ぜぜ日記

ブログです

わたしの東京生活

大学生のころ、東京行きの夜行バスに揺られて新宿で降りると、どんよりとした雲の下の街は吐瀉物の匂いが漂っているし、裸のおっさんが転がっているしでほんと恐ろしい魔の都だと感じた。しばらくのち、就職して東京駅まで新幹線でやってくると、震災の直後のためにエスカレータはどれも動いていないし照明は暗いし京葉線のホームはやたら遠いしで末法の都だと感じた。

そんな悪い先入観こそあったけれど、実際に数年住んでみると東京はいいところがたくさんある街だった。 もちろんわるいところも多いけれど、自分は東京好きなので特にいいところを3つ挙げてみようと思う。

1. 人が多い

これは最大のデメリットでもあると同時に最大のメリットでもある。 人が集まるから仕事が集まる。仕事が集まるから人が集まる。このポジティブフィードバックがぐるぐる歯止めなく回って夜行列車で金の卵がぞろぞろやってきて線路は延びてニュータウンが育って土地代が騰がってビルがにょきにょき生えている。人が多いから美人も多いし頭いい人も多いしセンスある人も多い。ついでに展示やイベントも多いし勉強会も多い。同郷同窓同好の友人も多く気楽に会いやすいしついでにテレビのチャンネル数もめちゃめちゃ多い。 東京沙漠と揶揄されることもあるけれど、人がつながっていることを感じる機会も多かった(参考画像:カイジの人間競馬シーン)

2. 図書館最高

自分が3年ほど住んでいた江東区も近隣の中央区や千代田区、港区も狭い土地ながら図書館がほんといい。雑誌の種類も多いし本もちゃんと選ばれている印象がある。座席も多く居心地が良いし企画も活発。

比較として、かつて住んでいた某府某政令指定都市の図書館をあげつらってみる。ここには区ごとに図書館があるけれど、自分が行った限りでは雑誌は置いていないし、本の数も少ないうえにセンスもいけていない(主観)。税収が違うから仕方ないのかもとは思うけれど、水族館とかハコモノはつくっているのになんだかなあ、と思ってしまう。

江東区でいえばひとつの区に11カ所もの図書館もある。駅近もあれば歩いて行けるところに3カ所もあってたいへん便利。また、公共の施設ではないけれど、某大学の図書館は区の図書館利用カードをもっていれば閲覧に使えるというのは専門書を気軽に手に取れてよかった。

そのほか、港区はどこも整備されているし本も豊富な印象。アクセスも便利。高い住民税払っているのでみんな使いましょう。 さんざ図書館持ち上げてからなんだけれど、いい本は著者の努力と研究に報いるために買うこと推奨です。ついでに図書館になければリクエストを出しましょう。 ただ、自分はいくつかリクエストだしたんだけれど、たいていの本はあるし、かなり遠くの区の図書館から調達してきたりして買ってはもらえませんでしたが。

3. 冬でもめっちゃ天気いい

これはもしかすると太平洋側なら同じかもしれないけれど、冬なのにスカっとした気持ちよい晴天ばかりでほんと爽快。雨はたまにしか降らないし雪は滅多に降らない。これはほんとすごいことで秋と冬の境目がないようにも思えてずっと秋気分でいられる。

自分の生まれ育った北陸の片田舎では冬には常に鉛色の雲が空低く立ちこめていたので、この晴天続きはかなり異常。同じ寒さでも、晴天だと身が引き締まるようなすがすがしい寒さに感じられる。

デメリットとか

都市特有の問題はあるんだけれど、それ以外の問題はラーメン/つけ麺がくどいのばかりということかな。 自分の住んでいたところに限られるけれど、交通の便はめっちゃいいのに電車は座れるし、家賃も工夫できていたし、地域コミュニティもいい距離感、街の雰囲気も心地よかった。ここらへんはまた気が向いたら書いてみたい。

新版 東京漂流 (新潮文庫)

新版 東京漂流 (新潮文庫)

以下ポエム

はじめての東京

人生ではじめて東京にやってきたのは中学校の修学旅行でした。

この田舎の公立中学校の修学旅行では、青木ヶ原樹海をハイキングして洞窟に潜ったり、カメムシだらけのペンションに泊まったり、ディズニーランドでスプラッシュマウンテンに3回くらい乗ったり、ホテルでスーパーボンバーマン2をしたりといろんなことをしたのですが、一番印象に残っているのは東京での中小企業訪問。

これは、当時始まったばかりの総合的な学習の一環かなにかで、クラス横断で各テーマに分かれて調べ物して東京でフィールドワークをするというもの。他にどんなテーマがあったかは忘れましたが、わたしは「製造」コースを選びました。友達から誘われたからなだけであったような気もしますが、他のテーマと比べると男しかいなく、人数も8人と少ないことに自由さも感じていました。

白髪で生え際が後退しつつも自信に満ち精力的な風貌の美術の教師のもと、どんな準備をしたかはほとんど覚えていません。ただ、隣のクラスのタッキーが「製造業に必要なのは、消費者のニーズを知ることだよ」と言っていて、中学生なのに大人っぽいなあと思ったことが記憶に残っています。

紆余曲折を経て、私たちはダイヤモンドカッターをつくっている会社と、アルミ加工の会社に行くことになりました。どちらかが五反田でもう片方は蒲田だったように思います。

これは学校が狙ったことか、わたしたちの人数が少なかったからか、引率の先生もつかず生徒だけでの行動です。 滅多に電車に乗らない田舎の中学生をいきなり世界で最も複雑な東京の交通網に放り込むとどうなるか。山手線はほんとにあったんだと驚愕しながらも人混みの中をおっかなびっくり乗り換えて駅にたどり着くと、迎えに来ていただいてなんとかダイヤモンドカッターをつくっている町中の小さな工場にいくことができました。エンジニアの皆様はつくっているものについてたいへん親切に、丁寧に教えてくれました。ダイヤモンドカッターでガラスを切るデモや、小さい工場だけれど、技術があるからこの小さい製品がひとつ数十万円で売れるという話は刺激的でわくわくしたのを覚えています。ついでに、おみやげにダイヤモンドカッターの無骨な包丁研ぎをもらったことはとても嬉しく感じられました。

ただ、その次の工場に向かうとき、なぜだか乗り換えに失敗してか迷ってしまったのです。高いビルと知らない街と間、いつのまにか先ほどまでの人混みのないところまで来てしまい、見たことがないほどたくさんの線路をほとんど絶え間なく走る電車の音だけが響き空恐ろしさを感じました。いま思うと乗り換えをリーダーにまかせていた自分の不明を恥じるべきところだし、街行く人に頼るべきところでした。

公衆電話から電話で迷ったことを伝えましたが土地勘のない田舎中学生でうまく説明できずもどかしさを感じたのを覚えています。そうこうしているうちに時間が過ぎて、電話口でなんとか謝って、次の全体での集合場所に向かうことになりました。

その訪れる予定だった工場からは後日、アルミ板に中学校名を掘ってくれたものを学校に送っていただきましたが、当日、たどり着けていたら名前を彫ってくれていたと伝えられ、行けなかったことへの悔しさと、準備してくれたことへの申し訳なさはいまも覚えています。

ちなみに、自分たちの無知と無力を感じながら帰ったあとの報告会にて、タッキーは「ニーズとは消費者が必要とするものだということがわかりました」と言っていて、こいつじつはアホだったのかと思えました。

のちに東京に住むことになって、このときに迷ったのは品川駅と北品川駅の間あたりのようだとわかったのですが、なぜ蒲田と五反田の間をいくのになぜこのあたりを徘徊していたのかはいまでも近くを通るたびに疑問に思えます。そして、この東京での経験が多感な中学生にどういう影響をもたらしたか考えてしまうのです。

読んだ本 2015年2月

今月は歴史系で大きな本2つを読んだ。

古代ローマカエサルの戦いと、中国の毛沢東共産党の支配の話。どちらも巨大組織で巨大事業を運営していったノンフィクション。それぞれ殺されたり、国民を大量に餓死させたりと失敗はしているんだけれど、大人物であったことは間違いない。組織の強力さと、恐ろしさが伝わるだろうし、現代日本の組織運営にも役立つかもしれない、しかし、ただエンターテイメントとして純粋におもしろい。

そんななか、ひさびさに読んだSF「火星の人」は巨大事業の先頭で意図せず孤独に戦うことになったエンジニアの話。組織の力の及ばない地で、科学と工学の強力さを思い知らされて示唆的。しかし、組織に対抗するにはどうしたらいいのだろうか・・・

ガリア戦記

ガリア戦記 (平凡社ライブラリー)

ガリア戦記 (平凡社ライブラリー)

世界史の教科書にも出てくる古典名著。古典と聞くと読むのつらいと思われるかもしれないけれど簡潔な文体で読みやすいし軍記物として展開がおもしろいしでエンタメとしても優れていると思う。

ガリア戦争自体は紀元前58年から51年までの8年間、カエサルがガリア地方(現在のフランス・ドイツ・イギリス南部あたり)を征服していった戦い。 そのなかで、執政官の任期を終えて属州総督となった40代のカエサルがいかに軍を指揮していったか、ガリア人たちがいかに戦っていったかがわかる。

毎年毎年各地で戦って、反乱を起こされたりしていて盛りだくさんなんだけれど一番の注目ポイントは、当時の戦争がかなり近代的な軍隊で、近代的な戦術で戦っていたこと。 各地にいる複数の軍団と連携をとる、平地戦では敵の油断を誘って包囲する戦術をとる、敵が逃げ出すと容赦なく追撃する、攻城戦では様々な土木工事と道具を使う。現地調達も含めて兵站を意識する。 敵であったガリア人も蛮族だったわけではなく、いかにローマ軍の補給を絶つかを工夫し、あえて自分たちの村や田畑を焼いたりもしていた。特に、ガリア戦争一番の激戦アレシアの戦いまでの連戦ではウィルキンゲトリクスがローマ軍支配下のなかで各民族をまとめあげてローマ軍とぶつかっていく様子は日本の戦国時代にもない規模。

日本と違って、文化も言葉も違うし、ガリア人は民族意識が強く、平民や婦女子も含めて総力戦になりがちなところは厳しい。

そういった戦争を、さまざまな別に命がかかっているわけではないサラリーマン兵士を率いて戦ったカエサルがすごい。 他民族も含めて、いかに部下の力を引き出すか、明示的には記述されていないけれど、勇気を出すものを賞賛する文化をつくっていたこと、武勲をあげたものを報償を与えていたことのほか、カエサルのトレードマークであった真紅の衣を見るだけで士気があがっていたことや、カエサルの不在の軍団で、軍団長がここにカエサルがいると思え、と言っていたなどカリスマ性が多分にある。

また、いかに支配した地域を安全に取り込むかでは、当時の慣習としてか人質をとるだけでなく、味方になるものを定期的に支援したり、助けてやったという恩を思い出させるよう念を押したり、会談の際に反乱しそうだと感じていても、カエサルが裏切ったととられないようにあえて見過ごして反乱をおこさせたりとかなり考えている。いったいどこで学んだんだろう。

当時のカエサルのおかれていたローマの状況を踏まえるとカエサルがただガリアを征服することに苦心していただけでなくローマでの元老院との政争にかなり影響されていたことがわかる。後顧に憂いをもったまま、ガリアで力を蓄えていると読むとカエサルの戦略性の高さが浮かんでくるし、あまりに成果を出しすぎて元老院に恐れられたのもわかる。

漢の韓信にしてもパルティアの戦いでローマ軍に勝ったスレナスにしても、ソ連のトゥハチェフスキーにしても、ナチスロンメルにしても、卓越した将軍、軍事指揮官が為政者の嫉妬の末に冷遇されたり粛清されるって歴史上よくあるよね。日本だと誰かいるだろうか。

繰り返すけれど、カエサルは指揮官としても政治家としても文筆家としてもきわめて優れていた前代未聞、不世出の天才だったとわかる。イタリアの歴史の教科書には「指導者に求められる資質は、次の五つである。知性。説得力。肉体上の耐久力。自己制御の能力。持続する意志。カエサルだけが、この全てを持っていた。」との記述があるほど。

ちなみにいくつかの翻訳が出ているけれど自分が選んだのは平凡社版。 ラテン語勉強のメーリングリストですこしずつ翻訳していって7年かけて完了したものを整形・修正したものとのこと。解説では当時のカエサルの置かれていた三頭政治の成立と瓦解、ローマでの元老院との政争などわかりやすく書かれていてよかった(本文を読む前に読んでおくべきであった)。また、要所要所に地図が載っているので助かる。

内乱記あたりも読んでみたい。

中華人民共和国史 十五講

中華人民共和国史十五講 (ちくま学芸文庫)

中華人民共和国史十五講 (ちくま学芸文庫)

700ページ近い大著なんだけれどおもしろくて一気に読めてしまう。 いい本だったので記事を書いてみました。

支配と抑圧の中華人民共和国史

火星の人

火星の人 (ハヤカワ文庫SF)

火星の人 (ハヤカワ文庫SF)

ひさびさにフィクション読んだら2日で600ページ一気読みしてしまった。

簡単にあらすじを言うと、火星への3度目の有人ミッションの際、主人公は事故により死亡したと思われ1人火星に取り残されてしまう。植物学者兼メカニカルエンジニアの主人公は限られた資材を工夫して生き延びていく。作業日誌文体のなか、ロビンソン・クルーソー的な創意工夫とユーモアがあってハラハラがあってよい。エンジニアかっこいい系ハリウッド感もあって、今年末には映画化されるのだとか。

ジャンル的にはライト・ハードSFで、設定も小道具もとっぴなところないので普段SF読まない人もグレッグ・イーガンとか谷甲州とか重いハードSFでつらい思いをした人も気軽に読めると思う。

計算して計画を立てて実験してフィードバックを受けて実行するという工学的なプロセスは、工学部に入った新入生とか読むともしかすると勉強の励みになるかも。自分も物理・化学勉強したくなった。こういう系のSF、ほかにどんなのがあるんだろう。

ちなみに著者のAndy Weirは15歳でプログラマーになって、いろんな仕事をしてきたけれどBlizzard社でWarcraft 2つくったりとかしていたらしい。

筒井康隆 創作の極意と掟

創作の極意と掟

創作の極意と掟

筒井康隆の創作についてのエッセイ。自分は別に創作しているわけではないんだけれど、巨匠筒井康隆がどう考えて、なにを参考にして、どう試行錯誤してきたかがわかっておもしろい。本を読むときに、文章や構成の背景が見えておもしろいかも。

気になったこと - 作家は自身が色気を持つべき。誰かに恋し続ければ文句ないし、その背後に死が感じられるならなおよし。 - 創作において迫力を生む題材は、対立。最大の迫力を生むのは、「死」。

あと涼宮ハルヒを絶賛してた。ビアンカ・オーバースタディも読んでみようかな。

ちなみにそんなに読んでいるわけではないけれど、筒井康隆では七瀬三部作と旅のラゴスは間違いない。あとパロディ系もまあおもしろかった気がする。あと3,4冊読んだ気がするけれど忘れたな・・・。読みかけ放置もままある。

イベント

尊敬する先生の最終講義

この先生は研究活動も尊敬に値するのだけれど、該博な知識と人間観を応用してペンネームでSF小説を書いていることで注目していた。 きっかけはその先生の研究室の学生に薦められて数年前に著作を読んだことなのだけれど、その先生がいよいよ退官するということで誘われていってきた。 最終講義はなかなか難解だったけれどユーモアと示唆に満ちていておもしろい。いい質問を思いついたけれどしそこねる。また、なぜか誘われて懇親会に行くと、いろんな方とお話しできてたいへん有意義であった。 話題は、カンボジア、メディア、農村、ドルイドUMAコンサルタント笠井潔現象学などなど・・・。 ちなみに、そのSFはあまり世間的に評価されていなくて残念。こんど、もっと評価されるべきSFとして記事書いてみるかも。

また、最終講義前に先生がよく利用していたという安いカフェにいってみると、はたして先生も奥様といらっしゃったのでサインしてもらえましたので自慢しておきます

3月の抱負

2月は節目ではあったのだけれど思っていたほどには生産的に動けていない。 書きたいブログもあったけれどすこし書いて放置している。28日しかなかったし寒かったから仕方ない、としたいところだけれどそういうわけにもいかない。。

3月は春。春は書をもって外に出よう。

関連記事

支配と抑圧の中華人民共和国史

今日は中国の正月である春節らしいですね。
最近読んだ中国現代史の本がめっちゃおもしろかったのでということもあって読書メモを公開してみます。


まず、中国という国にどんな印象を持っているだろう。
世界で最も人口の多い国、4000年の歴史、急成長する超大国、自己中心的中華思想、眠れる龍、共産主義国家、漢字文化圏毛沢東、漢文、世界の工場、烈海王三国志、遣隋使、孔子日清戦争満州事変と日中戦争反日デモ北京オリンピック尖閣諸島問題、etc・・・きりがない。



ソ連はとっくに崩壊したにもかかわらず中国では共産党政権がまだまだ続き、かつ経済的にも恐ろしいほどの成長を続けている。また、軍事大国でもあり周辺地域と軋轢を生んでいる。



そんなお隣の国なのに1949年に建国されて現在まで続く中華人民共和国の内部の話は断片的にしか知らなかったと思いこの「中華人民共和国史十五講」という文庫本なのに2000円もする本を読んだ。著者は天安門事件での学生側リーダー王丹。当局に収監された後、アメリカに亡命しハーバード大学で歴史を専攻して博士号をとって現在は台湾精華大学で教えているという。その講義をもとにした現代史なのだけれどかなり肉薄感がある。厚みと臨場感のある抑圧の歴史。



中国現代史は非公開情報や左右からのプロパガンダも多くてなかなか闇だし、手軽に読めるわかりやすいものがすくないので貴重だと思う。目次はこんな感じ。

1. 中華人民共和国の成立
2. 軍事/朝鮮戦争
3. 都市/「三反」・「五反」運動
4. 農村/「土地改革」から人民公社
5. 知識分子/思想改造から胡風事件、「反右派」運動へ
6. 党内/盧山会議
7. 外交/中ソ関係の破綻と中米合作
8. 「文化大革命」の発動と展開
9. 文化大革命の終焉―林彪事件から四・五天安門事件
10. 鄧小平時代の開幕
11. 八〇年代の改革開放―胡耀邦から趙紫陽
12. 六・四天安門事件
13. 経済と文化
14. 公民社会の成長
15. 六〇年の回顧

中華人民共和国史十五講 (ちくま学芸文庫)

中華人民共和国史十五講 (ちくま学芸文庫)



特に気になったところをピックアップしてみる。


毛沢東による支配

読む前の毛沢東のイメージはカリスマゲリラ指導者であり個人崇拝を強いた独裁者。国民党を倒した後は大躍進と文化大革命の失政のイメージなかったんだけれど、大衆のコントロールと猜疑心の強さによる深謀遠慮を感じられた。支配の天才と言ってもいい。それが善政かどうかはさておき。


彼の支配のやり方はこう。民主派なり党内右派、富農・ブルジョア階級などの思想的であったり政治的に対立する階層・グループを駆逐するために、大衆を焚きつけて、最下層の民衆や一般党員にその敵対グループと対峙するように仕向ける。これを数年おきに対象をかえて実施している。また、興味深いのはこの政治闘争によって、党内の訓練、選抜、規律の維持を兼ねて組織を強化し集権化をすすめていたということ。ここで確立した体制はいまだに生きているように思える。


対立グループを駆逐していく闘争のなかで特筆すべき事案をひとつ紹介しておく。1957年に毛沢東は、共産党員でないものであっても中央に問題のあるところをどんどん指摘・提案して欲しい、と呼びかけた。この一見、謙虚な姿勢に思える呼び声に応じて、建国時には民主制にするとの約束が達成されないことや各抑圧への不満のたまっていた民主派や知識分子が声をあげていくと、毛沢東は一転これは反体制運動だと指摘し、手のひらを返して反右派運動として大衆に弾圧させていく。これだけ堂々となされた政治的欺瞞はかつてなかったんじゃないかと思う。これに限らず、各手法のことを毛沢東自身の言葉では陰謀に比して陽謀といっていたという。


ほか、古典を読み込んでいた毛沢東は、広い中国では各地の有力者が力を蓄えると反乱することを知っており、中央に呼び寄せたり、右派なり反体制なり修正主義なり難癖をつけて上記のとおり大衆に運動をおこさせて失脚させたりと巧みに力を奪っていったことも共産党の安定につながっているようだ。


ほか、ちょっとだけ気になった毛沢東の言葉を孫引きしてみる。

小説を利用して反党活動を進めるのは、一大発明だ。およそ一つの政権を打倒するには、つねにまず輿論をつくりださねばならず、イデオロギー方面の工作をやらねばならないからね。革命的階級の常道だし、反革命的階級だって同じことだ。

中共第八期中央委員会第10回総会での毛沢東の講話より。中華人民共和国史十五講 247ページ

これは反体制的小説を弾圧するときの言葉だけれど、毛沢東が世論を味方につける重要性と方法を知悉していたことがわかる。


物事には反作用がつきものだ。高く吹き上がれば上がるほど、ひどい転び方をするものだからね。転んで粉々になるほうを選ぶとするさ・・・。それも大した問題ではあるまい。物質は不滅であって、ただ粉々になるだけなのだから。

毛沢東から江青への手紙より。同302ページ

マジック・ザ・ギャザリングフレーバーテキストに使われていてもおかしくない。


抑圧と安定

話はその後の大躍進に移っていくけれど、それそのものではなく、なぜ、大躍進によって一説に4000万人という空前絶後の餓死者を出したにもかかわらず反乱もおきず、中共の政権は安定していたのかを考えてみる。


読んでいくと、分散的で自主的な情報の統制があったからのように思える。まず、大躍進政策の趣旨としての農業生産性の向上では、各地区が同調圧力から自主的に過剰に申告して、中央はそれに応じて徴収することとなった。そして、飢饉が発生するも、各地区では生産量をコミットしているがために失敗を中央に伝えない。または伝えても途中で握りつぶされる。こうして、中央は各地の悲惨な状況を知ることはなく、各地区でも飢饉にあっているのは自分たちの地域だけだと思っていたそうだ。


この分散的・自律的な統制は悲惨の一言だけれど、ブラック企業的抑圧やDVと通ずるものはあるかもしれない。



これはプロパガンダかと思われるけれど、1966年の文革開始後に、ある養豚場の飼育員が新聞に寄せたという投書を引用する。

以前、わたしは豚に餌をやることと革命とを切り離していました。革命のために豚を飼うわけではありませんでした。だから、仕事に対する責任感をまったくもたず、豚の飼料が不足すれば、指導部に申し出て手に入れました。自分の頭を使って考えたり、手を動かして問題を解決しようとは思わなかったのです。
毛主席の著作を学習し、思想的覚悟を高めました。すると、すべての工作が革命のためであり、養豚もその一部として、革命精神で対処する必要があることがはっきりしました。飼料不足には自力更生を旨とし、自己の主観的能動性を発揮しようと決意したのです。飼料不足の問題が解決すると、精神が物質に変わりました。こうして、果敢に闘争し、果敢に勝利する思想品質と、確固とした作風を培いました。そのとき、物質はまた精神に変わったのです。

意識高い系やりがい搾取カルト資本主義ブラック企業とだぶってみえる。



ナチズムやスターリニズムトップダウン全体主義だとしたら、マオイズムは個人崇拝は同じだけれど、ボトムアップ(であるように見える)全体主義なのではないかと感じた。

ここあたりはもっとも精緻なディストピアSFにおける独裁国家建設の過程を見ているような気分になってくるけれど、これが現実に隣の国で起きてたんだよな。。


ちなみに、農業政策としては、人民公社による集団化農業の失敗が大きい。林毅夫(りんきふ)によれば、生産性向上のためには農民の自己統制に頼る必要があるけれど人民公社には脱会の権利がないために集団内部の能動性のメカニズムが働かなかったという。よくある社会主義への批判ですね。誰も自分のものじゃないものを大事にしない。


そして改革開放

その後、例の文化大革命での内乱状態が毛沢東の死とともに終わった70年代末から中国は改革開放の時代だった。
ただ、主要な成果である制度変革は国家の力によりもたらされたものではなく民間が自発的に始めたものが多い。国家の役割は追認と普及。これができる民の強さといったん動き出した後の独裁的な強さはいいと思う。
地方分権経済特区をつくって生み出された成功が、日本での道州制地方分権のモデルとして挙げられるかもしれないけれど、どうなんでしょう。
当時の中国にあって、日本にないものはなんだと思いますか。


天安門事件

改革開放は進んで民主制を求める動きもでてきたとはいえ、政治的にはまだまだ一党独裁。そこへの不満を持つ右派(民主派をこう表現している)と、それに危機感を覚える元老たち左派。

そんななか、開明的であったが失脚し失意のまま病死した胡耀邦の再評価と人民日報の学生のデモを反国家だと厳しく糾弾する社説の撤回をもとめた学生デモの結果、発生した天安門事件
ここは著者の王丹が当事者なだけあって読んでいるだけで冷や汗をかきそうな迫力がある。

そこは読んでもらうとして、王丹による天安門事件での学生側からの総括が単純だけれど興味深い。

どう見ても指導思想の欠落に有り、意見の表明がいつの間にか民主化運動に転化し、政治的目標を達成しなければおさまりがつかないところまでいっていたが、学生指導層はその違いを認識できていなかった。そして外部の期待をいいことに民主化運動の戦術まで決定してしまったが、政治闘争の技術としての妥協の重要性を理解できず、社会の各種勢力と連合する必要性も認識することができなかった。

これほどのまともな総括を60年代の日本の学生運動の指導者たちはしていただろうか。一時の熱狂に陶酔していた日本の学生運動と違い、直接抑圧されていた分、重みがあるように思える。


中華人民共和国はどこに向かうのか

経済は昇り龍のように発達しているけれど、共産党の統治はますます強固にかつ官僚的になっている。毛沢東時代は、非党員が党員を非難することは許容されているけれど、いまはそうなっていない。

また、共産党による度重なる政治闘争と相互批判によって信頼関係などの社会資本が失われてしまったことも現在中国の特筆すべき点かもしれない。先富論と党員による職権乱用、それによる国有資本の恣意的な分割やによるブルジョアの増加はかなり巨大な格差を生み出している。

ネットにあった言葉でこういうものもある。

共産党によって30年で命が失われ、20年で魂が失われ、20年で銭が失われる

格差と腐敗はどこかで民主主義的社会主義革命を生み出すかもしれない・・・。そのまえに中国バブル崩壊で世界がどうなるのか不安すぎるけれど。

おまけ:中国ネットスラングについて

いい感じにまとめようと思ったのだけれど、中国インターネット事情(ネットスラング系)で自分の知らないおもしろ話がいくつかあったので脱線して共有しておきます。

緑bar娘とは (リュイバーニャンとは) [単語記事] - ニコニコ大百科


緑bar娘(りゅーばーにゃん)とは、中華人民共和国で開発されたネット検閲ソフト「緑壩・花季護航」の萌え擬人化したキャラクター。ネット検閲ソフトを萌えキャラ化するという風刺っぷりは日本にはあまりないよね・・・。工業情報化部がこのソフトに4170万元もの大金を投入したことから、身の代金4000万のお嬢様と呼ばれているんだとか。


ja.wikipedia.org



2009年に始まった、政府機関がネット上から低俗な言葉を一掃しようとした運動に対し、ネット検閲で削除されてしまう言葉に同音の漢字を当てはめて、架空の珍獣の名前を作り上げ、その生態を書いたもの。草泥馬という、中国語でのfuck your motherにあてはまる言葉をあてはめたアルパカからはじまって四大神獣、十大神獣と広がっている。なんだけれど、いろいろひどい。


この本に書いてあるのは、わりと風刺が多めなんだけれどWikipediaでは下ネタばかりすぎるしかぶっていない。なんでだろう。


とりあえずWikipediaで一番ひどかったものを引用する。

雅蠛蝶(ヤーミエーディエ、yǎmièdié) - 小さく可憐な蝶。日本製のアダルトビデオ(AV)などで出てくる日本語の「止めて」の発音から。





乾燥

さて、最後に脱線したけれどこの本は読みやすいしおもしろいし中国か歴史か共産主義か支配に興味があるなら読むとおもしろいとおもう。

ただ、どちらかというと中国共産党の戦後内紛史といってもいいかもしれない。
少数民族の問題はあまり書かれていないし、外交については米ソを除いてほぼ書かれていない(重要ではないといえばそうだけれど)。チベットの問題やベトナム出兵あたりもちゃんと調べたい。


ただ、共産党史をたどるのであればアヘン戦争からさかのぼっていく1919年の抗日運動(五四運動)までさかのぼる必要があるし、中国人の考え方の中心に近いところにある革命という概念をとらえるならアヘン戦争から考える必要があるんじゃないかと思ったりしている。

そこらへんを知るのに体系的にまとまっていてかつ読みやすい本はあまりわからないんだけれど建国にいたるまでの国民党や日本、アメリカとの駆け引きについてはこのビデオがおもしろかった。


これから大陸はどうなっていくでしょうか。

読んだ本 2015年1月

いつのまにか2015年になっている。高校生のころに思っていたよりは世界はそう変わっていない気がする。自分の感性が鈍っただけかもしれないけれど。


感性を磨くためにどうしたらいいのだろう。もし感性、センスのようなものが先天的なものだけではないとすると、感動する経験、いいもの、サービス、体験、出会いがいいのではないか、と勝手に思っている。


具体的にはなにがいいだろうかと友人に聞くと、旅をすればいいよ、とか最高のセックスがいいんだよ、と答えてくれたりもした。
けれど、自分は旅をしてもお仕着せのものしかできなさそうだし、NHKが最高のロケーションで最高の機材で撮っているものより感動するものが得られるかよくわからないし、なによりケチいので厳しい。複数人で行くのは楽しそうで安心もあるのでよいですが。セックスについてはセックスの概念が違うんじゃないかとしか思えない。


というわけで、感性を磨くために、というよりも本当は娯楽のためにいろいろ本を読むことにしている。いろんなことがらを擬似的に追体験できたり知ることができてたまに感性が揺さぶられることもある。あと安い。


このブログもここのところ半分以上は読書メモになっているしこのまま今年も読書メモを続けていこうと思う。2013年は2ヶ月ごと、2014年は3ヶ月ごとに本を読んだ感想をブログに書いたりしているけれど2015年の1月はわりと本を読んだのでちょっと早めに書いてみる。
貸せるものもあるので読みたい人はお声かけください。



IT起業家 10人の10年

IT起業家10人の10年

IT起業家10人の10年

IT起業家についてはさまざまなメディアで語られている。ベンチャーの旗手、イノベーションの体現者であるとか、若くして分不相応に大金を手にした金の亡者など毀誉褒貶はなはだしい。

こういった尋常でない成功を手にした人間の本は、自伝でも伝記でもハウツーでも英雄譚のようにわくわくするし、下手をすると自分もできるんじゃないかと錯覚すらしかねない。そういう意味ではポルノ的(似たものでは、実話系雑誌の極道記事とか)。
当然、生存バイアスがあって、その足元には死屍累々なんだけれど、そういった失敗者・栄枯盛衰話はなかなか焦点が当たることはなくて知りたいな、と思っていた。

この本は、90年代末、ITバブルな時代の起業家たちにインタビューし「電脳のサムライたち」として連載していた著者が、2012年から2013年にかけてその後の姿をインタビューしたという珍しい本。
もしかしたら栄枯盛衰が描かれているんじゃないかと思い読んでみた。

取り上げられているのは次の方々。半分ほどしか知っている人がいない。

藤田晋 浅田一憲 大川弘一 南場智子 堀江貴文 孫泰蔵 尾崎憲一 本間毅 江端浩人 川邊健太郎。

学生で起業した人、エリートサラリーマンを辞して起業した人などの溌剌とした20世紀末の話から、10数年後には事業をピボットして成功している人、大企業の役員になっている人、逮捕された人、ITバブルがはじけて会社を清算した人、クーデターを起こされて借金を背負った人などなど。どの話も、波瀾万丈感があっておもしろい。

成功したのはなぜかというと、先見の明があったこと、リスクととったことと運が良かったことのようである。
先見の明は何によってもたらされているかというと、堀江氏や孫泰蔵氏、川邊氏のように早い時期からコンピュータに慣れ親しんでいたこと、また南場氏、江端氏のように米国でインターネット環境を触る機会があったことがある様子。今だと何だろう。oculas?3Dプリンタ

あとは、もっとガチ失敗した人にフォーカスしたインタビューも読んでみたい。


建築業者

建設業者

建設業者

鳶や電気設備工からクレーンオペレータ、非破壊検査なんやから林業から伝統工まで37人の多様な職人さんへのインタビュー集。どれも知らない世界で興味深い。自分が携わっているITシステムの構築は、建築に例えられることもあるけれど全然違う。ITシステムの構築も難しさを軽視されているけれど、建築も軽視されているようである。

おもしろいのは、日米で働いていた職人さんが、アメリカは現場監督がかなり厳格にスケジュールをコントロールしていて契約通りの日に職人が仕事できるようになっているけれど、日本では遅れることがままあるということ。伝聞での少数のサンプルでしかないけれど、こういう、残業して全体の納期は帳尻合わせるけれどその中では現場が地獄を見るのはIT業界だけでないんだなあ。マネジメント、むずかしいです。

ある程度の技を身につけるのに数年単位で修行しないと行けないのはITと違うかも、と思ってしまったけれどほんとはITでもそうやって時間かけて身につけていくものだよね。ただ、最近は若手にいい経験をさせられる現場が少ないし稼げる仕事も少ないと指摘する職人さんが目立っている。これは昨年に読んだ聞き書き ニッポンの漁師を同じ構造があるかも。職人の方々、尊敬します。


チベット旅行記

チベット旅行記〈上〉 (白水uブックス)

チベット旅行記〈上〉 (白水uブックス)

1897年、仏教の原典を求め、日本人としてはじめて鎖国状態チベットに単身渡った河口慧海師の旅行記。ほんとリアル三蔵法師
ネパールからチベットへは、検問を避けるために大きく迂回して厳しい荒野を進んでおり、かなりの苦難の道だったようである。ただ多くの縁や、彼の人的魅力からか無事、4年をかけてラサに到着している。その過程は冒険譚としてもたいへん素晴らしいし、実に読ませるのだけれど、特筆すべきはその視点。現地の文化を丹念に描写しており、民俗学的にも一級の資料となっているようだ。抄訳版(といっても2分冊)の本書には川喜田二郎先生が序文を書いていたりもするほど。
自分も旅するなかでこれほど詳細に書けるものだろうか。自分は日常のことちゃんと観察できていないな・・・。


10年後の日本

10年後の日本 (文春新書)

10年後の日本 (文春新書)

10年前に書かれた、10年後についての本
別途感想書いてみた


ゲーデルエッシャー・バッハ 20周年記念版

ゲーデル、エッシャー、バッハ―あるいは不思議の環 20周年記念版

ゲーデル、エッシャー、バッハ―あるいは不思議の環 20周年記念版

鈍器にして自己言及と創発(ぱっと見、創発という言葉は使われていないけれど)についての名著。読了したわけではなくて、カフェにおいてあったので30分くらいかけて長い序文と、目次前についている概要、訳者解説を読んだだけです。
それだけでも、自己言及性がシステムにどういう影響を与えているかの示唆があってなかなか深そうではあるのだけれど、衒学的な印象もある。
人工知能についての記述は古いけれど、発想はモダンっぽそう(印象論)。ゲーデル不完全性定理はおもしろいのであまり知らない方は結城浩先生、「数学ガール ゲーデル不完全性定理」から読んでみるといいんじゃないでしょうか。


マリス博士の奇想天外な人生

マリス博士の奇想天外な人生 (ハヤカワ文庫 NF)

マリス博士の奇想天外な人生 (ハヤカワ文庫 NF)

バイオ系科学系なら授業で習うPCRを開発して若くしてノーベル化学賞を受賞した博士の自伝やらエッセイやらを集めた脈絡のない本なんだけれど、それがこのとんがったおもしろ人を表しているかも。
高名な大学などアカデミックな世界にほとんど在籍せずにノーベル賞をとった人で、受賞時にサーフィンにでかけたりしていた話もある。ほかLSDが合法だったころにキめた様子の描写はかなり詳細で最高。4回も結婚していたり自由な様子が窺える。一方でHIVエイズの関係に科学的な証拠がないということにはかなり厳しくあたっている科学者としての倫理観や、少年時代に、合成が難しい薬品をつくって稼いでいたという話はノーベル賞受賞者さすがであるとしか言いようがない。科学者の自伝/伝記はかたいのが多いので新鮮だった。
ほかにもマッドサイエンティストな人の自伝/伝記読んでみたい。
ちょっと古い人物だけれど、「解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯」という伝記はなかなかよかった


なぜ国家は衰亡するのか

なぜ国家は衰亡するのか (PHP新書)

なぜ国家は衰亡するのか (PHP新書)

中西輝政氏の文明論。トインビーやギボンをひいて描いている過去の国家衰亡はわりとおもしろい。
各文明で絶頂期に至る前までは国家衰亡論が盛んに議論されるけれど、衰退期に入ってからは議論も下火になるという。これは衰退期には、それを認めたくないために議論が封じられるのだとか。いまの失われて20年にもなる日本ではどうだったんだろうか。もはや盛者必衰の運命論、必然論で受け入れてしまっている?
ほか、気になったこと。ローマ衰亡でよく語られるパンとサーカス、これと似たようなことが大英帝国崩壊の際も見られたのだという。崩壊の序章である1901年から1910年までのエドワード朝では急にイベントや娯楽に若者が並びだして、グルメブームも起きて老齢者が疑問に思ったり。これは中産階級が増えたこと、豊かになったことの必然でもある気がするけれどどうでしょう。
そんななか、英国も英国病を、アメリカも70年代の衰退を克服している。これはサッチャーレーガンの改革があって、国民も、議論もありつつそれを認めたからという話で、日本では中曽根首相らの改革はあったけれど、国民は他人事だったというふう。これにはちょっと疑問もある。
また、ローマの崩壊はカルタゴ征服のときにはすでにはじまっていて、征服地たるギリシャ文明をありがたがったり、アイデンティティを失い、創造性を失っていったことからはじまっているという。それを警告していた、カルタゴを滅ぼした将軍であり元老にもなった大カトーの話ははじめて知った。

ここで触れられている、ある文化において効率性と創造性はトレードオフがあるというのは、実証は難しそうだけれどたしかにそれっぽそうだし着眼点としておもしろい。そうであるなら、高度経済成長後に効率性をひた上昇させてきた大企業は創造性が欠けるということの説明にもなる。

そのほか、西ローマがキリスト教の取り込みに失敗して崩壊した一方で、ビザンツ帝国はうまく取り込んで史上稀な1000年続く国家を築いたという話や、江戸時代の周期的なバブルとお蔭参り、そして改革のサイクルがあったというのは読ませる。

ただ、未来についての話は、国家の目的を確立することが必要という若干観念的なところでとまっている気がする。
間違ってはいないけれど、価値観が多様化しているなかでそれを確立するプロセスを穏健にとっていく方法はないと思う。つまり、国民が短期的利益を求め、政治が迎合してなにも決められないという典型的衰亡プロセスを辿るしかないんじゃないかと・・・。うーん。

もうちょっと、過去の衰亡を客観的にまとめたほうがいい本になったと思うし、そういうの読んでみたい。各論をあたるしかないかな。


山の仕事、山の暮らし

山の仕事、山の暮らし (ヤマケイ文庫)

山の仕事、山の暮らし (ヤマケイ文庫)

山ライター(?)の高桑さんによる、山で仕事をしているゼンマイどりや猟師、蜂飼、ワカン作り、山岳救助隊などなど山で仕事をしている19人へのインタビュー集。
みな独特の仕事をやっていてそれもおもしろんだけれど、なにがしかを極めたプロフェッショナルの雰囲気が出ているのがよい。ただ、厳しい仕事で後継者がいなかったり、稼げなくなってきたりで、めっちゃたいへんそうなんだけれど、みなそれぞれ山が大好きな感じもある。
林業なりキノコ、山菜、猟など山にはまだまだ資源があるしうまく活用できるといいと思うんだけど、ノウハウももう途絶えているかも。

類書としては聞き書きニッポンの漁師、建築業者、メタルカラーの時代とかかな。こういうプロへのインタビューはどうしても浅いのしかないけれどおもしろい。SEのあったら読みたいし機会があればつくりたいけれど、内容的に難しそう。匿名でPJをうまくぼかせばありかな。


決済サービスのイノベーション

決済サービスのイノベーション―資金決済法で変わるビジネス・生まれるビジネス

決済サービスのイノベーション―資金決済法で変わるビジネス・生まれるビジネス

資金決済法の改正にともなって、事業がどうなるか。法律解釈の読みものとしてはいいけれど既存のサービスの枠組みに囚われすぎな感じはある。

ちなみに法律については金融庁のパンフレットがわかりやすかった。
(PDF注意)

ケータイ口座なり電子マネーについて、なぜ使っているかというアンケート結果とその分析も載っているけれど、どうしても後付け感があり表面的なもの(ユーザの真の欲求でない場合が多い)になるので難しい。

この本の結論の一つである資金移動サービス単体では利益をあげることは難しく、別の事業との連携が不可欠である、という話はわりと考えさせるものがある。買い手にとっては便利だけれど、手間をかけて導入してもらえるかは別だし、売り手にとってもメリットが直接的ではないし、しばらくは現金強い感じ。金融まわりのサービスはFinTechというバズワードも生み出されて人気で自分も考えるところがあるのでこんどまとめてみたい。


間違いだらけのソフトウェア・アーキテクチャ

間違いだらけのソフトウェア・アーキテクチャ―非機能要件の開発と評価 (Software Design plus)

間違いだらけのソフトウェア・アーキテクチャ―非機能要件の開発と評価 (Software Design plus)

この本はソフトウェアのアーキテクチャとその作り方を解説しているんだけれど、業務システム開発によくある誤解、例えば製造業との比喩であったりをわかりやすくユーモラスに説明している。システムを作る側も作らせる側も読む価値あると思う。

アーキテクチャの評価項目はチェックリストとしてわりと参考になりそう。


あと、この本の最初の図をTwitterに投稿したら300以上RTされてびっくり。


それだけ共感する人が多いということでしょうか。


強欲資本主義 ウォール街の崩壊

強欲資本主義 ウォール街の自爆 (文春新書)

強欲資本主義 ウォール街の自爆 (文春新書)

煽りっぽいタイトルだし2008年出版とやや古い新書だけれど、ウォールストリートで長く銀行家をやっている神谷秀樹さんなだけあって業界ゴシップが豊富でかつ、未来への展望も触れられていておもしろかった。
あまりファイナンス詳しくないんだけれど、ウォール街の人事や欲深い話、裏切り、顧客をカモにする話、利益相反している話などよい。日本の実話誌が暴力団について書いているのが人気を博すのと似ているかも。

また、筆者はすぐに株式公開を狙うインターネット企業に批判的で、近年、徐々に株式の公開基準が下がっていることを指摘している。アメリカではSOX法によるコーポレートガバナンスとそれにかかるコストのために通常の事業会社だと売上が3億ドルはないと公開するメリットはないという。日本だとここ最近売上数億円規模のベンチャーの上場が続いているけれど実体はどれほどともなっているんでしょうか。

興味深い話はいくつもあったのだけど2,3メモしておく。

  • 投資銀行出身者が国家機関に採用されるときに狙っているのは、所有株を課税なしに売却できるタックスホリデーだとか。そうして利益相反な状況がつくられていく。
  • 企業を買収したいときにアドバイザーとどう契約しておくか。インセンティブを設計しておく必要がある
  • キャピタルゲインや運用手数料を利益としており、かつ「今日の儲けは僕のもの。明日の損は君のもの」という無責任状態では短期的な利益を目指すことが最善手となる。どう制度設計するといいんでしょう。
  • 所得倍増計画のブレーンだった下村治博士が、オイルショックをみてゼロ成長に耐えられる体制にすることを主張していたそうだ。すべての論点に賛成なわけではないけれど今になってみると慧眼である。

下村治博士の20年前の警告を見つめよ:日経ビジネスオンライン


フリーエージェント社会の到来

フリーエージェント社会の到来―「雇われない生き方」は何を変えるか

フリーエージェント社会の到来―「雇われない生き方」は何を変えるか

13年も前に出たエポックメイキングな本。フリーエージェントという存在が社会で存在感を増しているということを多数のインタビュ−、フィールドワークから明らかにした本。フリーエージェントとは、「インターネットを使って、組織の庇護を受けることなく自分の知恵だけを頼りに、独立していると同時に社会とつながっているビジネスを築き上げた」という存在で、フリーターよりは知的労働、フリーランスと違うのは受託に限らない。

特に日本では正社員という「正しい」社員が念頭に置かれている文化があるくらいで、なかなかフリーエージェントが活かせていないように思える。非正規労働が増えていく流れと合わせて、大企業は抱えた正社員だけでなく、高技能な非正規労働者を活かしていく必要があるかもしれない。

内容としては、社会、特に税制などは増えているフリーエージェントに対応していないという苦言はあるけれどほとんどは実例をベースにした状況説明で、どうやったらフリーエージェントとして生計をたてていくかは書いていないので注意。


新・民族の世界地図

新・民族の世界地図 (文春新書)

新・民族の世界地図 (文春新書)

言語・宗教・民族の移動・先住民族少数民族について概説し、世界で発生している民族対立や紛争について経緯と概要を簡潔に説明している。新聞をよく読む人にとっては常識かもしれないけれど、高校世界史で触れられていないものは知らないものも多かった。
特に、中東とアラブの各宗派・民族のいざこざの話に章をひとつ割かれており、昨今のISIS国の話に関わる文脈がすこしわかる。
また、最終章のエネルギー争奪戦では、エネルギー輸入国日本にとって切実。中東からの輸入にこれまでどういった問題があるのか、ロシアに振り回されるサハリンIIはどうなるのかは気が重くなる。

知らないことが多くて整理しにくいのだけれど、特に記憶に残っているものリスト


単一民族と錯覚するほど一つの民族が大多数を占め、ほとんど征服を経験していない島国である日本に住んでいると、全然感覚がわからないけれど世界の多くでは故郷や民族といった概念の意味がより切実。

いやおうなしにグローバル化する社会で生きていくための必須知識を得るために手頃な一冊だと思う。


あと、現代の紛争の多くは欧米、特にイギリスに原因があってげんなり。やっぱり紳士様の国は違うぜ。

ところで、一つ前の「民族の世界地図」は、高校の世界史の授業の副読本としてF先生から薦められて読んだのだった。
F先生は世界史大好きで教え方にも愛があってよかったなあ。理系で世界史とっていたのは学年で25人ほどと少なかったけれどみんな目をきらきらさせて授業を受けていたようにも思う(若干、記憶の改竄あるかも)。



倫敦から来た近代スポーツの伝道師

たしか一昨年のお台場レガッタで参加賞にもらった新書。
明治時代に多数来たお雇い外国人のなかでもスポーツの普及に尽力し、日本人の信頼も厚かったがよく知られていなかったF.W.ストレンジについて紹介している。当時の大学文化や、英国留学生の雰囲気もわかってまあおもしろい。英国の大学の在籍記録を調べたり、新資料を掘り起こしたりと丹念に資料を調べていて、定年退職したビジネスマンがアマチュア研究者になる文化よいと思う。


COURRIER 2月号

昔は購読していたんだけどここ1,2年は内容が自己啓発に傾きすぎているように思えて読まなくなっていた本書。同居人が買ってきてくれたので読んでみたという次第です。
「世界の人はこんな本を読んでいる」という特集では、未訳の本も多数紹介されていて興味深かったし、ジャレド・ダイアモンド、ピケティ、カズオ・イシグロのインタビューはあまり見る機会がなく人柄が見えておもしろい。
あと編集部が選ぶ2014年の翻訳書ベスト10のワンポイント解説は皮肉効いてて便利。日本で働く外国人社員の話はたいへん参考になったけれどたいていの日本企業はもうどうしようもないんじゃないかと思えた(小並感)




人を動かす情報術

人を動かす情報術 (ちくま新書)

人を動かす情報術 (ちくま新書)

もらいものだけど、ライフハックっぽいタイトルで読む気も起きずに放置していたけれど棄てる前にめくってみるかと読んでみた。
タイトルは、人を動かす(ための)情報術ではなく、人を動かしている情報、が適切な気がする。語呂は悪いけれど。
本書では触れられていないもののここでの情報はintelligenceではなくinformationという意味。近年のスキャンダルを取り上げていて、情報とメディアってなんなんだというのをいろいろ引用して解説して、ちょっとはおもしろい。ただ、賢しらな表現が多いわりに情報がどう人に伝達されて受け止められるかというところが浅くて参考にはならないように思えた。
情報科学の父であるクロード・シャノンも情報という言葉を定義はしていないしおれおれ情報論みたいな本も多いしで難しいですよね。


マンガ

東京喰種 トーキョーグール

東京喰種 1―トーキョーグール (ヤングジャンプコミックス)

東京喰種 1―トーキョーグール (ヤングジャンプコミックス)

同居人から勧められ彼がkindleで購入したものを彼のiPadでひとまずのシリーズ完結までと新シリーズ1巻を読んだ。
人と同じ姿をして人と暮らしているが、人しか食べない種族、喰種(グール)。そして主人公は喰種に襲われ大けがをするが、すんでのところで事故に巻き込まれ喰種が死ぬ。そして入院している間に、死んだ喰種から臓器移植を受けてしまい、主人公は喰種になってしまう・・・。2つの種族の間で主人公はどうなっていくか。
という話。

ゾンビものというよりは吸血鬼もので設定は好みなんだけれど、伏線広げすぎていてちょっとつらい。おもしろいんだけれど短期的な盛り上がりを狙って全体の章立てがあまり練られていない感もある。

マンガにしろ小説にしろ、長期連載で話にまとまりをつけるのほんと難しいと思う。計画は実行していくたびに情報が増えて変わっていくし、どーするべきなんだろ。


ダンジョン飯

九井諒子さんの新作。D&Dの古典から脈々と語られるモチーフであるダンジョン。ここを探索する冒険者たちが、現地調達で自給自足していく中で、モンスターの生態に肉薄していくという、架空博物学誌的側面もあってめちゃめちゃおもしろい。これは、SFです。
九井諒子さんの作品どれも豊かな気持ちになれるよい話多いのでみなさま読みましょう。


学習漫画 世界の歴史 1-7

漫画版 世界の歴史 全10巻セット (漫画版 世界の歴史) (集英社文庫)

漫画版 世界の歴史 全10巻セット (漫画版 世界の歴史) (集英社文庫)

まあまあおもしろかった。世界史の授業でやって一度覚えていたこともけっこう忘れているなあと思った。
やっぱり世界史はおもしろいし、ためになる(気がする)。ちゃんと勉強しよ。



アニメ

ガン×ソード

ガン×ソード VOL.1 [DVD]

ガン×ソード VOL.1 [DVD]

同居人が借りてきて、ついつい一緒に観ているうちに引き込まれてしまった。
もう10年前のテレビアニメなんだけれどめっちゃいい作品で、これからは好きなアニメを問われたら間違いなくこれを答えると思う。

最初は、西部劇っぽいスタイリッシュなアニメかと思って期待せずに横目で見ていたんだけれど、1話の後半でなぜか巨大ロボットで戦う展開になって困惑。キャッチコピーは「痛快娯楽復讐劇」なんだという。ジャンル的にはよくわからない。


あらすじを簡単に書いてみる。
宇宙の吹きだまりの星の、ある少女が暮らす街は強盗団に占拠されているなか、通りがかった旅の男によって強盗団は退治される。それは最愛の妻を結婚式中に殺され、その復讐相手である鉤爪の男を探して旅する男、ヴァン。鉤爪の男に兄を誘拐された少女も彼とともに旅をはじめる。その鉤爪の男を追う旅の行く先々でトラブルに巻き込まれ、徐々に明らかになる鉤爪の男とその思想はいったい・・・。


コメディタッチな明るい部分がありつつ、ドラマをよくつくっていて、説教臭くなく、敵方のキャラの考え方が尖がりすぎなことがよい。あとキャラがたっていて、かつ(特に女性)キャラの服装がよく替わるのもよくできている。
ストーリーは探求と復讐の旅、英雄的で神話的ですらある。


あんまりアニメ詳しくないけれど、友人によればカウボーイビバップスクライドスタードライバーを足して混ぜたような作品。どれかひとつでも好きなら刺さると思うとのこと。

小説や実写だとこういう雰囲気、ストーリーをつくるの難しそうだしこういうのにアニメ強い気がする。


楽園追放

最近まで映画をやってた劇場アニメ。よくうちにくる友人がblu-ray discを買ってきてくれた(Amazonでうち宛に送ってきた)のでみんなでこたつにはいって観た。ストーリーは元気ガールとロボットアクションエンターテイメントでそこそこ楽しめた。ただ、主人公の服装がボディコンシャスで露出度高めで若干気になるところではあるのでご注意を。

あんまりネタバレは避けておくけれどSFな世界観は銃夢っぽい感じで共通のモチーフも多い。ああいう、荒野系SF好きだと想像が膨らんで楽しいかもしれない。ツッコミどころはあるけれど許容範囲内。


きっと、うまくいく

きっと、うまくいく [Blu-ray]

きっと、うまくいく [Blu-ray]

後輩のkawaiiガールからもらった(自慢)
めちゃくちゃおもしろくて最高のインド映画。インドのエリート工科大学を舞台にどたばたしていくだけかと思いきや、生きることと愛(博愛・家族愛含む)に真っ向からぶつかってる。170分とめっちゃ長いんだけれど、適宜ミュージカルもはいるしひどすぎるコメディもあってテンション高いまま突っ走っているので飽きはない。

好きな作品「いまを生きる」の工学部版+コメディ+ミュージカル+いろいろみたいな感じでエネルギー量すごいし豊かな気持ちになれる。誰が観てもおもしろいと思うけど工学部の学生が観たら刺さるかも。

あと、DVDによくついているスペシャル項目にはトレーラーとかだけでなくミュージカルシーンの抜粋もあるし、ヒンドゥー語とカタカナの字幕がついていてたいへん便利。


ミュージアム系

東京国立近代美術館 工芸館

機会があって東京国立近代美術館の工芸館にいってきた。
明治洋風レンガ建築の近衛師団司令部庁舎を利用しているそうで建物の雰囲気はとてもよい。
赤レンガの建物ってそれだけで雰囲気良くて、東大本郷キャンパスとか京大吉田キャンパスにあるような無骨な建物もいいし、東京駅丸の内側や軽井沢三笠ホテルの壮麗な感じもあざとい。

で、工芸というのは「Craft」ということで、職人による手作業での伝統品みたいな意味合いがあるみたい。
そのため、使用者を想定しない、観るための「置物」、「花器」、「着物」などが多かった。美術としてはすごく手間がかかっていて洗練されているんだけれど、インダストリアルデザインみたいなものを期待していたのですこし残念(よく調べておけば良かったん)。
海外にはよくあるみたいだけれど、日本だとあまりそういったものが無い気がする。そういう展示があったら行ってみたいので教えてください。


入館210円で30分くらいでまわれるしまあまあおもしろかった。北の丸公園から千鳥ヶ淵あたりは散歩しても楽しいと思うのでおすすめです(美術館・博物館の評価サイトあったら便利とおもうけど特設展もあるし見物者のリテラシーもあるしでなかなか難しいかな)
東京国立近代美術館-工芸館


ちなみにここの建物はポータルで、じつは千代田区内にもかかわらず15日ほどキープできていて、ガーディアンゴールドいけるか?と期待してしまっていたんだけれどあえなく破壊されてしまって悲しい。


自分の話

じつはこの年末年始で大きく環境が変わった。今年は挑戦の年です。
詳細はまたブログにでも書きますが、しばらく京都にいるのでもしお立ち寄りの際はご連絡ください。ご飯でも食べましょう。


参考

2013年のまとめ

2014年のまとめ

2005年、2015年、未来予想

未来を予想するにはどうしたらいいだろう。


適当に調べてみるとこんな考え方があるようだ。

  • 現状を知り、過去に似たパターンがないか当てはめてみれば未来もわかるよ派(歴史は繰り返すよ派)
  • いろんなシナリオ考えてみればどれかは当たるし対策たてやすいよ派(システムズシンキング右派)
  • 未来は自分でつくるもんだよ派(アラン・ケイ流)
  • どんな未来もありうるよ派(予想放棄派もしくは平行宇宙論者)
  • 全部聖書に書いてあるよ派(運命論者)
  • どちらにせよ人類滅ぶから関係ないよ派(終末期待論者)
  • でも56億7千万年後には救済されるよ派(弥勒期待論者、上生派)

まともなのはうえ2つだけれど、どちらも歴史の広い知識、また現代の状況と事象への深い理解と発想が必要で常人にはなかなかできないし、それでなされた予想が正しいかどうかの検証には時間がかかるし再現性確認もできない。

逆に考えれば、未来を予想する方法を検証するためには、過去になされた予想の正しさを検証するという方法がある。
ある予想がどれくらい正しかったか、誤った場合はどういった原因だったのか、を分析していけば未来予想の精度もあがるかもしれない。


というわけで家で発掘された「10年後の日本」という「日本の論点」編集部が10年前に出した新書を読んでみた。

10年後の日本 (文春新書)

10年後の日本 (文春新書)


わりと煽り系だし新書ということで根拠は詳細には書いていないけれどちょっとは示唆もある。


何点か気になった予想について現在との違いを書いてみる。

治安について

団塊の世代のベテラン警官大量退職による検挙率低下で治安は悪くなる、という予想はあったけれど、検挙率については2005年以降は少し回復して横ばい。
日本の犯罪と治安 - Wikipedia


治安の目安となる各犯罪の推移も、発生率の少なかった1980年代と比べると強盗・傷害は若干増えているけれど、殺人や強姦は減少している。
日本の犯罪と治安 - Wikipedia


もちろん、昨今の特殊詐欺は目立っているし、認知されていない犯罪もあるだろうから一概には言えないものの、治安が悪化している数字はなさそう。ただ、景気は相変わらず悪くなって若年層で不安定な非正規雇用も増えているし、なにかのきっかけで治安が悪化してもおかしくないとは思う(それこそ虐殺器官のようなきっかけがあれば)。
スラムの形成も、日雇いの仕事が少なくなったドヤ街に近いものがあるという向きはあるけれど、明確な塀で囲まれたゲーテッドシティみたいなものは日本ではまだなさそうと思うのですがどうでしょう。

予想が外れたのは、思ったよりも日本にモラル、あるいは自己制約する文化があったから?


格差の拡大

正社員率が減って格差がますます拡大するだろうという予測がある。
たしかに非正規雇用率は増えている。けれど2010年までのジニ係数の推移を見る限りは格差の拡大はみてとれないようだ。ただ、ジニ係数では所得の格差しか分からないため、節税対策きっちりしている資産家と労働者の差は出ないので注意。
ピケティ的には、資本収益率が経済成長率より高いと格差が拡大するそうなので、今後も広がっていく見込み。また、資産家と貧困層はかなり固定化されているように思われる。

この格差が増えると社会にはどういった影響が出てくるだろうか。モラルの退廃、教育レベルの低下・社会福祉費の増加・・・とかあるかもしれないけれどどれも富裕層にとっても好ましくないと思うので累進課税or資産への課税にご協力していただきたく。


ただ、なんでジニ係数は維持しているんだろう。非正規が多数派になって(全体が地盤沈下)して格差がへった、なんてことはないか・・・。

図録▽所得格差の長期推移及び先進国間国際比較

日本の富裕層は101万世帯、純金融資産総額は241兆円 | 野村総合研究所(NRI)


都心不動産暴落

オフィスは供給過剰で暴落するのではとの懸念が記述されていた。これは、人口の減少と会社の統廃合、団塊の世代の大量退職やリモートワークの普及でオフィス需要が2010年以降減っていくのではという話。

たしかに2012年時点で2008年から平均募集賃料は20%ほど下落しているし空室率も高いままだけれど、暴落というほどではないし建設もまだ続いている。

オリンピック景気もあるだろうけれど、やはり都市集約のメリットが思われていたよりも大きいからだと思う。一極集中に正のフィードバックがかかっている。ただ、災害リスクや通勤コストなど高まっているのでよくないなあとは思う。

あと、リモートワークがもっとすすんで賃料安くなって欲しい。


朝鮮半島統一

金正日の硬軟織り交ぜた巧みな外交と民族融和を訴える声で、38度線は解消するかもと思われていたけれど、金正恩にかわって相変わらず対立は続いているし交渉はうまくすすんでいない。
これがどこまで持つかは東アジアのパワーバランス上重要で、クーデターなどあって空白地帯が生まれると中国と韓国の綱引きになりかねない。また、無事に統一されると韓国に駐在している米軍の存在意義はなくなって撤退し、中国への牽制も効きにくくなるかもしれない(素人判断)。

独裁政権の末期はいろんな終わり方があるけれど、北朝鮮は国民の統制が強いし、一方で体制には腐敗がありすぎて、金家だけを放逐しても変わらなくなりそうではある。まだまだ独裁政権は温存されるのではないか。
どう着陸するにしても、そのとき韓国経済はどうなるだろう


その他、ちょっと違うかもと思ったこと

細かいので箇条書きで。

  • 団塊の世代問題
    • 大量退職は、定年延長などによって問題は噴出はしていない?現場レベルだとたいへんなところはたくさんあるだろうけれど・・・
    • 企業年金・退職金がもらえなくて問題になる可能性がある、との予測はあったけれど、そう問題にはならなかった?
  • ロボットが少子高齢化の救世主になる
    • アッハイ
    • つくっている人によるプラス面の喧伝にあてられていたからだろうか。技術的にはまだこれから。
  • 弁護士大量供給による訴訟社会の到来
  • BRICSの台頭。中国以外は、期待されていたほど存在感は増えていない?
    • 金融危機資金が引き揚げられたの影響もあったかも。アメリカが予想大にしぶとい。

そのまま解決もされずに続いている問題

  • 財政悪化
    • 順調に積み上がってます
  • 地方分権
    • 平成の大合併はあったけれど、財源移譲はあまりうまく進んでいない、ように見える・・・
  • インフラ老朽化
    • これも光が見えない・・・。北陸新幹線つくっている場合なんだろうか・・・
  • 少子高齢化
  • 医療費/介護料高騰
    • はい・・・
  • 年金崩壊
    • はい・・・。どっかでリセットして欲しい。

まだこれから起きるかも系

その他、いくつか論点があってまあおもしろかった。
この本では触れられていない大きな話としてリーマンショックのような金融リスク、イスラム国の台頭、EU,ロシア間の緊張関係がある。
ウクライナ関係以外はあまり予兆もなかったんだろうか。


また、一番怖いのは、10年前時点で「首都直下地震が30年内に発生する確率は70%」と2005年に言っていること。とりあえず、自然災害は来るので備蓄など対策しておきましょう。


これからのこと

さて、本書のような過去の延長線上の未来予測だとイベントを予測することはできなくて、傾向とそれの影響を検討するくらいしかできない。けれど、財政悪化や少子高齢化はすこしずつ数字が悪くなっても社会への影響はなかなか見えない。どこか一定のレベルを越えたら一気に相転移するのかもしれないけれどそれがどの時点で、どんなことが起こるかは何も言えない。社会は複雑すぎる。なんとか平和的に続いていって欲しいものです。


とりあえず、イベントの予測に近いけれど、社会への影響の大きそうなキーになる技術の登場だけ予想しておくか。技術決定論ではないです為念

  • 再生医療の普及
    • 間違いなく一般化する。そのときどんな発生して倫理的な問題が生まれるだろうか
  • 遺伝子操作ベビーの普及
    • そして格差はますます固定化される
  • 動植物の遺伝子操作の一般化
    • すでにやられているけれど、これまで消極的だった地域でも食糧危機などのきっかけは期待。
  • 自動車やドローンの自動操縦の開発
    • インフラや法制度が障害だけれど、特定のフィールドでは実用される
  • 特定分野で人間と遜色のない対人作業のできる人工知能の開発
    • 産業用
  • バッテリーの超軽量化
  • 仮想現実没入機器の普及
    • まずはエンターテイメントから。
  • 分散仮想通貨の普及
    • bitcoinそのものかどうかはわからないけれど、国家が管理できない通貨は普及すると思


量子コンピュータとか核融合、圧倒的な再生可能エネルギーは悲観的。あとやっぱり、国家や民族が消えてなくなるほど情報化はされないとは思う。


これらの技術と文化が相互に影響し合って社会は少しずつ変わっていくかな*1

やっぱりわからなさすぎるので未来をつくるには自分でつくるのが一番か(投げやり)

いい未来予想本・メソッドがあれば教えてください。

2052 今後40年のグローバル予測

2052 今後40年のグローバル予測

*1:技術決定論と文化決定論どっちやねんという論争もあるけれど、技術と社会は相互にフィードバックを与えている複雑系なのでどっちかだけでは決定できない

スージョと大相撲の話

友人に誘われて両国の国技館まで大相撲初場所を見物にいってきたんだけれど思ってたのと違ってけっこうおもしろかった。




まず、女性のファンがかなり多い。すごい多い。
自分たちがいた一番安いC席(3800円)の周囲では7割は女性であとは観光客と思しき西洋人、おじいちゃん好角家、家族連れな感じで女性が圧倒的。土俵に近い枡席や溜まりは年季の入った男性好角家が多いし全体ではどうかわからないけれど、自分たちのいた一角はアイドルコンサートに紛れてしまったかというくらい。


四股名を叫ぶ、自作の応援うちわ、贔屓の力士が勝った時にあげる歓声と、すごい元気。
女性ファンは年齢もタイプもばらばら。中高年層が多い印象はあるけれど、20代前半から60代も目立って層が厚そう。伝統芸能強い。


隣の席の40代後半と思しき女性2人とお話しすると、贔屓の力士の取組を観るために何ヶ月も前から計画していて飛行機でやってきて、その日のうちに飛行機で帰ると言っていた。その力士はしばらく負けていたけれど、この日はすぐに勝負がつかないいい取組を制していたのでほんと嬉しそうだった。泣き出さんばかり。



ほか、20代前半で髪も明るい茶色でマスカラもきっちり濃いめの(ギャル風の)若い女性が黄色い歓声をあげまくっていて近くの西洋人のお兄ちゃんが二度見していた。その女性は後に隣の席の60代の女性と相撲談義でかなり会話が弾んでいた様子であった。ほかにも、各力士にたいへん詳しい感じで過去の取組の状況や各力士の状態についていろいろしゃべっていたインテリ風な若い女性2人組もいた。


声援を集めていた力士は遠藤が圧倒的で白鳳、勢、琴奨菊荒鷲旭天鵬が続いていた印象。荒鷲はモンゴル人力士で2番目にイケメンという会話が耳にはいってきたのを覚えてる。



調べてみると、こういった相撲ファンの女性をターゲットとした相撲雑誌が今月創刊されている。この「相撲愛を深めるstyle&lifeブック」であると称する雑誌「相撲ファン」では女性相撲ファンの呼び名を「スージョ」とすることを提案している。
参考)「カープ女子」「セレ女」につづく新勢力「スージョ」が誕生 - ライブドアニュース


この名称はさておき、週刊少年ジャンプでは火の丸相撲という相撲マンガが連載されているし、関取にお姫様だっこしてもらえる企画があったりするくらい人気。これは定員6人のところに7601人もの応募があったみたい(TwitterのRT数だけれど)。すごい。

参考)http://getnews.jp/archives/701109


2014年の九州場所では17年ぶりとなる7日間の大入りを記録したそうで、今回も満員御礼だし、人気復活している様子。昔の若貴ブームのころもこんな感じだったのかな。


元々伝統という強みがあるし、格闘技要素もあってコンテンツ性高いけれど、なんでここまでブームが起きているんだろう。
ドワンゴが公式アプリをつくっていたりいろいろ企画をしたりと、相撲協会マーケティングにかなり力を入れていることは間違いなさそうだけれどそれだけじゃない気がする。

イケメン力士を応援するという、アイドル的部分もあるだろうけれど勝敗のつくエンタメ性はカープ女子とかセレ女と似ているかな。勝敗があって応援甲斐があるかもしれない。穿った見方をすれば、強い男に憧れているのかも。近年のプロレスブーム・戦国武将ブームも同じ?

siri



国技館相撲見学

話は変わるんだけれど、国技館はなかなか良観光スポット。
けっこうおもしろかったので少し共有しておく。この記事が詳しく書いているので興味があればぜひ行く前によんでおくといいと思う。
「大相撲に一度行ってみたいな」と思っている人の背中を押しつつ、オススメの行動スケジュールをご紹介するの巻。 : スポーツ見るもの語る者〜フモフモコラム


日中は西洋人観光客が大勢目立つし国際的観光スポットかもしれない。ただ、外国人観光客向けに英語パンフレットなども置いてあるけれど、ずっといる人はちょっと退屈そうにも見えた。



あと、この時期はけっこう寒いので注意。プレモル売っているミニスカのおねえちゃんはいたけれどあんまり売れてない様子。熱いコーヒー売ってくれてたら買うところだった。

やっぱりテレビは楽。ただ、テレビではわからない、懸賞取組やスポンサーのことがわかったのはおもしろかった。
特に、スポンサーの宣伝文を読むところで「イエスエス高須クリニック、イエスエス高須クリニック、イエスエス高須クリニック」と3回読んでいたのがツボ。




その他雑感

おもしろいのは、席は8時開場で8時50分から取組は開始しているんだけれど16時前の中入(幕内土俵入り、横綱土俵入り)から観るようでどんどん人が増えていくこと。この、ずっと本番をやっているなかで、2時間いても10時間いても同じ値段、その一番美味しいところだけ観に来るお客さんが多いというのはほかにあんまりなさそう。ディズニーでも一日券つかってパレードだけ観にはいるひとはそういないよね。

待ち行列




贔屓の力士がいると相撲観戦は楽しいと思う。はじめてだったので好奇心は刺激されておもしろんだけれど、相撲自体には様式美を楽しむふりをするくらいしかできなかった。ずっと座っているのしんどいし、もうしばらくはいかないかな。






と、ここまで大相撲について書いてみたけれど、やっぱり観るだけでなくて相撲はとったほうが楽しいと思う。

いい大人が気軽に相撲できるいい場所があれば教えてください。
いまのところお台場の砂浜は春から秋にかけて最適という知見があります。



相撲というよりはモンゴル相撲な感じだけれど、線も書けて準備不要だし転がされても痛くないし足元も気持ちよかった。

子どもの名付けで気をつけたい5つの観点

※ 本稿は、人の名前についての文章です。誰かの名前を揶揄したり批判するものではなく、名付けの際になにを気をつけるべきかを考えたものですのでご留意ください。

※ 2015/1/13 22:00 2項目追加しました。タイトルは変えてません。


年末年始、子供につける名前に悩んでいる友人と話す機会があった。

当然だけれど、名前はほんと大事。アイデンティティの記号として一生使われ続ける。けっして書類上のものだけでなく、名前があることでそのものは認知されて存在する。それなのに自分ではほぼ変えることはできず、たいていの場合は親が勝手に決めてしまう。親というのはすごい権力を持っている、とかなんとかかんとか。


これまで生きてきた人間の数だけその命名が行われているということで少なくとも数百億の知見が貯まっているはずだし、書籍もたくさんあるから命名なんて簡単だ、と思いきやそうではなさそう。知見は共有されていなかったり、変な本やサイトもあるし流行廃りがあって難しい。


たとえば「子ども 名前 付け方」でGoogle検索して一番上に出てくるこのサイト。

  • 子供の将来を考えて名前を付ける
  • あえてひらがなにする
  • 姓名判断で良い名前を見つける
  • 子供の名前ランキングを参考に
  • 夫婦の名前から
子供の名前付けで大事にすべき5つの基本の考え方|Wedding Parkマガジン for新婚生活

「5つの基本の考え方」と銘打っていることで期待したんだけれど見出しからしてコレジャナイ感がある・・・。将来を考えた名前の条件を細かくして欲しい。あえてひらがなにするって基本的な考え方なのか。。



名前を付けることはそれだけ難しいということなのだろう。
それに名前を決めるのは常用漢字表人名用漢字表に載っていさえすれば親の自由でもある。イメージなり、願いなり、好きなキャラなりなんでもよい。ただ、そんな中でも苦労する名前と苦労しない名前はあると思っていて、いい音・字面が思い浮かんだ後にでも注意すべき観点がいくつかあるように思う。


図書館で命名の本をさらっと見た感じ、ここらへんの注意点は体系化されていないようだったので僭越ながら書いてみました。
多くの方々はすでに考えていることばかりでしょうのでご笑覧の上、補足・注意点などあれば共有していただければ幸いです。



1.可読性

漢字の名前があったときに正しく読めるかどうか。18歳以上の人のうち、どれくらいが読めるだろうか。単純に読めないと時間もとるし訂正も必要だし、トラブルのタネにもなる。名前を正しく読まれず毎回訂正するのは本人にとっても周囲の人にもストレスだろう。

例えば2014年の男の子の名前ランキング、ここ数年人気でこの年も2位の「大翔」くん。これはなんて読みますか?

明治安田生命 | 名前ランキング2014 - 名前ベスト100 - 男の子*1

読み方をみると「ひろと」、「はると」、「そら」、「やまと」、「たいが」、「たいと」と6パターンもあってくらくらする。教室で名前を呼ぶ先生やお役所の人が苦労するし本人も訂正がたいへんだろう。

対処としては、当て字や無茶な読みをさせないこと、また教養深すぎて読み手を選ぶものも考えものかもしれない。せめて漢字辞典の名乗りに載っているか慣用であるべき。

ただ、あえて変わった名前とすることで名前をネタに会話が広がってよいという説を聞いたことがあるけれど、人に会うたびに同じことを聞かれる本人はつらそう。身を削る営業マンならありかもしれない。


2.伝達性

公共サービスの登録・名義変更やビジネスではいまだに電話を使う場合も多い。このとき、名前を口で説明しやすいかどうかが伝達性。

たとえば、「たくや」という名前はたくさんあるけれど、「開拓のたく」に「なり」です、と伝えたり、「キムタク」と同じですと伝えて分かってもらうためには多少のリテラシーが必要だ。時代時代で変わるもので難しいけれど、あまりに伝えにくいものは避けた方がよいだろう。

ベストは同音異句がないこと。耳で聞いて、この音ならこの字しかないと分かるとスムーズ。


3.画数

これは漢字文化圏古来からある姓名判断の大きな要素だし、苗字と合わせてのバランスもあるもので意識している人は多いと思う。
それだけでなく、まだまだ手書きが必要な場面は多いため、自分の名前の書きやすさという効率性にも影響がある。

ちなみに、これまで出会った中で苗字を合わせて一番画数が少ないのは10画、最大60画*2。たぶん書くのに10数秒程度差があると思う。また、画数が10画とかなり少ないと、たくさんの名前が並ぶ名簿でも目立つので有利のようだ。


4.かな漢字変換

これはワープロ普及後のここ20年で急速に必要になっている指標。可読性や伝達性とも関わっているけれど、Microsoft IMEなど主要な日本語入力システムで変換にどれくらいキーを押す必要があるかというもの。自分だけなら自分のPCに覚えさせればいいけれど、周りのひとへの影響が大きい。

たとえば、ジョジョの奇妙な冒険第3部の主人公「空条承太郎(くうじょうじょうたろう)」、「承」は「じょう」とは普通読まないのでサラのIMEだと変換のためには、「しょうたろう」か「うけたまわるたろう」とする必要があってなかなか手間である。この時代、一発変換できることを狙う必要がある。


5.検索性(ググラビリティ)

これも近年急速に浮上してきた観点で、名前をGoogleやBingで検索したときに本人の情報が上位に出るかどうかというもの。

まず避けたいのは、犯罪者や有名なキャラクター、また芸能人(作家・役者、特にポルノ俳優など含む)と同じ名前となること。もちろん子どもが大きくなる数十年で情勢は変化するけれど、わかるだけでも避けておくべき。そして次に考えるのは、その名前が複数ヒットするか、まったくヒットしないか。
ヒットしない、つまりユニークな名前の場合は、政治家でも目指すのならSEO度高くてよいけれど、もし炎上沙汰をおこしてしまえば一生その呪縛から逃れられないだろう。逆に多数ヒットする場合は、そこそこ一般的でありふれた名前ではあるということだけれど、炎上・ネットストーキング耐性は高いかもしれない。




書き損ねていた観点を思いついたので追記します。5つどころじゃないですね。

(追記1)発音容易性

名前の発音が容易かどうか。日本人にとって口に出しやすいかどうかはほとんどの方が気にするだろうけれど、英語話者が話しやすいかは気にした方がよい。アメリカ人になったつもりで口に出してみるといいんじゃないだろうか。
たとえば「つ」、「っ」、「ラ行」は発音しにくいとされている。

参考)
英語圏の人にとって発音しにくい日本語 | 英語 with Luke


(追記2)多言語での意味

外国人をおもねる必要はないけれど、このグローバル化が避けられない時代、子どもがどういう人生を送るかわからないため、メジャー言語圏において名前で誤解/軽蔑されるものは避けた方がよい。名前の読みを検索するといいだろう。
福井出身というだけで笑うアメリカ野郎もいるくらいなので例えば、福美さん(仮称)はお察し・・・。

参考)
このNAVERまとめがいろんなQAサイトなどから情報を集めている様子。

まとめ

これらの観点は命名で必須のものでもないし、これらの条件がよければいい名前というわけでもない。けれど、これらの条件がわるい名前はそれだけ面倒ごとが増える可能性を持っている。いったん思い浮かんだいい名前を変えるのは難しいかもしれないけれど、いったん考えておくとみんなすこしだけハッピーになれるかもしれない。また、名前を付ける時にはそれがその子の将来にどういう影響をもつか考えると、その名前を持った人間がどう大きくなっていくか想像できて楽しいと思う。

もちろんどの観点も苗字の影響を強く受けるもので、名前だけでどうにもならない場合もあるのでそのときは甘受するしかない。ただ、難読の、珍しい苗字は、奇抜な名前よりもはるかに格好いい(無責任)。



あとがき

そういえば、幼いころ「ある人のものなんだけれど、それを使うのは他人ばかりで本人は使わないものなーんだ」というなぞなぞがあったことを思い出した。答えはこの記事の主題である「名前」で、今思うと本人もたくさん使うんだけれど、当時はなるほどと思ったのを覚えている。自分のものだけれど人がよく使うという意味で、使いやすさは気をつかってもよいと思うのです。

*1:毎年URLを使い回すの辞めて欲しい。

*2:特定されそうだけれどもし特定してもインターネッツには書かないでね!

おもしろノンフィクション2014年

いつのまにか終わりそうな2014年も思い返すといろんなことがあった。
イスラム国の樹立とアメリカによる空爆、ロシアのクリミア編入と世界地図にも影響を与えかねないものもあり、スコットランド独立の住民投票と香港のデモなど民主主義の新しい波もあった。一方でエボラ出血熱が猛威をふるったニュースは近代社会に恐怖を与えている。

国内では集団的自衛権の行使容認、衆院選での自公3分の2確保といった路線のなかで景気回復の兆しがありつつも、それが表面的なだけではないかという観測もある。そして、STAP細胞や佐村河内ゴーストライター、PC遠隔操作などの自己愛こじらせたような犯罪が目立ったのも特筆に値すべきだと思う。


Google unofficial - Year in Search: 検索で振り返る 2014 - YouTube



やっぱり現実はおもしろい。
小説もおもしろいけれど、現実はもっとおもしろい。

その現実のおもしろさの結晶たるノンフィクションはたいていのフィクションよりもよっぽどおもしろい、と思っている。


というわけで今年もいろんなノンフィクションを読んだので振り返ってみる。


※ノンフィクションと銘打っているけれど末尾にはノンフィクション以外のものも触れてみます。あと2014年とタイトルについているけれど2014年に読んだという意味です為念


去年の記事

2013年最高におもしろかったノンフィクション13冊 - うんこめも




マッカーサー大戦回顧録

エンタメ度:★★
登場人物の精神的質量:★★
自伝がノンフィクションかどうかはさておきマッカーサーの自伝はエンタメとしてもレベル高い。今年になって出た抄訳版では自伝特有の冗長さを省いて読めるのでたいへん便利。
彼は日本で一番有名なアメリカ軍人にして日本に最も影響を与えたアメリカ人だと思う。連合国軍司令官という役職によるものだけでなく、彼の人格や考え方が制度や人事となって後の日本に広範い影響を与えている。


本書ではフィリピンでの日本軍からの敗走と立て直し、飛び石戦略での連勝。そして日本統治までの間をまとめている。戦略や組織掌握、本国との交渉など軍記としてもおもしろいのだけれど、ヒロイズムに溢れた性格と実力を兼ね備えたマッカーサーの人物像が透けてみえるのが興味深い。


第二次大戦ものにはほかにもたくさん読ませる文章があるので興味があれば読んでみるといいと思う。ヨーロッパ戦線だと、マンシュタイン回想録とチャーチル第二次世界大戦(未読了)。太平洋戦争だと失敗の本質とか山岡荘八の小説太平洋戦争とかかな。エンタメとしては陸軍中野学校とか満州とか調べると楽しい。

戦争が科学工業を進歩させるというのはよく言われるけれど、それだけでなく傑物を世に出し、名文を残すという機能もありそう。これはもしかすると室町時代みたいな感じかもしれない。



山・動く 湾岸戦争に学ぶ経営戦略

山・動く―湾岸戦争に学ぶ経営戦略

山・動く―湾岸戦争に学ぶ経営戦略

ビジネスに役立つ度:★★
大企業病度:★
装丁のかっこよさ:★★★

例の女子高生も学んだという経営学者のピーター・ドラッカー先生がこんなことを書いていたという。

物流はコスト削減の最後の辺境だ。われわれは物流について、ナポレオンの同時代人がアフリカ大陸の内部について知っていた程度にしかわかっていない。そこに問題があって、大きな問題であることは知っているが、ただそれだけのことだ


いきなり米軍人の自伝が続いてあれだけど、湾岸戦争において軍の後方支援・ロジスティクスの責任者であったガス・パゴニス中将の自伝でもあり湾岸戦争の裏方解説本でもあるこの本を紹介する。サブタイトルは「湾岸戦争に学ぶ経営戦略」とついていてビジネス書っぽい感じもある。

100時間戦争と言われる湾岸戦争は、米軍が一気に戦力を投影して短期決戦で終わったという先入観があったけれど、かなり泥臭いものだった。なにせ40万人もの人間と700万トンもの物資を基地の近くにないサウジアラビアに配備するのだ。手前味噌感はあるけれど、そういった兵站/ロジスティクスの苦労を記述しており興味深い。



甘粕大尉

甘粕大尉 ――増補改訂 (ちくま文庫)

甘粕大尉 ――増補改訂 (ちくま文庫)

登場人物の精神的質量:★★
大陸浪人度:★★
また軍人で恐縮だけれどこれもなかなかの人物。本書で紹介されている甘粕正彦は日本軍関係の特務機関のうち、もっとも引きつけるものがある人物だと思う。
まず、アナーキストの首魁大杉栄を虐殺したとされ禁固10年の判決を受けたところから表舞台に名前が出てくる。しかし、これは陸軍の上層部の命令の泥を被ったという説もありいまだによくわかっていない。2年後に出獄し軍のお金で2年間フランスに留学し、その後に軍を離れて満州に渡り調査・謀略にかかわり偽装テロ事件や皇帝溥儀を極秘裏に移送し満州国樹立に関係する。建国後は民間人ながら警務司長や満州の唯一の政党である協和会の総務部長などを経て大陸での映画の配給や制作を担当する満洲映画協会の理事長になる。

謀略に関わっていながら本気で満州の文化を振興しようとし、現地民からも信頼され、ときに軍と対立しても筋を通す硬骨漢ぶりはおもしろくもあり、キワモノ揃いの日本軍関係者の中でも異様に浮いている。

特務機関、謀略関係では、謀略の昭和裏面史が幅広い話題を紹介していて導入としてはよいと思う。



謎の独立国家 ソマリランド

謎の独立国家ソマリランド

謎の独立国家ソマリランド

未知の世界度:★★★
エンタメ度:★★★
高野秀行による探検録。内戦の続くソマリアの一角に、一地域だけずっと平和を保っている民主国家、ソマリランドがあるらしい。国連にも認められずほとんど情報のないこの国を、現地での取材を重ねて現状や歴史がたいへんわかりやすく描かれている。

ソマリアはいま、首都モガディシュを中心に筆者の言うリアル北斗の拳状態となっている南部ソマリア(ここの首都、モガディシュは米兵が19名戦死したブラックホークダウンの舞台だ)と、ソマリアの海賊の拠点になっているプントランド、そしてソマリランド、その他細かい勢力に別れている。

このソマリランドでは、選挙による民主的な手続きで政権交代も起きているというアフリカでも珍しいほどの民主主義国家。複数政党による民主主義が成立しているというだけでもすごい。その秘密や成り立ちにも触れられていて社会の成り立ちについて考えることもできそうで、ガリバー旅行記くらい現代社会への風刺を感じた。エンタメとしてふつうにおもしろい。



山谷ブルース

山谷ブルース (新潮OH!文庫)

山谷ブルース (新潮OH!文庫)

未知の世界度:★★
暗澹たる気持ち度:★★
他人事じゃない度:★★
東京に来るまで日雇い労働者の街、山谷のことはなにも知らなかった。
アメリカ人の文化人類学者が山谷へ入っていって日雇いの仕事もやりながら山谷のことを観察・記録しているこの本は数ある山谷本のなかでも異色。

山谷の労働者、そこに住む人、支援する人たちへのインタビューは現実の重さを突きつけられる。戦災で家族と住む場所を失って以来山谷にいる人、事故で仕事が続けられなくなった人、裕福な家庭を持っていたけれど不義で出て行かざるを得なかった人などなど・・・。人情的なところと無慈悲さが同居する街という印象もありまだまだ興味は尽きない。政治家・官僚の方にはこの問題は知っていて欲しい感じはある。

詳しくはほかの山谷本と合わせてエントリを書いている。

ドヤ街、山谷についてのメモ - うんこめも



カニは横に歩く 自立障害者たちの半世紀

カニは横に歩く 自立障害者たちの半世紀

カニは横に歩く 自立障害者たちの半世紀

文庫本にして欲しい度:★★
暗澹たる気持ち度:★★
他人事じゃない度:★★

日本でもっとも戦闘的なポリシーを掲げる集団がある。

一、我らは、自らが脳性マヒ者であることを自覚する。
一、我らは、強烈な自己主張を行なう。
一、我らは、愛と正義を否定する。
一、我らは、健全者文明を否定する。
一、我らは、問題解決の路を選ばない。

全国青い芝の会 新行動綱領説明文

この読むだけで鳥肌が立つポリシーを書いたのは脳性マヒ(CP)者たちによる青い芝の会だ。CP者たちの権利獲得までの闘いの歴史は異世界すぎて暗澹たる気持ちになる部分もあるのだけれど非常に読ませる。病気や介護といった話題に興味はなくとも読むべき。また、組織形成とコミュニティ形成に興味があれば読んで得るところは大いにもあると思う。60年代に流行った新左翼系組織よりも切実さが桁違い(これらでは実際に人が殺されたけれど、それは切実さが足りなくて現実感がなかったからだと思う)。


機会があれば、東京ではたまに上映会やっている映画、「山谷 ー やられたらやりかえせ」を見るとよいと思う。これは撮影中と撮影後に監督2人が殺されたという血なまぐさい映画。

この本も詳細は記事を書いている。

障害者による過激な組織「カニは横に歩く」 - うんこめも



世界屠畜紀行

世界屠畜紀行

世界屠畜紀行

未知の世界度:★★
エンタメ度:★
食欲度:★★

本書は韓国、エジプト、バリ島、インド、チェコ、沖縄、東京、アメリカと世界各地の屠畜場を取材して回って屠畜について考えてきた記録。

屠畜を残酷だと思う人がいるのはなぜか、日本ではなぜ屠畜に従事する人が差別されるのか、世界ではどうか?といったことをインタビューをもとに考えている様子が良い。イスラム圏での肉屋は稼いでいるから偉いという合理主義、生きるに必死なモンゴルでの羊と命を共有するように屠畜する文化、社会主義時代のチェコでは肉屋が偉い人にいい肉を流して稼いでいたと文化がさまざま。
肉が好きな人ほど。



聞き書き ニッポンの漁師

聞き書き にっぽんの漁師 (ちくま文庫)

聞き書き にっぽんの漁師 (ちくま文庫)

登場人物の精神的質量:★★
エンタメ度:★★
沖縄から北海道までの日本各地のベテラン漁師13人からの聞き取りを書き起こした本。それぞれ捕る魚も規模も違うけれどみなプロフェッショナルでその考え方は何十年もの経験からのみ得られる重みを感じる。やっぱ、漁というのは自然を相手にした博打という性格をもつものもあってわくわくしてしまう。名インタビューだと思う。

プロフェッショナルの話ってなんでこうおもしろいんだろう。
ホットな話から漁業への後ろ向きな話もあって魚好きならぜひ読むべきだと思う。市場とか寿司職人のプロの話も読んでみたい。






おまけ

あとはノンフィクションじゃないけれどみんなに読んで欲しいよかった本を挙げてみる。

世界が生まれた朝に

世界が生まれた朝に

世界が生まれた朝に

文庫化して欲しい度:★★★
神話度:★★
すごい本。神話といってもいい。今年ナンバーワン小説。

アフリカに生まれたひとりの男の一生が語られている本書。すさまじいのはその一生がアフリカの歴史・悲劇とリンクしていること。文字も年代という概念もなく祖先の霊や呪術、自然が支配する伝統社会に生まれ育つ青年期。そして白人たちの到来と征服を受け、彼らの力に驚く植民地時代。都市で仕事を得、世界大戦での退廃を経験。独立闘争と急激な近代化を見ていく老年期までを描いている。

一生にこれだけの激変を経験した国はコンゴ以外にあるのだろうか。創世記をなぞるようなスケールだ。


もうひとつの魅力は、知と力の追求。主人公は伝統社会での知を身につけつつも自然を観察し伝統社会での祖先の力や呪術を疑い世界の裏にある知を追求する。そして白人の力に圧倒されつつもそれをさぐっていく。終盤、彼らの近代科学の到達した遠く宇宙の事象や科学にとてつもなさを感じる一方で機械主義的な考え方は意味を与えないことに気付き、アフリカの全体的で物事の意味を問う考え方の価値が示唆される流れははっとさせられる。


著者のエマニュエル・ドンガラ氏はコンゴ生まれでアメリカに留学し、いまもマサチューセッツの大学で化学の教授をしている。彼の弟が東大に留学していたり、本書の一部は浅草のホテルで書かれたりなどなにかと日本に縁があるようだ。

訳もたいへん読みやすく緩急のある幻想的な空気をよく伝えていると思う。アフリカ版「百年の孤独」と評され、著者もその影響を語っている。けれど「百年の孤独」と比べてメリハリがついていて読むのに使うエネルギーは5分の1くらいな気がする。登場人物の数が10分の1くらいなのもあるかもしれない・・・。
訳者の高野さんのうまさもある。ドンガラさんに絡む話は、高野さんの「異国トーキョー滞在記」という本で触れられておりたいへんおもしろいのでぜひ。文庫化して欲しい作品。



靴ずれ戦線

靴ずれ戦線 1 (リュウコミックス)

靴ずれ戦線 1 (リュウコミックス)

赤軍度:★
ユーモア:★★
萌え度:★
これもフィクションなんだけれど今年ベストマンガのひとつ。
凄惨な独ソ戦スターリンのいうところの大祖国戦争をコミカルなタッチで描いていてたいへんおもしろい。魔女という共産主義的にはありえないもの(むしろナチスの領分だ)を赤軍が雇って対独戦線にあてるというメルヘンでミリタリーなストーリー。とはいえ最近流行の萌え×ミリタリーではなく戦争の過酷さや死からも目をそらしていない。

話は、NKVD(内務人民委員部)の少尉ナディア(ナージャ)とベルリンを目指す関西弁ばりばりの魔女の娘ワーシェンカとがベルリンを目指して行軍するというもの。そして行く先々の戦線でスラブの伝承や民話に出てくる妖怪みたいなものと遭遇してなんとかするという流れ。それぞれのエピソードは切ないものから笑えるものまでよくできている。

あと、ナチ側魔女(親衛隊の高級中隊指揮官少佐)がたいへんかわいらしくてよい。出てくるたびにワーシェンカにやられて、眼帯になったり左手を鉤爪義手になっていたりと・・・
著者の速水螺旋人さんがいま連載中の大砲とスタンプも要チェック。これは兵站をあつかった紙の兵隊さんのどたばたコメディ。舞台と思しき場所が現在きな臭くなっている・・・。(12月のサイン会行きたかった)


サルでも描けるまんが教室

ユーモア:★★★
神話度:★
装丁凝っている度:★★

実用書の仮面を被ったドフィクションなんだけれど今年ベストマンガのひとつ。
まず表紙をめくってすぐの、マンガができるまでカラーコラムが異常。
インドネシアの木材業者のインタビューからはじまってパルプや紙の加工を学研マンガかってくらい解説してから、険しい顔をした漫画家が真剣にエロ漫画を描いて、これまた真剣な編集者から「もっと食い込みを強調して!」と鋭い指摘を受ける。そして写植屋さんがインタビューを受けながら、ひわいなセリフを打ち込む写真。それが製版され、ふたたび編集部で校了し、厳しい顔をした印刷会社の職人さんのまえをエロ漫画が流れていく様の写真とインタビューがある。そして、それを読む若者。それは読み終わった後、断裁されパルプになり、再生紙へ。そしてトイレットペーパーとしてさらにエロ漫画を読む若者の右手に置かれる。死と再生の雄大な仏教的景観・・・。
ひどすぎる。


はじめは漫画の書き方を項目ごとに4-8ページずつ書いて、ジャンルごとに攻略法がのっていてるんだけれどパロディ・諷刺だらけでいちいちおもしろい。
枠線の項では「陰毛」をつかって枠線をつくってみたり(なに言っているかわからないと思うが本当だ)、ポーズの項では竹熊センセのあられもない姿が描かれていたりいろいろひどいんだけれど、少年漫画で大事なのはメガネくんだと喝破したり、少女漫画と相撲の関連性について洞察していたりとするどい。

後半、彼ら自身が持ち込みして連載がはじまる部分のマンガがおもしろすぎる。苦心と努力?の末に大人気漫画となってアニメ化・グッズ化して絶頂をむかえ、そして人気低迷からどん底まで落ちてホームレスになるところまでを漫画家視点で描かれている、まるで創世と終末を描いた神話のようでもある。
間違いなく傑作。



その他の本

ポピュラーサイエンスでは、錯覚の科学、良心を持たない人々あたりがおもしろかったかな。サイエンスエッセイではカオスの紡ぐ夢の中で。これは後半に収められている小説 進物史観がだいぶよい。SFではすばらしい新世界が古いながらも楽しめた。マンガでは子供はわかってあげない、マスターキートンReマスターがよかったかな。ビジネス書ではリエンジニアリング革命。これはもっと考えたい話題。

映画ではウルフオブウォールストリートが最高すぎてほかはあまり覚えていない。
あとはぼちぼち。


読んで記録に残した本の数

マンガは除いています。
1-3月:16冊
4-6月:17冊
7-9月:14冊
10-12月:23冊
計70冊


2015年に読みたい本も山積みだけれど、もっと専門書を読もう


過去記事

タイトルの統一感のなさといったら・・・



批評ってなんだ

「批評」という言葉にはマイナスなイメージを持つ人も多いと思う。
大学入試の国語の難解な問題であったり、なにも創っていない外野が無責任に作品をあげつらったり。
ただし、ときには鋭い視点にはっとさせられたり、自分が信じていたことに疑いの目を向けるきっかけを与えてくれたり、その批評された作品を深く味わう材料をくれたりもする。

そうした批評のプラスの面を知りたくて、また自分もそういった批評をしてみたいと思い「高校生のための批評入門」という本を手に取ってみた。

高校生のための批評入門

高校生のための批評入門



これは1ページから8ページ程度の古今東西、種々の文章が51編入っている批評集。ところどころ「批評」についてもコラムもあり、これもたいへんおもしろい。



本書の冒頭の言葉によれば、批評というのは評論を読んだり論説文を書くことではなく、もちろん他人の欠点をあげつらうことでも知性を示して利口ぶることでもない。

それは違和感から出発するものだという。他人に対して、物事のあり方に対して、あるいは自分自身の言動に対してふとつまづくようにある抵抗の正体を追求していくことが必然的に鋭い批評になり、ひいては「私の流儀」を確立することになる。

高校生のための、というタイトルではあるが大学受験に出てくる難解な評論を解くためのものではなく、先人の考え方を読むことで自己を確立するためのヒントやきっかけとすることを狙っているとのことだ。


批評家が書いたものだけというわけでない。有名どころでは、藤原新也森毅チャップリン安部公房中上健次水木しげるボーヴォワール手塚治虫黒澤明澁澤龍彦岩井克人、阿部謹也、カフカサン=テグジュペリなども書いている。これだけ羅列するだけで作者買いしたくなってくる。もちろん名前だけではない。さらっと書いてあるのに、これまでの常識をなにかしら揺さぶられる文章ばかり。


ひとつ印象に残っている言語と文化についての文章を簡単に紹介する。
brotherという英語は日本語では兄か弟か区別されない。これは日本文化では長幼の別に気を遣っているということを示している。一方で、日本語で女性を呼ぶときには「だれだれさん」で済ます一方で英語圏ではMissとMrsで既婚かどうかを識別する文化になっている(現在はMsという言葉が人為的につくられて流通している)。これらの例から言語と文化が不可分であることがわかると思う。そして、差別用語でも差別する側に立つ人は無意識に、悪意なくその言葉を使ってしまう。つまり一般化している言語/思考のパターンに身をまかせていると自分の誤りが見えなくなることがあるという。この結論は当たり前ではあるんだけれど、言語が自分の考え方を縛っている具体例を簡潔に指摘していて考えるヒントになった。


また、本書は1987年出版ではあるが、51編中一番最後にチェルノブイリ事故が起きた後の原子力発電のリスクについて触れたものを置いているのには、なにか震撼させられる。特に、脚注のチェルノブイリ原発事故の項では事故の概要について説明したあとに「わが国の原子力産業界は、事故が発生した直後、原因についての情報はないまま、タイプの違いを理由に『日本ではあり得ない事故』と強調した」と締めくくられているところにぞっとする寒気を覚える。

思考停止に気付き、違和感を掘り下げて言語化することができるということの大切さと、その難しさを本書とは別に現実が教えてくれていて暗澹たる気持ちになる。



これきっかけで読んだ藤原新也の「東京漂流」もよい。

新版 東京漂流 (新潮文庫)

新版 東京漂流 (新潮文庫)

読んだ本 2014年10月-12月

この3ヶ月はわりとめまぐるしい日々でいろんなことがあった。ただ、仕事は忙しかったけれど貯まっていた本をいろいろ読めたと思う。これを書いているのは12月25日のクリスマスでまだ12月は終わっていないけれど年末年始には書けなさそうなのでこの聖なる日に記憶を辿ってみる。


あと、本がたくさんたまっているので欲しい人はあげます。

東京の清澄白河あたりまでお越しいただければ100円で、送付の場合は応相談です。

本ゆずります - Google スプレッドシート
一覧タブをご参照ください。



住宅政策何が問題か

住宅政策のどこが問題か (光文社新書)

住宅政策のどこが問題か (光文社新書)

住宅政策というよりは住宅事情の実際とメイン。
年齢・性別・各世代(コーホート)・収入ごとに住宅の事情がどうなっているのかを実データをもとに記述している。

戦後に増えてきた持ち家と、これを資産形成の手段にする話も興味深いのだけれど、一番おもしろいのは住宅政策の目標。

低利率のローンの提供など戸建てへの支援やかつての公営住宅などハコ形成が主で、これはいずれもある程度の所得がある人を対象にしている。簡単に言えば小金持ち優遇。これは、住宅政策と言うよりは内需のなかで大きな割合を占める住宅建築を通して景気を刺激するという経済振興が元になっている。

低所得者層の住宅政策はあまり十分に出来ていない。よっぽど低所得者生活保護があるか、今後、納税増が見込まれる新婚層のみくらい。低所得者層にとっては住宅がないことが労働をはじめとする社会進出の大きな妨げとなっている。そこで社会保障として住宅が必要になるだろうけれど、その手段はなにが適切なんだろうか。

空き家の利用がカギになりそうだけどどうだろうかと思うけど、本書にはあまり書かれていなかった。



ビブリオバトル 本を知り人を知る書評ゲーム

たにちゅーさんのご著書。じつはけっこうまえに手に入れていたのだけれど読み損ねていたのは内緒。
ビブリオバトルというのを簡単に説明すると、何人かで本を持ち寄って各自が5分間、本の紹介をしてから誰の本が一番読みたいかを決める書評バトルである。
最近はテレビやメディアでも取り上げられていたり日本各地で大小種々のイベントが日々開催されているので知っている人も多いと思う。

実際にやるとただ本を知ることが出来るだけでなく、初対面の人でも人となりが知れて話が盛り上がったり、身近な人の意外な一面を発見したり、自分の考えを言語化することで自分のことすらわかってくる。
そう漠然と思っていたんだけれど、この本を読んでコミュニティを開発する機能があるというのが説明されていてなるほど、と思う。簡単なルールなんだけれど、そこから秩序が生まれてくるのおもしろい。

大学院に入院していたころによくやっていたんだけれど、最近は職場の雰囲気や、自分の引き籠もり力の高まりのためにあまりできていない。またやりたいので興味ある人ご連絡ください。



カオスが紡ぐ夢の中で

金子先生の複雑系エッセイ。前半が複雑系や科学や研究についての読みもの。後半は小説、進物史観。これが最高。
進化する物語史観を意味し、遺伝アルゴリズムで物語を生み出していく研究が社会に影響を与えていく様を描いている。架空の作家として「円城塔」という言葉が出てきて調べてみると、ほんとに名前の由来らしい。読み終わって後書きのまえに本物円城塔による解説がついていてさらに驚く。なんでも金子先生の研究室にいたらしい。

そういえば高校生くらいのときに読んだ、『「複雑系」とは何か』はけっこう考え方に影響を与えている気がするな。いま思うといい加減なとこもあるけど。



ホームレス入門

人間ドキュメント ホームレス入門―上野の森の紳士録

人間ドキュメント ホームレス入門―上野の森の紳士録

バブル後あたりに失業して上野公園のホームレスたちと交流していた風樹茂さんの日記。
彼は若い頃は政策提言をしていたりODAの海外コンサルタントをしていたようで、いまは文筆業っぽくて結局ホームレスはしていない。

けれどいろんなホームレスの人との交流や、団交、都による追い出し、韓国のキリスト教系教会による炊き出しなどの様子を主観で描写している。
決して自堕落だからホームレスになっているわけではなく、社会状況から仕方なくなっている人も多いことがわかる。公共側や一般人がどう関わっていくか、難しいところです。明日の我が身と考えることが出来るかどうか・・・。
あと己の悟り・解脱のみを目指す仏教は支援しなく、キリスト教系ばかり支援しているというのは山谷でも聞いた話で興味深い。

ホームレスの人がどう生計をたてて、どこでどう生活しているかはもっと知りたいな。



京都と闇社会

京都と闇社会~古都を支配する隠微な黒幕たち (宝島SUGOI文庫)

京都と闇社会~古都を支配する隠微な黒幕たち (宝島SUGOI文庫)

  • 作者: 一ノ宮美成,湯浅俊彦,グループ・K21
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2012/10/04
  • メディア: 文庫
  • 購入: 1人 クリック: 4回
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京都に集まる富と権力を巡るお話でたいへん興味深い。
暴力団がノンバンクから同和事業、警察まで絡んでいたり、10数年前に市内で銃弾が飛び交う抗争があったことも知らなかった。

特に京都駅前の地上げを巡る崇仁協議会と武富士暴力団の絡みはほんとえげつない。崇仁協議会はWikipediaの項目も消されているけれど巨額の地上げと怪しい融資、不動産投資と黒すぎて死にそう。

まっとうなビジネスしていてこんな連中に絡まれたらつらいなー、と思う。


この本でとりあげられている関係各位
許永中 - Wikipedia
高山登久太郎 - Wikipedia
佐川清 - Wikipedia
細木数子 - Wikipedia
山段芳春 - Wikipedia
裏千家 - Wikipedia
西本願寺 - Wikipedia



ユダヤ人とダイヤモンド

ユダヤ人とダイヤモンド (幻冬舎新書)

ユダヤ人とダイヤモンド (幻冬舎新書)

ダイヤモンドという至高の宝石の歴史と、それと交差するユダヤ人のディアスポラ遍歴読みもの。
ダイヤモンド市場の度重なる不況や、中世ヨーロッパでのキリスト教徒による迫害、ナチスユダヤ人虐殺など多くの惨禍を経てきたなかでどう生き延びてきてデビアス社という一大カルテルを築き上げたかをわかりやすく説明している。
セシル・ローズあたりの帝国主義ロスチャイルド家の金融操作、オッペンハイマーのビジネスの駆け引きはそれぞれ調べるとおもしろそう。

こういう、ひとつの商材を中心に歴史を紐解くというのはいろいろと興味をかき立てられてよい。類書だと「コーヒーが廻り世界史が廻る」とかもよかった。ほかに何があるだろうか。

ただ、著者の経験も内容もいいし、新書向きにわかりやすく書いているのになぜか頭に入りにくい。半端に一人称ストーリー仕掛けにしてるからだろうか。



石油がわかれば世界が読める

石油がわかれば世界が読める (朝日新書)

石油がわかれば世界が読める (朝日新書)

石油・・・現代でも最もよく使われるエネルギー源であり、プラスチックからシャンプーまで日常のどこにでもあらわれる製品の原料であり、太平洋戦争開戦の直接の原因でもある最重要戦略物資。

その石油について社団法人石油学会がまとめたのが本書。もっとも利用されているエネルギーである石油についてさまざまな面からわかりやすく描かれているので関連業界やエネルギーに興味がある人は読んでみるといいと思う。


あまり知らなかった話をいくつか紹介してみる。
まず、サーマルリサイクルとマテリアルリサイクルの話。ペットボトルからペットボトルをつくると石油からペットボトルをつくるのの3倍エネルギーがかかるが、質量あたりの発熱量は石油もペットボトルもかわらないからサーマルリサイクルに使った方がよいのではということ。
また、ペットボトルのリサイクルでは、回収された容器は国外に売られることが多い、それによってリサイクル設備の稼働率悪化にもつながっているけれど、海外では詰め綿などの低品質用途につかわれているため、ふたたびペットボトルにするためにエネルギーをかけるよりは環境面に貢献できているのではという話があった。
ただ、ドイツや昔の一升瓶のようにリユースにつなげたほうがよいだろう、とも。


ここしばらく流行のバイオマスについて、食糧と競合することによる安定供給の面から、食糧と競合しないセルロースなどからのバイオマス技術の開発が待たれるとしている。また、本当に環境に優しいかどうかは、生産までのCO2排出や移動効率性などもあり石油と比べて本当に優位かは条件を精査しないといけないと思う。代替エネルギー化石燃料を代替できるものはまだ存在しない。

日本は中東産の石油に90%ほど依存しているけれど、これは中東の不純物や硫黄化合物が多く相対的に安いものを仕入れて、国内のそれに対応した精製設備で処理するからで経済合理性はあるがリスクがあるそうだ。
そして遅れてやってきた化石燃料である天然ガスLNGにしてもパイプラインにしても巨大でサプライチェーンの構築には大がかりなプロジェクトファイナンスが必要になる。

ほかの化石燃料も検討されているけれど石油ほど安くて取り扱いの便利なエネルギーはほかに存在しない。オイルサンド、オリノコタール、メタンハイドレートなどもまだまだ採掘コストが高くて、本当に石油が枯渇しないと利用されない・研究費が投じられないのではとも思う。


あと、おもしろちのは石油を通じてみた産業史。
19世紀末にロックフェラーが興してリベートや価格決定などに影響力を行使するにいたった石油産業の垂直統合帝国企業のスタンダードオイル、それが米国で初めて独占禁止法の処罰対象になって33の企業に解体されて、石油産業の7人の魔女、セブンシスターズの時代になったりしていた話や彼女らがどうカルテルを形成し大戦中に莫大な利益をあげ続け、そして産油国が形成したOPECによる抵抗と地位の逆転。ロシアとウクライナの政治的駆け引きも含めて、ここらへんの、ただの需要と供給から決まらない価格のメカニズムは興味ある。今後、どうなっていくんでしょうね。


ほか、石油に限らないけれどこれらを原料とした化学工学では副生物や効率の問題だけでなく、インドで2万人前後が死んだというボパール化学工場事故のような危険性もとりあげられていて、難しい分野なんだといまさら感じる。プラントエンジニア、偉い。
メキシコ湾のBPの流出事故なんかはどうなっているんだろう。


今はかなりの原油安になっているけれど、これも中東の産油国が新エネルギーの開発をつぶすためのダンピングだという話も考えられるなー、と思う。



総括せよ!さらば革命敵世代

総括せよ! さらば革命的世代 40年前、キャンパスで何があったか

総括せよ! さらば革命的世代 40年前、キャンパスで何があったか

産経新聞取材班による全共闘世代の現在を取材した話。
体系だってはいないけれど、各セクトのリーダー層から一般層までにインタビューしていて学生革命家のその後はなかなかおもしろい。
かつて革命を目指してゲバ棒を振るっていた全共闘世代の多くがいまの格差社会の問題には特に声をあげていないことに揶揄的。自分も同感です。

なんで彼らは革命を目指したのか。日大のように大学の腐敗を糾すためというのは納得できるし共感する、安保闘争は共感はしないけれど理解はできる。けれど、どこで、どうして世界革命を目指すようになったのか。ロシア革命キューバ革命を夢見ていたのだろうか。たぶん、多くは熱狂していただけだと思う。理想に燃えて、より過激な方向に進んだだけ。組織なき議論は誰でも自由に議論できるという魅力はあるけれど、無責任なまま妥協が排除されて元気のよい強硬な意見に支配されがちになる。
その結果として内ゲバで100人超の死者を出し、学生が労働者を啓蒙するという自信過剰が発生し、大衆の支持を失っていたのだと思う。

ただ、これらの諸問題は今も続いている。
早稲田は最近になってようやく学内から革マル派を追放したけれど、いまもすぐ近くに拠点があるらしいし、いまの反原発デモでも大衆の危機感を利用して扇動・オルグしているセクトがあると聞く。これらに関わることがあるなら本書を読んでおくといいと思う。

60年代から70年代前半までなにがあったかを簡単に体系だって知るには新書「全学連全共闘」がおすすめ。



戦術と指揮

戦術と指揮―命令の与え方・集団の動かし方 (PHP文庫)

戦術と指揮―命令の与え方・集団の動かし方 (PHP文庫)

期待せずに買ったけれどなかなか頭の体操になるしおもしろい。



謀略の昭和裏面史

謀略の昭和裏面史 (宝島社文庫)

謀略の昭和裏面史 (宝島社文庫)

また陰謀モノかよ、と思ったけれどわりときちんとした本だった。未確認情報を未確認と明言し、事実と推測をわけているのが好感。

各事件についても短い項目ながら幅広く紹介していて事典的でもある。
まず戦前では張作霖爆殺などの満州絡みの事件から各クーデター、ゾルゲ事件から特務機関の暗躍まで取り上げ、戦後にはGHQ内の日本人やジャパンロビーにはじまり東京裁判から帝銀事件、下山・三鷹松川事件、ラストボロフ事件や三無事件あたりの未解決事件。そして三島由紀夫の自決やよど号ハイジャック、金大中拉致事件の裏側に焦点を当て、ロッキード事件や各疑獄と関連するフィクサーや事件を紹介している。

陰謀史観にありがちな巨大な仕組みというのはほとんどなくて、誇大妄想が殺人に繋がったりただ自分や組織の利益のためにやりすぎたようなのが多いかな。

そんな中でもやっぱり満州関連は眼を引く。

「平成経済事件の怪物たち」あたりに続くかな。



快感回路

快感回路---なぜ気持ちいいのか なぜやめられないのか (河出文庫)

快感回路---なぜ気持ちいいのか なぜやめられないのか (河出文庫)

麻薬や酒、セックスやギャンブルに依存してしまう際、体内でいったいなにが起こっているかを科学的な知見をもとに概説している。悪徳美徳も依存する。快感が人を導いているのはさもありなんだけれど、化学的メカニズムとその実験に項数を割きすぎている感ありでポピュラーサイエンス的なものを期待していると残念かも。



会社法入門

会社法入門 (岩波新書)

会社法入門 (岩波新書)

2006年に施行された会社法についての概要。
会社にまつわる機関や資金調達あたりについて。株主訴訟の判断や運用について興味深かったけれど、解釈・理論についての話がメインでこの分野の教養が無いのもあって薄い新書のくせにけっこう苦労した。(3分の1くらいはざっくり)
会社といってもそこにいる労働者の扱いは驚くほど記述されていない。そういうことは労働法に書かれているとのこと。


デフレ化するセックス

デフレ化するセックス (宝島社新書)

デフレ化するセックス (宝島社新書)

最悪な感じだった。セックスで稼ぐ仕事も競争率が高くなり、稼いでいるのは容姿だけでなく教養のある若い女性ばかりに限られているのだとか。正職につけないなかでも、そういうところでまともに稼げる女性は恵まれていて、そうでない女性は「最貧困女子」になっているのだろーか。

同著者だと「顔のない女たち2」がもっと最悪な気分になったの思い出して最悪な気分になった。



卒業式まで死にません 女子高生南条あやの日記

1999年に自死した高校生の日記本。
中学生のころからリストカットを繰り返して向精神薬を飲んでいて俗に言う「メンヘラ」なのだと思う。
本書はHPや雑誌に掲載した文章やメールの文面を集めたものだけれど、ネットでいわれるメンヘラが持つ強烈な自己愛はあまり感じず、過度といってもいい明るい振る舞いと、読者への献身のような気遣い、ふと見せる頼るもののない不安さが感じられた。生々しくみずみずしい言葉遣いに危うさを覚える。あとAmazonのレビューがなかなか興味深いことになっていて闇。

やってしまいました自傷行為。鞄のサイドポケットかに入っていた使い捨てメスで、ブスブスブスブス。手首の肉を刺してえぐって、ブチンと肉を切り裂きながらメスを抜きます。

同じく若くして自死した高野悦子二十歳の原点の内省的な文章と、印象は全然違うんだけれど人への気遣いになにか通じるものがあるように思える。
あと、巻末に用語集がついているんだけれどうち21項目のうち20はずらずらずらと向精神薬の商品名が説明されているのに最後のひとつのテレホーダイだけ浮きすぎである。



マルクスだったらこう考える

マルクスだったらこう考える (光文社新書)

マルクスだったらこう考える (光文社新書)

ちょっと読んでみて資本主義を目の敵にしすぎだろと感じた。憎みすぎていて、既存の共産党労働組合も貶しているくらい。誘導的だったり賢しぶるレトリックが目に付くけれど、たまにおもしろい発想があった。

自国内の多国籍企業を保護するためには自国の労働者や農民を保護するわけにはいかなくなる。
家族も同じ。家族は資本へ労働者を提供する場。だけれど、世帯主の賃金がグローバリゼーションによってさがれば、教育に関する費用が家族にゆだねられている現状では、子供たちを早々に働きに出すしかなくなる。と。

生産力至上主義を背景にした合理化の嵐が労働者を巻き込もうとしている今、それが本来の人間のあり方を否定するものであることを認識する必要があります。
P63

こんな文章が「人間のあり方」の説明もなしに使われる。扇情的・誘導的といってもいい

ソ連は党が資本家である国家独占資本主義だった。これはマルクスが予想した共産主義ではなかった、これは当時の資本主義がまだ未熟だったなかで革命を起こしてしまったからだとか。

グローバリゼーションは共産主義への移行の始まり。世界のすべてが資本主義になったということは、マルクスが前提にした資本主義社会における二つの階級への分離がはじめて起こる時代は来たということ。

ロシア革命は時期尚早だったのは資本主義がまだ完成されていなかったからという。

国内での搾取こそマルクス主義が浸透する背景なのですが、国外での搾取が強くなると、国内のマルクス主義は衰退するという皮肉な現象を伴います。

本当かよ、という気もするけれど、こういった無根拠だけれど鋭いようにみえる断言は魅力的に映る


資本主義は外部からの搾取でなりたつ。欧米は後進国を外部として、ソ連は、国内のプロレタリアートや衛星国家を外部としてなりたっていた、としている。欧米はどうだろうか。

資本主義を嫌いすぎて、批判しているんだけれどそれと対抗するなにかの欠点や実現性についてはなにも言及しない。うーん。



ハイコンセプト

ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代

ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代

大前研一訳。なにか行動の指針となるような魅力的なコンセプトをつくるためのヒントになるかなと思ってタイトル・訳者買いしてみたけれど中身は自己啓発な感じだった。

簡単に概要だけメモしておく。

  • 状況はじり貧
    • 成熟した資本主義社会において賃金の安いアジアの勃興やオートメーション化で先進国のビジネスマンの地位は脅かされている。
  • 対策は右脳!
    • 機能ではなくデザイン
    • 議論より物語
    • 個別よりも調和
    • 論理ではなく共感
    • まじめだけでなく遊び心
    • モノよりも生きがい

そう、右脳を押しているんです。
自分は右脳思考とか左脳思考とかは懐疑的、というかどっちで考えてようが、右脳か左脳か一般人には計測できないので関係ないと思っている。文脈をとらえるのに右脳が働くからといって右脳を意識する必要はないし、文脈をとらえる力を鍛えるのにも右脳を意識する必要はない。というより意識してどうなるというのだ。

ほかの項目は、いまでこそあたりまえのようになっているけれど、もしかしたらこの本の出た2005年には一般的ではなかったのだろうか。
ポストモダンというかポスト還元主義・ポスト機械主義な自己啓発という感じだろうか。


デザインを学ぶためのデザイン誌や美術館を紹介しているのがけっこう参考になった。
美術館としてはこんなのが挙げられている。

  • クーパー・ヒューイット国立デザイン・ミュージアム(ニューヨーク)
  • デザイン・エクスチェンジ(トロント
  • デザイン・ミュージアム(ロンドン)
  • イームズ・ハウス(ロサンゼルス)
  • ハーバード・ルバリン・デザイン・タイポグラフィ研究所(ニューヨーク)
  • ニューヨーク近代美術館の建築デザイン部門(ニューヨーク)
  • ナショナル・ビルディング・ミュージアム(ワシントン)
  • ビクトリア&アルバート美術館(ロンドン)
  • ヴィトラ・デザイン・ミュージアム(ドイツ、ヴァイル・アム・ライン)
  • ウィル・アイズナー広告デザイン・ミュージアム(ウィスコンシン州ミルウォーキー

日本にデザイン系のがないか調べてみたけれどなさそう。
大前研一が都知事選に出馬した時に、東京都が現代美術館建設に数百億かけようとしていたことを批判していたけれど、せめてデザイン系の美術館つくればよかったのになーとは思う。いい展示があったら教えてください。


史上最大の発明アルゴリズム

史上最大の発明アルゴリズム: 現代社会を造りあげた根本原理(ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ) (ハヤカワ文庫 NF 381)

史上最大の発明アルゴリズム: 現代社会を造りあげた根本原理(ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ) (ハヤカワ文庫 NF 381)

衒学的で文学的な表現だらけで肝心なところも曖昧でつらい。あと訳者あとがきで原著者を婉曲的に非難してるのと小飼弾氏が裏表紙しか読んでないだろって内容の解説をつけてるのもつらすぎた。もうちょっとわかりやすいアルゴリズム発見者列伝はないのでしょうか。



文鮮明自叙伝 平和を愛する世界人として

けっこうおもしろかった。


anan No.1925

男のセクシー特集。すずともさんに買ってもらってしまった。

セクシーは漏れるもの。その人の心の余裕が色気につながっている。

らしい。



雪山登山

雪山登山 (ヤマケイ・テクニカルブック―登山技術全書)

雪山登山 (ヤマケイ・テクニカルブック―登山技術全書)

滑落停止法とか雪崩対策など興味深いことを学べた。ホワイトアウトの中でのロープワンダリングとか、ほんと死を覚悟すると思う。冬山、おそろしいところだ。

最近行った冬山では登山的なことはしなかったので肉体的には安全でしたが精神的には危険でした。



赤いヤッケの男

山岳ホラー短編集。なかなかいい感じでこれにインスパイアされて上の記事を書いたりした。
よく考えたらひさびさの小説かも。それがホラーか・・・



田舎力

田舎力―ヒト・夢・カネが集まる5つの法則 (生活人新書)

田舎力―ヒト・夢・カネが集まる5つの法則 (生活人新書)

離島農村漁村のおもしろ取り組み事例集。
エコツーリズムや有機栽培系で活気が出た事例が目立つけれど、これができるのは限られてるんだよなあ。農業だけで継続的に食っていくのは難しい。



林健二の軽快詰将棋

小林健二の軽快詰将棋 (将棋パワーアップシリーズ)

小林健二の軽快詰将棋 (将棋パワーアップシリーズ)

3手詰めからはじまり9手詰めまで。トイレに置いて一日一題〜三題くらい解いてみたけれど、まあまあおもしろかったと思う。やっぱ強くなるには訓練するしかない。


映画

このごろ、近所に住んでいる友人が映画を借りてきてはうちで観るという文化があってついつい観ている。

ウルフオブウォールストリート

ウルフ・オブ・ウォールストリート [Blu-ray]

ウルフ・オブ・ウォールストリート [Blu-ray]

間違いなく2014年最高の映画。



THE NEXT GENERATION パトレイバー 1

自分「へー、パトレイバーって実写化していたんだ。」
・・・
自分「・・・なにこの設定・・・?なにこの歌・・・?」
友人「監督は押井守なんだよね」
自分「あっ・・・(察し)」


ダイバージェンス

近未来、戦争後の荒廃した社会を安全に運営するために素質によって派閥(fraction)に分けられる社会。
そこでどこにも含まれていない異端者(ダイバージェンス)だと指摘された主人公はどう振る舞っていくか・・・。小道具も空気感もけっこうよくできていた。せいぜい2時間程度の映画で主人公の悩みながらの成長と意志の形成がうまく描かれていたのよい。終わりも社会を変えるといった青い方向にならなく、今後の想像が広がる。
地味でシンプルだけれどよい映画だった(小並感)



グランドイリュージョン

マジシャン VS FBIというスタイリッシュ映画。
マジックな演出と殺陣はほんとかっこいい。ハリウッド・ドンパチ・アクション映画とは一線を画している。
ただ、ストーリーはちょっといただけない部分もある。ヘレンが空気だし最後のとってつけたようなどんでん返しがつらい。ただフランス人刑事はかわいいしマジック演出はクールだしで観て楽しめるとは思う。


たまこラブストーリー

同居人が買ってた。甘酸っぱすぎて死にそう。


幸福の黄色いハンカチ

テレビでやっているのを見た。
人も会話も舞台も時代感あってよい。公害まっさかりとは思えない。ストーリーはシンプルだけれどそれがいいのかな。省略の仕方もうまくて観ていて気持ちいい。
山田洋次監督の、ほかにも観てみようかな。



ほんとにあった!呪いのビデオ 59

まあまあ。前回からの続き物はけっこうよかったけれど、増本くんの使えなさが・・・


ほんとにあった!呪いのビデオ 60

レビューをみると評価が高い。けっこうドキッとするの多くてよかった。
史上もっとも使えない増本くんはどうなってしまうんや・・・




コミックス

子供はわかってあげない

上下巻で完結する不思議ものがたり。なんだけれど、ゆるい絵のわりに台詞回しのテンポがよくて探偵モノでそこそこミステリしていてキャラが安易な類型ではなく立っていてよい。好き。甘酸っぱさもある。

同居人が上巻を渡してくれて読んだ翌日に下巻を買わざるを得ないような出来。のせられていたと思う。



マスターキートン Re:マスター

うおおお!2014年になってマスターキートンの新作が読めるなんて!!しかもふつうにおもしろい!!
雑学のきっかけの多くは美味しんぼマスターキートンから学んだのだ。東欧の血みどろ近代史はもっとおさえておきたい。

そういえば実家に残してきたマスターキートン全巻(キートン動物記含む)がいつのまにかなくなってたのけっこう悲しい。




編集後記

このだらだらと長い書評を読んでくれてありがとうございます。ここまで読めば分かるけれど、私は文学的作品とか本格的な知性の詰まった専門書は読んでいない。いや、じつはこっそり読んではいるけれど全然読み進められていなく、ここで挙げられているような軽いエンタメ作品ばかり消費している。
それは悪いことではないけれどそれに時間かけ過ぎな感はあるので来年はもっとちゃんと本を読んで軽薄な知識だけでなく、なにか価値あるもの(それがなにかはいまだにわからない)を身につけたいものだ。

繰り返しになるけれどビブリオバトル友だち募集中です。

参考記事

山小屋をさまようもの

山小屋で不思議なものを見たんです。


神保町のカレー屋でひさびさにあった後輩のKとひとしきり話をしたあと、彼女はぽつりぽつりとしゃべり出した。

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あれはクリスマス前の寒い週末のことです。
私は友人に誘われて中部地方のD岳中腹にある山小屋に泊まっていました。

—登山なんてしてたっけ?
いえ、私はあまり登山をちゃんとしているわけではありません。
その山小屋も幾分か前に近くにスキー場ができたことから車で降りて数十分で辿り着けるので、私のような登山経験の浅いものでも冬山の体験が安全にできるんです。

・・・そのときは前の週に12月には珍しいドカ雪が降って、このまま行っていいものか不安もすこしはありましたが、当日は気温が上がる予報であったことから問題はないと考えていました。

前日に仕事を無理矢理切り上げて、みんなでレンタカーで向かったのですが、途中のサービスエリアでは雪がしっかり積もって、東京とは異質な寒さで、防寒具が十分かすこし心細く感じたのを覚えています。


除雪された道を通ってたどりついた麓の宿で前泊しましたが、このとき一番不安だったのは泊まった宿をGoogleで調べると、「心霊」という言葉がサジェストされたことです。

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ただ、高度経済成長期感のある宿は落ち着いていてお湯も最高でゆっくりきてもいいかなとは思えました。


翌朝、山へとりかかりましたが、はじめは細い雪だったのが、山にとりかかるころには雨に変わり、気温の高さを恨むこととなりました。

スキー場のわきから山荘までの道に入ると、林は一面の雪にこんもりと覆われており雪が降ってから誰も入っていないことがわかります。一歩踏み出すとずぶりと2,30cmくらい嵌まり歩くのにかなり苦労しました。私は前を歩く友人の後を追うだけだったのでまだ楽でしたが、もし先頭なら、一面の林と雪面ですこし足下に気を遣ったすきに方向を失っていたかもしれません。すぐにびしょ濡れになった手袋と、雨具を伝う冷たい水、足下の悪さと荷物の重さはなかなかつらいものがあります。冷たい風から逃げらず、雪庇を踏み抜く危険がある稜線と比べるとまだましだとは思いましたが、雪林の中の行程は先の見えない不安さがありました。

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雪の中というと静かなイメージがあるかもしれませんが、雨の音と木から不定期に雪が落ちる音はどきりとするものがあります。障害物が多く、なにか潜んでいるんじゃないかという感覚は私たちしか見えないからこそかもしれません。


そんな状態だったので時間をかけて歩いて山小屋の赤い壁が見えた時は嬉しかったです。


ただ、玄関は重い雪に閉ざされており、入るためには2階に設置された扉の雪を払う苦労がありました。ようやく人心地ついたのは暖炉に火を起こしてからです。
濡れた手袋と靴下を乾かして、ようやくまわりを見ると、整然と薪が積まれ、道具が並べられており工夫と整理が行き届いていることがわかります。外の雪と寒さを思うと安心がありましたが、電気がないため、ヘッドライトに頼らないと自分の荷物も整理できないほど暗く、思ったより広い空間にも不気味さを感じてもいました。1人では絶対にいたくない場所です。

ご飯をつくって食べて、暖炉に集まって談笑していると山小屋のよさがわかってきました。灯油ランプの頼りないけれど暖かい明かりと、暖炉の上においたやかんのならすコポコポという音は都会の喧噪では気付けないものかもな、と思えます。


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ホットカルピスがこれほど美味しいとは知りませんでした。


それでも、屋根から雪がおちるどさりという音や、暖炉で不意に薪がはじけるパチリという音は、私たちだけしかいないはずの山小屋に誰かいるんじゃないかという恐怖をかきたてましたが気付かないふりをしていました。



・・・ごおおおお・・・

そんなことを考えていると急に強い風が吹いてきました。そして、あれが現れたのです。

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おわかりいただけたでしょうか。
鎌と槌のマークはソ連赤軍に間違いありません。共産主義の幽霊がいまだに山中をさまよっている、とでもいうのでしょうか。

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いつのまにか、赤旗の幻覚まで見えてきました。

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さらに恐ろしいことに、どこからか現れたダッチワイフを抱き寄せてご満悦の赤軍兵士の様子です。



その後、持ち込んだPCで「ほんとにあった!呪いのビデオ」の59巻と60巻を一緒に見て寝袋にくるまって寝てとなんやかんやありました。


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これは翌朝、山小屋の雪下ろしをしている中で現れた兵士がダッチワイフを掲げて飛び降りる様子です。


ほんと、山小屋はとんでもないところでした。
そういって外を眺め続けていた彼女は、山小屋をなつかしそうにしているように見えました。



京都旅行、VIPな朝の過ごし方

そうだ、京都いこう!ということで京都までふらっと行ってしまう人は多いと思います。

関西の方ならお京阪や阪急、自家用車という方もいるかもしれませんが関東からだと新幹線を使うのがメジャーです。
東京駅から京都駅まで2時間10分で行けてしまうのでたいへん便利。ただ、のぞみの場合13710円かかってしまいます。ブルジョアの手段と言わざるをえません。さらに夜は21時20分終電で、朝は6時始発なので時間をあわせるのがナカナカめんどうくさい。朝早くから京都で活動するために前泊する必要があるし、朝一の新幹線に乗るために早起きするのもだるいです。


そこで、これを解決する最近の京都旅行朝の過ごし方の知見を共有します。

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夜行バス

夜行バスを使えば23時半に東京駅発、朝6時半に京都着と睡眠時間をつかって疑似テレポーテーションが可能です。前日は夜まで東京で活動して、翌朝も素早くシームレスに行動できてしまいます。

ただ、夜行バスというと狭いバスに押し込められてうまく眠ることも出来ずに体力を消耗するというイメージがあるかもしれません。
しかし、最近(ここ10年くらい?)は、3列シートも普及し、カーテンやリクライニングもなかなかよくできてきるのでかなり快適に過ごせます。4列シート時代のように、隣に存在感のある方が来て足を伸ばせずつらい思いをすることもありません。

ちなみに自分は空気で膨らませるマクラがあると快適度が全然違うと思っています。気になる人はアイマスクと耳栓もあるとよいでしょう。


値段も平日だと4500円程度、金曜の夜は8000円くらいで乗れてしまい実際安い。
需要にあわせて値段を動的に変更するの混雑をコントロールするなかなかいい仕組みです。JRでは難しそうですけれど。

私は東京駅鍛冶橋駐車場発のものをよくつかうので時刻表を乗せておきます。ちなみにここは東京駅とついてはいますがメトロ銀座駅から歩いていくのも便利です。

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VIPな夜行バスのラウンジ

夜行バスの問題として、到着した後に顔を洗ったり、着替えたりする場所がないことが挙げられます。特に女性だと化粧なども死活問題だと聞いています。

それを解決する画期的サービス、VIPラウンジを紹介します。

パウダールーム完備の新しいバスの待合室 VIPラウンジ|高速バス・夜行バス・深夜バスの予約はVIPライナー


2chっぽさを連想せざるを得ないネーミングですがふつうに便利。
洗面所から充電、雑誌やなんやかやがあってゆっくりすることができて学生時代に使いたかった。
また、京都だけでなく東京駅、新宿駅、大阪駅、なんば駅名古屋駅のバス発着場に近い位置にあり、乗車前や降車後は無料で過ごすことができます。一般の利用でも300円/hで使えるので変に時間が空いたときはカフェとかよりもいい気がします。これを使うために自分はVIPライナーをよく利用しています。


朝風呂

さて、ラウンジを使うのは、もうひとつ意味があるのです。それは、7時オープンの京都タワー温泉を使うため。

実際には7時は高速バスでついたばかりの連中が並んでいて混んでいるので上記ラウンジですこしゆっくりしてから行くのがよいと思われます(徒歩8分くらい)。


ここは、なかなかいい銭湯で、基本料金を払えばタオル1枚貸してくれてドライヤーやシャンプー類も使えます。湯船も広々でまあまあ気持ちいい。ロッカーも広くて、38リットルのザックも入ります。スーツケースなどは受付で預かってくれますし、スタッフの気遣いもしっかりしている印象もある。待合室でゆったりできるのもよいです。地下2階でソフトバンクの電波は入りませんがdocomoは入った気がします。

基本料金は750円ですが以下のページをスマフォで表示すれば700円で使えます。
【50円割引】タワー大浴場 ~YUU~(京都)の店舗・クーポン情報 | H.I.S.クーポン


ちなみに近くには朝6時からあいているサウナ・仮眠施設もあります。自分は行ったことはないですが、友人のデコ氏によると、殺伐とした雰囲気で社畜の巣窟という雰囲気らしいです。
ベルデクラブ



朝食

お金に余裕があれば駅前地下街ポルタのイノダコーヒが幸せです。なければポルタのロッテリ屋でもサブウェイでもいいんじゃないでしょうか。
朝8時から開いています。サブウェイは7時半からあいています。それとポルタのくまざわ書店も朝8時からあいていて偉い。話が分かる。


すこし歩けば醤油系ラーメンの第一旭もあります。スタンダード醤油ラーメンで朝でもするっといけるでしょう。


探せば和食とか洋食のモーニングを出すシャレオツなお店もありそうですので興味があれば探してみてください。

観光

あまり知りません。


関連書籍

京都と闇社会~古都を支配する隠微な黒幕たち (宝島SUGOI文庫)

京都と闇社会~古都を支配する隠微な黒幕たち (宝島SUGOI文庫)

  • 作者: 一ノ宮美成,湯浅俊彦,グループ・K21
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2012/10/04
  • メディア: 文庫
  • 購入: 1人 クリック: 4回
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本書では京都に集まる富と権力を巡るたいへん興味深いお話をいくつか紹介している。
暴力団がノンバンクから同和事業、警察まで絡んでいたり、10数年前に市内で銃弾が飛び交う抗争があったことも知らなかったし、家元ビジネスや山段芳春が支配した某信用金庫、各メディア、さらには西本願寺の内紛など黒いのばかり。

特に京都駅前の地上げを巡る崇仁協議会と武富士暴力団の絡みや謎の弁護士がいてほんとえげつない。まっとうなビジネスしていてこんな連中に絡まれたらつらいなー、と思う。

明るい選挙 メカニズム編


GO!GO!選挙 明るい選挙 カラオケ字幕動画 - YouTube



衆院選が来週に迫っています。みなさま行きますか??
この選挙というものは支持する候補者か政党を書くだけの一見単純な仕組みに見えます。けれど、すこし調べるだけでもその仕組みはけっこう複雑です。われわれ国民がもつ参政権をうまく行使するためには選挙のことをちゃんと知っておく必要があるし、なにより、選挙の仕組みはゲームっぽくてすごくおもしろいので調べておもしろかったことを紹介してみます。


基本はこの本と、Wikipediaが情報源です。

日本の選挙―何を変えれば政治が変わるのか (中公新書)

日本の選挙―何を変えれば政治が変わるのか (中公新書)

日本の選挙の概略から各理論、世界との比較、またコラムとしてこれまでの日本の各総選挙を紹介していておもしろい。


(注意)この記事で書いていないこと

  • 中学校の社会の教科書に書いてあること
  • 法学部生が知らないこと(もし間違いがあればコメントください)
  • 今回(2014/12)の衆議院選の展望
  • 自分の政治信条
公正ってなんだよ(哲学)

小選挙区死票*1が多いから公平ではない。比例代表制にすれば(詳細なルールはあるけれど)公正だ!というのは、有権者数に比して議員を選択するということで公平でわかりやすい話ではあります。


ただ、比例代表制では小党も議席を得ることになり、小党乱立から連立政権が不可避となる懸念があります。小党がキャスティングボートを持つことから、妥協的な政治運営から政治責任も不可避になってしまいがち。


少数派に配慮して決定を下す時期が遅れたり、決定をくだせなければそれが公正か、という議論もあり簡単には判断できない問題です。(本当は議論と妥協のプロセスを円滑にできるとよいのだけれど今の人間では無理そう・・・)


ただ、小異をすてて重要な利益のために結合することが政治の根本でもありますよね。この結合を、議会のレベルで妥協がなすか、小選挙区などの多数代表制では有権者レベルで妥協がなすかの違いでしかないという指摘もあり公正がなにかは単純には決まらないのではないと思われます。



また、ここですこし比例代表のオプションについて簡単に触れます。
完全な比例代表制では小党が乱立して議会の運営に支障をきたすことから、足切りラインとして阻止条項を設けている国も多いそうです。たとえば5%ルール、こうして極左勢力と極右勢力を排除するのだとか。これは戦前のドイツでは少数の議席からナチスが台頭したきっかけをつくった選挙制の反省でもあるそうです。

ひとくちに比例代表制といっても議席配分方法は世界で運用されているだけで300以上もあるといわれています。大きく次の2つに分類できます。

  • 最大剰余法
  • ドント式
    • 各党の得票数を1,2,3と整数で割っていき、その商の大きい順に定数に達するまで議席を配分する

また、選挙区の規模、全国区かブロック制かでも影響が出ることが知られています、ブロック制ほど有力な党に有利になります。さらに比例代表制の大きな特徴として、非拘束名簿か拘束名簿かで大きな違いがあります。細かいパターンはほかにもありますが、非拘束にすると政党本位ではなく人本位で選べるメリット(?)はあるけれど全国にファンのいるタレントや芸能人、全国的な利権団体がバックについている候補者が強くなるという欠点もあり難しいところです。


あいつら二大政党制

日本もアメリカのような二大政党制にしようぜ!という動きがあります。
これは2つの政党が実力伯仲しているべきという言葉の印象があって自民が大勝した時にはもっと二大政党制にしないといけない、と言われたりもしています。

けれど、もし2つの大政党が議会で近い勢力をふるっていると議会は紛糾して運行はストップするでしょう。
二大政党制を考える上ではまず、政権交代制について考える必要があります。カール・ポパーの「開かれた社会とその敵」によれば、民主主義の基準とは「流血を見ることなく、投票を通じて政権を交代させる可能性」とのこと。
そして、小選挙区というのは、すこしの支持率の差で議席に大きな影響を与えるもので政権交代を容易にする仕組みなのです。
国民の投票とは、代表を選ぶというよりもむしろ、現在の政権を転落させる可能性をもつという機能が強い。政権から落とされることを恐れる政府は、国民目線となるでしょう。
もうひとつポパーを引用します。

追い出される可能性のある政権は、人々を満足させるべく行動(政治運営)する、強いインセンティブを有している。追い出される可能性がないとわかると、このインセンティブは働かなくなる。


もちろん短期的な目先の利益を誘導するようになり、長期的な展望を考えることがなくなるという指摘もあるけれど、政権交代の可能性がなかったら長期的なことを考えるかというとそうでもないし、哲人政治は絵に描いた餅のうえに独裁にもつながるのでそら無難なほう選ぶよねという感じではあります。



ガラパゴス選挙

じつは日本は「選挙制度のデパート」と言われるくらい種類が多く、かつ理念に欠けています。いまも衆院選では並立制をやっているけれど、なんでそれをしているのか理念がよくわからない。いや、かつての中選挙区(3人とか5人区での単一投票制)なんてもっと意味がわからない。
世界的に見て、3人区ならひとり3人まで書ける連記制が一般的です。それを3人区でも1人しか書けないから与党が何人も出して争い出すしお金を使わざるを得なくなって派閥の温床になって腐敗する。
日本は長いあいだ自民党の単一政権だったけれど、55年体制ではひとつの政党というよりも複数の派閥の集合体といった常態で、これが中選挙区が原因のひとつと言われています。


参議院、こいつ強いぞ・・・

衆議院の優越というのは中学生の教科書にも載っています。しかし、ふつうに一般の二院制の国に比べて参議院の権力は実際強い。衆院の優越は、首相指名や予算、条約の承認くらい。法議案の議決は、参議院が拒否しても衆議院が3分の2の賛成で再可決できるけれどそんなの通常ではできないので実質的に参議院が拒否すれば立法機能は正常には動かなくなります。「ねじれ国会」というやつです。


参議院衆議院に対するチェック機能という名目もあるからと、別の選挙体系にしようという声もあるけれど、全く別にすると衆議院とのねじれが常態化することにもなります。そもそも参議院の理念が曖昧だけれど、全国比例オンリーなど選挙方法を変えてチェック機能とするなら衆院の再可決を過半数程度にするなど必要ではないか、というの考えもあります。もちろんこれには憲法改正が必要になるけれど。

政治システムの中での役割と権力を検討せずに選挙制を変えようとするのは表層しか見ていないように思えます。


あれは装甲ではなく党議拘束

党議拘束とか意味わかんない。国会で議員の良心に従って議決できなくて党という私的な組織がものごとを決めるっておかしいでしょ、と思っていました。けれど、それは単純すぎる見方でした。アメリカでは党議拘束はなくて法案ごとに党を越えて賛成か反対かで分かれることになるけれど、それは大統領制で大統領の権力が強いから。また、デメリットとしてロビー活動が活発になることが挙げられます。議院内閣制のもとでは内閣の基盤は議会にあるため、政権を運営するためには党議拘束が必要になるのです。


まとめ

ほかの選挙の話題として、地方は大統領制に近く、一方で政府は議院内閣制で統一されていない問題や、議員が議員がどう選ばれるかという選挙のルールを決める自己言及的な話もあったりまだまだ選挙は深みがあるんだけれど、ひとまずわかりやすい話題だけ軽く触れてみましたがいかがでしょうか。


選挙っていうのは民主主義そのものでもあります。みんな大好きオルテガさんだってこう言っていますしもうちょっと気を遣ってもいいかも。
>>民主主義は一つのとるに足りない技術的細目にその健全さを左右される。・・・選挙制度が適切なら何もかもうまくいく。そうでなければ何もかもダメになる。<<


ただ、選挙というのはすこしでも興味がある人なら自分の考えがあって、専門家の知見を軽視して思いつきを語ってしまう問題もあると思うのです。自分もそこそこ知っているつもりだったけれど、この本を読んでいろいろ調べてみて自分が何も知らなかったと分かりました。

さらによくないのが、自分みたいな素人だけでなく、ジャーナリストや政治家までもが(意図的か無意識かはさておき)そうしているようにのは問題でしょう。これは選挙のほか、教育とかも同じで専門家の意見やデータを無視して思いつきレベルの思い込みで語ってしまっているように思えます。



あと、選挙というのは仕組み・アルゴリズムとしてけっこうおもしろいことがわかりました。あるルールから多様な戦略や問題が生まれていくさまはけっこう燃えます。意志決定論との絡みの話もあるみたいで調べてみたい。


ひとまず、法学部生の方々には常識かもですが自分がはじめて知った選挙の話を紹介してみました。
衆院選、みんな行きましょう。

*1:落選した候補者の票や、その選挙区で圧倒的に票を集めても1人だけというオークションでいう勝者の呪いみたいなもの

上野公園で押し付けられた統一教会教祖の本を読んだ

3年ほど前に、就活で東下り*1してきたdecobisuくんと上野で会う約束をして、上野公園をふらふらしていたら女性からもらった、というより押しつけられたのが本書「平和を愛する世界人として 文鮮明自叙伝」。行為自体に驚いたからかその人のことはあまり覚えていないのが残念なのだけれど、押入を整理していたらでてきたのでせっかくなので読んでみた。持っているだけで誤解を受けそうなので早く処分したいところでもある。




文鮮明を知らない人も彼が立ちあげた統一教会(正式名称世界基督教統一神霊協会)は知っていると思う。世界的なカルトとして知られ、芸能人も巻き込まれた合同結婚式や、各大学の原理系サークル、霊感商法やマインドコントロール、はては救世主(教祖)とのセックスにより肉体の原罪が清められるとする考え方が有名だ。


また統一教会反共団体としても有名でその縁で日本の右翼の黒幕であり戦後最大のフィクサーとも言われる笹川良一も信者、そこから政財界にも広まっていると聞いていて若干の興味はあった。



内容はどこまで脚色されているかはわからないしお察しなのだけれど、数万人を虜にするカリスマ的な説法(出典なし)にもとづく自信に満ちあふれた文章は教祖志望のひとは読んで損は無いと思う。祖父の代から貧者に施しをする家であったこと、自然を愛していたこと、困難を乗り越え、常に持てるものを貧者のために使ってきたこと、預言/予言を受けたことなど、アラファト議長ゴルバチョフ金日成に会って信頼を勝ち得た話、世界中の漁民、農民と交友した話などなど。グローバル新宗教の教祖はかくあるべしか、という感じ。自己愛性パーソナリティ障害の気がある(これは軽蔑ではなく、よくもわるくも英雄の気質だ)。



とはいえ、太平洋戦争中に早稲田に留学して、特高に拷問を受けたり、朝鮮戦争前に北に渡って布教しては2年間監獄にいれられてソ連流の強制労働をしたりとなかなか苦労をしているし、この時代に多感な時期を過ごしたからこそ見ているものもあるんじゃないかと思う。特に北朝鮮の監獄話はなかなか迫真。大部屋のトイレのそばで寝るから液便をひっかけられるとか。
もちろん教祖だけじゃなくて信者も先の見えない激動の時代だったからこそ引きつけられたとは思う。創価学会立正佼成会もPLも世界救世教も戦後すぐに拡大している。


ほか、当時の韓国から見た日本との関連も興味深い。

こうして生きるか死ぬかの苦労を1年半ほど続けた末に、崔奉春(日本名は西川勝)が日本に教会を創立したのは1959年10月のことでした。その時代、韓国と日本は正式に国交を結んでいないばかりか、圧制政治のつらい記憶ゆえに、誰もが日本との修好に激しく反対していました。そのような恩讐の国日本に、密航させてまで宣教師を送ったのは、日本を救うためであると同時に、大韓民国の未来を開くためでもありました。日本を拒否して関係を断絶するよりも、日本人を教化した後、私たちが主体となって彼らを味方につけなければならないと考えました。何も持たない韓国としては、日本の為政者と通じる道を開いて日本を背景にしなければならず、また何としてもアメリカと連結されてこそ、未来の韓国の生存の道が開かれると見通したのです。

アメリカで布教に利用していたボストンの修練所に日本の赤軍派が侵入してきて、FBIにつかまえられたこともあったようだ。
あとは、北朝鮮に行く前に、相手が啓示を得て結婚し一児をもうけているにもかかわらず、40歳くらいにしれっと啓示を得たといって13歳の少女と結婚していたり。そして21年間に14人子供をつくったあとに、子供の純潔教育マジ大事と説いているのも感慨深い。はじめに結婚した奥さんは結局最後まで出てこなかった。

さて、そういうモラル面はさておき、文鮮明事業家としても知られているらしい。世界への布教にはお金がかかるということで、使い終わった切手の回収から始まり、アメリカにて組織的なマグロ漁と加工工場、レストランまでつくったとか。ここらへんを深掘りした資料があれば読んでみたい。ナショナリズムを宗教に応用し、これをビジネスに応用していくやり方はもしかしたら参考になるかもしれない。


統一教会のことを知っていたから話半分に読めたけれど、もし予備知識がない人がいたら、なんて素晴らしい人なんだろうと感化されかねないとは思う。
けっこうおもしろかったので時間ができたらほかの新宗教の教祖の話も読んでみたい。出口王仁三郎とか。


平和を愛する世界人として―文鮮明自叙伝

平和を愛する世界人として―文鮮明自叙伝

統一協会の素顔―その洗脳の実態と対策

統一協会の素顔―その洗脳の実態と対策



おまけ(再掲)

家に大量にある本を処分しようと考えています。(このための整理がきっかけで本書を発掘しました)
リストにしたので欲しいのあれば1冊100円でゆずります。詳細はGoogle Sheetsをみてみてください。

本ゆずります - Google スプレッドシート

*1:京都の人が東京にくること。決して上京するとは言わない

2014年使ってよかったもの

流行っているらしいので身辺整理を兼ねて便乗。


本や映画はAmazonのレビューがあったりいろんな人が紹介したりしていてよいものを見つけやすい。けれど、日常生活でつかうものはなかなかいいものを見つけられない。そういう普段使うものをわざわざ時間をかけてレビューしてくれるのは、明らかな欠点があってストレスのはけ口にする場合だけ。いいものは当たり前のように使われる。


そんななかでいいものを共有するために使ってよかったものを紹介してみます。みんなもいいものあったらブログ書いてください。


お湯沸かし器

ティファールの湯沸かし器が便利というのは広く知られている。保温式の電気ポットと違って、軽いし毎回その場でお湯を沸かせるというのは省電力。
ただ、中身が見えないという欠点がある。このTESCOM製の湯沸かし器は、ガラス製で中身が洗えて衛生的だし、中身の沸騰の様子が見える。たいへん便利。コーヒーをいれるのにもインスタントスープをいれるのにも最適。

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タッパー

炊きすぎたご飯。あると思います。タッパーかボウルにいれてお冷やにすると思うんだけれど、よくあるタッパーは溝があって洗いにくい。その欠点を克服したのがこちら。写真だとすこしわかりにくいけれど、溝がないので洗いやすい、どっかの100円ショップに入荷してるやつを大量に購入しました。

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ちなみに美味しくお冷やご飯を食べるには、炊いてすぐにタッパーに詰めて蓋をする。そしてある程度冷めるまで室温においてから冷蔵庫にいれるとよい。食べるときは蓋をしめたままレンジで暖めるとしっとりとして美味しい。もちろん炊きたてと違うので、チャーハンなりおじやなりにするのもありです。


タイマー付きプラグ

布団の中で本を読んで寝落ちする経験。みんなあると思います。朝起きると照明付けっぱなしで自己嫌悪。よくあります。それを克服するのがこれ、タイマー付きプラグ。切れるまでのタイマーではなくて24時間でオンオフを選べるので朝つけて寝覚めをよくする効果もあり。

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ちなみにこの照明はIKEAで買った。軽くてそこそこ便利。電球はLED。いま部屋にある家具はこれと敷き布団だけ



その他

生活必需品以外では、Blu-rayプレイヤーはよかった。近くに住んでいるひとがよく映画を借りてうちで観ていくので自然と観れる。ただし時間を奪われるので諸刃の剣。
オーブンレンジはピザとかクッキーがやけてよい。家で作るピザはインスタント食品並みに手軽で楽しい。土鍋とカセットコンロはたいへん捗っている。そのくらいかな。


つかってないもの

逆に手に入れたけれどうまく活用できていないものもあります。ホットプレートもヨーグルトメーカーも燻製機(これはもらいもの)も圧力鍋(これももらいもの)も稼働率低い。なかなかものを選ぶの難しい。読んでない本もたくさんある。



本について

さて、ものの整理と並行して家に大量にある本を処分しようと考えています。リストにしたので欲しいのあれば1冊100円でゆずります。詳細はGoogle Sheetsをみてみてください。

本ゆずります - Google スプレッドシート


じゃっかん恥ずかしい本もあるのは気のせいです。
しかし、本棚を晒すのは裸を晒す以上に自身を露わにするので恥ずかしい行為だと思う。本棚だけで友だちになれそうとか好きになってしまいそうになる場合ある。


ちなみにいまの寝室の様子です。誰か引き取ってください。これのほか、本棚が3つくらいいっぱいになっている。
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