地雷原を乗り越えて交戦し、部下1名が戦死する展開に・・・。


ほか、孤立した観測点へ夜間救援にいくためのルート選びや、捕虜の輸送車列のなかでどこに装甲車を配置するか、脱走者を発見した時にどうするか、対戦車地雷が少ない時、どこに設置するか*1など実戦/実践的すぎる。
途中で部下の伍長が闘争したことがさらりと触れられていたり。



後半は4000名の戦闘団の指揮官大佐としてのロールプレイングになる。
ここも多数の部隊をどう配置するか、急な事態にどう対処するかがテーマでなかなか興味深い。
複数の相手の指揮官がどう考えているかを読みながらのかけひきは若干のストーリー仕掛けになっているのもあって緊張する。


特に、敵の急襲など緊急事態の際し、自分の責任範囲以外の仕事を命じられた場合にどうするか。
とくにあとになって許可を得てからでは戦術的に不利な状況に陥り、部下将兵の生命を少しでも多く失うことは指揮官失格としている。動く権限はなくとも、どんな事態にも対応できる選択肢を広げておくことが重要だという。これはビジネスでも同じだよね。


ほか、参謀が戦死したり、本国のジャーナリストがだれが発砲許可もないのに撃ったのか、と探りをいれられたり官僚的な駐在武官からいやみをいわれたりと・・・。本国、いったい何国なんだ・・・。

最後は不完全情報で測れないものばかりの状況での選択は指揮官の人生観にもよる。としている。


ちなみに、これらはノルマンディ上陸作戦に際したドイツ、ナポレオンのワーテルロー会戦、モントゴメリーとアイゼンハワーにはさまれたチュニジアのドイツ戦、第4次中東戦争をまぜあわせてつくられたシチュエーションらしい。



たくさんあるコラムもけっこう読ませる。
いくつか引用・孫引きしてみる。

戦術の基本は「主力をもって敵主力の弱点を撃つ」

明確な対戦相手がいる状況ならではだけれどどこに力をかけるかは考える必要あるよね。

戦史における失敗の原因は、ほとんどすべての場合、ひとことでいえる。それは「遅すぎた」である。

プロジェクトマネジメントでも同じかも・・・。

指揮系統:軍隊では指揮官が1人で決心する。けっして合議しない。参謀には一切の指揮権は無く、指揮官を補佐することが使命。
参謀は一般参謀と事務参謀にわかれる。一般参謀は「監理・行政」、「人事」、「情報」、「作戦」、「兵站」に区分され担当となるが、これらすべての領域に発言権がある。また、特別参謀は専門的分野にわけられ、これらの分野について禅一般参謀に対しての調整権をもっている。こうしてマトリクス型の組織にすることで官僚化の弊害がおこらないようにしている。

理念はわかるけれど、個々の参謀の負担が高く結果として薄くしか把握できないような気もする。発言権、調整権の意味と参謀の割合がわからないとなんとも言えないけれど。実際にはどうなんでしょう。

軍隊の命令は、原則として、「後命は自動的に前命を取り消す」である。前命を取り消さない場合はかならず、前命が生きていることをつけくわえる

これは民間企業でも通用するようになってほしい。

命令をあたえる場合は、任務遂行に見あう「義務」「責任」「権限」をいっしょにあたえなければならないことは当然であるが、同時に任務を遂行するに見あう戦力も、あたえなければならない。さらに、命令者は部下が「もっとも自発的にその任務を達成しようと選択した」ように感じさせることが大切である。

せやな。それがマネージャーの腕の見せ所なのか。

防御任務に防御すべき時間を設定しないことは世界の常識である

これは現場の意識と、敵にすきを与えないために必要なんだと思う。


命令のコツ(要約)

  • 命令をするときには背景を説明せよ。
    • たとえばスターリングラードに包囲されたパウルス元帥の第六軍の救出を命ぜられたマインシュタイン大将は、命令をだすときは、時間の許すかぎり、自分の状況認識を、現状と予測を加えて説明していたそうだ。そして、この予測と異なる情勢になれば、部下の独断を期待すると述べている。こうして服従と独断について発令者と受令者の取引条件を明示するという。
  • 命令に当たって与える時間・空間・戦力を示し、過不足がないかを部下に確認する。そして交渉する。
    • 実施者が見積するべきなのはビジネスでも同じかな

「軍事指揮官は、首相や国防大臣のために、軍事に関して筋を曲げたり、自分の失敗を逃れる権利はない。なぜなら、首相や国防大臣は、戦場から離れている。だから、首相や大臣の規則・計画・命令が戦場の実態とかけ離れているときは、その実行を引き受けるな。規則・計画・命令の変更を執拗に要求せよ。端的に言うならば、将軍が、軍の破壊の道具になるよりは首を切られた方がましである。戦いの指揮官は、勝利に自信の無い命令を受けることは、勝利に自信のない命令を発することと同様、罪悪である(ナポレオン)」

営業は勝手に仕事を受けないでください。

「戦闘において敵情の4分の3は霧の中(クラウゼヴィッツ)」

考えの正しさを検証できないのに部下僚友の命を危険にさらすしでほんと孤独で難しい仕事だと思う。

プロシャ建国功労者のフレドリック・ウィリアム皇太子の逸話
皇太子「なぜお前は作戦に失敗したのか」
少佐「私は皇太子からの直命のとおり作戦しました。間違っておりません。」
皇太子「階級はなんのためにあたえてあるのか?命令違反をするときを判断できる者にあたえられているのだ。規則どおり、命令どおりするだけなら、貴様は将校ではなく兵士でよい。」

コーポレートガバナンスによって意志決定コストが重くなるのってけっこう足かせだよね・・・



わりと抽象的だけれど、第二次大戦時に米軍が開発したというアマチュア将校でも戦術策案を考え出せる思考順序を引用する。たぶん孫引きだけれど、原本はなんなんだろう。

アマチュアをすぐに実戦に送り出すテクニック

  1. 命題
    • 通常、上級部隊指揮官から与えられる任務
    • これを子細に任務分析し、達成する事項の優先順位を決める
  2. 前提
    • 作戦刷る地域を規定する。地域の特性を明らかにして認識し、戦術的に分析する
    • 現在までの敵情を解明し、将来の敵の可能行動を列挙して。採用公算と弱点を見積もる
    • 自分の部隊の状況を掌握し、敵戦力と相対比較して、勝ち目と問題点を明らかに認識する
  3. 分析
    • すべての敵の可能行動と、すべての味方の行動方針を総合的に組み合わせて戦闘シミュレーションを実施し、行動方針の選択のためのカギとなる要因を見出す
  4. 総合
    • 比較のための要因に重要度の順位を定める
    • 行動方針を比較する
    • ついで、時間と空間の要因について考える(英国式。理論的ではないが、経験的に誤りをすくなくするために繰り返す)
  5. 結論
    • 選択の腹構えを定め、最良案を選択し、その問題点と対策をあきらかにする

「戦闘においては、いかなる場合においても”大胆な案”を採用せよ。大胆な案は一か八かの案とは異なる。大胆な案は、最悪の事態における代替案をもち、それに転換できる予備を保有していることである(ロンメル元帥)」

適切な大胆な案を出せるようにしたいものです。受託開発では必要な状況なさそうだけれど。

名将の格言によれば、兵力が不足したときは、主要な部隊を動かさず、各部隊から適切に小部隊を抽出したほうがよい。経験則であり、説明のしようがない。

ひとりずつではなく、小部隊ずつ抜き出すということ。知的産業では難しそう(システム開発は知的産業かつ労働集約)。

鉄則:現場指揮官がもっとも現場を知っている

部長は黙ってろってことです。

毛沢東「特殊性の原則は一般性の原則に優先する」

はい。毛主席はあたりまえのことをかっこよく言うこと多い気がする。



なんだか一部でグチが交じったかもしれないけれど気のせい。


基本は軍事関係なんだけれど、これを読んでおくと大河ドラマでも架空戦史でも三国志とかもマンガでも戦記物でももっと楽しめるようになるかもしれない。


補足

戦争の話をいろいろしてみたけれど自分は戦争反対。平和が一番です。
だけれど、これは歌を歌えば解決する者でも軍隊をもたなければすむものではないと思う。抑止も宥和も不完全ということは世界史をならった高校生ならみんな知っていること。
本当に戦争をなくすためには人類を滅ぼすかマトリクスのように完全管理された家畜化するしかないと思っている。

なので、この社会では狂信的な武装集団から自国の被害を減らすためには訓練して備える人たちが一定数必要だし、ある程度の尊敬されないといけないとは思う(クーデターをおこされないためにという意味もある)。
そして適切に運用できるようにシビリアンコントロールと有事に適切に対応できる法整備は必要。曖昧な指示と雰囲気とで現場の指揮官に全責任をおっかぶせるのは最悪だ。

「戦死」もしくは「戦場での殺人」、「原発事故」、「倒産」、「デフォルト」をありえないもの、考えるだけで不謹慎なものとして議論を避けるのはなんだかなあと思うのです。


以上。FFTやりたくなってきた。

*1:国際条約では組織的地雷原はすべて記録し、その記録を保管する義務がある

株屋で成功するコツをウルフオブウォールストリートで学んだ

株屋で成功するコツがある?大金持ちになるコツがある?


このごろ、近所に住んでいる友人が映画を借りてきてはうちで観るという文化があってついつい観ているのだけれど、そのなかでも、ウルフ・オブ・ウォールストリートがクソ最高だったので紹介してみる。


悪徳証券会社を立ちあげて大成功した実在の男を天才ディカプリオが演じたクソ映画。3時間とタイタニックと同じくらいクソ長いんだけれどおもしろすぎるので苦にならない。


なにも経験の無い新人時代から、外務員資格をとって初日に会社が倒産、クズ株を売る小さなクソ会社へ転職という苦難を経てから会社をつくる。そしてヤクの売人やらチンピラやらを集めて営業トークの技を鍛えて急拡大。豪遊してクスリをキめまくってあばれまくるしインサイダー取引はするしイケナイことをしまくるクソ絶好調時代を経ての、FBIの捜査・離婚からの没落、そして再起という英雄の旅を思わせる神話的な構造。

Wikipediaによるとf**kを500回以上使っているらしい。実際に使いまくっていた。褒めるのにも貶すのにもf**k。クソという形容詞を多用しているのはそのクソ影響です。


特に印象に残った場面は一番初め、新人として証券会社にはいったディカプリオが入社初日に冷静に狂っている上司と高層ビルの高級そうなランチをともにする場面。


まず、その会って初日の上司が公衆の面前、ディカプリオの前で鼻歌を歌いながら匙でコカインをすくって鼻で吸うところからはじまる。

昼間からアブソリュートマティーニをストレートで2つと注文、きっちり7分半後おかわりをもう2杯を、と。さらに5分毎に2杯ずつどちらかが潰れるまでとオーダー。ディカプリオがことわると、初日だから勘弁するかということになるけれどいきなり度肝を抜く。


ディカプリオ「(小声で)昼間からクスリをやって仕事になるんですか?」
上司「他に何をする?コカインと娼婦は友だちだ」
ディカプリオ「・・・この会社で仕事が出来てワクワクしています。顧客もすごく-」
上司「客なんていい。君は家族のために稼げばいい。彼女は?」
ディカプリオ「結婚してます。嫁は美容室で働いています」
上司「なら余計にだ。客に財布から金を出させ、自分の財布に入れる」
ディカプリオ「でも、もし客が儲かればみんな喜ぶ。でしょ?」
上司「違う。株屋の第一のルール。たとえ、君がバフェットでも、株が上がるか下がるかグルグル回るか分からない。我々にもだ。”バッタもん”だ。分かるか?」
ディカプリオ「”バッタ”、まがい物」
上司「そう、まがい物、バッタもん、パチもん。幻だ。存在しない。物質じゃない。元素票にも載らない。まったくの幻だ。だろ?いいか、我々はクソもなにもつくらない。1株8ドルで買った客がいる。それが16ドルになる。客は喜んでー金に換えて家に持ち帰りたい。それはさせるな。現実になる。どうする?もっと名案がある。素晴らしい案だ。ほかの株を買わせる。儲けにプラスアルファで再投資。それを繰り返す。中毒状態だ。それを何度も何度も繰り返す。そうして彼は金持ちになったと思う。書類の上では。だが我々には、現金が手に入る。手数料としてだ」
ディカプリオ「素晴らしい。ワクワクします」
上司「当然だ。株屋で成功するコツは2つある。1つ目は常にリラックスする。・・・マス掻くか?」
ディカプリオ「マスを掻くか?ええ、します」
上司「週に何回?」
ディカプリオ「たぶん3〜4回、5回かも・・」
上司「増やせ。それは新米の回数だ。おれは1日最低2回はマスをかく。朝、運動の後とランチの後だ」
ディカプリオ「ほんと?」
上司「いいか。やりたいからじゃない。必要だからやる。おれたちは1日中数字と戦っている。小数点がチカチカ。・・数字、数字、脳ミソが酸で侵される。だろ?頭がおかしくなる。マスって血の巡りをよくする。下半身のリズムを保つ」
ディカプリオ「すごい」
上司「ウソじゃない。絶対だ。やらなきゃバランスを崩す。役立たずになって倒れる。へたをすれば自殺することに」
ディカプリオ「それはお断りです・・」
上司「当然だ」
ディカプリオ「長く続けたい」
上司「トイレで、いつでもシコれ。慣れてくると金を考えながらできる」
上司「2つめのコツ。この世界での成功には・・・こいつコカイン。頭の切れが良くなるし電話も素早く押せる。分かるか。これがポイントだ。回転だよ」
ディカプリオ「回転ですか」
上司「客を観覧車に乗せ続ける。遊園地は24時間、年中無休。何十年も、何百年もだ。それがすべてだ」
上司、マティーニを一息で飲み干す。
そして胸を叩きながら鼻歌を歌い出す。

はじめ英語字幕で観てみたけれど、スラング多すぎて意味不明だった。この会話の間だけで、F言葉を15回くらい使っている。表情も身振り手振りも最高で狂気に充ち満ちている。



あ、ちなみにドラッグはダメゼッタイ。

カス野郎ばかりなことが痛快すぎるなかで軽蔑と嫉妬でいっぱいになる。本当の証券銀行でリテールやってる方々はどう思うんだろ・・。


こういう狂気の男だらけがなにかやらかすというのは、ナンパ師たちがハリウッドで成功に溺れて狂っていく「ザ・ゲーム」を連想した。他にこういうのあれば読みたい。


ウルフ・オブ・ウォールストリート [Blu-ray]

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ザ・ゲーム 退屈な人生を変える究極のナンパバイブル (フェニックスシリーズ)

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  • 作者: ニール・ストラウス,田内志文
  • 出版社/メーカー: パンローリング
  • 発売日: 2012/08/07
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • 購入: 10人 クリック: 75回
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銀座にできた石川県のアンテナショップでひゃくまんさんと遭遇した話

金木犀の花も散り、肌寒さを感じるようになってきた。そろそろ鍋で暖まりたい季節だ。

先週末、うちで鍋開きをしたのだけれど、そのときどうしても足りないものがあった。味噌である。


それもただの味噌ではなく、石川県を中心に食されている、とり野菜みそだ。
*1


通販でも買えるんだけれど、東京でも石川県アンテナショップなら売っているはず!と思い調べると、これまであった店舗はしばらくまえに閉じていて、10月8日に新しい店舗がオープンするのだということがわかった。

これはいかねばと休みの申請をし(別件ですこし用事もあった)、先週末にはじめたingressをやりながら出かけてみた。


いしかわ百万石物語 江戸本店

百万石物語である。なんだか大江戸温泉物語を連想する名前だ。
場所は銀座と有楽町の間、外堀通り沿いにある一等地。
この通りにはほか、北から茨城、高知、沖縄と個性的な県のアンテナショップが並んでいて、それぞれ独特の雰囲気があっておもしろい。

ここらへんは以前少し書いた。




さっそく行ってみると、広めの歩道上には人があふれかえっている。バズーカみたいなテレビカメラも何台か見えるしたいへん賑わっている。車道脇に臨時通路をつくっていて、スタッフさんや警備員さんがそちらへ誘導しているようだ。



そして遠くからでも異彩を放ちまくってるあいつ。
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人混みのなかでも目が合った気がしてどきっとした。
ミス加賀友禅の美人さんや遠藤関を押しのけている圧倒的存在感・・



つよい(確信)
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座るとなぞの存在感がある。まどマギの魔女にいそう。
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あんた、背中も輝いているぜ。
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まだ100人にはいったようですこし待つだけで入れたし、100人までに配られる記念品ももらえた。ちなみに中身は塩。今週いっぱいやっているらしいのでぜひ寄るとよいと思う。

綺麗な店内には、地場ブランドの野菜や魚介類からレトルトのゴーゴーカレーまでおかれている。
太いキュウリがけっこう気になる。レジもフル稼働だった。
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2階には雑貨や漆器、移住相談のブースまで用意されているようだ。
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地階ではお菓子や地酒など、カウンタータイプのイートインスペースもあった。きれいでシックでなかなかよい。
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買い物をすませて店内を見学していると北國新聞の方からインタビューを受けた。
何買いに来たんですか、と聞かれたのでとり野菜みそ買いにきましたと答えると、え、ほかで売ってないんですか、と言われてしまった。かるちゃーしょっく。ほか3,4点くらい答えた気がする。
フルネームも聞かれたし載るかもしれない。載ってたら誰か教えてください。


帰り際、あいつがちょうど黒スーツの男たちとともにトラックに乗り込んでいくところを目撃した。目が合ったとたんに手を振られてひやりときた。
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終わった後、すぐ近くの、ただし裏通りの端で人通りは少ないところにある帝都福井のアンテナショップ「食の國 福井館」にいってみる。シンプルな装飾と人の少なさに安心する・・・平日の昼間だし仕方ない・・とも思う。
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せっかくだしおろし蕎麦を食べる。
東京の蕎麦屋でおろし蕎麦と注文して出てくる、おろしの山付きざる蕎麦ではなく、おろしとかつおぶし、ネギのうえにツユがかかった、ぶっかけおろし蕎麦である。歯切れの良さと出汁のきいたさわやかさがとてもよい。
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石川県、なかなかやるじゃねーか。



いしかわ百万石物語・江戸本店
しかしSEOたいへんなようで「石川 アンテナショップ」とかで検索しても古いお店のほうのサイトやニュースばっかりでこのページはなかなか見つからない(2014/10/8現在)。
建物つくるのにお金かけちゃったからむずかしいんだろうね・・・。

*1:ただ、自分はもしかすると地元スーパーのユース、現バローとかで売っているインスパイア商品?的なもののほうが好みかもしれない。こんどメーカーを調べよう

消費したコンテンツ-2014年7月-9月

金木犀の香りが漂ってくると夏が本当に終わってしまったことが実感として沸いてきて毎年毎年悲しくなる。

夏でおでかけしたりおしごとしたりで忙しかったけれど何冊かは読めたのでメモを記録しときます。

ちなみに前期(4-6月)はこんなの読みました。



ノンフィクション

良心をもたない人々

サイコパス・ソシオパスの読みもの。それっぽい事例を紹介しているけれど、だいたい去年読んだ「診断名サイコパス」とかぶっているかな。進化論的な解釈はわりと興味深い。
9月10月に読んだ本:羊の歌、神々の山嶺、解剖医ジョン・ハンターの数奇な人生 - うんこめも

人の心につけこむ天才である彼ら彼女らから学ぶこともあるかもしれない。できる営業マンとか経営層とかみんなサイコパスに見えてきたり、この手の本って著者がサイコパスに見えてきて不思議(被害妄想)。

良心をもたない人たち (草思社文庫)

良心をもたない人たち (草思社文庫)


謎の独立国家 ソマリランド

内戦の続くソマリアの一角に、一地域だけずっと平和を保っている民主国家、ソマリランドがあるらしい。国連にも認められずほとんど情報のないこの国を、現地での取材を重ねて現状や歴史をがたいへんわかりやすく描かれている。

ソマリアはいま、首都モガディシュを中心に筆者の言うリアル北斗の拳状態となっている南部ソマリア(ここの首都、モガディシュは米兵が19名戦死したブラックホークダウンの舞台だ)と、ソマリアの海賊の拠点になっているプントランド、そしてソマリランド、その他細かい勢力に別れている。


このソマリランドでは、選挙による民主的な手続きで政権交代も起きているというアフリカでも珍しいほどの民主主義国家。複数政党による民主主義が成立しているというだけでもすごい。

まず、氏族の力が強いためにこれをコントロールするように国会議員の選挙とは別に10年に一度、政党の選挙があるという。政党を三つまでに制限し、国政に出るためには6つの地域のうち4つ以上で20%以上の支持を集める必要がある。こうして単独氏族だけでは政党を成立しがたくすることで過去に繰り返されてきた氏族の対立を封じ込めたとか。

また、国会には、選挙で選ばれた議会と、各氏族の長老による会議もあり、ここで拒否された法律は通らない
少数政党が乱立して参議院の存在感がなさすぎる日本よりよほど成熟しているかも。


おもしろかったのは北部のソマリランドが平和で南部のソマリアが内戦続きなのは、南部は戦争が下手だかららしい。逆説的にも聞こえるけれど、だからこそ北部では停戦交渉のプロセスが定まっていて、南部では戦争の止め方を知らないという。これは、産業や資源が南に集中して北部が貧乏だからということもあるけれど、北部を植民地にしていたイギリスはもとの氏族の長老たちの権力を利用した間接支配だったのに対し、南部を植民地にしていたイタリアでは権力機構を解体してしまったというのも大きいようだ。
国連や先進国が多額の援助をしたりしても空回っている感があって興味深い。


南部では武装した護衛なしに外を歩くことはできない状態で、海外からの訪問で多額のお金を落とすことになる。つまりトラブルが銭のタネでもある。だと、なかなか平和にしようという動きは生まれない。ゲーム的だ。



金融について。大きな買い物ではドルが使われるけれど、日常ではソマリア・シリングが’使われている。
それも15年以上までの型のお金をイギリスで刷って空輸しているらしいんだけれど、当時と比べて安定しているんだとか。それは内戦時に無政府状態になり中央銀行もなくなってから新しい札を剃らなくなってインフレ率が下がり、安定するようになったんだという。中央銀行の役割、むずかしい・・。



もうひとつ、現地で強勢を誇っていたアル・シャバーブアルカイダなどのイスラムの一派、世間でいう原理主義者はマオイズム毛沢東主義と被っているのではないかというのはかなり鋭い。アルコールはだめ、サッカーもダメ、女性はヴェールで顔を隠さないとダメという厳格な規則は、貧しい地方では別に苦にならなく、氏族の差別がないために歓迎されるのではないかと。そして氏族の差別がないために支持されるという。
また、サウジアラビアなどのイスラム国家が原理主義者を敵と見なし、キリスト教国のエストリアが支援するという政治の不思議もある。敵の敵は味方ということかな。
サウジアラビアなどイスラム国家の独裁者の最大の敵はイスラム原理主義者というのはたいへん興味深い。
あとはイスラム原理主義について、ニュースではわからない現地の感覚も知れた。いまのイスラム国とはまた毛色がだいぶん違いそうだけれど共通点もあるかもしれない。

現地の空気になじんで取材をすすめて行った高野さんほんとすごい。親類からの送金を頼りに現地人とカートという覚醒植物を嗜んでだらだらしている適当さも素敵。

誰も知らないようなことをしているの、ほんとすごいと思うけれど安全に気をつけて欲しい。現地でコミュニケーションツールとして根付いている覚醒植物のカート、あるいはチャット、日本では合法らしいし栽培してみたいな。

謎の独立国家ソマリランド

謎の独立国家ソマリランド



錯覚の科学

時間つぶしにと本屋で表紙買いした割りにはかなりおもしろかった。

簡単にメモ

  • 注意の錯覚
    • 普通はないものは、注意しているつもりでも気付かないことがある
    • 例)潜望鏡で海上を監視していた潜水艦長は、えひめ丸が「見えていた」のに「見落とした」。人間はバスケの試合に乱入したゴリラにさえ気付かない。
  • 記憶の錯覚
    • 記憶は容易に改竄される
    • 「あるべきこと」と「本当にあったこと」を混同する。
  • 自信の錯覚
    • 人は自信をもっている人を有能だと錯覚する
  • 知識の錯覚
    • 専門家さえ肝心のことがわかっていないことがある
    • 見慣れたもの・日常で触れているものを過大に理解していると評価しがち
  • 原因の錯覚
    • 偶然を必然ととらえたがる、相関関係を因果関係と錯覚
    • ワクチン接種で自閉症になる、9.11陰謀説、セックスで若返る、雨が降るとリウマチが痛む
    • 個人の体験を、データよりも重んじがち
  • 可能性の錯覚


これらのことを多くの実例をもとに解説している。
これらの錯覚のいくつかは直感のダークサイドでもある。直感を頼るべき場面もある。たとえば、味覚なんかは直感に頼った方が適切に評価できる。

いくつかの錯覚は、人間が複雑なものを単純化して楽に生きるために役立っているものではある*1のだけれど、人間の不完全さと弱さがよくわかる。
ふつうに生活している分には、これらの錯覚はせいぜい車で人をはねたりするとか仕事でちょっと失敗するくらいだろうけれど、大組織の力や科学技術によって人の力がレバレッジされる場合にはとんでもないことになる気がする。
原子力発電・航空・ITシステム・議会・裁判などなど・・・。


工学的・制度設計的にシステムを制御するためにテストを重ねてフールプルーフに設計してだったり独裁を防ぐようなルールはつくられてはいるけれど、それでも人間が設計し人間が運用せざるを得ない以上、これらの錯覚を克服することはできえないんじゃないだろうか。
物理的にできることは広がったけれど、それに伴って精神レベルが惰弱なままなのなんとかできないのかもな、とか考えると暗黒ディストピアSFっぽくなるのでここらへんまでで。


ただ、錯覚しうることを前提にシステムは設計すべきだし、自分の自由意志があるという考えはおこがましいかもということを肝に銘じておくとすこしは失敗も減るかも。

錯覚の科学 (文春文庫)

錯覚の科学 (文春文庫)


実録 中国共産党

秘密警察 KGB

実録 中国共産党と同じく、本屋で500円で買ったDVD。60年代のアメリカの番組だろうか。
世界一有名な悪役スパイ機関でありエピソードごとにはかなりおもしろいこともたくさんあるんだけれど、中国共産党と違って、時系列でもないし体系だってもないしどういう内容をどういう順序で話すのかの説明もポイントもなくてけっこうわかりにくくて少し寝てしまった。

気になったことのメモ。

まず一番印象的だったのはヘードマッシングという女スパイ。
国防省の高官や国務長官の政治顧問などの要職にいる人間をスパイに勧誘した大物で必要だったら技術者も女も勧誘した。女スパイで優れた勧誘者というからには峰不二子的なアクティブな美人かと思いきや、アメリカのどこにでもいそうな太ったおばさん。こんなひとまでスパイで高級官僚を勧誘していたというのほんとすごい。

話していた勧誘術としてはこんな感じ

  • 信頼関係を気付いてから追い込む。決してソヴィエトのスパイとは言わない。

例外は相手に思想を説く時だけ。

  • 対象を落とすために嫌いなワーグナーも聴き、(おそらく相手の興味分野である)フロイトも読んで勉強したという。
  • 女はハンサムをあてがって身体の関係までもっていければほぼ100%だとか。でも、ファシズムという敵が目標になっていたからこそできたそう。
  • 労働階級を勧誘するのは不可能、でも知識層や中間層を勧誘するのは簡単。永遠の自由、社会主義、農場、新しい医学、新しい世界


ルーズベルトの顧問で国連の設立にも関わったヒス、ソ連駐在のカナダの大使のワトキンスもスパイだったとか。

大使館や国連はスパイの温床だ。
国連職員は米国内を自由に移動できるからスパイとして格好のポジション。あるソ連出身者が幹部の部署には、その人物の意図ではなくKGBのスパイが大量に入ってきたがKGBの上官の命令しか聞かずスパイばかりしていて国連の仕事をまったくしないものが大量にいたという。

ほかにも民主主義と社会正義を標榜したキューバ革命計画経済を導入)でもその後はKGBが介入し完全に掌握。
60年代に起きた黒人の暴動は、自主的なものではあったが武器の使い方や火焔瓶の作り方を教えたのはKGBケベック解放戦線にも関わっている。

あとアカデミーでもスパイ。ソ連にいる米国人科学者のすべては人文系だが、米国にいるソ連人科学者は大勢いるというのもなかなか。

亡命者や捕まったスパイが誰かはスパイであると証言したり告白すると対象はその数日後に心臓発作で亡くなったりとかまじKGBだわ。



ほかにも高級官僚のスパイは米国から蒋介石政権への支援も大統領と議会の決定があったにもかかわらず無視して遅らせたりとかかなり歴史にも影響を残していそう。自由の女神を爆破する計画まであったそうだ(警察のガサ入れで未然に防げた)
60年代末からのカリブ海の左派独裁政権成立あたりの事情はキューバ独立以外ほとんど知らないので調べてみたい。
東西冷戦、やっぱりおもしろいぞ!

さて、日本国内に潜伏しているという北朝鮮工作員はどうしているんだろう・・・。

秘密警察 KGB THE KGB CONNECTIONS CCP-898 [DVD]

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聞き書き にっぽんの漁師

沖縄から北海道までの日本各地のベテラン漁師13人からの聞き取りを書き起こした本。
それぞれ捕る魚も規模も違うけれどみなプロフェッショナルだ。その考え方は何十年もの経験からのみ得られる重みを感じる。

同じ場所でずっと同じものを狙っている人、時代に合わせてターゲットを変えている人、遠洋で捕りまくっている人。

(海の)底の硬い所とか柔らかい所とかありますさかい。海底は実際には見たことがなくてもわかるわ。だいたいヒトデが違うてくる。ヒトデの形でここは柔らかいか硬いか、また中間ぐらいのザレの石か濃いしか。みんなヒトデが違うておるわ。ヒトデを見たら海の底がどうなっとるかわかる。


気になるのは、ほとんどの人が「昔は良かった。今の若いもんはたいへんだよ」と言うこと。魚の値段が下がったり、漁獲が減っているからだそう。魚群探知機や強い繊維など漁具は進化したけれどとれる漁は減っている。
高齢化も進むし遠洋だと外国人船員に頼らざるをえない。鰻の漁獲高が減っていることはニュースで知ることが出来るけれど、ほかの漁業全般もあんまり継続的じゃないのかも。

陸(おか)で勤めた場合は何十年か勤めな一人前の給料は出んがいね。漁師の場合は、一年経てばもう一人前や。みな漁師になったのは、それが魅力でなかったんやないかな。今は違うわ。みなサラリーマンや。自分のところも三人息子があるが誰も後継者はおらん。高校生の勉強の嫌いな孫がやる言うてるが、やれんわ。遅い。高校出てからでは遅い言うんじゃなくて、俺が教えるには年がいき過ぎた。もうみんなそんな人ばっかりや。


恵みの海をみなで漁するというのは共有地の悲劇感もあってむずかしい。ホタテとかだと地区を決めて稚貝を育てて4年ごとに採るという方法をとっている農家のようなところもあるけれど、回遊魚ではそうもいかない。国内で厳格に漁獲量を定めていても他国もとるし、密漁をするインセンティブも強い。そしてみんな苦しむ。

また、多くのところで出てくるのが漁業権の話。港をつくるであったり資源保護するためにそれまで漁業を営んで来たひとに家がたつほどの補償金を国から払って漁師が減る。そしてそれにより港の好立地でもある魚の産卵場である藻場が減って漁業資源に影響をもたらしている様子。漁業資源、どう管理していけばいいんだろう。


もちろん、そんな後ろ向きな話じゃなくて熱い話もある。


オホーツクでサケ定置網やっている人がソビエトの監視船の目をくぐって密漁して大漁をあげた話や、紀州の伝説的マグロ漁師。これについてすこし書いてみる。

紀州の漁師は漁法や漁具を改良して日本の隅々まで魚を追い、そしてその漁法を各地に伝えた。三陸の漁師も房総の漁師もその漁法に驚き、教わったそうである。

この本で紹介されているマグロ延縄漁の寺本正勝さんは19トンの船で年間1億円くらい揚げていた名漁師なんだけれど東シナ海魚釣島、喜屋武岬、沖ノ鳥島、硫黄島、小笠原など日本中の海に縄を下ろしているし漁具に工夫も重ねている。で、いろんなところに行くと現地の漁師とトラブルになったりするけれど、逆に、なんでこんな金みたいな魚がこんな値段しかせんのよと怒って、魚の扱いやら何やら教えて魚の買い取り価格が上がって喜んでもらったという話もある。

名漁師と呼ばれるひとの多くは、勘と経験だけでなく、進取の気性と工学的な考え方も持ち合わせていてすごくかっこいい。

農家編とか畜産、猟師、林業家などの類書があれば読みたいな。そういえば漁師や猟師は「師」だけれど、それにそうとうする農業者を指す言葉ってなさそう。

聞き書き にっぽんの漁師 (ちくま文庫)

聞き書き にっぽんの漁師 (ちくま文庫)


パーソナリティ障害がわかる本

パーソナリティ障害とはなにか。米国精神医学会の発効する「精神疾患の診断・統計マニュアル第4版(略称 DSM-IV)」によれば「著しく偏った泣いてきた意見や行動の持続的様式」ということで著者は「偏った考え方や行動パターンのため、家庭生活や社会生活、職業生活に支障をきたした状態」と説明している。
ひとくちにパーソナリティ障害といっても、10種類に分類され、有名なところで境界性パーソナリティ障害(俗に言うボーダー)から回避性パーソナリティ障害、妄想性パーソナリティ障害がありそれぞれ大きく異なっているようである。

「偏っている」という表現は、「偏っていない」・「正常」なものの存在を前提にしているようであまり好ましくないと思うけれどある枠組みでとらえることで認識でき、対処することで本人にとっても周囲の人間にとってもよい結果となるというのは素晴らしいことだと思うし医学の成果としては直接に病を取り除く外科手術の技術や難病を癒やす薬に優らぬとも劣らぬものだろう。

この本ではそのパーソナリティ障害の紹介に留まらず、パーソナリティ障害をそれを個性として活かす、つまりパーソナリティ・スタイルに昇華するための方法であったり周囲の人間がどう対応すべきかという点まで盛り込まれていて参考になる。

また、興味深い指摘をメモしておく。
こういったパーソナリティ障害は遺伝か環境かという議論はあるが、二元論ではない。自閉症スペクトラムなどで遺伝的にすこし育てにくい子だと、親や先生からも否定的な反応をとられることが多いなど環境にも影響を与えるというもの。また、著者によればほとんどのパーソナリティ障害では親の影響があるということである。核家族化・少子化が進み子にとって親の存在感が相対的に大きくなっている現代ではある種の先進国病として増えつつあるのかもしれない。

先に挙げたマッカーサーはこの本の分類でいう自己愛性パーソナリティ障害に強くあてはまっていると思う。彼の英雄気質もこういったものからもたらされているとすればある種の天才には逆に必要な要件なのかもしれない。


家庭の科学

書きました。

日本の経済

新書。明治から高度経済成長、オイルショック・バブル・平成不況と歴史を概観し、国際関係・産業・企業経営・雇用と職場・財政と社会保障・日本の金融と各論を簡潔に整理している。
わりと知っているつもりであったけれど高度成長のあとに成熟した社会へのシステムの切り換えに失敗したということを整理されて勉強になる。

これまではフリードマン的に自由化がいいんじゃないかな、規制撤廃して市場に任せたらえんちゃうかなと無垢にも思っていたんだけれど、保護にはそのメリットもある。産業を育成できる。日本の自動車産業も5,60年代に保護していなかったらつぶれていたかもというのはある。いま、アメリカなどすでに成熟した産業をもっている先進国中心に発展途上黒に門戸開放を迫っているけれど、ご都合よすぎなのかも。ソマリランドにしてもほかの最貧国でも資源やプランテーション以外はなかなか産業が育たないよね・・・。


これからどうしたらいいんだろう。本書から考えると、経済成長は見込めず、共同体が不可逆に縮小しているなかでは個々の経済主体に多くを任せることが難しいので小さな政府ですませることはもはや不可能。無理にすれば大幅な格差のもとで社会矛盾が噴出する。そのため、あるていどの負担は覚悟する必要があるという。しかし政府任せのどんぶり勘定ではこれも不満が噴出するため正当性・納得性が確保されるようにする必要がある。具体的には、能力に応じた負担、必要に応じた受益を基本とし、権限・根拠を明確にしたルールを透明に運用する。これは企業などの組織でも同じで、コンプライアンスを厳しく追及し、不当な身分的差別の解消に努め、不払い労働に頼らない経済水準の維持を目指す、というものだろうか。それでも難しすぎる。
問題が複雑で錯綜しすぎていて無力感高まってる・・・

日本の経済―歴史・現状・論点 (中公新書)

日本の経済―歴史・現状・論点 (中公新書)


マッカーサー大戦回顧録

長らく絶版だった朝日新聞版からフィリピン戦から日本占領政策までを抜粋して一冊にまとめている。

やっぱりマッカーサーはすごい。自伝の行間から窺えることは英雄的とも言えるカリスマ性と、自身を英雄に見せようとするその強烈な自己顕示欲。主観的な自伝で客観的な歴史ではなく資料でしかないけれど、物語としておもしろい。ちなみにマッカーサーの思い違いや、過大に記述しているところを解説で指摘しているので安心して読めます。


読んでいると、大統領選に出馬しようとするなどの誇大な自己顕示欲、マニラホテルのスイートルームを占有する特権意識、他者を利用すること、共感の欠如、キング提督など批判者への過度な反撃、厚木空港への降り立ちや戦艦ミズーリでの降伏式、どう見られるかを強く意識した演技性の行動などなど自己愛性パーソナリティ障害を思わせるようなところが多い。もっとも、その希代の才能と戦場や組織での経験からそれは障害というよりはスタイルに昇華している感じはあるかな。というよりもこういった、命も関わるし国家内外の利害が絡む複雑な近代戦で支持や信頼を集めスムーズに行動するにはこういう性格は必須なのかも知れない。


太平洋戦争であまり知らなかったフィリピン戦(米軍を先制攻撃した1941年のM作戦時と1944年末からのレイテ戦)についても知れたし米軍が戦いながら英国やロシアとどう連携し、牽制していたか、またマッカーサーが自国政府や各国とのあいだで巧みな外交をしていたことが興味深い。こういう人物は平時には育ちえないなあという気もする。


彼がいなければ日本はどうなっていたか。北海道はいまもソ連領かもしれないし分割統治も本気であり得るし今よりも精神的封建制が強く残っていただろうことはわかる。


チャーチルルーズベルト、またオーストラリア首相のカーティスやフィリピンのケソン大統領、ほか軍のトップやはては日本軍の将官の、マッカーサーを褒め称える手紙をたくさん紹介していて古風なレトリックがなかなかおもしろいし自分もこういう手紙を書いてみたい。


それも含めて何カ所か気に入ったフレーズを抜粋してみる。

彼は攻撃に際しては敏速で確実であり、防衛に当ってはねばり強くたじろかず、勝利を得た時は謙譲で慎み深かった。敗北した場合にどうかは私は知らない。なぜならクルーガーは一度も破れたことがないからだ。

こういう褒め言葉のオンパレードである。批判も多いけど。こういった褒めフレーズ辞典になるかもしれない。

私はいつも、戦闘に先立って細かい計画を立てることは危険だと考えている。なぜなら、敵の反応ないしは敵のイニシアチブといった不安定的な要素で予期しない状況が出てきた場合、指揮官の判断を狂わせるおそれがあるからだ・従って私は、作戦に当たっては、それをいつはじめるかということ以外に日程を立てたことはない。こんどの作戦では、進展が非常に早くて、はじめの希望や期待をはるかに越える戦果があがった。野戦の指揮官にとっては、上級の司令官からあまり細かい”くちばし”を入れられたり、あまりきびしい”時間表”を強いられたりすることほど、危険なものはない。
どのような部隊にも、それぞれに特有の長所や弱点からくる自然の制約があって、それが部隊の作戦行動に影響することになる。それがどう影響するかを知っているのは、その部隊の指揮官だけであり、時にはその指揮官でさえわからず、推測を働かせねばならない場合がある。従って作戦の現場に居合わせない者が、あれこれと強制的な判断を加えることは、ものごとをぶち壊しにしてしまうおそれが多分にある。

日本の大企業ではよくあるよね。ということだけでなく、まま当たり前のことではあるけれどこれだけ堂々と言語化できるということに驚く記述も多い。

日本はいまや、国民を全体主義的な軍部の支配から解きはなち、政府を内部から自由化するという実権の一大研究所となったのである。日本での実験は、日本の戦争再開能力をぶちこわし、戦争犯罪者を処罰するという連合軍主要目標よりはるかに先に進んだものでなければならないことが、私にははっきりしていた。
同時に、近代において被征服国の軍事占領が成功したためしはないということも、私にはよくわかっていた。(中略)
その弱点とは、民間人の支配が軍にとってかわられるだけであること、非占領地の住民がいや応なく自尊心と自信を喪失してしまうこと、自由社会のもつ地方的な代表制とは逆に中央集権化された独裁的で専横な権力がどんどんのさばりはじめること、外国兵の銃剣に支配された国民の精神的、道義的風潮は、次第に低下するものであること、権力という病気が次第に占領軍部隊にしみ込み、占領することはある種の人種的優越を示すものであるかのような有害な錯覚が兵士たちの間に生れるにつれ、占領軍自体も次第に堕落してしまうことなどだった。

イラクやアフガンで統治にあたっていた現地のトップはどう考えてどう行動したのか、記録を読んでみたいな。


そういえばむかし、「女子学生会長 マッカーサー大戦回想記に目覚める!」というラノベみたいな某書の二番煎じを読んだなあ。高専×ロボコン×マッカーサーというどうしてこうなった感があって二番煎じにしてはおもしろかった。
ただ、本家は苦手です為念・・・。



エッセイ

茶の間の正義

硬派な保守のコラムニスト、山本夏彦氏によるエッセイ。
1967年に初版なので随分と昔の本だ。保守観念も今読むと時代がかかっているようにすら感じる。けれど世間一般の通念や識者・マスコミの言葉に一味違う視点から鋭く、しかし考えてみるとまっとうな風刺を投げかけている。現代でいうと誰だろう?小田嶋氏とかだろうか。

電車のなかで読んであまりメモはとっていなかったのだけれど2つ気にいったことを紹介してみる。


売血や売春を批判する流れで、職業には貴賎があると断言している。職業に貴賎はないと教え込まれた自分はオヤと思ったけれど読んでいくと、職業に貴賎はないと言う人は多いが、誰しも子供を一流校へいれたがり、やがては一流企業にいれようとする。してみれば貴賤はあるとは白状しているも同然ではないかと続く。そして腹と口が違うことに皮肉をかける。

また、核家族礼賛を排す。という話を紹介する。核家族では過去の知恵や技量が受け継がれにくいとしている当時、世間にどう受け止められていたかはわからないけれどいまはよくある話。
そのなかで下記のように書いている。

私は年寄のいない家庭は家庭ではないと思っているーと言えば年寄りは喜ぶ。核夫婦はいやな顔をするだろうが、早合点である。何度も言うが、核家族という造語は新しいが、実物は早く存在していた。今のインテリ老人の多くは、その先駆である。あれは本物の年寄りではない。にせの年寄である。彼らは若夫婦と縁を切る前に、または切られる前に、ご先祖と縁を切っている。肉声で昔話一つ話してやれなかったのは彼らである。


ほか、昔話を改竄するな、犬のふり見て我がふり直せ、ラーメンと牛乳で国滅びるなど興味深いタイトルのエッセイがあるので気になる人は読んでみるといいかも

雑誌の連載コラムのようであるのでその初出を載せて欲しいなあという気持ちはある。

茶の間の正義 (中公文庫)

茶の間の正義 (中公文庫)



人望の研究

空気の研究や偽ユダヤ人問題の山本七平氏の本であること、「二人以上の部下を持つ人のために」というサブタイトル、Amazonでの高評価からぽちってみた。
中身を簡単に言うとこんな感じ。

  • 能力と徳の両方が必要だよ(このあとは徳の話だけになる)
  • 四書五経の入門としての近思録に学ぼう
  • 九徳に達するために中庸を目指そう

最近の自分は徳が足りないので訓練しようかな。



全東洋街道

たぶん70年代くらいにトルコから日本まで旅した藤原新也の写真ポエム。よい。
フィルムのしめっぽさ、とてもよい。
インターネット時代でいろいろ変わっちゃったなー、と思ったりする。

上下巻でこれだけいい感じのパターンの表紙の本はあまり知らない

全東洋街道 上 (集英社文庫 153-A)

全東洋街道 上 (集英社文庫 153-A)

全東洋街道 下 (集英社文庫 153B)

全東洋街道 下 (集英社文庫 153B)



技術書

プロが教える農業のすべて

カラーで現場のミクロな話から国家間のマクロな話もあって概要を知るにはよかったかも。
米や野菜の畑作りからはじまって種まき、収穫まで簡単に説明している。あとは補助金とか具体的にどのくらいもらっているもので、もらうためにどう工夫するのか知りたいなー。
ただ、こういうのはある程度の実践がないと机上での学習も非効率だしな・・・

史上最強カラー図解 プロが教える農業のすべてがわかる本―日本農業の基礎知識から世界の農と食まで

史上最強カラー図解 プロが教える農業のすべてがわかる本―日本農業の基礎知識から世界の農と食まで


インフラデザインパターン

整理されていて便利。求められる非機能要求のレベルに応じて比較して選べるというのがよい。ただパターン化しすぎなきらいはあるかも。クラウドデザインパターンAWSなどの具体的なサービスでやっていかないとわからないかな。
あたらしく構築するときに、どういったポイントがあるかメモ的に見てみるとよいかも。インフラむずかしい(小並感)

インフラデザインパターン ~安定稼動に導く127の設計方式 (WEB+DB PRESS plus)

インフラデザインパターン ~安定稼動に導く127の設計方式 (WEB+DB PRESS plus)


パーフェクトJavaScript

これまで、ちょっとしたおもちゃをつくるくらいにしか使っていなかったJavaScriptをようやくちゃんと勉強してみた。
言語仕様から、クライアントサイドでの使い方、web APIの関連、Node.jsを用いたサーバサイドまで触れられていて、自分みたいなコピペプログラマにとって筋の通った理解への大きな助けになったと思う。
ファットクライアントで速度を出すみたいなのがどれくらい効くのか調べていないけれど、どうなんでしょう。

それよりサーバサイドをNodeで書くのが楽すぎてびっくりした。もっとちゃんと書けるように勉強したい。

パーフェクトJavaScript (PERFECT SERIES 4)

パーフェクトJavaScript (PERFECT SERIES 4)



実践Node.js

原題はNode in Actionで日本風の名前になっている。
nodeおもしろいと思って読んでみた。わかりやすいし開発現場を意識していて実践的でインスタントに効果ありそう。
ExpressやそのコアのConnectにかなり紙幅をさいているのだけれど、これが出た前後で新しいバージョンの、がらっと変わったExpressがでてつらい感じ。作者にExpressつくったひとがいるのに訳者には連携されていなかったのかな。
あと訳者と監訳者のコメントどころか紹介もない技術書ってめずらしい。なんか後ろめたいことでもあるのかな。

実践Node.jsプログラミング Programmer's SELECTION

実践Node.jsプログラミング Programmer's SELECTION



マンガ

サルでも描けるまんが教室

表紙のインパクト買い。
なんだこれ、天才過ぎる。

まず表紙をめくってすぐの、マンガができるまでカラーコラムが異常。
インドネシアの木材業者のインタビューからはじまってパルプや紙の加工を学研マンガかってくらい解説してから、険しい顔をした漫画家が真剣にエロ漫画を描いて、これまた真剣な編集者から「もっと食い込みを強調して!」と鋭い指摘を受ける。そして写植屋さんがインタビューを受けながら、ひわいなセリフを打ち込む写真。それが製版され、ふたたび編集部で校了し、厳しい顔をした印刷会社の職人さんのまえをエロ漫画が流れていく様の写真とインタビューがある。そして、それを読む若者。それは読み終わった後、断裁されパルプになり、再生紙へ。そしてトイレットペーパーとしてさらにエロ漫画を読む若者の右手に置かれる。死と再生の雄大な仏教的景観・・・。
ひどすぎる。


はじめは漫画の書き方を項目ごとに4-8ページずつ書いて、ジャンルごとに攻略法がのっていてるんだけれどパロディ・諷刺だらけでいちいちおもしろい。
枠線の項では「陰毛」をつかって枠線をつくってみたり(なに言っているかわからないと思うが本当だ)、ポーズの項では竹熊センセのあられもない姿が描かれていたりいろいろひどいんだけれど、少年漫画で大事なのはメガネくんだと喝破したり、少女漫画と相撲の関連性について洞察していたりとするどい。

後半、彼ら自身が持ち込みして連載がはじまり、苦心と努力?の末に大人気漫画となってアニメ化・グッズ化して絶頂をむかえる。そして人気低迷からどん底まで落ちてホームレスになるところまでを漫画家視点で描いていて、まるで創世と終末を描いた神話のようでもある。


これも上下巻ともに異常な存在感のある表紙だ・・・



アニメイション・特撮

喰霊

同居人が借りてきて予備知識なしに見たら驚きのあまり呆然としてしまった。いいから何もググらずに一話を見ろ。話はそれからだ。アニメでこれだけショックを受けたのは初めてかも・・・。


ジョジョの奇妙な冒険

いま、深夜アニメで3部をやっている。前半が終わったところで、1月からまた後半が始まるらしい。分割4クールでかなりの長編だ。

結末まで知っていて予定調和的ではあるんだけれどついつい見てしまう。いいアレンジはあるとはいえ、話の筋は原作に忠実すぎてテンポが悪いけれど長旅を追体験できてよいのかもしれない。

これの原作をリアルタイムで読んでいた世代はほんとうらやましいな。
アブドゥルさんが亜空間に***されたシーンとか、ディオの能力***だとわかった前後あたりはもう翌週が待ち切れなさすぎるだろうし、どうなるかの予想や議論はほんと盛り上がりそう。


仮面ライダー鎧武

フルーツ×戦国という謎デザインでかつ虚淵玄氏が脚本を書いているということで話題を呼んだ鎧武もとうとうおしまい。そもそもが対象が子供向けで販促番組であり、タイアップも多いし制約だらけでほんと難しいと思うんだけれどよくつくりきったと思う。

賛否両論ではあるけれど続きが気になるというのはおもしろかったということかな。
とりあえずしばらく続いていた、新しい敵怪人に苦しめられる回と、弱点の発見orパワーアップによる敵怪人を倒す回の繰り返しをほとんどないものにしたのは大きな功績だろう。

しかしデザインださすぎではないだろうか。いや、これがいまのちびっ子に受けるとすればこれからの時代は・・・。むしろおれの感性が老化しているということ?


イベント

深川八幡祭り 本祭

3年に一度の本祭りに参加してきた。朝5時集合で夕方17時解散まで御神輿担ぎっぱなし、沿道で水かけられっぱなしでかなりしんどかったのだけれどかなりおもしろい。地域コミュニティにもかなり入れたしなかなかよかった。

1年近く付き合った彼女と別れた

原因は自分の徳が足りなかったとでも言っておこう。


以上。わりと人生の悩みどころ。

*1:人工知能でいうフレーム問題を解決するようなのと近いかな

売切続出!京都でもっとも人気なお土産は意外なあいつ

金曜日の19時半ごろの京都駅の様子です。

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京都駅にも赤福あるのか。ひさびさに食べたいし買って帰ろかな。













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もう売り切れか、人気だなー。京都駅お土産屋たくさんあるし待ち合わせまで時間あるから少し回るか。




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ここも・・・




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あれ・・・



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お、ここはまだ残ってる??


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せやな・・・



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全滅・・・




京都駅でこれほどまでにプッシュされているお菓子がどこでも売り切れているということは、赤福こそが京都(駅)でもっとも人気なお土産であると言っても言い過ぎじゃないと思う。



しかし、なんたる幸運か、翌日に実家に帰ると、同じタイミングで帰ってきた弟が赤福を持ってきてくれていた。普段の感性は全然違うのにここだけあうのは気持ち悪いけれどさすが俺より稼いでるだけある。
ちなみにこの日、4年半ぶりくらいに兄弟全員揃ったんだけれどその話はまたこんど。



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口の中に吸い付く舌触りなめらか餡子が、柔らかくて弾みの良い餅とあわさってほんと最高。熱い日本茶と本当に合う。

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関連情報

赤福がたまたま入荷が少なかっただけかもしれないし、そもそも日持ちしないから在庫を持たないという理由もあるからもっとも人気というのは言い過ぎだけれど、京都での赤福押しと売り切れっぷりがおもしろかったので書いてみた。


京都のいいお土産はちゃんとあります。



東京土産はド定番があんまり好きじゃないのでけっこう難しい。だれか47都道府県のお土産で打線組んでくれないかな。

実録 中国共産党(1967年)を観た

神保町の書泉グランデで一枚500円で売ってたのを衝動買いした。
元々はアメリカの古いドキュメンタリらしい。原題はChina -The Roots of Madness


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観終わってから気付いたけれど蒋介石が80才らしいので1967年の作品らしい。もっと文化大革命の闇とか党の堕落を期待していたんだけれど、義和団事件から国共合作国共内戦あたりの経緯を映像でわかりやすく説明していてたいへんおもしろかった。


日本だと終戦前後で歴史は分断されて捉えがちだけれど、ほかの国では東西冷戦に至るまでまだまだ緊張は続くことがよくわかる。


そして中国を中心にしているからこそ見えてくるものもある。
たとえば満州事変の折、なんで蒋介石は積極的に日本と戦わなかったのか、とか真珠湾攻撃が中国にとってどれだけ吉報であったのか、とかはあまり知らなかった。


やっぱり映像だとイメージ変わる。清朝皇帝の豪勢さと人民の暮らしのギャップもわかるし当時のファッションも文化、産業の発展のレベルも窺える。あと若い頃の蒋介石毛沢東の強い眼差しとカリスマさは異常。


観ながら授業メモっぽく書いたものを公開しておきます。間違っているかもしれないので詳細はちゃんとした教科書読んで下さい。括弧内は自分のコメントです。

解説役で政治ジャーナリスト、歴史家、小説家であるセオドア・ホワイト氏は7年中国に滞在し、毛沢東蒋介石とも話したことがあるそうです。


前置き
  • 50年かけて7億の人民に埋め込まれた憎悪は世界平和にとって最大の脅威だ。それを理解するには経緯を知る必要がある
  • 中国というのは独特の価値観を持っている
    • 孔子の説く美と秩序
    • 序列の最上位にいる天と交信できる天子
列強の進出と清朝滅亡
  • 陶磁器などの中国からの輸出に対する貿易赤字を打ち消すため英国がアヘンを密輸
    • (イギリスはまじで冷酷だなあと世界史読むといつも思う)
  • アヘン戦争の勃発と、眠れる獅子中国の敗戦
  • その後の列強による割譲。西太后など政治トップの腐敗で国民の不満は募る
    • 海軍の予算で遊覧船をつくらせたとか
  • そして義和団事件での白人虐殺が発生。さらなる列強の進出を許す
  • 1911年、孫文らによる辛亥革命で幼い溥儀を残し清朝は事実上滅亡する
中国のリーダー
  • この時代から中国には2つのタイプのリーダーが同時に現れることになる
    • すなわり武力を重んじるタイプ、思想を重んじるタイプ
    • 軍閥代表としての袁世凱と、孫文であり、後に、蒋介石毛沢東に変わる
      • (国民党が思想重視の孫文から、武力重視の蒋介石にシフトしている。どちらの場合も、思想を重視したほうが勝っている)
  • この2つのリーダーがこのあと50年間、西洋との関係を複雑にした。
軍閥による分割統治と西洋人の進出
  • 当時の中国は大部分が軍閥に支配されている
    • (こいつらがけっこうタレント揃いでおもしろい)
    • 好色が語りぐさとなった張宗昌、麻薬中毒の閻錫山、花と庭園に耽った呉佩孚・・・
  • 軍閥同士の争いは茶番
    • 雨の日は戦わず、晴れの日も10時以降に開戦し夕方には停戦するとか
  • 命が軽視され死は見世物。安全なのは外国の植民地か外国人居留地
  • 一方で産業は西洋人に支配され繁栄を謳歌
    • 観光地やレース場にいる中国人は召使いだけ
軍閥帝国主義を打倒するのため孫文らは国民党を結成
  • 三民主義民族主義民権主義民生主義)を打ち出す
  • 米仏英は頼らずロシアに頼る。派遣された顧問のボロディンはレーニン思想を持ち込んだ
  • 1925年に孫文は癌で死亡。翌年、総司令官となった蒋介石は北伐を開始
    • 愛国心を訴え、農民や労働者を味方に付ける。英国租界を襲い国民政府を樹立
  • 一方で国民党左派、共産勢力が勢力を伸ばし、蒋介石を追い出そうとする
    • ここで対立が深まり、共産主義者や軍閥を巻き込んでいくことになる
  • コミンテルンの命により広州でクーデタ
    • 共産党を見分けるのは簡単だ。彼らは首に赤いスカーフを巻いていた。クーデタが失敗して慌てて外したけれど、暑さのために首に赤色が移っていたためにすぐに見つかって殺された」
  • というわけで国民党がほとんどの左派・共産主義勢力を駆逐
    • (ちなみに蒋介石の奥さん宋美齢夫人はまじで洗練された美人で怖い。 106才まで長生きしている・・・)
  • 政治構造そのものが革命で破壊され土台から作る必要があった
    • 蒋介石は軍人だったしやり方を知らなかった。博士号をもつアメリカ人顧問も理想主義者だらけでつくりかたを知らなかったし、共産党と日本の圧迫も有り十分に内政できなかった(ここでGHQクラスの官僚たちがいれば・・・)
    • このあいだ、中国では工業化がおおいに進む
日本の進出と共産党の勢力拡大
  • 1928年張作霖爆殺事件
  • 引き継いだ張学良は国民党か日本を選ぶ中で国民党を選び、焦った日本は満州事変を起こし傀儡国家満州を建国
  • 南での内政・各軍閥との対応に追われる蒋介石もなにもできない
  • そのすきに、1932年に共産党は軍を復活させる
  • 毛沢東たちはソ連の理論を見限り、都市ではなく農村に目と付けた。
    • 毛沢東の発想は単純。富裕層や外国人に対する怒りを表面化させ、報復するようにたきつける。ここからゲリラ戦の発想が生まれる
    • 情勢の緊迫に乗じ、規模を拡大させる
  • 1934年までに蒋介石共産党を囲い込む、しかし共産党は次々に拠点をかえる長征を展開。
国共合作
  • そして36年、共産党は内戦の停止と抗日統一戦線を提案
  • しかし蒋介石は態度を硬化させたまま、東北の軍閥(張学良ら)に共産党を攻めさせようとする
  • 張学良は日本と戦うべきではないかと難色を示す
  • 西安まで張学良の説得に出向いた蒋介石を張学良が誘拐、共産党員たちと説得し反日共同戦線を張ることに
    • (ここは世界史有数の緊迫場面だと思。まえに行った9.18歴史博物館でもこのシーンのオブジェがあった)

  • 1937年。日本は大陸制圧を目指し、戦争を開始。日中戦争である。
毛沢東
  • 毛沢東の戦争観は特殊だった
  • 共産主義は敗れるとアメリカ人は思っている。山を草履で歩く共産主義者を軽蔑している。だが、バレー・フォージュのジョージ・ワシントンも圧倒的劣勢にあった。日本軍や蒋介石と違い、我々には飛行機も戦車もない。だが、すべてを持っていたイギリス軍に勝ったのは、電気すら持たないワシントンだ。」
    • (これを話した瞬間、彼は電気が当時存在していたか疑問に思ったそうだ。)
  • 毛沢東はアジアの戦争を熟知していた。
    • 「ゲリラは人の海を泳ぐ魚だ」
    • 1年で20万人の農民を集める。日本軍は都市に注目したが八路軍は北の辺境を抑えた。
  • そして思想教育を重視
    • 軍事訓練と思想教育は同じくらい重要だ。としていた
  • 報道の自由をどう思うか毛沢東に聞いた。」「報道や言論の自由は認める。国民政府とは違う。誰もが意見を言える。蒋介石のように検閲はしない」本当かと念を押すと彼はもちろんだと言った。あなたが権力を握ったとき、誰もが自由に記事を書けるのか?と聞くと、人民の敵以外はね、と彼は答えた。
  • 毛沢東、戦略家としてかなり天才だ。政治は略)
国民党の対応と(日本にとっての)戦後
  • 国民党は奥地重慶に撤退
  • 日本の爆撃が最も苛烈であった1941年、蒋介石は「日本は皮膚病に過ぎないが、共産党は心臓の病だ」といった。
  • そして日本が真珠湾を攻撃し、中国はアメリカと戦線を張ることになり強力な同名相手を得る
  • 米軍から国民党軍を鍛えるために派遣されたスティルソン将軍はインドで中国兵の訓練を実施
    • ただし無能な上官が多く、変えるように国民政府に要求するがのれんに腕押し。むしろアメリカとの同盟に安心しきっていた
    • 都市育ちの幹部たちは重慶(山水画の舞台みたいなところだった)の田舎暮らしで倦怠感が高まっていたとか
    • (ここらへんは水滸伝に出てきそうな山中の街で魅力的)
  • カイロ会談では蒋介石ルーズベルトたちと会談し戦後の中国の地位を確認
    • その間、共産党毛沢東も戦後のことを考えていた
    • スティルソン将軍は中国兵を日本軍と戦うために鍛えた。内戦には興味ない、とするも蒋介石はこれを戦後まで温存
    • ミズーリ艦上の降伏文書調印には中国も参加。国民政府からであり共産党は不在。ここからが戦いの始まりだった
  • アメリカの大使ハーレーは内戦を回避させるため共産党のもとを訪れる。「終戦だ。平和を」と
    • 毛沢東蒋介石は軍を統一させようとする重慶で会談
    • 1927年の蜂起以来、毛ははじめて国民党と顔を合わせた。
    • 6週間もの交渉ののち、蒋は笑顔で見送った。
    • しかし国民党か共産党は日本軍の手放した各地の武器をどちらが引き継ぐかなどで小競り合いが多発
    • 国民党は米軍の移動手段を用いて各地を素早く占拠、そして満州を狙うが共産党も狙っている
  • 大統領特使のマーシャル(元陸軍参謀総長の元帥だ)が派遣され、周恩来蒋介石の間で1946年に停戦協定に調印
    • (アメリカがいかに中国和平に気を遣っていたかわかる。ただし目的が対共産主義なのかどうかはよくわからない)
  • しかし2ヶ月後には緊張ふたたび
    • 戦場の満州には日本の残した財産がある
第二次国共内戦
  • 蒋介石は1946年に首都を南京に戻し憲法を制定しようとする
    • しかし内戦の戦費のためにインフレが進行。蒋介石の主要な支持層であった中間層を直撃。人民の不満は募る
  • 48年、ついに満州で戦火がおこり、南進。蒋介石は辞任。
    • 共産党は無条件降伏を求め、国民党は拒否。3週間後には共産党軍は長江を渡るが国民党軍に戦意がなく、国民政府は台湾まで撤退
    • ほとんどの西洋人は大慌てで撤退。共産党はいっきに全国を制圧
終わりに
  • なぜ中国は共産党の手に落ちたのか。
    • 戦争や恐怖や絶望が、50年の蛮行が精神をむしばんでいた
    • そこに共産党が土地を分け与えると甘い言葉を触れ回ったから
  • 中国という国について
    • 製紙・印刷技術・火薬・羅針盤を開発した偉大な国はインスリンの合成・原爆実験に成功し近代化している。しかし人民は飢えている
    • 毛沢東は老いてなお憎悪を説き、台湾を攻めるように説く

感想

このビデオはここまでを描いている。ここから文化大革命があって、苦難のときを経て徐々に近代化して経済力を一気に高めていくと思うと感慨深い。義和団事件から共産党の完全勝利まで50年は1年と休まる時間がないし、近代以降にこれだけ長い戦火にあてられていて先進国入りしている国はないんじゃないだろうか。

この50年にわたる戦火が中国人の精神・考え方にどういう影響を与えているのかは気になる。中国共産党は、帝国主義を打倒したことの偉大さを喧伝しまくっているけれど、中国人のうちではどう捉えられているのだろうか。

しかし、この時代の中国の情緒は異常だな。山水画のような奥地、広がる田園風景は残っていつつ、一方では魔都上海あたりの雑然とした妖しさもある。


ここらへんを言葉で伝えるのは難しいので藤原新也が1981年に発表した「全東洋街道」から言葉を借りる。

上海の街を抜けると田園が広がった。
延々と田園風景が続いた。
田園の上に巨大な空が現れた。
光が満ち緑が輝いた。
時折山や川が姿を現し、湖が光った。
土色の集落が過り、竹林が揺れた。
大麻畑が匂い、蓮沼が濡れ葉色に光った。
白い芋の花が地表に浮き、鵞鳥の群が蠢いた。
人がぽつねんと立ち、木立のわきに紫煙が立ち昇った。
浮き雲が流れ、その下に水牛の背が見えた。


鉄錆色にくすんだ上海ばかりを見ていた私はその美観に驚いた。
人も鵞鳥も牛も家も田畑も質実な美しさで底光りしていた。この全東洋の旅で出会ったことのない質感の美景がそこにあった。


まあ、本書ではここからその美景を見るのにためらいがある、目をそらしたいと続くのだけれど。


実録・中国共産党 CCP-916 [DVD]

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毛沢東語録 (平凡社ライブラリー)

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全東洋街道 上 (集英社文庫 153-A)

全東洋街道 上 (集英社文庫 153-A)