大津宿日記

@daaaaaai の日記です

「プロジェクト・ヘイル・メアリー」はド直球ド迫力の宇宙SFだった

※ 前半に未読者向けに紹介文を書いて、後半に読み終えた方向けにネタバレ感想を書いています。

未読者向け紹介

(お知らせ)2022/7/13までKindleで半額セールをしているので買いましょう。
今年も早川書房1500作品が50%割引の超大型電子書籍セールがきたので、SF・ノンフィクション中心にオススメを紹介する - 基本読書

本書は映画化もされて大ヒットしたハードSF「火星の人」*1のアンディ・ウィアーの第3作。 読んでもらうために権威に頼って紹介すると、ビル・ゲイツの「2021年に読んだなかで大好きな本5冊」にも選ばれている。ゲイツはわかってる。

ビル・ゲイツが選ぶ「2021年に読んだ記憶に残る5冊の本」 - GIGAZINE

第1作の「火星の人」は探査の事故で1人火星の残された主人公が知恵と前向きさで状況に立ち向かっていく、緻密かつ軽快なおもしろさのある傑作。第2作「アルテミス」では移住初期の月面を舞台に親がイスラム教徒の溶接職人の悪ガキ少女が自由気ままに活躍する作品。一部ではあまり評価されていないようだけれど、人口数千人規模で、都市を建造しだした初期の月面で開発のためさまざまな移民がいるという都市建設・文化発生のダイナミズムが伺えたことや第1作から健在のハードの描写もとてもよかったし、主人公である少女の描写がいきいきしていて楽しい作品だった。そして本書「プロジェクト・ヘイル・メアリー」はやや新しい路線で、前作を越えるすさまじさがある。

この類をみないストーリー展開のために、いくつかの舞台装置や設定はご都合主義なところもあるので気になる人もいるだろうけれど、それがあってこそ描かれる物語はすごい。

ここ数年で世界中で注目され続けている中国発の傑作SF「三体」と比べると登場人物の数や関係がシンプルなのでかなり読みやすいとは思う。三体挫折した人はこちらから読みましょう。

と、簡単に紹介してみましたがあらすじや紹介としては冬木糸一氏の記事がまとまっていて詳しいのでこちらを読んでください(自分も冬木さんの記事のアフィリンクで購入しました)。 huyukiitoichi.hatenadiary.jp

以下ネタバレ

もう読み終わった人しか読んでいませんよね?冬木さんが「宇宙SF&宇宙生物学SF」として紹介したのはさすがすぎます。宇宙生物学という言葉に込めたいろいろなものがわかる。もう数年後には、ファーストコンタクト物の傑作として紹介されるだろうけれど、そうなるまえに、ファーストコンタクトものだと思わない状態で読んでほしい。それを知らずに読めたからこその驚きがあった。「まじで」となって手が止まらなくなる。

いくつかの欠点

いや、ちょっと不自然なところはたくさんある。

たとえば

  • ペトロヴァ対策委員会として強力な権限をもつストラットが主人公をひっぱりだすところ。実験設備の用意はだれがどうしたんだとかチームじゃなくて個人なのか、とか(ここらへんは映画っぽさはある。「インディペンデンス・デイ」や「インターステラー」とかも)
  • 主人公がストラットのNo2とみられるようになるところ。絶大な権力をもとにもっと組織だってやれないのか(ここらへんの国際行政の権力の舞台装置としては、三体の「壁面者」はとてもうまく描いていたと思う、その分、登場人物も増えて重くなったけれど)
  • ロッキーが音楽的な和音を話すとはいえ、コミュニケーションや翻訳がうまくできすぎなように思う。単語1000個を獲得するまで端折られすぎでは。単語が人類と対応しすぎでは(しかし、普通に読んでいると気にならないような描き方はさすが)
  • ロッキーが40年以上漂流していたとはいえ、人類とエリディアンがたまたまタウ星系を訪れるタイミングが被って邂逅できたのが奇跡過ぎる
  • 主人公の操船や航路計算とかすごすぎるんだけれどさらっと表現されすぎでは(まあ、計算が続くと読者もうんざりするか・・・)
  • ロッキーのエンジニアリング力や材料、宇宙品質の鎖の用意とか燃料の再充填とかすごすぎでは。無から有をつくりすぎ?(23人の大所帯での移動のためたくさん機材があったという背景はあるにせよ)

と、気になるところはあって各マイナス10点として合計マイナス60点かになったとしても、だからこその強力な物語展開ができてそれによって1億点とかあるので帳消しになっている。キセノタイトや計算力はあるにせよ、地球人と文明レベルは大きく変わらない異星人と人間が協力して危機を乗り越えて文明を救うのはアツすぎる。

「火星の人」のときと比べて、もちろん見る人によってはこの作品も気になるところはいろいろあるだろうけれど、リアリティのラインを下げていて、だからこそのSF的危機とその対応を描くことができている。

物語設定の妙として、危機の源でもあり、奇跡的な推進剤になるアストロファージがまずあげられるけれど、これがあることで汎用コンピュータを作りこんでいない文明でも外宇宙に出られるということがおもしろい。これは、現代人には信じがたくともアポロ計画の時代を考えるとありえるようにも思えてしまう。そしてそして、同じく相対性理論を発見しなくても、惑星系の外(恒星の重力の及ばない遠い距離)まで出られるというのもなるほどという感じだし、これによって過剰だった燃料や設備の余剰が危機を救うことになったというのもいい。

知性と進化

また、物語設定の中でこれまで自分が読んできた(出版数と比べるときわめてわずかな)SFと比べて類をみないと思ったのは、人類や地球の生命体も宇宙由来だとするパンスペルミア説と宇宙に出る知的生命体のレベルについての示唆。

なぜエリディアンと人間とで、可聴域に重なりがあるのかということの説明として、捕食者から逃げるために物理音を聞けるものが進化によって選抜されたからというものはわかりやすい。そして、思考の速度は重力に影響するというのも興味深い。これは、脅威や獲物を認識して行動できるレベルであれば生存することができて、それは重力がベースになると説明されている。

さらに、作中で暗黙的に示唆されているように感じたのは、こういう進化によって出現し、生存を続けてきた知的生命体には利他の考えがあってもおかしくないということ。さらに踏み込むと、好奇心やそれによる他の知的生命体への友好的な姿勢も(人間のように)ありえる(もちろん、必ずあるわけではない)。

これは、進化ゲーム理論での、複数回実施される囚人のジレンマ状況において、さまざまな戦略が生み出されていった中で、しっぺ返し戦略や、主人と奴隷戦略が生き残ってきたのと似ているようにも思う(さまざまな議論があるけれど)。

これまで、ファーストコンタクトものでまったく進化の経路が違う異星人が人間と同じような考え方をしていたり、あっさりコミュニケーションがとれてしまう作品について、ご都合主義だなあ、もっと異質さが必要なのでは、と感じていたけれど、一周まわってこれがある程度正しいのかもしれないと思えた。つまり、宇宙に進出できる科学と技術をもった知的生命体は、進化の過程である程度、似たような思考速度や好奇心を持ちえるように収斂進化することは奇跡的なことではない。 もちろん、作中でロッキーが指摘しているように、宇宙船をつくれるほど知的レベルが高く、独力では恒星に関する問題を解決できないレベルでは、という条件もあるので、より高次な知性がいることとは矛盾しない。

そして、これらの利他の心や好奇心があることで異星人感でも友人関係が成立しうる。

これは、「三体」での、宇宙社会学の公理、

  1. 文明は生き残ることを最優先とする。
  2. 文明は成長し拡大するが、宇宙の総質量は一定である。

から導かれた黒暗森林理論と同じくらい衝撃だった。

本作で描かれたファーストコンタクトは、お互いに一個体のみであったことから、集団の疑心暗鬼がすっとばされたというのも巧み。 (エリディアンと人類も、こういう出会いを経ずに技術を発達させてお互いを認知したら、それぞれ好奇心や利他の心をもっていたとしてもゲーム理論的な状況の均衡として黒暗森林攻撃を選んでいたかもしれない)

dai.hateblo.jp

読みながら連想した他作品

本作に近いものはこれまでにあっただろうか。 太陽のエネルギーが奪われることでもたらされる地球の寒冷化を食い止めるためのプロジェクト、という点では野尻抱介*2の「太陽の簒奪者」も連想した。 本書との違いは、人類は地球にいて、そこでのさまざまな駆け引きがあることや、女性科学者の*3人生を描くところやファーストコンタクトの緊張状況を描いているのが醍醐味。知性の描き方もおもしろい。こちらもファーストコンタクト&宇宙SFとして大傑作なのでみんな読みましょう。

あと、(ほぼ)単身で技術的な問題を解決していくというのは、アーサー・C・クラークの「渇きの海」を連想した。これは月面でのある事件を技術的に解決していく話で、人類から見るとミクロではあるけれど、個人の生存のための危機感とは近いかも。

ハードよりなSFで異文明と協調するものとしては「天冥の標」もあったけれどこれは協力といえるかは疑問だし、どちらかの居住していた惑星で邂逅するとどうしても協力にはならないよなあ。やはり、第三の場所で出会うという設定が巧妙すぎる・・・。

あまり本筋と関係ないけれどよかった言葉を引用

状況は致命的で切迫しているが、一方でそれが標準になってしまってもいたのだ。第二次世界大戦中、ロンドン大空襲下のロンドン市民は、たまに建物が吹き飛ぶこともあるとわかったうえで、ふつうの暮らしをしていた。どんなに絶望的な状況だろうと、誰かが牛乳を配達しなければならない。そしてもし夜のうちにミセス・マクリーディの家が吹き飛んでいたら、配達リストから消すだけだ。

これはある・・・。

「ええ」ハッチがいった。「〇・九三c(cは光速を表す記号) の巡航速度に達するまで五〇〇Gで加速してね。地球にもどるのに一二年以上かかるけど、最終的にそいつらが経験するのはたった二〇カ月で。神を信じます? 個人的な質問だってことはわかってるけど。ぼくは信じてるんですよ。で、〝彼〟は相対論をすごいものにしてくれたと思ってるんです。そう思いませんか? 速く進めば進むほど、経験する時間が少なくなる。まるで〝彼〟がぼくらに宇宙を探検しろといってるみたいじゃないですか、ねえ?」  彼がふっと口をつぐんで、ぼくを見つめた。

ハッチはいいキャラしているんだけれど、この使命感ともいえる考えはほんとよい。

ローマ帝国ですら例外ではないわ。皇帝のことやローマ軍のこと、各地を征服したことはみんな知っている。でもローマ人がほんとうに発明したのは、農地と食料や水の輸送手段を確保する非常に効率的なシステムだったのよ」  彼女は部屋の奥へ歩いていった。「産業革命は農業を機械化した。そしてそれ以来、わたしたちはほかのことにエネルギーを注げるようになった。でもそれは過去二〇〇年間のことよ。それ以前は、ほとんどの人が人生の大半をみずからの手で食料をつくる作業に費やしていた。

そうなんだよね。人類はいまだに食に支配されている。 そして、アストロファージに頼ることができないわれわれは気候変動・地球温暖化にどう立ち向かっていくべきだろうか。ちょっとした気候の変化が数年続けばあっというまに飢饉に陥って、200年前に戻ってもおかしくない。本作では、寒冷化に対処するために南極で核爆発をおこして氷のなかの温室効果ガスをどかどか出すとかしていたけれど、それの逆のような特効薬はあるだろうか(核融合発電くらい?)。生活していけば輩出され続けて地球を温め続ける温暖化、現実は、SF作品よりもハードにSF的状況を生み出しているかもしれない。

*1:映画の邦題は「オデッセイ」

*2:なぜか著者を紹介するときには敬称をつけにくい・・・すみません

*3:ここで、「女性」とつける必要があるかは議論の余地があるけれど、まだSFでは稀な気もするので本記事を読む人の気を引くためにつけています。ご容赦を!10年後には不要になると思う。そういう意味では、原型を前世紀に書いていた野尻先生すごい

「現代経済学の直観的方法」を読んで考える資本主義の未来

「現代経済学の直観的方法」(2020, 長沼伸一郎)を読んだので簡単に紹介してみます。

著者の「物理数学の直観的方法」が評判だと聞いていたなかで手に取ってみたのだけれど期待以上で楽しく読めた。これまで勉強しても腹落ちしてなかったマクロ経済や貨幣のことがわかったというのもあるし、ブロックチェーンについてもこれほど明快に書かれている本は知らない(構成の妙もあって要約しにくいので興味ある方は手に取ってください)。

一番刺さったのは、最初の章での金利によって資本主義が加速していかざるを得ないというメカニズムと、最終章での社会が縮退していることとその処方箋の検討。現代の資本主義社会に問題意識を持っていて脱成長などの概念に関心がある人が読むと得るものあると思う。

本書では「資本主義とはその外見とは裏腹に、実は最も原始的な社会経済システムなのであり、それ以上壊れようがないからこそ生き残ってきたのではないだろうか」と書いている*1。そして、金銭の力が社会を腐敗させることをいかに抑え込むかの知恵もあった、と。 例えば、イスラム教やカトリックでの金利の禁止と喜捨の文化は資本主義の暴走を抑える伝統的な知恵だったのではないかという分析。これまでカトリック教会が信者間で金利をとることを禁止していたなかで被差別民だったユダヤ人が金融業を営んで稼いでいたことを、教会がみすみす目の前の利益を逃していたように思っていたけれど実はそうじゃなかったのかもしれない。 これは「エンデの遺言」でのお金に関する危機感に通ずるものがある。

もし今後資本主義にとってかわる新しいシステムを作り出すのであれば、以下の3つの条件を克服するものである必要があるという。
①軍事力維持の基盤としての資本主義(旧英国型)
②人々に未来の夢を与えるための資本主義(米国型)
③資本主義から身を守るための資本主義(日本型)

1つ目について補足するとソ連共産主義が倒壊した直接的な理由として経済効率が劣っていたことにあるというより、むしろ金のかかる軍事力を維持するためにはむしろ資本主義の力が必要だったとも補足されている。2つ目は夢があるからこそ人々が参加してそのシステムを支えていることだと解釈。3つ目は自国の産業と雇用を守るためには同じ土俵で戦わざるを得ないということ。

この条件を満たす社会システムはあるだろうか? SF(speculative fiction)の世界で考えてみても、全世界レベルの管理社会が実現したときに①③を克服して、②を力ずくで抑えられる、というディストピアなものしか思いつかない。

そして本書最終章で提示されている概念「縮退」について。
例えば、地中海世界を版図におさめて繁栄したローマは無産者の増加と格差の拡大で退廃が進み、ゲルマン人に倒されてからもそのゲルマン人も商業的退廃に染まって軍隊の力を失い、また次のゲルマン人に滅ぼされてしまうという流れがったけれど、こうした一度サイクルが進むことで外圧がない限り退廃の道を進むことを縮退と表現している。 そして、現代社会の富は、単に巨大企業自身が活発化しているというより、昔の時代からの伝統や習慣で長期的に整っていた社会生活のシステムが、壊れて縮退する過程でしばしば生まれているものだと指摘している。これは、権力を握る立場になった政党や官僚、巨大企業が社会を蚕食し自らの利益を確保してますます権力を強固にしている現代社会ともかぶる。 本書では、まずこの縮退のメカニズムを理解することがこれを抑える理論を見つけ出す一歩なのでは、と結ばれいくつかヒントがあげられている。自分の想像力の檻もあるけれど考えてみたい。

あと、連想したのは、「エンデの遺言」で紹介されていたこの考え。ただ、悪貨は良貨を駆逐するように、なんらかの力で導入したとしても、プラスの利子をもつ貨幣が広がりそうな気もするけれど。

もしお金がマイナス利子のシステムのもとにおかれるならば、社会が実現した富はなるだけ長期的に価値が維持されるようなものに投資されるということです。これと対照的に、プラスの利子の場合には、より短期の利益をあげるものへの投資が優勢になります。

本書で触れられていなくて気になるのは現代貨幣理論MMTとか、ドーマーの定理での財政破綻とかでここらへんも著者の見解も読んでみたいし、本書自体に対する経済学者の方々の評価も読んでみたい。

そのほかおもしろかった話題メモ

シュンペーターの言葉「資本主義とは、金儲けを目的とせずに働く少数の人間の存在によってのみ支えられる、金儲けのためのシステムである」

→ お金を儲ける人ではなくその行為のため、というのがミソですね。

一般的に洋の東西を問わず、農産物の価格というものは長期的に下落していく傾向にあり、生産物を安く買い叩かれて産業全体がだんだん儲からなくなってしまう。そのためこの産業に従事する人々の数は減ってしまう(ペティ・クラークの法則)

→ 農業経済は工業経済に敗北する理由。 原料産出国の側が反撃に成功した例は一つだけあって、それは1970年代の中東産油国の石油戦略とのこと。

(要約)経済理論はどの層が同盟を組むかで考えるとわかりやすい。 投資家層・起業家層(生産者層)・労働者層(消費者層)の3階層があるなかで、19世紀には投資家層と起業家層が同盟しアダム・スミスから進化した自由放任主義を主張する古典派経済学を信奉していた。これに対抗する形で労働者層のマルクス経済学が生まれた。それが20世紀初頭の世界恐慌を受けて生産者層と投資家層が手を組みケインズ経済学が20世紀中盤を制した。1980年代にはいると、労働者層はソフトな消費者層に変化し、新自由主義による国際化の流れになっている。この同盟ゲームの中でマルクス経済学は基本的に多数派になることができない。ソ連は、中身は軍事独裁制で投資家階層を抹殺することで成立していた。

(要約)アダムスミス流の神の手では、縮小均衡になる問題には無力。 ケインズの一般的な欠陥は、ピラミッド建設のような公共投資を行うため、「大きな政府」を要求する上、その財源としてしばしば国債発行という手段に頼るため、財政赤字とインフレの温床になりやすいことがある。インフレという副作用は投資家たちの富を蒸発させる点でプラスの効果も期待できる(しかし、現在の投資家層が土地や株式という形でもっている現物の強さの前ではインフレはそう影響ないのでは?)

(要約)貨幣は、必ずしも当局が紙幣を増刷せずとも「虚」のマネーを増殖させる性質を持っている(信用創造というやつ)。この増殖の限界を決めるのは準備率。この増殖メカニズムは、社会が好景気で拡大したがる際にはどうしても要求される。

(要約)国際通貨の困難の根源は、経済の拡大に合わせてゆっくり増やしていくことは自由にできるが、その一方、誰もが自分の勝手で急速に増やすことはできないという半ば二律背反な性格を要求されていることにある。ビットコインなどの仮想通貨もこの性質を満たせず国際通貨にはなりえない(むしろゴールドに近い性質のもの)。 こういう意味では、お金の問題に踏み込んだ「エンデの遺言」で紹介されていたゲゼルのマイナスの利子をもつ通貨、ケインズが1943年に提案したマイナスの利子を持つ国際通貨バンコールというのはありえないのだろうか?とはいえ、鋭くもこの自己増殖する貨幣に問題意識を持っていたエンデの本で、腑に落ちなかったところが本書ではすこし解消された。

インフレのもとでは「機動性の高い人々」が得をして「動きの鈍い人々」が損をする

資本家・労働者が損をして起業家が得をする、と。

自由貿易とは要するに「一番最初に二階に上がった者がはしごを引き上げてしまう」制度

それなのに平等っぽく見えてしまうのが罪深い・・・

英国が「オタワ協定」によって英連邦圏をブロック化したことに始まり、米国が南北米国全体で、フランスが旧植民地でそれぞれ排他的な経済圏を作った(またソ連はすでに共産主義経済圏を作っている)。そしてそういうものを作れず、寒風吹きすさぶ世界経済の中に宿無しのように放り出されたドイツと日本が、自分たちもそういうものを作ろうとして強引な軍事行動に出たということが、通常第二次世界大戦の原因として語られている。(中略)大変皮肉なことに、そのステップへ進むことを可能にした一つの原因は、まさしくそういう破局の中に一旦まともに頭を突っ込んだこと自体にあったと言わざるを得ないようである(中略)。当時の日本の状況では重工業の育成には膨大な初期投資が必要であり、まともな経済の論理からすれば到底元がとれず、そのため本来ならばこんなアジアの国が重工業化に成功するなど常識的にはほとんどあり得ないはずのことだった。ところがここで、これまた常識的に考えれば遂行不可能なはずの戦争を本気でやろうとしたため、結果的にそれが可能となったのではあるまいか

→ ちょっと道徳的には受け入れがたいけれど、ソ連の5か年計画とかも似たようなもので尋常の民主主義国家ではできないのかもしれない。

*1:これは、「資本主義の終わりより、世界の終わりを想像するほうがたやすい」という言葉を想起したけれど、ちょうど今日見た Tweet で、原典ではこれに「それは我々の想像力の弱さに由来するのだ」が続くと知った。

料理人のライフヒストリー『天才シェフの絶対温度「HAJIME」米田肇の物語』

天才シェフの絶対温度「HAJIME」米田肇の物語(2012, 石川拓治)を読みました。

単行本では「三ツ星レストランの作り方 嚆矢の天才シェフ・米田肇の物語」という魅力的なタイトルだったのが文庫で改題されているのは、出版後に一度二つ星になったからかな。
当時、日本人では2人目のフランス料理でミシュラン三ツ星をとったシェフ米田肇氏の半生をややおおげさに描いていて、山あり谷ありで一人の人間の成長と成功を描いた映画を観た後のような読後感。 脱サラして厳しいお店で修行するも2年間皿洗いだけでノイローゼになりそうなところ、フランスに渡って絶対無理と言われたビザの交渉、三ツ星店の支店で料理を任されて自信が出てきたところでの三ツ星シェフからのだめ出し。 求道者のような執念と、それによって逆境を乗り越えていくさまがおもしろい。料理人は、たいてい異様な安月給で(特に働きたい人の多い有名店ほど!)修行していろんなお店を経て己の腕を頼りに独立を目指すというのは昔の武芸者のよう。 その多くの苦労や努力があって物語としておもしろくなりやすいのかもしれない。こういう意味では、新規就農した農家さんや起業家も近い気がする。

シェフの人生という点ではミシマ社の「シェフを「つづける」ということ」(2015, 井川直子)を連想。これは15年前にイタリアで料理修行していた若者たちに取材していた著者がその後を聞いて回った本。個性と人生観があってよかったです。

シェフを「つづける」ということ

シェフを「つづける」ということ

  • 作者:井川直子
  • 発売日: 2015/02/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

本書「天才シェフの絶対温度」で印象に残ったセリフ

この歳で三つ星を取るということは、あなたがポール・ボキューズでありジョエル・ロブションになるということなのですよ

(ジャン = リュック・ナレ。ミシュランガイドの総責任者)

これで完璧だと思ったら、それはもう完璧ではない。この世に完璧というものはない。ただ完璧を追い求める姿勢だけがあるんだよ

(ミシェル・ブラス ミシェル・ブラス トーヤジャポンの厨房で、ミシェル・ブラスが米田肇にかけた言葉。ミシェル・ブラス トーヤジャポンは2020/4に契約満了のため閉店、軽井沢に支店をオープン予定がコロナで目途が立っていないそう)

ちなみに米田氏のお店「hajime」は税・サービス料別で1人42000円から・・・。食べログでは予算6-8万円。食べたら人生観変わるのかなあ。

www.hajime-artistes.com

「土 地球最後のナゾ」を読んで考えた100億人をささえる食のこと

ここしばらくのあいだに人口100億人という言葉に2つの場所で遭遇した。1つは、土壌研究者、藤井一至さんによる新書「土 地球最後のナゾ ~100億人を養う土壌を求めて~」、もうひとつはAmazonプライムビデオでみたドキュメンタリー「100億人-私達は何を食べるのか?」(2015年)

どちらもおもしろかったので簡単に紹介してみる。

土 地球最後のナゾ ~100億人を養う土壌を求めて~

前著の「大地の五億年」も人間を支える土の知らないことがたくさん書かれてよかったけれど、こちらはさらに世界の土と食に踏み込んでいる*1。前著では植物が土壌を酸性化しているメカニズムを紹介し、これが農業にも影響を与えていることを紹介している。そして日本など湿潤地では植物生育に欠かせない水に恵まれる一方で土が酸性になってしまう問題を抱えており、いっぽう乾燥地の肥沃な土壌では水が少ないかわりに栄養分が多いため土壌酸性化の問題を緩和できるという。農業の抱える本質的な問題に対して、乾燥地を選ぶことで酸性土壌を回避したの灌漑農業であり、湿潤地で酸性土壌とうまく付き合うことを選んだ例が焼畑農業や水田農業であるという視点がおもしろかった。

東アジアの水田の伝統を裏打ちしている土のメカニズムは興味深く、豊富な降水量とそれが山林を経てもたらす無機栄養があって連作障害もなく持続可能で、日本では当然のように広がっているけれど人口密集地の東アジアの人口を支えるすごい農法。もう片方の乾燥地では過灌漑によってはナイル川の恵みのあった*2ナイル以外の古代文明は滅び、現代においてもアメリカのプレーリーなど塩害や土壌流出が進んでいる。土壌は100年に1mmから1cmとつくられるのに途方もない時間がかかる一方で耕作や過放牧に起因する土壌流出ははるかに早い。過去の文明崩壊のプロセスをなぞりそうではあるけれど現代社会と科学は乗り越えられるだろうか。全体的にはちょっと暗澹たる気持ちになった。欧米では不耕起農法など、土壌流出を防ぐための農法の実践もはじまっていてこれはすごい取り組みではあるけれどマクロに影響を与えられるだろうか*3

ただ、本書では前向きなはなしもある。たとえば、ブラジルのセラードでは、1970年代から日本を含む外国資本が中心となってサバンナを大規模に切り拓いた結果、セラードは広大な牧草地、ダイズ、トウモロコシ畑へと姿を変え、そこでウシを飼育し牛肉の大産地となったという。アメリカのステーキの生産システムとの違いは土壌が肥沃なチェルノーゼムではなく、貧栄養なオキシソルであること。貧栄養な土地を農地に変えられるのは、緑の革命でも本格的にはできなかったことだと思う。これについてはこう書かれている。

オキシソルには二つの問題があった。まず、オキシソルの赤さの原因である鉄さび粘土は、リン酸イオンを吸着する能力が強い。リン酸肥料を少しまいただけでは、植物に届く前に粘土に奪われてしまう。この問題をクリアするために、粘土の吸着力を上回る大量のリン酸肥料をまく。カネの力だ。もう一つの問題は、土壌が酸性なことだ。オキシソルはもともと酸性土壌だが、ダイズを栽培すればさらに酸性に傾く。大気中の窒素を固定してくれるダイズだが、余った窒素は硝酸に変化してしまうためだ。この問題を克服するために、石灰肥料をジャブジャブまいた。

資材を大量に投入したということでなかなかよそでは真似はしにくいうえに、一部、ブラジルの熱帯雨林を切り開いている点で懸念も多いけれど、世界で見ると農地の開拓の余地はまだあるのかもしれない。食についての資源や持続可能性についてはマクロな統計もさまざまな解釈があって難しいけれど引き続き気にしておきます。

前著もよいのでぜひ。 [asin:B0186YMUFO:detail]

100億人-私達は何を食べるのか?

こちらは子をあやしながらAmazonプライムで観た映画*4。 欧米の食にまつわるドキュメンタリーは視点や映像はおもしろくとも危機や安全性を煽るものが少なくないので斜めにみていたけれど抑制的だし映像の力も感じられる。

人口100億人になったときに地球の食はどうなるか考えるために各地のさまざまな取り組みを紹介するドキュメンタリー。

肥料のためのカリウム鉱山の近くに積まれた高さ200mの白い残土や、毎年数10%も成長するインドの養鶏工場の様子など食の需要増に対する供給体制の危うさは知らないことも多かった。 供給増に対する取り組みとしては、昆虫職や京都の植物工場、モザンビークでの飼料用大豆農園、カナダのサーモン養殖場(養鱒場)、実験室での培養肉などが取り上げられていたけれど、どれもコスト面などで現時点では期待は薄そう。

そんななか興味深いのは3つ。 1つは市場の力。 シカゴにある世界最大の商品先物取引所にて超大物投資家、ジム・ロジャースへのインタビューで彼はこう発言していた

過去30年農業はひどいビジネスだった。高齢化・高い自殺率(インドで100万人)。これは価格向上が解決する。

これに対して、監督はギャンブルが食糧危機を招いたのではという説も紹介している。2008年・2011年に穀物価格が3倍になったけれどこれで主食を買えなくなった農民もいるという。商品価格の上昇で小農が稼げるようになるわけではなく投機筋を呼び込むだけで実際には大農家にしか分け前はあたらないのではないかと監督は市場依存を批判的にとりあげていた。

市場は価格を起点に需要と供給に影響を及ぼす強力な仕組みではあるけれど、昨今の電力価格の高騰で電力市場が高騰しているように*5依存すると手ひどい仕打ちも受ける。

ただ、市場は誰かが定めた制度ではなく現象でしかないので、これを活かして悪い部分を政府が規制するような姿勢しかないようには思う(マルクスは資本が悪いと言ってたけれど)。

自分は今の農作物の価格はかかるコストのわりに安すぎると思ってはいて農作物の市場価格があがって消費者も受け入れることができたら生産者の利益にはなるとは考えているけれど、買い手優位なマーケットでは生活必需品はなかなか値段が変わらない。 でも、農業者の高齢化や、産地の人口増、農地の減少、気候変動による不作でまた価格は上がってこざるを得ないのでは、とは思っています。そして価格が上がって稼げるようになるとまた参入者も増えるのでは、と。もちろんそのプロセスでも失われるものは多いし楽観すぎだとは思うけれど。

あとあと、ジム・ロジャース、日本の経済紙などのインタビューではポジショントークっぽいことばかり書いているけれど、かれが前世紀に世界一周したことを書いた本はめちゃめちゃおもしろいのでおすすめです。まだ誰も投資していないけれど可能性があるところをみつけて投資するというフィールドワーク的な投資スタンスで成功した投資家の視点がよい。

2つ目は有機農業。 マラウイの農村では、これまでトウモロコシだけを育てて同じものしか食べていなかったけれど干ばつに脆弱ですぐ飢饉になっていた。現地の白人の菜園をまねて、間作でいろいろ育てたら自給の安定性も増したし商品として売れるもののバリエーションも増えたという。 監督もこう書いている。

小さな有機農業の圃場は環境保護主義の遊び場にみえたけれど、途上国のほとんどの小農は同じような環境なことに気付いた。労働集約な分、単位面積当たりの収穫量は大農家よりも大きい

(土壌・労働者に対して)収奪的なプランテーション農法よりは低インプットでリスクを分散できる多品目の有機農業は頑健なのかもしれない。ここで書いている有機農業は、農薬を使わないというよりも、気軽に農薬を買えない環境で現地にあるもの(畜糞とか)や生態系をつかってリスク下げるくらいの意味合いです。

3つ目は都市農園 紹介されたのはアメリカ、ミルウォーキーにある元NBA選手ウィル・アレンが運営するグローイングパワー農園。140人雇用していて規模でかい! 魚の養殖と組み合わせるアクアポニックスは本で読んでいた限りではおもちゃにみえていたけれど映像でみるとなかなかおもしろそうに見えた。いろんな地域がこの取り組みを参考にして広がっているそう。土地都合で日本ではしにくいかもしれないけれど、キューバのように化学肥料など輸入ができなくなったときにはこういうの増えるんだろうなとは思った。

まとめ

2020年で77億人いる人口は2055年ごろに100億人を超える*6。それだけ食料の需要も増えるけれど農地や単位面積当たりの収量は簡単にはあがらない。需要が増えて価格もあがっていくと世界はどうなるでしょうか。

日本は、人口も減っているし、水田という素晴らしい農法があるけれど、担い手の高齢化や減少もあるうえに、1993年のコメ危機では一年の冷夏で供給が大きく崩れるなど薄氷だと思う。

マヤ文明が気候変動をきっかけに滅びたという説があることは去年ブログに書いていたけれど、人口が増えるとドミノ倒しに混乱するリスクはあると思う。

dai.hateblo.jp

そんなこんなで土をきっかけに現実逃避して先のことを考えてみました。おちなし。

*1:ヤマケイ新書さんが本書を出したのすごい

*2:過去形なのはアスワンハイダムによる

*3:日本では土壌や農地のサイズが違うから簡単には採用できないけれど、こういう映画がある。 kiss the ground https://kissthegroundmovie.com/

*4:最近ミルクをやったり、ぐずっているのをあやすときに映画をながらみしがち

*5:市場連動型の電気料金は想像を絶する金額に、いま新電力がやるべきこと:日経ビジネス電子版

*6:世界人口統計

戦慄しつつゲラゲラ笑える稀有な小説「ゲームの王国」

小川哲さんの「ゲームの王国」を読んだ。 基本読書さんの紹介でkindleで買って10か月ほど寝かせてから読み始めたんだけれど、これがおもしろい。

huyukiitoichi.hatenadiary.jp *1

1970年代からはじまるカンボジアを舞台にした、つまり、クメール・ルージュによる現代史でも屈指の虐殺があった時代を描いている。 シアヌーク政権下での秘密警察による共産党の抑圧やらポルポトによるクーデターとクメール・ルージュの粛清の嵐も出てきてぞっとする場面も多いんだけれど、奇妙な登場人物たちの行動などなぜか異様にゲラゲラ笑えてしまうところもある。

ポルポトは、最近読んだ「20世紀の独裁者列伝」のなかでも目立たない・腐敗しなかったという点で異彩を放っていた独裁者だけれど物語を通して改めて戦慄した。 dai.hateblo.jp

タイトルの「ゲームの王国」は腐敗の跋扈するカンボジアにて政治をゲームに例えていることから。ゲームに勝つにはゲームをつくる側にまわることと、この政治に翻弄されつつも挑戦していく人間を描いている。 ネタバレになるのであらすじは説明しにくいけれど上巻最後も下巻の始まりも驚いたし、後半の展開や仕掛けもおもしろい。日本SF大賞もとっているSFだけれど、SF的なギミックは控えめなのでSFに忌避感あっても取り組みやすいはず。間違いなく傑作。読んだ人としゃべりたい。輪ゴム・泥・鉄板・長江文明帰納法・牛あたりがツボでした。

いろいろちりばめられている寓話もよい。 たとえば冒頭のこれ。サロト・サルはのちのポルポトです。

闇の中からは、光がよく見える。チョムラウン・ビチア高校の歴史科教師サロト・サルは、子どものころからその諺を気に入っていた。暗闇から明るいものはよく見えるが、明るい場所から暗闇はほとんど何も見えない。この諺から「輝いているときこそ、足元の落とし穴に気をつけなければならない」という教訓を引きだした国語教師は残念ながら二流だった。正しい解釈は「足元の穴に落ちたくなければ、そもそも輝いてはいけない」ということだ。輝けばかならず闇から撃たれる。それが世の摂理だ。

セリフ回しのセンスもすごい。序盤で好きなシーン。

シヴァ・ソムの父は、この世のあらゆる人間は三種類にわけられると考えていた。農家、ベトナム人、女。この三つだ。そういうわけで、ソムが「警官になる」と報告をすると、父は「俺はベトナム人を育てた覚えはない」と怒った。父のオリジナル論理学によれば、警官は農家でも女でもないので、ベトナム人に該当するようだった。

ゲームの王国 上 (ハヤカワ文庫JA)

ゲームの王国 上 (ハヤカワ文庫JA)

ただ、やっぱり人は選ぶとは思う。村上龍「愛と幻想のファシズム」とか好きだとおもしろいと思う。まじない師がいた時代を扱っていて呪術的でもあるのですがこの点では高野秀行さんが翻訳したコンゴ文学「世界が生まれる朝に」と通ずるところあるかも。現実の大事件を背景とした人間を描く小説という点では、ノルマンディー上陸作戦下のミステリ深野緑分「戦場のコックたち」も連想しました。どれも傑作なのであわせてどうぞ。

*1:こういうセール、嬉しくてすぐ読まない本も買ってしまうけれど、一回セールがあると知ると通常に買うハードルがあがってつらい

ありそうでなかった「20世紀の独裁者列伝」

「20世紀の独裁者列伝」を読んだ。

20世紀の独裁者列伝

20世紀の独裁者列伝

著者は桂令夫、瀬戸利春、司史生、中西正紀、福田誠、松代守弘ら戦史系?のライターさんで原案は鳥山仁。

なにかの記事がきっかけで独裁者のことを知りたくなってネットで「独裁者 列伝」と検索したらヒットして見つけた本。 意外と最近の2020年9月に出版されているわりにAmazonでも(当時は)レビューがなくSNSでも書評どころか販促も見当たらなく謎だったけれど購入した。

各地の独裁者67人が2-4ページずつ経歴と功罪が紹介されていています。
まず、独裁者、何人思い浮かびますか?自分もWikipediaサーフィンで夜を明かしたり、いろいろ読んでそれなりに知っているつもりだったけれどヨーロッパ15人のうち7人は知らないしアフリカに至っては22人中名前を知っているのが3-4人くらい。その3-4人もどういう人かはちゃんと知らなかった。

特に印象に残ったのは、ポルトガルで36年も独裁をつづけた経済学者、アントニオ・サラザール。まず、経済学者としてはじまったのも珍しい。そして蔵相として国家財政を立て直した勢いで権力を集中させて独裁するようになり第二次世界大戦を乗り越えてからは古き良き時代にこだわり近代化に遅れるも、晩年、事故で意識を失った間に政権を失ってしまう。しかし、後継者はそれに気付かれぬようかれが死ぬまで偽の新聞を届け続けていたというのも創作。これ、映画「グッバイ、レーニン」の元ネタなのかも。

dai.hateblo.jp

ほか、孤児から独裁者までのぼりつめたトルクメニスタンのサパルムラト・ニヤゾフ。出世とバランス感覚の果ての独裁以降は奇行に走って、自分の好物のメロン記念日をつくったりしている(これは本書で数少ないほっこりエピソードです)。

国ごと、ひとりひとりに物語と歴史があるのだけれどそれぞれが傑物というか精神的質量が大きいとでもいう魅力がある。

そして、読んでいくと、独裁者になるのにもパターンがあることがわかる。 だいたいは元々しいたげられていた側が不満を起こしてクーデターを起こして簒奪する、特に、軍のクーデターが目立つ。 ヒトラーのように、民主主義を利用して独裁に至るのはほかジンバブエムガベや少数、スターリンのように権力者から禅譲を受けてさらに独裁を深めるものも少ない。目立つのはアメリカの暗躍。中南米では共産主義に対抗させるために援助されたりお目こぼしを受けた独裁者がたくさんいる。そして、権力を維持するために圧政に走っていき、クーデターで失脚していく・・・。

著者は6人のライターさん。なかには実話系雑誌のような書きっぷりの人もいるけれどおおむね淡々と書いていて好感。 欲をいえば編集がいけていないのか余白が多いのと、代表的な伝記や参考文献を書いてほしいこと。それぞれの独裁者の思想をもうちょっと知りたいけれどこれは1人2-4ページの紙幅で事実ベースで書くのは難しいだろうから仕方ない。

本書は20世紀の独裁者が対象だけれど、まだまだ世界には独裁者もいて苦しめられている人は多い。 その国の独裁ゆえに安価に産出できた資源などを輸入できているものもあると思うと日本も無縁ではないし、いちど権力を独占する独裁に陥った国は独裁者が退場しても腐敗で中長期的にだめになっているという歴史は先進各国も他人事ではない。とはいえ、21世紀は20世紀よりは前進していることも確認できる。いい本でした。

あなたの推し独裁者は誰ですか?

「AIに負けない子どもを育てる」はただの教育本ではない

topisyuさんがブログで紹介していて手にとった本 topisyu.hatenablog.com

タイトルはそこらへんに転がっている教育論のようではあるけれど、本書の著者、国立情報学研究所の新井教授は「ロボットは東大に入れるかプロジェクト」というキャッチーなプロジェクトに取り組んでいる研究者で一味違う。このプロジェクトについてはネットで記事を読んだくらいの知識しかなかったけれど、本書を読んではじめてその深い意義と成果を知って驚いて、大げさだけれど感動した。

AIに負けない子どもを育てる

AIに負けない子どもを育てる

  • 作者:紀子, 新井
  • 発売日: 2019/09/06
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

このプロジェクトは東大入試*1を通して人工知能にできないことを世に明らかにしようとするというものからはじまっている。これだけでも、社会への啓発という点で価値がある。けれど、そこで終わらずに、人工知能の不得意な、意味を理解しないと解けない問題は大人を含む多くの人間にも難しいということを明らかにし、これを計測する方法、リーディングスキルテスト(RST)をつくりだしたという展開が語られる。

意味を理解するリーディングスキルを計測するための、本書に掲載されている7カテゴリ28題ある例題はおもしろい。そして、そのリーディングスキルが育たない教育の問題や計測方法について仮説を提示している。これはまさにエビデンスに基づく教育(Evidence Based Education)のための強力なツールだと思う。そして最近流行のEdTechへのするどい批判も納得がいく。

このリーディングスキルの不足から、人工知能と同じようにパターン認識によってテストを解くしかない学生も、文章が読めないゆえにSNSで誤読してクソリプをしてしまう人も、イメージ・党派性によってのみ動くポピュリズムも同根ではないかと感じる。

ただ、本書では解決策も提案されているし、これに加え、2020年の学習指導要領の改訂で高校の国語が論理国語と文学国語になるのはよいニュースだと思う。

こういった、人工知能と教育の学際的な領域でこれだけ意義があることをやって、RSTとして社会実装もして、国語の学習指導要領にも影響を与えているのはすごい。まさに情報学(≠情報科学)。ただ、現代教育への批判については教育学を専門にしている方々のコメントも読んでみたい。

終盤の著者の、主観から導き出したというリーディングスキルを向上させるための方法論も興味深い。だいたい、それはそうだろうな、と思うものばかりで子をもつ親が読むと参考になるかもしれない。そして大人でも読解力をあげられるというのは希望でもある。

以下、ちょっとネガティブなコメント

とても興味深く、かつ意義があることをしているし、知見もほんと参考になるのだけれど、いくつか気になるところもあった。

  • kindleで読んだけれど各見出しを表示するだけで目次に戻る異常な構成。これ、ちゃんと確認しているんだろうか・・・ 。ほかにそんな本の経験はない
  • 「ロボットは東大に入れるかプロジェクト」(東ロボ)というキャッチーなプロジェクトでPR力はすごいけれど、表層的だと批判されやすそうなプロジェクト名で意義が伝わっていなかったことで一部で叩かれていた気がする(これはSNSで本書のいうリーディングスキルの低い人間に見つかった、というだけではなく、説明も不足していたように思う)
  • 哲学者の野矢先生にほめられたことや、OECDの国家間での読解力や数理的能力を計測するPISA調査を主導したシュイヒャー博士に取り組みを説明した後に、文科省の人からから「シュライヒャーがあんなにムキになるのを見たことがない」と言われたと書くなどの他者との相対による権威付けがちょっと鼻についた
  • 読解力が低下しているのは穴埋め式のプリントやパワーポイントの普及で板書が減ったからでは、という仮説でもって後半進めているけれど、ほんとうに低下したのかは著者の主観としか書かれていなく気になる。当時の人にリーディングスキルテストを受けさせることはできないから検証しようがないけれど強引すぎるように思う。阿部謹也先生が「一橋大学の学生の知的レベル が劇的に下がったと感じたのは、生協にコピー機が導入されたときだった」と言っていたと本書で触れているように納得度はあるけれど、年配の政治家やジャーナリストなどTwitterでみていても昔の人もたいがい日本語読めてなかったんじゃないかとは感じる
  • 自分も北陸の田舎の公立高出身なので著者のように地方の公立校に期待するのはわかるけれど、都会の私立進学校出身の社会の上澄みしかみないエリートにこの国の複雑な問題が解決できる気がしないというくだりでの、マリー・アントワネットを例えに出すのはちょっと下品すぎる気がした
  • せっかくRSTを開発したけれど、解決策の提案が思い付きによっているように感じた。まだテストを開発して間がないから検証は難しいのだとは思うけれど検証への道筋を一言くらい触れていると安心できるのだけれど
  • あとがきにある、この次に取り組むこととして、幼稚園・保育園・学校向けのホームページを無償で提供するという宣言、これ意義があるのは間違いないけれど、この本でのテストと教育の方法論について論じた後にはつながりがわからなさすぎてがくっときた。著者の知性と経験と直感を活かすためにも、Evidence-basedな教育の方法論を発見するプロセスの開発とかのが有意義で著者ならではなのでは、という気がしている・・・。これをやるために、情報の整備が必要で、まずホームページが必要なんだというロジックがあるならいいんですが

と、批判を並べてしまったけれど、これは編集者の方がんばってくれ、という意味で、本書やこのプロジェクトの価値がすごいのは変わらない。教育に関心のある方みんな読みましょう。

海外での事例としては読解力の前段階の非認知能力に着目した研究や事例を紹介するこの本がちょっと近いかな。

*1:自分は前期で理科2類に落ちた

ソフトウェア開発を仕事にするなら読んでおくべき古典 Joel on Software

2000年から2005年くらいに書かれたJoel Spolskyのエッセイをまとめた本、"Joel on Software"をこの年末に読みました。
尊敬する友人である荻野氏がプログラミングを仕事にするうえで一番学びがあった本として、2011年に教えてくれた本だけれど、なんでそのときに買って読まなかったのかと後悔するほど学びがあって、もっと早く知っておきたかったことが書かれていたのでメモと感想を書いておきます。

Joel on Software

Joel on Software

  • 作者:Joel Spolsky
  • 発売日: 2005/12/01
  • メディア: 単行本

時代背景をさっぴいて読む必要はあるけれど、そのあとの歴史を知っている時代に読むと答え合わせができて楽しかったり次の未来予測に役立つかもしれません。

エクストリームプログラミングや、エリック・レイモンドのThe Art of UNIX Programmingへのコメントはそれらの名著の副読本としても鋭い指摘があるし、いまは意識する人の少なくなった文字コードやメモリ管理などプログラミングの重要なところにも触れられている。そして、プログラミングについてだけではなく、ソフトウェアビジネスの戦略として、のちにフリーミアム戦略や、プロダクトマネジメントSaaS、カスタマーサクセスなどと名前がつけられた重要な概念のアイデアの核が詰まっている。

ソフトウェアビジネスの知見やプログラマの採用など経営やマーケなどいわゆるビジネスサイドの人が今読んでも得るものありそう。
著者のJoel Spolskyは1990年代、MicrosoftでExcelVBAの開発を仕切ったり、FogBugsというバグトラッカーやのちにTrelloを開発したスタートアップFogCreekを創業したり、9年間ほどStack Overflowという世界で一番開発者の問題を解決している(と思う)サービスのCEOもしていた。さらにプログラマになる前は実戦経験的に世界最強と思っているイスラエル空挺部隊にもいたらしい。時代的にもてはやされたハッカーとはすこし毛色が違って(なにしろ彼はWindowsアプリケーションの開発を長くしていた)、彼はディベロッパーであって、ヒーロー。

ちなみにだいたい以下のJoelのWebサイトで原文を読めるので英語がわかる人は読みましょう。

www.joelonsoftware.com

はじめに

プログラミングでコンピュータをうまく使うよりも、人間をマネジメントしてソフトウェアをつくっていくことが難しい。 人間のチームをマネジメントしていると、C++のテンプレートさえまったく簡単なものに見えるようになる。

プログラミングも、もちろん難しいんだけれどそれとは質的な難しさが違う。

ソフトウェアプロジェクトのマネジメントというのは、あまりよく知られている技術ではない。誰もソフトウェアプロジェクトマネジメントの学位を持ってないし、このテーマに関する本も多くはない。 ごくわずかの非常に成功したソフトウェアプロジェクトに従事していた人々の多くは、金持ちになり、蓄積された経験を次世代に伝える前に引退してマス養殖場を始め、その他の多くの人々はただ燃え尽き、スラム街の悪ガキだちに英語補修の授業をするというような、もっとストレスの少ない仕事に転職した。

こういうジョークというかJoel節がたくさんあってよい。こういう言い回しできるようになりたい。

ジョエルテストについて

開発チームのクオリティを評価するためのテスト。
Yesの合計が点数。11点以上が健全とのことです。2000年に書かれたもので、いまだと当たり前のものもあるけれど、どうでしょうか。

1.ソース管理してる?
→ 今時していないチームはないと思うので省略。この本の次代はCVSが最先端だった。
2.ワンステップでビルドできる?
→ 同じく。
3.デイリービルドしてる?
→ CIの走りですね。
4.バグデータベースはある?
→ いまどきExcelでしか管理していないチームはないと思う。
5.新しいコードを書く前にバグを直している?
→ 特に、Webアプリと違って頻繁なリリースのできないパッケージタイプではバグを先に直すべき。バス修正にかかる時間は読みにくいけれど、新規機能開発は読みやすいはず。
6.アップデートされているスケジュールがある?
→ 「プログラマがスケジュールを立てたがらないのはよく知られている。彼らはビジネスの連中に向かって、「いつ出来上がるかって?そりゃ、出来上がったときさ!」と怒鳴る」。けれど、もちろんビジネスや他チーム連携のために重要です。
7.仕様書はある?
→ 後述
8.プログラマは静かな環境で作業している?
→ 重要。フローやゾーンと呼ばれる集中した状態は簡単に消されてしまうのでそれを減らすためにも必要。日本の小さな組織だとどうするべきなんだろう?常にいるというより、週何日かだけでも小部屋にいるとかいいのかも。
9.手に入る最高のツールを使っている?
→ ビルド時間を短縮するマシンだったり、ディスプレイだったり。
10.テスタはいる?
プログラマ2-3人につき最低でも1人の割合で専任のテスタがいないとバグだらけの製品をリリースするか、時給30ドルのテスタにできることを時給100ドルのプログラマにさせて金を無駄にする、とのこと。自分のチームではここをビジネスサイドの人にやってもらっている・・・
11.採用面接のときにコードを書かせてる?
→ 最近は当たり前のようになってきていますが、どうでしょうか。
12.ユーザビリティテストはしている?
→ 廊下で5人くらい捕まえて試してもらうとユーザビリティ上の問題の95%を明らかにできる、とのこと・・・

このテストは、チームの状態をマネージャが把握したり、会社に応募するときや投資するときに目安になったりする、とのこと。

仕様書について

仕様書はデンタルフロスのようなもので、みんな書かなきゃいけないとは思っているけれど、誰も書かない。

アジャイルソフトウェア開発宣言*1では「包括的なドキュメントよりも動くソフトウェアを」と書かれていることもあって、仕様書を軽視するプログラマは多いと思うけれどビジネスサイドと話を積めて安全効率的に開発するにはやっぱり必要。どのレベルのものか、が難しい。
Inspiredなどプロダクトマネジメントあたりでは、紙芝居のように動作する「ハイファイ・プロトタイプ」が仕様書としてよいのでは、とも言われているけれど、Joelの意見はちょっと違う。あまりにもデザインができすぎたものは、ビジネスサイドがほぼできていると勘違いしてしまうからよくないと、、これは、ハイファイ・プロトタイプが効くのはユーザの、利用者の、言葉にしにくいフィードバックが重要な、どちらかというとB2C向けなのかもしれないし、ちゃんと運用できるのはリテラシーの高いプロダクトマネジメントチームがいるときだけなのかもしれない。

必要な理由としては事前にビジネスや他チームと共有するためなのが大きいけれど、ほか気になったところをピックアップする。 まず、プログラマは、時間をかけて書いたコードが、仕様上どんなにまずいコードであっても、それに執着するようになるのでこれを避けるため。はい、心当たりがありますね。 次に、プログラマというのは「正しい答え」ではなくかれらがコードとして書いたことに即して質問に答える傾向があるから。これは自分もやりがちです。

仕様書の中身について、ユーザ観点でどう動くかを記述する「機能仕様書」と内部の実装についての「技術仕様書」があって、Joelのいう仕様書は前者、内容は具体例がおもしろいので読んでほしいけれど、ユースケースのシナリオや対象、簡単なフローチャート、画面が紹介されていて、「カタログ」のようなものだと感じました。あいだに未解決の問題やテクニカルノートが挟まっている。テンプレートは使うべきではない。
そして、仕様書は1人の人間によって書かれ、所有されるべき。重要なのは仕様書がアップデートされてその差分がわかるようになっていること。

そんな仕様書を書いて価値あるソフトウェアをつくっていきたいです。
この、バージョン差分を分かりやすくてだれでも使いやすいドキュメント管理システムはないだろうか・・・

プログラムマネージャについて

プログラムマネージャという、いまプロダクトマネージャーとして知見が積み重ねられているものの前身と思われる役割にも紙幅が割かれている。 プログラムマネージャーはコーディング以外のあらゆることをやり、会社の「ビッグピクチャー」を心に抱いていることが期待され、要求を集めて仕様をつくり、外交 手腕。マーケットに対する意識、ユーザ理解、良いUIデザインをつくる。コーディングへの理解も欠かせない。

重要なのは
・コーダーをプログラムマネージャに昇進させないこと。
マーケティングの人間をプログラムマネージャにしないこと。
・コーダをプログラムマネージャの監督下におかないこと。

難しいですね・・・正しい資質のある人を採用するなり抜擢する必要がある。
このあたりは、最近2版が出たInspiredを読むのがよいと思う。

5つの世界

いろんなひとがさまざまな文脈でソフトウェア開発についての知見を語るけれど、たいていの人はその人の知っているソフトウェア開発を念頭においているので、話を聞くときは、どの世界のことを話しているのか気にしましょう、というはなし。

5つの世界とは、
・パッケージ
・インターナル・・・特定の組織内で使われるもの
・組み込み
・ゲーム
・使い捨て

それぞれ求められる品質や基準が違う。
いまネットで多数の記事があって人々が働いているwebアプリケーションは、多数のブラウザで使われるという点でパッケージの変異として分類されているけれど、今なら独立させてもよさそう。B2CかB2Bかで分けてもいいかもしれない。
ただ、Joelはユーザが1000万人いるかどうかで区別はしていたので、特に自分のような凡百の開発者とは桁が違うことだけご留意を・・・。

使い捨てプログラムはすぐにインターナルソフトウェアへと変化し、さらにMBAがそれを見つけて「これを使って新しいビジネスをスピンオフできるぞ」と言うと、ジャジャーン!ひ弱な「エンタープライズソリューション」を提供するコンサルティングウェア会社が生まれる。

ある・・・

Amazonを目指すのかBen&Jerry's を目指すのか

Ben&Jerrysは東京とかデパ地下とかで売ってる高いアイスクリーム屋。2000年にユニリーバに買収された会社。
スタートアップは急成長を目指すという点でスモールビジネスと違う、と思っていたけれど、その中でもAmazonスタイルともうちょっとゆっくりなBen&Jerry'sモデルがあるのうまく区別できていなかった。
競合がいるかどうかや資本が必要かどうか、ネットワーク効果の有無、損益分岐点の近さ、リスクなどが違うなどなど(それぞれどちらのモデルかはわかるよね)。 ひとつ自分が意識できていなかったのは、Amazonモデルでは企業文化(を維持していくのは)不可能だということ。そして最悪なのはAmazon型の会社にならなければと思いつつお、Ben&Jerry's型のように行動すること。どちらか決め切れているでしょうか。

Joelによれば、MicrosoftはBen&Jerry's型のもっともよいモデルとのことで、Ben&Jerry's型が巨大化しないわけではないけれど、もう時代は違うかもしれない。

その他

アーキテクチャ宇宙飛行士を雇わないこと

アーキテクチャ宇宙飛行士とは、アーキテクチャや抽象的なことがらについて議論するばかりでなにも生み出さない人間のこと、らしい。 類似性を見つけて抽象化をすすめていくの、楽しいけれど、解くのが楽しい問題ではなく、解く価値がある問題を解決したいものです。

デザインというのは、コストを増やすよりも早く価値を追加することができる、漠然とした領域のことをさす。 たしかに漠然とした領域・・・。とか言いようがないのかも。

プログラマの評価について
逆効果になることが多く、するべきではないと書かれている。
評価が高くても、それが生産性につながらず、評価が低い人のモチベーションを下げるだけ、華々しい成果を出していなくとも目立たぬところで重要な役割を担っている人を評価するのが難しい、ということもある。 それは、わかるんだけれど、適切にストレッチさせるためにどうなのかは気になる。なんらかの目標管理的なものは必要なのかどうか、ちょっと悩ましい。

などなど。
Joelのブログはまだまだ続いているので2020年は英語をがんばって読めるようにしていこうと思う。

読書メモ 世界を変える偉大なNPOの条件

読んだのは2015年だけれど、書いてあったことを参照したく当時のメモを引っ張り出してきたのでメモを共有します。


NPO」と題していますがそこに限らず、なにか社会の問題を解決するためにはどうしていったらいいかというのが主題です。
そもそも原題はForces for GoodでNPO限定というわけではありませんが、社会に影響を与えたNPOのいくつかのケースを挙げてうまくやる方法を抽出しようとしています。 民間でも大学でも個人でも、なにか世の中の問題を解決したい人は読んでみると参考になるかもしれません。


概要(というか抜き書き)

本書でとりあげるNPOは予算規模や組織の大きさではなく社会に大きな影響(社会的インパクト)を与えているかどうかで選んでいる。


調査の結果、社会に影響を与えているNPOには6つの原則があることがわかった(それぞれについては後述)。

  1. サービスを提供するだけでなく、政府と協力して政策転換を促す。
  2. 市場の力を活用し、企業を敵視したり無視せず、強力なパートナーとみなす。
  3. 活動を支援してくれる個人が有意義な体験を行えるように工夫し、彼らを大義のために動いてくれる熱烈な支持者に変えていく。
  4. NPOのネットワークを築き、ほかのNPO組織を、希少な資源を競い合うライバルではなく仲間として扱う。
  5. 変化する環境に適応し、戦略的であると同時に革新的かつ機敏に動く。
  6. 社会変革の強力な推進者となるために、リーダーの権限を分担する。

調査の中で、これまで俗説として有用だと信じられていたものが間違っていたとわかったものもわかった。

  • 1.完璧な運営 2.ブランドに対する関心とマスマーケティング 3. 革新的な新しいアイデア 4.模範的なミッションステートメント 5.従来の組織評価の高評価(例:予算に占める諸経費の割合) 6.大規模な予算

これらは必ずしも必要ではない。

補足

  • 組織の成長は影響力を高めるための一つの戦略ではあるが、成功するための唯一の方法ではない。
  • 偉大さとは、NPOが組織の内部の運営をどうするかよりも、組織の外の世界に対していかに働きかけるかという部分に関係が深い。
  • 組織の外を動かすことが必然的に内部環境にも影響を与える特別な実践を伴う。


いくつか引用を孫引きしてみる。

社会起業家は、人に魚を与えるだけでは満足しない。魚の釣り方を教えるだけでも満足しない。彼らは漁業全体に革命を起こすまでは止めないだろう(ビル・ドレイトン アショカ財団 創設者)

革命をゴールとするこの言葉は歴史にたびたび混乱をもたらしてきた純粋な進歩主義者っぽさを感じた。

正しいかどうかにこだわるよりも、社会を動かすことが大事だ(マーティン・イークス セルフヘルプ創設者)

これは、理念先行とか理念バトルになりがちな組織への警句だと受け取った。

6つの原則

1.サービスを提供するだけでなく、政府と協力して政策転換を促す。

影響力のある組織は、地域サービスと政策提言(アドボカシー)の両方を行い、この2つの活動を結び付けている。この2つは必要なスキルも時間軸も異なるがそれぞれ好循環をもたらす。

アドボカシー活動はほかの組織と連携しなければならない場合が多く、成功が何によっても荒らされたのか明らかにすることは難しく定量的に評価しにくい。

政策転換を成功させる5つの原則

  1. 実利主義と理想主義のバランス (グリーンピースなどのような)過激なアプローチは社会変革につながらないわけではない、メディアの注目をあつめ大衆の関心を集める効果はあるが、長期的な有効性が損なわれることが多い。
  2. 超党派を原則とする 「ほかの環境団体との大きな違いを挙げるなら、彼らは環境を守る最善の方法は政権交代だと考えている点だ。」(エンバイロンメンタル・ディフェンス 提携担当部長) 「永遠の友なし、永遠の敵なし、永遠の利益あるのみ」(黒人議員連盟のモットー)
  3. 信頼と高潔を維持する
  4. 政策通を雇う
  5. アドボカシー活動のための財源をみつける

2.市場の力を活用し、企業を敵視したり無視せず、強力なパートナーとみなす

市場の力を利用する3つの方法

  1. 彼らは企業が従来の手法を変えて社会的責任をもっと果たせるように力を貸している
  2. 自分たちの社会目的のために、寄付、ボランティア、社会貢献型マーケティングなどの形で企業と提携して、資源を彼らから獲得する。
  3. 事業収益を生むために自ら事業を運営する

補足

  • 企業を利用するだけでなく、NPOも多くのものを企業に与えなければならない
  • 企業によって利用されたり、仲間や一般市民からは身売りと受け取られたりするリスクはあるが、ここに多くの機会もある。
  • 必ずしも収益につながる事業モデルがない場合もある。

3.熱烈な支持者を育てる。活動を支援してくれる個人が有意義な体験を行えるように工夫し、彼らを大義のために動いてくれる熱烈な支持者に変えていく。

社会に大きな影響力を与えるNPOは。多くの人が活動に参加できる方法を生み出す。そして人々に”適切な”体験を提供することができたとき、そうした参加者を組織の大義への熱烈な支援者に変えることができる。

優れた組織では、個人の参加だけでなく、支持者たちのもっと大きなコミュニティをつくり出している。コミュニティ自体が目的とされ、これを動かして、より大きな社会変革を実現する。

参加意識を高める法則

  • 組織の使命や目標、価値を伝える・・・心に訴える仕掛けを準備することからはじめる
  • 意義深い体験の機会をつくる・・単に無償奉仕させたり、寄付をさせたりすることよりも、深いかかわりに招き入れ、組織の事業を直接体験させる
  • エヴァンジェリストを育てる・・・ボランティアをエヴァンジェリストに変身させる
  • 愛されるコミュニティを築く・・・メンバーたちがつながる方法を提供し時間をかけて育てる

4.NPOのネットワークを築き、ほかのNPO組織を、希少な資源を競い合うライバルではなく仲間として扱う

大きな影響力を発揮するNPOはネットワーク重視の考え方を採用する。

  • 全体のパイを大きくする・・・資金の総額を増やしネットワークあるいはその分野へ資源を配分する
  • 知識を共有する・・・情報をオープンにし、ほかのNPOが能力を高めるための訓練を提供する
  • リーダーを育てる・・・活動する分野全体のためにリーダー育成に投資し、同じような価値観を持つ仲間と人材を分かち合う
  • 連携する・・・連携して先頭に立つか後方支援に回るべきかを判断する

5.変化する環境に適応し、戦略的であると同時に革新的かつ機敏に動く

  • 堅苦しい官僚主義と自由奔放な創造性の均衡点を見つける
  • 外部環境や組織内で生まれるアイデアに耳を澄ます
  • 実験し、新しいものを取り入れる・・・プロダクトイノベーションとプロセスイノベーション
  • 評価し、学ぶ・・・なにがうまく機能し、なにが機能しないのかを厳密に評価し、その情報をネットワーク全体で共有する
  • 修正する・・・評価結果をふまえて将来の結果を変更する。

自由なやり方で適応していく組織もあるし、体制を重視し厳密な計画や制度を用いて革新を遂げようとする組織もある。こういった組織は実践と同じ程度、評価や計画から学ぶ。

組織が変化するのに伴い、追加する新しい計画の数と同じ程度に既存の事業を廃止する。

6.社会変革の強力な推進者となるために、リーダーの権限を分担する

  • 外部向けリーダーとしての役割と組織管理の役割をわける
  • 形式上だけでなく実際に権限と説明責任を与える。権限を与えることで優れた人材は組織に長くとどまる。
  • 優れたリーダーは在職期間が長い
  • 後継計画をつくる・・・組織内外にかかわらず
  • 戦略的で規模の大きな理事会をつくる・・・(これは成果を出したことの結果なのかも?)

影響力を持続させるために

野心的な目標を達成することと組織の能力を培うことは相互補完的

最初に人を選び、その後に目標を選ぶ(ジム・コリンズ、ビジョナリーカンパニー2)

はい

技能は重要。でも情熱ほどじゃない。後から学べるから(セシリア・ムニョーズ、ラ・ラザ全米協議会)

そうだね

集中力と姿勢は後から学ぶことはできないし、これらは組織のよき支援者となるために必要だ(セシリア・ムニョーズ、ラ・ラザ全米協議会)

使命とお金の両方が、この順序で重要である。
本書で取り上げた成功している組織12のうち10の組織では、同じ規模、同じ分野、同じ地域で活動するほかの団体と比較してNPOとしては最高水準の報酬を支払うことを目標にしている。大半の運営幹部への報酬は10万ドルを超えている(2005年)

非管理職(専門職)のキャリアパスを設ける

私たちは、解雇する責任を負うべきだと考えている。人を解雇しない管理者がいたり、そういう部門があったりすれば、その担当者と会う。いまここでは280人が働いているが、私たちは世界を変えつつあると思っている。もし。可能な限り優秀な人材を雇っていないなら、そして自分たちを甘やかしているのなら、この組織はおしまいだ(エンバイロンメンタル・ディフェンス、フレッド・クルップ

これらの組織はいずれも人材管理面で好循環を生み出しているが、リーダーの育て方や最高の人材を確保・維持する方法を知ったから成功したのか、それとも、活動が成功して、ある程度の規模と安定性を得たためにこういった人材を保持できているのかその因果関係を解きほぐすのは難しい。おそらく両方あると考えられる。

成功した組織は資金獲得先を政府か、民間企業か個人から獲得するか選んでいる。そういった主体は収入源として優れているだけではなく、問題を解決するのを助けてくれる。

継続性のある市民による大きな寄付基盤は強力だが、それを得るためには相当な資源を投入しなければならない。

原則を実践に移す

偉大さとは、言葉から受ける印象とは異なり、他者と協力し、他者を通じてなされることに関係する。社会のすべてのセクターを活用して、社会的価値を生み出す力と結びついている。

感想

アメリカン巨大NPOの成功事例からいろいろ知見を集めているのが本書。NPOで社会を変えられるんだ!というのは日本の小規模ローカルNPOしか見えていなかった自分としては驚きでした。 気になるのは、この知見が日本でも活かせるかどうか。たとえば解雇規制やロビイングの習慣とかは違いそう。

思い付き

  • アメリカとの違いとしては、よく言われるのが寄付文化。寄付以外に政府や企業からの支援ということも書かれているが日本でやれるのだろうか。CSR活動を受注するなどはしているが使い道は厳しく制限されているように思うし継続性に難ありな印象
    • 寄付文化が根付くにはどうしたらよいだろか?
  • 政策提言はできうる?ロビイング。どういう法律が新規就農や農家の継続性を阻んでいるか考えるとおもしろいかも
    • 最近、耕作放棄地にかかる税金は増えたけれど・・・
    • GHQの農地解放で得た農地が、商業地や高速道路に転用されて大きな利益を出すのを待つために保持し続けているのいびつなのでなんとかしてほしい(例:売却益の何割かは地域に分担とか)

本書で書かれていなくて気になっていること

  • NPOが収益事業をつくりだすことの難しさと工夫や知見
  • NPOのライフサイクル。解決したら解散する?規模が大きくなると官僚化が進み組織のための組織になるような・・・

国内NPOについての愚痴は機会があれば口頭で。

経営おもしろ話、あるいはなぜ東芝はやらかしたのか(「ヤバい経営学」を読んだメモ)

「ヤバい経営学」という本を読んだ。 原著のタイトルはBusiness Exposed。直訳すると無防備な経営*1だけれど、ヒットした「ヤバい経済学」に乗ってこのタイトルになったようだ。書店で手に取ってもらうためには良いと思うのだけれど、語彙がヤバい・・・。

ヤバい経営学―世界のビジネスで行われている不都合な真実

ヤバい経営学―世界のビジネスで行われている不都合な真実

中身は、経営学の論文をおもしろおかしく紹介するもの。 一部、進化論について誤解していたり(訳の問題かも?)、経営者もふつうの、俗な人間だということを繰り返し指摘している。にもかかわらず経営者に善良さを求めるのはちょっと辟易するところがなくはないけれど、けっこう学びもあったり考えるきっかけになる情報が多かった。

以下、気になったところの要約と感想のメモ。引用記法で書いていても自分が要約している箇所もあります。本に書いてあることと感想はそれとわかるように書こうとしているけれど、あいまいな箇所もあると思うのでご容赦ください。

組織の集団慣性

新聞の紙面サイズが電車でめくれないほど大きく、食卓でめくるにも苦労するほど大きいことの理由。大きいほうが印刷コストが安いなどの理由があるわけではなく(逆に高い)、1712年のイギリスでページ数で税金が決まったことに対応するためだという。この課税は1855年に廃止されたけれど、そのときの慣習がいまも引きずられている。イギリスでは最近になって、経営危機に陥ったインデペンデント誌が2003年に小さくして、それによって利益もあがり、ガーディアンやタイムズなど他社も追随した。

本書で指摘されているように変化を嫌う前例主義により非合理な慣習が残り続けるといのはあるだろう。 ただ、本書では指摘されていないけれど、これは消費者ぐるみの場合もある。使い慣れていないものに忌避感を覚える消費者は多い。その消費者の心が離れるかもしれないという不確実さを恐れているために残っている商慣習や高コストな機能もある。とはいえ、肯定しているわけではなく、そこには市場の隙間があるということなので、うまくマーケティングできると機会があるのかも、と思った。

これとは別の組織の集団慣性として、懸念をもっている人が多くとも、声をあげなければそのまま進んでしまってみんなでコストを払っている状況も指摘されている。 わかりやすい例だと三菱自動車リコール隠し。最近だと3Dテレビもそれに近いかもしれない。 こういう例、いろんなところにあるけれど、自分はそれに気付けて声をあげられるだろうか。日本の新聞もどこかがA4判に変えていっきに普及したりしないかな。

選択バイアス・選択と集中

大成功に導く戦略、または非常に革新的な戦略というものは、合理的なプロセス、もしくは経営トップの独断から生まれることはない

成功した事例を見聞きすると、すごい戦略があったのだろうと思うかもしれないけれど、ひょんなことや偶然から結果的に優れた戦略が生み出されることが多いという。そして、生き残ったものだけ観察されてストーリーを忖度されるので最初から優れた戦略があったように語られる。

成功例に引きずられないようにしたいものだけれど、ついつい気になってしまう。

例)サウスウエスト航空のLCC化、CNNのグローバル化

業界トップの企業にとって環境の変化はおそろしく、業績の悪い企業は環境の変化を歓迎している

例)タイヤのファイアストン、スイスの時計業界、コダック・・・

そうですね。ただ、業績が悪い企業は環境の変化を期待していつつも、対応するためのコストを払わないことが多い気がする。 環境の変化にのれる柔軟さと感性のある

強い企業はコアビジネスに集中しているから、コアビジネスに集中しよう、ではなく、コアビジネスになるほど成功した事業があったから強い企業になっているという因果なのではないか。

ビジョナリーカンパニーの誤謬ですね。 とはいえ、スタートアップ含む中小企業だとリソースに限りがあるので選択と集中しないといけない気もするのが悩ましい。

立場固定

プロジェクトを途中で止めてしまうとバカで無能だと思われる。成功すればヒーローになる。最初からかかわると、止めるという選択肢はなくなってしまう。

例)映画「遠すぎる橋」。マーケット・ガーデン作戦

東芝のWH買収やインパール作戦も同じかもしれない。最終的な破局までだれも止まれない。失敗やアラートを遠慮なく上部にあげられる組織にしたいものです。

成功の病

成功が均質な組織文化をつくるという傾向がある。そしてこれは新しい環境への適応を妨げ衰退の原因にもなる。これが成功の罠として知られている現象。 危機にあるときにイノベーションが生まれる(ほんとか?)。いっぽうで脅威にさらされると委縮して、コアに集中しようとしすぎたり、官僚的で過剰管理気味になりがち。

イノベーションのジレンマの文化的な説明と感じた。成功の病から抜け出る方法はなんだろう?本書でもにごしているけれど、少なくとも流行の経営手法ではなさそう。 成功してから考えたい・・・と考える中小企業は多そうだけれど、初期の組織文化や設計の影響が大きそう。 リクルート様は、変化を促す組織文化をうまく作っていると思うけれど、特定のマーケットか特定の技術に軸足を置いて成功してしまった会社はどうすればいいんだろう。

イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press)

イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press)

経営者の報酬。ストックオプション

経営者へのストックオプションは、経営者に企業の成長へコミットさせる目的があり、実際によりリスクをとらせることになる傾向がある。しかしリスクをとることはよいことだろうか。

そうだね。個別の経営としては、企業のあり方が定まった大企業でストックオプション付与は過剰なリスクにさらす危険が大きいと思う。けれどマクロでは大企業がばんばんリスクとってマーケットや人材市場をかきまわしてほしいのでもっとやれ、と思ったりもした。東芝がつぶれて優秀な人材が市中に放出されたら楽しそう(無責任)。

経営者の報酬を決める報酬委員会や取締役会の構成員が高給取りであるほど経営者の報酬はあがる

そうだね。

経営手法とイノベーション

TQMやBPR、シックスシグマなどの流行の経営手法の導入は、業績への相関関係はほぼないがフォーチュン誌の尊敬される企業ランキングの順位には影響するのと、経営者の報酬が増加する傾向がある。

これは、手法を購入可能なパッケージとして見ている場合はそうだろうな、と思うけれど、一概には言えないと思う。この経営手法を導入した企業の業績が(長期的に)増えるみたいなパターンありそうだけれど、そんな手法はあるかな。 ただ、流行にのってトップダウンに導入するのは失敗パターン。

ISO9000という社内手続きのマニュアル化と標準化で効率的で高品質な製品をつくるという標準がある。写真業界で研究したところこれを取得していた企業は既存分野の特許申請数は増えるけれど「同じような」特許ばかり増えてイノベーションにつながる全く新しい技術はあまり出てこなかった。

(例として、3Mのポストイットをあげているが、同じような、ってどう判断したんだろう。と疑問に思いつつもとの論文にはあたっていない・・・。管理を厳密にすることがゆらぎやあそびを削いでイノベーションの機会を減らしているというストーリーはわかりやすいし、実際そうである気はするけれど)

経済学者のジョバノビッチは「効率的な企業は成長し生き残る。非効率な企業は衰退し消滅する」と四半世紀前に言った

これはそうなってほしいけれど、先行者であることの競争優位性が大きいからかもしくは十分時間が経過していないからか非効率な企業もたくさん残っている。

継続的な競争や変化にさらされていると、会社は大きく発展し、より強い会社になることができる

そうだね。とはいえ、競争や変化にさらされない特定業種で、弱い会社でも稼いでいる人たちはいて、彼ら彼女らの幸福度とは別問題なんですよね。

今日の経営者が直面している市場が、昔よりも変化が激しいという事実はない。当然、競争優位性を獲得したり維持することが過去に比べて難しくなったわけではない。

いまが変化が激しいというよりも、産業革命以後はすっと激しいという気がする。

イノベーションはいいことなのか?イノベーション(新しい製品を出す企業)を起こす会社はその結果として成長のスピードも鈍化し、倒産する確率もあがる。という調査がある。

真似する戦略が最上、ということになるそう。これはけっこういやだけれど、本書では、イノベーションを起こすことが目的の組織なら違うのでは、と示唆していてこれはすこし希望がもてた。

組織の硬直化と組織再編

組織再編は、その変更された組織に必然性が必ずしもなくとも、再編すること自体に効果がある

これは、 (1)社内の協調がうまくできない問題を解決する(2)過度の権力の集中を止める(3)変化に対する適応能力を高める 効果があるとのこと。

ただ、明記してはいなかったけれどがらっとした再編の場合と思う。ふつうは、みなそれぞれの専門性や顧客、ビジネスプロセスをもっているのでそんながらっとした再編はなかなかできないけれど、それを押し通すと効果はあるのかもしれない。

シャープや日産の経営者が外国人に変わったのは近いかもしれない。いっぽうで国内で散見される、部門名だけ変えて実態は変わっていないのはここでいう再編とは言わない。 話がそれるけれど、会計システムとかで組織再編はかなり複雑でつらい。ある部門の売上や債権の管理を、つけかえたりする必要があるのと、年ごとの推移をみるときにどう読み替えるかをもっておかないといけないので。

組織の居心地のよさは硬直を招く。

適度な緊張感と人の入れ替わりは必要だろう。 よく、日本の大企業のジョブローテーションは専門性のないジェネラリストが量産されると批判を聞くけれどもしかしたら有用なのかも。 有用すぎて、非公式なチャネルで物事が決まってガバナンスが形骸化する問題はありそうだけれど。

法律事務所でも、そこから人が企業に転職するとそこからの発注が増えるし、逆もある。人的交流が仕事をうむ。

コネというとネガティブに受け取られるけれど、これは円滑なビジネスの必須条件ですよね。サーチ理論的。 そういうネットワークに入っていなかないといけない・・・

広報の正しさ

  • 取締役が外部から来ている方が企業の広報で隠し事は少なくなるが、取締役が株をもっているとそうではなくなる。
  • また株主に大きな機関投資家がいると隠し事は少なくなるが小規模な株主が多くなるとそうではない。

日本だと、どうでしょうか。経営者が意図して隠すよりも、現場の管理職が上部に報告しないことによる隠ぺいが多い気がする。雪印の問題とか、記者会見で社長が「聞いてないぞ」と言っていたように。

人員削減

成長企業でも低成長企業でも、どの業界でも人員削減が短期的には効果があっても長期的な利益率につながらないという調査がある。 理由は、社員のモチベーション低下ではないか。人員削減後は自己都合退職率が上昇する。公平な人事制度(相談窓口や非組合員の申し立て制度、を例としてあげているがちょっと疑問)があるところはまだ影響が少ない

これは、IT化による人員削減も含むのだろうか。 日本だと、人員削減というよりは過度の外注化・効率化で組織内のゆらぎや教育機能削いでいるところは多い気がする。 逆に、規制産業やパブリックセクターでは過剰人員がいるから非効率な仕事のための仕事が残されていたりもする気がするけれどどうでしょうか。

参考

日本国の研究 (文春文庫)

日本国の研究 (文春文庫)

株式上場のメリットについて

株式を上場すると、経営者は株式市場への対応にかなりリソースをさくことになるけれど、これに見合うだろうか。

  • 資金調達する必要があるから?ほんとにある業種はどれくらいある?
  • 会社の信頼性?東芝エンロンという反例もあるし最近は上場企業だから取引めっちゃスムーズだ、などはないとは思う。

創業者や投資家のExit以外にはあまりない気がする・・・。もちろんこれは重要で、スタートアップが生まれるインセンティブとしてたいへん意義のあることとは思うけれど、「会社」としてはメリットあまりない気がする。

会社は株主のものか?株主の第三者責任は有限であるように会社所有権は制限されているだろう。

株主(だけ)のものではないことの簡潔な説明で今後つかっていきたい。ただ、経営者が最大株主のときはまた違うかな。

給与

給与格差がすくないほうが個々のパフォーマンスもチームとしてのパフォーマンスもよい、というメジャーリーグをもとにした研究はある。

一般企業とは違う・・・と思うけれどプロフェッショナル集団のメジャーリーグでもそうなら一般企業でもそうなのかも。 ただ、専門家を集めるためには給与格差は生まれてしまうのでそこでパフォーマンスあげるためには給与を隠ぺいするような文化が有用なのかも。うーん・・・。

CSRについて

CSRは収益性には関係ないが、訴訟や政府の制裁措置などの逆風下で株価が下がる度合いはCSRにコストをかけていないところよりも少ないという調査がある。 いくつかの判決で敵対的買収が難しくなったデラウェア州での調査では、この結果として環境やコミュニティへの配慮といった効果の見えずらいものへの支出が増えた。そして支出を増やした企業では、長期的には株価純資産倍率が上昇し経営者の報酬も増えているとのこと。これは敵対的買収の危険から解き放たれたからではないか。

(もとの研究を読んでいないけれど、これは事業が順調という原因があってCSRへの支出も増えて株価純資産倍率も上昇しているという関係な気はするけれど、この本の著書はほかの項では相関関係と因果関係をけっこう区別しているので、そうではないようにも思える。もしそうならかなり明るい話。みんなCSRにお金をかけて環境にやさしく住みよい世界にしていきましょう(提案)。

2008年の金融危機の原因

政府の不十分な規制や規制当局の失敗、経営陣の強欲の結果でもなく、経営の構造的な失敗の縮図。 成功の罠、過剰搾取、視野狭窄、仲良し経営者グループ、証券アナリスト、取締役会、真似の応酬、流行りの経営手法や自信過剰

類例としてエンロンの崩壊、アホールドの転落、ユニオン・カーバイドのボパール工場での大事故があげられている。また福島第一原発東芝のWH買収もあるかな。

原因

  1. 職務の細分化と組織の専門
    金融工学の専門家は住宅市場の状況をほとんど理解せず、住宅市場をベースにした商品を販売する銀行員も組成内容や住宅市場について理解していない、これが組織階層や組織間で積み重なり経営者がリスクを判断できなくなっている
  2. 成功による盲目
    成功し始めると細かい注意をいなくなり大胆になっていく。そして懐疑的な声や反対意見は無視される。
  3. 群集心理
    成功したやり方に従わないと保守的で古めかしいと投資家や証券アナリスト、ほかのステークホルダーによって批判される・。
  4. 欲深さ
    経営者だけでなく、それで利益を上げていた株主や政治家、消費者も。 消費者は、どこでどうつくられたかを気にせずに目の前の選択肢からベストな商品を購入しただけ。 (これを欲深さと表現するのは不適切な気もするが、聖書での第三の罪、欲深さとかけただけなのかもしれない)

これをどう防ぐか。 今日のビジネスは複雑になりすぎていて規制や金融政策だけではコントロールできない。 リスクをとって短期的利益をあげることを推奨する株式市場や給与体系ではなく、コミュニティに貢献したいという人間の欲求をうまく活用するべきなのでは、と曖昧に結んでいる。 そのために働きやすい職場にすることを示唆しているけれど思い付き的でいかにも弱くて、その分、ほんとに解決することはできないのではないかと暗い気持ちになる。

昨今、ニュースをにぎわせている東芝の問題もこれと同じように思える。 組織の階層が広がって海を越えて管理・監視不能になって、成功体験の積み重ねとマーケットから評価されることで進むしかなくなってしまう。

どこで戻れただろうか。どんな組織や施策があれば止められただろうか?

感想

ひさしぶりに読書メモを公開。 経営の失敗については、日本軍が勝ち目のない大戦をつきすすんだ「失敗の本質」と似た話は多く、組織の失敗の理由は万国共通なんだなあ、とも思えた。

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)

人が集まる組織には、それ自体に問題が内包されていることを突きつけられたようで、たとえば憧れのテラフォーミングや宇宙開発などの巨大な事業は失敗しそうだと悲しくなった。 やっぱり小規模な組織が自律分散してつながっているほうがよいのかもしれない。産業や技術は進んで強力な道具を使えるようになって物理的には反映していても人間の精神は進歩しないのでしかたないか。

本書は企業というよりは経営者・経営陣にフォーカスをあてている。 ここについては設立の古い大企業と若いベンチャーでまた質も量も違いそう。ベンチャーやスタートアップ方面ではVCまわりでたくさん知見があるとは思うのでよいものあれば読んでみたい。

社員も楽しく働けて稼げる三方よしな会社にしていきたいもので、いい意味でヤバい経営にしていきたいものです。

ヤバい経営学―世界のビジネスで行われている不都合な真実

ヤバい経営学―世界のビジネスで行われている不都合な真実

*1:日本語で経営というとmanagementが訳になりそうだけれど、経営学修士MBAはBusinessだし本書も経営にフォーカスしていたので経営とした。

2016年読んだ本の棚卸し

こんにちは。いつのまにか2016年も終わりそうですね。あっというまです。 2016年2月までは毎月か隔月かで読んだ本について羅列していたのだけれど、3月以降、生活リズムの変化という名の怠惰により止まってしまっていたのでまとめてたなおろし。

この1年は読書量が落ちている。寝る前に布団のなかでしか読む時間とれていない。もっと休みをうまい具合にとって本を読んだり文章を書いたりしなければ。そのなかでも本以外に生き方、働き方、考えたことの振り返りもしたいところ。

キッチンコンフィデンシャル

キッチン・コンフィデンシャル(新装版)

キッチン・コンフィデンシャル(新装版)

ドラッグとセックスと暴力と異常者と食の波乱万丈のシェフ人生。 テンションおかしくて最高の気持ちになる。日本とはだいぶん事情は違うだろうけれど飲食業はやはり修羅道だ。 レストランの裏側やなにを注文すべきか、料理人の符牒などおもしろい。

うまく表現しようと思ったけれど、本の裏表紙に書かれたこの文以上に興味を引くようにはかけないな・・・

キッチンには秘密がいっぱいだ。夏の避暑地のレストラン・ウェディング。アルバイトの大学生が目撃したのは客も花婿もほったらかして、厨房の裏でシェフとセックスに励む花嫁の姿…。たちまち大学を飛び出し、料理の世界に飛び込んだ著者が出会った奇人・変人・荒くれ男に料理界のあの手この手。月曜に魚は食べるな?人を殴り殺せないようなものは鍋とは呼ばない?ウェルダンを注文してくれてありがとう…?超有名店シェフが暴露するニューヨークの喧噪、料理人の手の内。

日本版、似たようなものないだろうか。

ビジネスリーダーにITはマネジメントできるか

ビジネスリーダーにITがマネジメントできるか -あるITリーダーの冒険

ビジネスリーダーにITがマネジメントできるか -あるITリーダーの冒険

原題は”The Adventures of an IT leader”という小説。 上場した新興金融ITサービス企業にて、ITの素養がないビジネス部門の部門長バートンが経営体制の変更にともないCIOに抜擢され、そこでカルチャーショックやトラブルにぶつかりながら学びを深めていくサクセスストーリー。 章ごとに読者に考えてみましょう、というコーナーがあるストーリー仕立てのビジネス書。 Web2.0が流行ったころの本だし、日本と慣習の違うアメリカでの話だけれど、ベンダーマネジメントの苦労やセキュリティ予算の算出方法、組織内での根回し的コミュニケーション、優秀なエンジニアをつなぎとめる方法、アジャイルプロジェクトマネジメント、IT投資の正当性などめちゃめちゃ興味深い。 邦題はちょっとださいけれど、SIerにつとめていたりビジネス寄りのことに興味があるエンジニアが読むとおもしろい、かもしれない。

特におもしろかった概念

ITマネジメントのリーダーシップの3段階

  1. 1つのシステムやプロジェクトに関するマネジメントをひととおりこなせる段階
  2. プロジェクトのポートフォリオインフラストラクチャーのマネジメント、同時にエンジニアチームのリーダーとしての役割ももつ
  3. 戦略と資源のマネジメントに注力する段階

組織の成長によってITリーダーシップが変化する3段階

  1. コントロール指向:心やさしき独裁者、機能別アプリケーション
  2. エンタープライズ指向:シニアマネジメントチームとの関係強化、アプリケ−ションポートフォリオの管理、セキュリティ/コントロール
  3. CIOの設置。経営戦略との連携強化、インフォメーションリソースの活用

ITシステムのポートフォリオ

  • 競合と比べて優位になるITシステムは売上を伸ばすための攻めの投資だが、それも競合が追いついたり保守フェーズになると守りのコストがかかり続ける
  • 企業内で、攻めの投資と守りのコストの比率を監視する必要がある

これが長期的な見積もりをたてることが難しいのでITは金食い虫になってしまうのかもしれない。

人類が知っていることすべての短い歴史

人類が知っていることすべての短い歴史(上) (新潮文庫)

人類が知っていることすべての短い歴史(上) (新潮文庫)

これを知った日はよく覚えていて2011年3月10日、増井先生(先生付けはいやがっていたこともあるけれど先生だ)がインタラクション2011でやったビブリオバトルで紹介してくれたもの。 元素の発見、量子論への洞察、地球の歴史、生命の発生、進化論、人類の起源などなどに興味を持ったベストセラー作家のビル・ブライソンが書いた科学めっちゃおもしろいという本。分厚いけれど、読みやすく、新しく知ることも多かった。自然科学者列伝ともいえる。 あと、科学界の残酷さや、科学者もよく間違えるし嫉妬をしたり不正をしたり足を引っ張ったりすることもわかって厳しい気持ちにもなる。ともあれ、すごい本。高校生の時に読みたかった。

災害ユートピア

震災直前の2010年12月に発売された本。災害は災厄だけではなく、それがつくる「よいもの」もあるよ、という本。 わりと感傷的で主観的な文章でよむのつらかったけれどまあまあおもしろかった、 一行でまとめると、多くの災害で、エリートはパニックを起こすが民衆はうまくやっていくよ、ということ。 エリートがパニックを起こすのは、彼ら彼女らが出世競争を勝ち抜いてきたからこそ人を信用しないからではとのこと。 民衆がうまくやっていくのは、宮台真司のいう終わりなき日常に倦んでいるから、というように読めた気もしたがどうだろう。

ちょっとだけ抜き書き。(孫引用)

社会的ユートピアの最も基本的な2つのゴールは、貧困(飢餓、無教育、ホームレス)の除去と疎外された人や孤立した人のいない社会の構築にある。 ユートピアを作ろうとする宗教的な試みは、カリスマ的リーダーや長老者がいたり、よそ者を作り出す厳格なルールのもとにあったりして権威主義的だが、宗教の絡まないユートピアは、ほとんどが自由と民主主義と権力の共有を目指すものだった。革命やユートピアをさげすむ今日の一般的な傾向は、強圧的ユートピアをめざすものの、公平と分配といった初期の理想がひどく歪んでしまったソビエト式試みの失敗を教訓としている。p34

そうだね・・・。

クライシス(危機)という言葉はギリシャ語を語源とし、何かが最高点に達し分裂する点、すなわちどう変わるにしろ、変化が差し迫った瞬間を意味する。p113 「大惨事と社会的変化」(サミュエル・ヘンリー・プリンス)の冒頭

一過性のものであれば(福島のようにではなく)、日常に文字通り破壊的な変化をもたらして地域のコミュニティを強化する側面はあるだろうけれど、それが普遍的なユートピアをもたらすことにはつながらず、やはり一過性のものでしかないとは思う。

不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か

不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か (新潮文庫)

不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か (新潮文庫)

米原万理さんの翻訳についてのエッセイ。タイトルはミスリーディング・・・。 翻訳というリアルタイムコミュニケーションを支える技術、ほんとすごいと思う。尊敬。おもしろかったけれど翻訳たいへんだなー、自分にはむずかしいなー、くらいの感想しかだせなかった。 米原万理さんだと、だいぶんまえに読んだ「オリガ・モリソヴナの反語法」という過去を探っていく小説がめちゃめちゃよかった。

海のプロフェッショナル

海のプロフェッショナル―海洋学への招待状

海のプロフェッショナル―海洋学への招待状

海関係の仕事をしている女性のどんな仕事をしているかのお話し。海、生物も漁業も気候もおもしろい。高校生で読んでいたら海関係の学部悩んでいたかも。 しかし、あまり印象に残っていない・・・。

最初の一歩 最後の一歩 水野彌一

全日本でも優勝している伝説的な京大アメフト部の伝説の監督の本。勝利への方法論としてなかなかおもしろい。いくつか引用してみる。

練習、とくに身体に何らかの負荷がかかるトレーニングなどにおいて、『限界までの努力を強調することはあってはならない』ということを銘記しておかなくてはなるまい。p14 努力ではないんですよね・・・。

体力がないから長時間練習ができない。そうなると、密度を高める練習しかない。練習のとき、私が選手にいつも守るよういっていることが、一つだけある。それは、「とにかく頑張る、ただひたすらにやるというのだけは、頼むからやめてくれ」ということだ。選手に「お前は、どういう選手になりたくて練習をしているんだ、そのイメージがちゃんとできとるか。なぜ、そういう選手になれない。何が欠点でそうなれないか、その欠点を克服するために、どういうトレーニングをするんだ」ということである。 p42

ただ言われただけのことをがんばるのみんなやめましょう

「お前ら、アホやから、京大へ入れたんや。あんなばかげた受験戦争を、何の疑いも持たずに最後までやり抜く。そんなもの頭がよかったらできるか」p43

アッハイ

勝つためにスポーツをする、結果としてはそうだが、本当は、この勝つこと以上に、はるかに貴重なものがある。だからといって、スポーツは勝つことがすべてじゃなく、参加することに意義があるのだなどと、トロ臭いことをいって取り組んでいたんでは、これは勝つこと以上に大切なものも、手に入らない。

非明示的な目的をたてることはできない場合にそれを得ることができる別の明示的な目的をたてる、とも読めるのかな

真に強いチームを作り上げるために、もし私が京都大学ではなく、体力的に優れた選手を多く持ち、長時間練習が可能な状況にある大学のコーチならば、「短時間で効率よく」などということはないであろう。迷わず「練習は量だ」と強調するに違いないし、これだけやって勝てないのであれば倍やれ、というかもしれない。p53

なるほど

スポーツの本質というのは、勝負を争うことによって楽しむものだと理解している。p58

この楽しみはみな真剣だからこそ、というのはわかる

人材で左右されるため、戦略もかわってくる。 (ボールを扱うポジションは経験の影響が大きく、京大ではなかなか人材がいないため、ランニングプレーがオフェンスの中心になる)

これができるマネジメント尊敬

コーチング・スタッフの確立の重要さ。卒業したての大学院生や、留年して後輩の指導にあたる現状ではなかなか質の高いコーチングは期待できない。コーチとしての能力は、人を教えるという経験こそ大切でこれには4~5年のキャリアが必要になってくる。p58 一部改変

そうだね・・・

ある程度の実力が備わってくれば、精神力であるとか根性といったものはついてくるものである。 理性で開始し観念の世界において完結することこそ、スポーツというものの本質であると考えている。

最初から精神面に行くのは筋悪、と。

いろいろ思い出して涙出てきた。 ちなみに、自分が在学中に聞いた京大アメフト部についての噂はいくつかある。ほんとうなんだろうか・・・。

  • リクルーティングのために、アメフトに強い高校に学生を派遣して家庭教師させ、京大に合格させて入部させている。
  • 新人勧誘時に、新入生が勉強したいんで、と断ると「大丈夫!4年アメフトやって4年勉強すればいいから!」と応えられた。

とか。

自分の見える距離にいた人は、留年しまくってはいても人間的魅力もあって胸板も厚くて尊敬しているしすばらしい企業に就職しているなあ。

活性酸素の話

1ページ目が異常に厳しい気持ちになるブルーバックス

抗酸化作用があって健康にいいとか、活性酸素は健康に悪いとか言われているけれどどういう理屈なんだよ、というのが知りたくて読んでみた。 理解できるようなできないような話。ある程度の活性酸素は人体には必要だけれど多すぎると細胞や遺伝子を傷つけて癌だったり老化の原因になるよということであった。 それはわかって、活性酸素を生む煙草が影響大きいのはわかったけれど、ふつうの食物の中にある抗酸化作用のあるものが健康に良い影響を与えることはないのでは、とも思えたのですがどうなんでしょうか。

健康食品ビジネスについてはちょっと思うところがあるのでどこかで考え整理したい。

弱き者の生き方

弱き者の生き方

弱き者の生き方

五木寛之と考古学者の大塚初重の対談。大戦時に地獄を生きぬいてきたんだな、と思えた。 文字で書くと陳腐だけれど、ほんとうに濃い。自分があたたかい(そして甘やかされた)環境で育ってきたことがわかる。それが幸せなのかどうか。

ひとつ印象に残っているのは、現代人はつらい経験が少ないから弱いのでは、という考えに、でもだからこそ優しさを持てるという返しをしていること。五木先生は大戦時の苦労から、純粋なやさしさをもてないとのことであったのも味わい深く感じる。

記録を見返すと、この本を買ったのは2012年の1月、社会人1年目のときだった。そのときはなぜこの本を読もうと思ったんだったかな・・・。

田舎のパン屋が見つけた腐る経済

田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」

田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」

著者が経営しているタルマーリーというパン屋も、発酵と経済にアナロジーを見出す考え方もおもしろくて、発酵を追求する姿勢も尊敬する。 けれど資本主義に悪意を持ちすぎていて マルクスを都合よいように誤読して引用しているような気がする。

利潤を追い求める姿勢とそれをもたらし資本主義がブラック企業をうんで品質を悪化させる、という側面はなくはないが、その利潤を追い求めなければそれらの問題が解決できるかというとそういうわけではない。ある命題が真だとしても、裏が真であるわけではないとは、高校生もみんな習っている。

タルマーリーさんが値段が高いパンを売ってうまくいっているのも、その独自さや品質がブランド価値を発生させているから(これはこれで難しいしほんと尊敬する)で、利潤を出さないこと自体からではない。つまり、本書で提示している考えは普遍的なものではなく資本主義のてのひらの上でのいちマーケティング戦略でしかないんじゃないだろうか。

脱線するけれど、贈与経済や信頼経済、社会的企業などポスト資本主義がくる、というアイデアが流行ったりもするけれど、いまのところ資本と市場という大きな現象のなかでの補足的なものでしかない、と思ったりしています。 「主義」というと、提唱者と賛同者がいるように思えてしまうけれど、資本主義については発見者がいるだけで自給圏や共産圏の厳しい生活をしている人以外はみなその上にたっているというスタンス。 とはいえ、その内面で単純な価格という経済合理性以外の、中長期的でこれまで評価しづらかった文化やコミュニティのような多面的な側面を価格に転嫁させる動きはあって、その手段や考え方はより普及していくと思うし重要だとは思っています。 ここらへんについてはもうちょっと議論したいし考えを深めたい。

農業問題

農業問題: TPP後、農政はこう変わる (ちくま新書)

農業問題: TPP後、農政はこう変わる (ちくま新書)

頓挫しそうなTPPや農政の問題を整理している。GHQの農地開放の影響でかいですね(小学生並みの感想)。 新自由主義的な立ち位置で、生産性あげればだいじょうぶだよ、という論調でドライに感じることもあるとは思うけれど巷にあふれる扇動的で煽情的なTPP亡国論と対抗しようとするとこうなるのかな。賛成派も反対派もあまり冷静で建設的な議論ができているようには思えない。TPPについての私見はおいおいどこかで。 小泉進次郎さんが切り込もうとしている農政、利権(それで食っている人)も多いし問題だらけであるのだけれど、どうなっていくんでしょう。 数値に現れにくい農業の多面的機能を維持しつつ、効率化を進める方法はあるのかなー。

植物工場ビジネス

植物工場ビジネス 低コスト型なら個人でもできる

植物工場ビジネス 低コスト型なら個人でもできる

死屍累々の植物工場のことというよりは、太陽光利用型の低コストなものだと個人や家族経営でも負荷高くなく食っていけるよ、という話。 新規就農で食っていくためのテンプレートのひとつになるのかもしれない。要素技術の名前など知れて、サクッと読めて導入書としてはおもしろい。 植物工場、いまはトマトとかベビーリーフや葉物がメインだけれどノウハウも貯まってどんどん品目も増えて効率もあがっていくのではないかと思える。 植物工場先進国であるオランダの、大学などの研究機関と、民間のメーカー、農業者が密に連携で来ている様子はすごい。日本ではうまくいっているような事例あまり聞かないけれどなにが違うのだろう?ロケーションや規模の問題?文化?移民という安価な労働力の有無もひとつかな。

大企業が参入している閉鎖環境型のものについてはほとんど触れられていないけれど、日本でやっていくのはマーケット的に安価な露地と競争できないので海外に活路を見出してほしいと思うけれど、それを日本の企業がするには地の利もないし決定的なノウハウもないんじゃないかという気がするこのごろです。

MBAオペレーション戦略

MBAオペレーション戦略 (MBAシリーズ)

MBAオペレーション戦略 (MBAシリーズ)

「ビジネスは戦略とオペレーションの対話である」という言葉に惹かれて読んでみたけれど、あたりまえのことしか書いていなくてちょっと残念。 現場のオペレーションをテーマにしたものでは、苦心の改善のケーススタディか、トヨタ生産方式くらい抽象度高めたものかが読みたいのだけれどなにかよいものはないでしょうか。 オライリーのWebオペレーションみたいに、流通や小売や飲食やメーカーなどそれぞれの業界で人々がどうオペレーションを改革してきたか語る本、あったりしないだろうか。

ザ・チョイス

ザ・チョイス―複雑さに惑わされるな!

ザ・チョイス―複雑さに惑わされるな!

ザ・ゴールのゴールドラット博士の小説風ビジネス寓話。 いろんな言葉や考え方がでてきたけれど、一番印象に残ってて同意したのは「ものごとは、そもそもシンプルである」ということ。 既存のビジネスモデルが巨大化して組織と結合して硬直してしまったときに、どう整理をつけられるのだろう。複雑な関係性と慣習を整理できる気力と能力をもった人間は少ないし、いたとしても受け入れられる環境は少ない。 その高コストさをにスキマを見つけられる新規参入者がイノベーションを起こすという市場の変化に期待できる業界はあっても、インフラや行政などの非営利組織はそうはいかないし、自組織やこれまで所属していた組織だったらどうできるか考え込んで答えは出ない。

邪宗門

邪宗門 上 (河出文庫)

邪宗門 上 (河出文庫)

昭和初期から戦後すぐまでの激動の日本を、モデル(どう考えても大本だ)はありつつも架空の新宗教団体を、教義や歴史も創作して中心に描き、日本の精神史を著したともいえる大作。 これは、めちゃめちゃおもしろい。小説の評価はむずかしいけれど、名状しがたい読後感がある。宗教、政治、革命、虐げられたもの、人間の業を描いた世なおし思想の極限についての思考実験。

以下メモ ・3種類あるという真実の事実的真実、想像的真実、利益的真実を区別したい。 ・アストゥリアス革命やクロンシュタットの反乱など調べる。

老い方、六輔の。

老い方、六輔の。

老い方、六輔の。

亡くなる前に貸してもらって読み始めていたのだけれど放置していたら著者が亡くなったというニュースをみて読み直した。 言葉への感覚、旅への感覚が自分のものとは違ってすこしよかったけれど、食にまったく気を遣わなかったのが共感できず・・・。 うーん。しかし、これを貸してくれた年下の女の子はどう思って読んでどういう思いで貸してくれたのだろうか。

スナックちどり

じつは初ばなな(教科書を除く)。離婚や死別といった苦悩をどう受け止めていくか。自分を好きになれない人間についてというのはすこしどきっとした。あと百合です。 ばなな、よいなあ。

神去、なあなあ日常

神去なあなあ日常 (徳間文庫)

神去なあなあ日常 (徳間文庫)

ウッジョブの原作。林業のことを調べる機会があり、導入に軽い小説を読んでみるかと思った次第。林業のことや主人公の成長よりも、これからの消えゆく限界集落の悲哀を想像すると厳しい気持ちになる。。あと木とは男根のメタファーです。

親鸞

親鸞(上) (講談社文庫)

親鸞(上) (講談社文庫)

五木寛之の本。帯の感想が結構厳しい感じだったけれどきわめて人間の魅力にあふれる青春小説だった。

なんだよ「泣けた!深い感動!続きを切望!」て・・・。

それはさておき、もともと謎の多い人生でフィクション部分も多いのだけれど末法の世と聖と俗のあいだの悩みを描いている。 この親鸞の欲、おもに情欲に苦しみ克服しようとさらに悩むさまはわりと刺さる。自分だ。あとせっかく京都に住んでいるのでゆかりの地、六角堂やら吉水やらいってみたい。

この「人間」親鸞の系譜で、石川の一向一揆が発生して現代では大谷系の本願寺やら俗にまみれまくった(褒め言葉)浄土真宗になっているところがおもしろい。 ここらへんは、「京都と闇社会~古都を支配する隠微な黒幕たち」にも出ていたなあ。

ファイトクラブ

狂気の話で社会変革っぽいテンションであったがその実・・・。わりと読むの疲れる本であったがなかなかエンジョイ&エキサイティン。 筆致も視点も違いすぎるけれど虐殺器官を連想する。狂気の組織と運動がどうつくられるかは興味深い。しかし、これ映画になっているけれどどうやって撮ったんだろう。見たくなってきた。あと石鹸つくりたくなった(意味深)

横浜駅SF

横浜駅SF (カドカワBOOKS)

横浜駅SF (カドカワBOOKS)

カクヨムで読みました。なかなかおもしろかった。 出版もされてすごい。 https://kakuyomu.jp/works/4852201425154905871

さくさく読めておもしろかったけれど、これが好きならと推薦されたアドバードは挫折してしまった。

昨夜のカレー、明日のパン

木皿泉の小説。人間をいとしく感じてしまった。結婚したい、というよりも生活(の一部を)共有して関係性を育めるパートナーを見つけたい(言語化すると気持ち悪いな・・・)。

映画

フライド・グリーン・トマト

フライド・グリーン・トマト HDマスター [DVD]

フライド・グリーン・トマト HDマスター [DVD]

物語を簡単にいうと、1930年代のアメリカ南部で傷心の女性2人のはなしと、その話を老人ホームで聞く現代(80年代末?)の女性のはなし。 けっこうショッキングな場面も多いのだけれどそれ以上に笑えるところも多くて、わりと感情揺さぶられて楽しい。いい映画だった。 タイトルは2人がやっているカフェの看板メニューなんだけれど、レシピ不明でなぞ。

原作は、英語版が評判よさそうで読んでみたい(読むとは言っていない)

シン・ゴジラ

評判になっているので見に行ったわけです。おもしろかった。 ただ、2回くらいあった矢口さんの感情的で中身のない演説の空虚さが鼻についた(実際の政治でも同じだろうか?)けれど、レビュー記事ではあまりそういう話になっていないけれどどうでしょうか。僕らの享受している平和は、どれほどのものなのだろう。

日本のいちばん長い日

日本のいちばん長い日 [DVD]

日本のいちばん長い日 [DVD]

2015年の役所広司版。 見終わった後に感想をひねり出そうとするも嘆息がでるばかり。 本土決戦を避けたい以上に、現代からみると、ソ連は不可侵条約を破って攻めてくるしマッカーサーの統治も期待以上だったこともあって、和平派にシンパシーを覚える。けれど、クーデターをする側からすれば無条件降伏すればどうなってしまうかわからないという恐怖があったのだろうとも思える。皇軍不滅を熱心に教えられて狂信者になっていた側面もあるのだろう。

その他

本当にあった呪いのビデオ 67,68,69

ほんとにあった!呪いのビデオ 69 [DVD]

ほんとにあった!呪いのビデオ 69 [DVD]

まず、圧倒的にシリーズものであった「禁忌」がよかった。震えた。最初の導入からは想像できない結末であった。男、森澤である。

その他は、光るものはあったけれど印象に残るものは少ない。 気付いちゃった系や存在感ある系が少なかったのもあるかな。防空壕や火葬場廃墟は臨場感あってよかった。公園の花の話は不気味であった。

 関連記事

dai.hateblo.jp

dai.hateblo.jp

dai.hateblo.jp

まとめ

2016年の目的であった生き抜くはいまのところだいたい達成できている。

2016年1月に読んだ本

2016年1月。 進捗はどうだろう。なにをしただろうか。知識や関係を深めることはできたか。終わりなき日常を生きている感もあるけれど、脱していかねば。

やっぱり、まとまって本を読んではいないのだけれどいくつか読んでみた。

止まった時計

止まった時計 麻原彰晃の三女・アーチャリーの手記

止まった時計 麻原彰晃の三女・アーチャリーの手記

麻原彰晃の三女、アーチャリーの手記。なぜか住んでいる家のリビングにサイン本があったので読んだ。

オウム関連は、だいぶん前ではあるけれど、森達也による内部の取材「A」や村上春樹が信者へインタビューをした「約束された場所へ」、警察や公安によるオウムの捜査を描いた「極秘捜査」とあとはWikipediaとかで読んだくらいで、ひとつの組織(あとで分裂したが)に対して、これほど多様な見方があるのかなー、と思っていた。 そのなかで、地下鉄サリン事件時に12歳で、教団の教祖に次ぐ地位である正大師の1人であった著者が20年のときを経て著した本書は読ませるものであった。

感じたのは、階層的で閉鎖的な組織が外圧によって先鋭化していくことの怖さ。そして、人と組織の不確かさ。 教祖であった麻原彰晃全盲になり、まわりの人の言葉を信じるしかできず、その周囲の人間は「尊師の意志に逆らうのか」と権威をもって己の影響力を高め、さらに外圧を権威にすることで疑心暗鬼を拡大再生産していく状況はかなり特殊ではあるが、いわゆる日本的組織は無縁だろうか?これは、オウムは悪、という前提から信者は傷つけてもかまわないとする警察やマスコミとも通じるものがある。 そうした状況からの過度な期待や重圧、それによる軽蔑と憎悪の対象となり翻弄された著者の人生にすさまじさを感じる。オウム事件はなんだったのか、もう一度調べなおしてみたい。

それと、麻原彰晃が著者に語ったという言葉には学びがあると思ったので共有 「教団は一人一人でできている。組織をみてはだめだ。」(p84)

日本の雇用と労働法

日本の雇用と労働法 (日経文庫)

日本の雇用と労働法 (日経文庫)

日本の雇用の状況とその変遷、それに対応する法体制の変遷をするどく描いている。

労働に関する規範とルールがどう形作られてきたかが描かれていておもしろい。特に、戦時中の「皇国の勤労戦士」の生活を保証するための年功序列へ誘導する政策方向が、戦後、急進的な労働運動に継承されていったことが興味深い。それも、占領軍や国際労働運動の勧告は年功賃金精度を批判していたにもかかわらず。

本書でとりあげられる、各問題、法体制と現実の齟齬は、日本のメンバーシップ型雇用が通底している。 これは、欧米のジョブ型とは違い雇用契約で労働内容を明確にせずに正社員として採用する文化。これにより労働の柔軟性ももちつつ、手厚く保護される正社員と周辺の非正規労働者と格差、配置転換や自己犠牲など負荷が集中する正社員といった構造を持つ。

労働と雇用の問題、日本の社会の大きな問題だとは思うのでもうちょっと掘り下げたい。

新しい市場のつくりかた

新しい市場のつくりかた

新しい市場のつくりかた

要約「今までにない新しい市場をつくるような商品を開発しようとするときに必要なことは、新しい問題の設定である」

重要だと思ったことや思いついたこと - 潜在ニーズを発見しようとするのではなく、発明せねば顕現しない - 製品も機能ではなく、ライフスタイル - 「ある技術を必要としている文化」と、「それが必要な文化を見つけられない技術」をつなぐ場がないのでは - 本田技研工業黎明期の話。本田宗一郎が自転車に通信機用のエンジンを載せ、販売したら成功したというお話。このエピソードを「本田宗一郎は軽バイクの販売から会社を立ち上げ成功した」ではなく「本田宗一郎が発明したのはエンジン付きの自転車ではなく、女性が気軽にエンジン付きの乗り物を利用する生活文化だった」というのが重要 - ハーレーダビッドソンジャパンの話。簡単にいえば、機能性ではなくライフスタイル・文化を販売するということなのだけれど、このためにかなりの努力をしている。販売会社は、法改正(高速道路の制限速度を自動車とあわせたり高速道路でも2人乗りできるようにしたり)のためのロビーイングをしたりユーザ会を組織するなどして、代理店も顧客の家族も訪れられる店舗にしたりツーリングやオフ会などのコミュニティ活動を推進している。 - 顧客には医師や弁護士、会社役員など社会的地位の高い方が多いそうであるけれど、その中でも、地方から東京に出てきた人のなかで、年に1回村祭りに参加するようなコミュニティ参加意識の高い方が多いのではないか、という示唆があるのが興味深い。そして趣味のコミュニティをつくり社会参加できているのではないか、と。コミュニティ活動の媒介になるような製品がありえるということが発見。 - 「意図というのは、一種のフィルターです。そして、自分にとって最も手強いフィルターは、自分自身の意図です。自分の意志で自由に歩いているつもりでも、自分の思いどおりに歩ければこそ、自分は自分の思わないところには決して歩けない。こんな自由ほど不自由な状態があるでしょうか」 - うちのサービスを使っている顧客は、よい友人を得ているだろうか、また、よい友人を得ることの手助けをできているだろうか。

映画

恋はデジャ・ブ

めっちゃよかった。 簡単にあらすじをいうと、同じ一日を記憶をもったまま繰り返しているいけすかない男が、その1日を繰り返していくなかで人生を見つめていく話。1日を大事に生きようと思える作品。タイムリープものの傑作。

マッドマックス 怒りのデスロード

最高。狂気のポストアポカリプスは銃夢っぽさもあって、テンション高まる。 荒野に文明を築こうとしているイモータン・ジョー様尊敬です。アクションすごいのだけれど自立のための人間の闘いとしてもよい。

トースト

トースト~幸せになるためのレシピ~ [DVD]

トースト~幸せになるためのレシピ~ [DVD]

イギリスのごはん映画。 料理下手な母が病でなくなったあとに、父が雇った料理のできる家政婦がやってきて・・・。という裏面のあらすじからは想像できなかった内容の映画であった。と言っておく。 こまごまとした会話や演出のユーモアはよかったけれど、あまり気分良い映画ではないのと肝心の食事があまり美味しくなさそうでイギリス感あった。

そういえば、最近見たイギリス映画3本、どれもわりと脈絡なく主人公がゲイだったりレズビアンだったりする(間接的には主人公の悩みとつながっているとはいえ、観ていると唐突に感じられた)。流行っているのだろうか。

つくった料理

洋菓子

個人的に私淑しているお菓子の先生から、ほんとに美味しいパウンドケーキとカヌレラングドシャの作り方を学んだ。バター使いすぎるけれどほんとおいしい。つよい。

鶏ガラで水炊きを何度か作ったけれど、安定しない。鶏ガラの個体差なのだろうか。天天有スープつくりたい。

2015年12月に読んだ本

師走ですね。お元気ですか。無事ですか。 毎年ながらあっという間の年末という感じもあって、あいかわらずやりたかったことができていない、とも感じています。

人目を気にせぬ勇気を持とう。 書をもって街へ出ることをテーマにしていましたが、そんなに読めていません。いわんや、2015年に読んだすげー本、みたいにはまとめられない。 とはいえ、今月読んだ本だけでもとりあげていきます。

すきやばし次郎、旬を握る

すきやばし次郎 旬を握る (文春文庫)

すきやばし次郎 旬を握る (文春文庫)

1994年にヘラルド・トリビューン・インターナショナル誌で世界のレストラン第6位に選出されたり、昨年はオバマ大統領来日の際に安部首相と会食をした超名店の店主、小野二郎に密着し、寿司についての考え方や技術を聞き出して解説したたいへん有用な本。写真が多くてたいへん便利。 なにより驚かされるのは、その味をさらに向上させるための工夫や試行錯誤をしつづけていること。 寿司モチベーションが上がってきたし握っていきたい。

もちろん、握るためではなく寿司を愉しむためにもよいと思う。副読本は体に美味しい魚の便利帳かな。

革新幻想の戦後史

革新幻想の戦後史

革新幻想の戦後史

共産主義日教組、大学運動、論壇・・・といった革新思想の流れが、どういったところから出てきて、どうなっていったかを著者の視点も交えつつ客観的に描いている。分厚い単行本だけれど読み応えもあり読みやすい。

革新幻想とは、反体制な側面もあり理想主義的ともいえるけれどより人類を進歩させよう、平和な世の中にしようというたいへん前向きな考えだったはずだけれど、、知識人たちの地に足のついていなさや、いつからか論壇でのプレゼンスや組織自体を目的としてしまって大衆から失望されてしまっているように思える。

スペインのポデモスのこと言葉は重い。 「左派は庶民に語りかけていない。庶民に届く言葉を発さなければ左派は勝てない」

個人的には「戦後」以降の革新勢力の趨勢や状況についてつながりが気になった。 労働組合農文協などはなぜその領域からでて原発再稼働反対や安保法制について明示的に主張するようになっているのか。社民党民主党の凋落、若い世代からでてきた革新勢力と前の世代のそれとのかかわりなどどうなっているのか、知りたい。

料理のコツ 解剖図鑑

料理のコツ 解剖図鑑

料理のコツ 解剖図鑑

絵が大きくて情報量は少なかったけれど知らないこともあっておもしろい

知らなかったことをいくつかピックアップ。それぞれに簡単に理由も解説されている。

  • まるごとのジャガイモは水から茹でる
  • 緑黄色野菜を茹でるときはふたをしない
  • じゃがいも、さつまいもの裏ごしは熱いうちに
  • にくずれしにくい粘質の芋(メークインやインカのめざめ)と、ほくほくとした粉質の男爵やキタアカリをつかいわける
  • ひき肉は成型する前に塩をしてよくねる
  • 魚を煮るときは落し蓋をする
  • 最初に入れるスパイスと最後に入れるスパイス

イベント

すし教室

中央市場で開催されていたので参加してきた。 参加者32名に講師6名ほどいてかなり丁寧に教えてもらえた。テーマは12月ということもあってパーティとしてのてまり寿司やちらし寿司メインであったけれど、いろいろ質問することができた。 参加費2500円はお得。

魚のさばき方から和食(中級)などいろいろな教室が日々開催されているなかですし教室は男性の割合多いらしい。みんなすし、目指そう!

とろあえずすし桶欲しくなってきた。

つくったもの

  • シュトーレン
    • クオカのレシピを 参考につくってみた。かなり手間かかるしお金もかかるけれど、美味しい。準強力粉が手に入らず強力粉オンリーでつくったらスコーンのようなさくさくさになった。 2本で材料費2000円くらいかかっている。ドライフルーツとアーモンドプードル(からつくったマジパン)、バターが高い。
  • パウンドケーキ
    • シュトーレンの残った材料でつくった。たいへん美味。粉の配合についてはお菓子大先輩から指南を受けて、ちょびっと強力粉をいれたところしっとりさくっとしてよかった。
  • ローストチキン
    • 先輩から丸鶏をもらって、調理してね♪とのお達しが出たので焼いた。たいへん美味だけれど、切り分けるのと後始末がたいへん。調理は楽しい。あとで残った肉と骨を鍋にいれてリゾットにしたら脂がたいへん染みてこれもよし。
    • いろんな鍋をしました。やっぱり、野菜が美味しい。きのこうまい。白菜おいしい。白ネギ、特に下仁田ネギは最高だった。にんじんやたまねぎをいれてもあり。ほか、いろんな葉物をいれてもよかった。今年は春菊があまり香りのっていないかな。時間があるときは鶏ガラから出汁をとる、なければ、合わせ出汁に味噌と醤油をいれて即席。とり野菜みそ好きです。もっと鍋したい。くじらとかいのししとかふぐとかぶりとかいれたい。

2015年10月に読んだ本

先月に引き続いてあまり本を読めていない。

ちゃんと読んだのこれくらい。 dai.hateblo.jp

文化的なことはなにかしたかなと振り返ると、巨大なカボチャをくりぬいてカボチャプリンをつくったり、もらいものの紅玉でアップルパイをつくったり鶏ガラから出汁をとったり自家製ポン酢をつくって水炊きをしたりとごはん関係ばかり。 普段作らいないものをつくるのはレシピを読み比べたり、慣れない道具をつかってみたりと試行錯誤感があって楽しい。反省点も多いけれど、システム開発とかと違って失敗してもまあそこそこ美味しく食べれるので幸せ。便利です。

ごはん以外はどうだったかな・・・。

あとはひさびさに東京に行ったりしました。

11月もがんばるぞ。

人体について人間が知っていること 「からだの一日?」読書メモ

だいたい知っていることばかりじゃないかな、とあんまり期待せずに人の体をテーマにした啓蒙書読んだらわりと知らないこと多くておもしろかったのでまとめてみた。 怪しい研究成果もたくさんあるけれど、398ページ中、50ページほどの参考文献があるので興味ある人は出典元探してください。

「からだの一日?あなたの24時間を医学・科学で輪切りにする」

からだの一日―あなたの24時間を医学・科学で輪切りにする

からだの一日―あなたの24時間を医学・科学で輪切りにする

括弧内はコメントです。

細菌と腸内環境

  • 健全な人体を構成するすべての細胞の中で、99%以上が皮膚や腹部などに暮らす微生物
  • 小腸には1mlあたりに1億個の細菌細胞がひしめきあっており、大腸にいたっては1mlあたり1000億個もの細菌細胞がいる
  • これらの細菌の総重量は1人当たり900gを越えると推測されている
  • 住みつく微生物は、個人の遺伝子構造や住環境、飲食物などによっても決まる
  • 母乳で育った赤ちゃんはビフィズス菌のコロニーができる傾向があり、人口授乳の赤ちゃんに比べて一般に胃腸の問題に悩まされることが少ない(これは微妙な話で本当かどうか気になるところ・・・)
  • 常在菌がいないと腸は正常に成長しない
  • (一部の)細菌が食餌からカロリーを得る効率を上げ、抽出したカロリーを脂肪細胞に蓄えるのを助けている
  • 太りやすさには、腸内細菌の種類が影響するのではないか?(これは、どの細菌が住みやすいかという遺伝や母親から受け継いだ細菌の影響もあるかもしれない)
  • 夜よりも朝のほうが炭水化物の燃焼が早い
  • 食物の消化管通過時間は、男性で55時間、女性で72時間と推測される
  • これはアルコールや食物繊維の摂取により早くなる傾向がある
  • 女性の場合、経口避妊薬を服用していると遅くなる。若い女性より年長の女性のほうが通過が早くその境はだいたい50歳くらい。このことは、女性ホルモンがなんらかの影響を与えていることを示唆している

感想) 体にいる多くの細菌を考えると、人体はそれらとの複合生命システムだという考えは人の存在の脆弱さを示唆していてなかなか魅力的ではある。 これを広げて地球もその表面にいる有象無象の生物との複合生命システムだと考えるとアメリカのニューエイジっぽいスピリチュアル感がでるのでやめておきたい。

腸内の細菌環境が体調に大きく影響を与えているというのはそうだろうな、とは思っていたけれど人為的な腸内の菌叢改善が行われた例はまだないようなので今後に期待。めっちゃ胃腸強い人間の腸内細菌をなんらかの手段で取り出して胃腸弱い人間に移したらどうなるのか気になる。

睡眠

  • あくびは単独で起きることもあれば、伸びや場合によってはペニスの勃起をともなうことがある
  • あくびは呼吸に特定の役割を果たしているとされてきたが、現在では伸びに近いものと考えられている。すなわち、睡眠と覚醒のあいだの状態で血圧と心拍数を増やし、筋肉と関節を動かす体の働きであると
  • あくびは、自分の考えや状態を言葉以外の方法で知らせる社会的な信号とも考えられている。あくびが伝染するのもこれで説明できるかもしれない
  • ヒトは子宮にいるころ(受胎後約11周)からあくびをし始めるが、他人のあくびが伝染するのは生後1年目で、それも2人に1人の割合だ
  • あくびが伝染しやすい人は他人の顔を見ることでその人の考えを読むのに長けているという仮説がある
  • 昼過ぎに眠くなるのはなぜか?食事をとったあとの胃の伸展に催眠作用があると考えられている。この過程にはインスリンが関与している可能性がある
  • しかし、実験では、ランチを食べると昼過ぎの停滞はひどくなるか長引くが、ランチを食べていなくとも停滞はあるためランチが停滞の原因ではないと思われる
  • 疲労が原因と推測される単独の交通事故の割合を調べると、午後4時頃は午前10時あるいは午後7時に比べて3倍にもなるという
  • クック諸島サンゴ礁島、プカプカ島では、島民は寝ている人の睡眠の深さや体の位置と動きによって35種を超える昼寝を区別するという
  • 昼寝が反応速度や注意力を改善させるという研究は山積している。学習能力も改善させる

感想) 昼寝を文化として定着させてほしいので広告会社の人がんばってほしい。

ストレス

  • ストレス耐性はセロトニン輸送体遺伝子によって影響される(ウディ・アレン遺伝子というあだ名がある)
  • マインドフルネス瞑想が不安障害や慢性の痛み、緊張亢進症に対する治療法になるという研究は多い(ウィスコンシン大学 リチャード・デイヴィッドソン)(ここらへんの健康とか性格についての研究は眉唾ものも多そう)
  • ストレスの軽減にはある種の音楽やユーモア、仲間づきあい(社会的支持)が効果的
  • 有酸素運動によって不安感を軽減することを立証する研究は多い。(不安感を減らすことは本当によいことなのか?)
    • 鬱症状にも効果がある。逆に運動をしないと鬱症状が頻発することを感じるという研究がある

運動

  • 午後遅く(夕方頃?)と宵の口は多くの運動に最適な時間と考えられている。筋肉も強く、関節ももっとも柔軟になる
  • また、この時間にトレーニングしたほうが筋肉も良く付く。気管も大きく広がり反応時間も短くなる。これは深部体温と関連があるとみられている
  • バランス感覚・正確さ・精密な動作を要するトレーニングは早い時間が適している
  • 寝ている間に昼間押しつぶされていた脊柱が伸びるため朝には一番身長が高い
  • 疲労の原因は筋肉ではなく脳、脳と筋肉をつなぐIL-6受容体ではないかと見られている
  • トレーニングによって学習能力と記憶力が強化され認知症を防ぐことが出来る(ほんとか?)
  • マウスの実験では走ったマウスはそうでないマウスに比べ、海馬に2.5倍の新しい細胞をつくっていた
    • これは、運動によって脳周辺の毛細血管の成長が促され、これによって血流が増え酸素レベルが上がり脳由来神経栄養因子(BDNF)の量が増えるためと考えられている
  • 中年のころに1週間に少なくとも2回運動した高齢者は、何もしなかった同年齢の人に比べて認知症や記憶喪失に悩む率が5-60%低いという
    • 特に高齢になってアルツハイマー症を発症する確率が高い遺伝子を持つ人にとって運動は効果的

感想) 運動して脳を鍛えたい

  • 早い時間にアルコールを飲むと、夕暮れに同じ量を飲んだときより深く酔う
  • 大麻やハッシッシのようなドラッグは時間感覚を伸ばす効果をもっている
  • 酒を飲み始めた後、血中アルコール濃度がピークになるのは10~90分後である
  • 女性のほうがピーク時の濃度が高い、これは女性の体は同体重の男性より多くの脂肪をもち、水分が少ないためと、分解する効率が低いためである
  • ほか、胃が空かどうか、睡眠をとっているかどうかで血中アルコール濃度は影響を受ける

感想) 昨日のみ過ぎてつらい

人の好みと性

  • 蠱惑的な顔の見知らぬ人が自分にじっと視線を注いでいる場合、その顔に惹かれ報酬を予期する脳内のドーパミン系が活性化される。そしてこの人が自分から目をそらすとこの回路の活動は停止する
  • ティエラ・デル・フエゴ諸島に「mamihlapinatapei」という表現がある。この言葉は世界でもっとも圧縮度の高い単語としてギネスブックに載っている。この語の意味は、「二人とも望んでいるけれど、どちらも先にそれをするつもりはないことを、相手がしてくれるのを望みつつ互いの眼を覗き込む」行為だそうである
  • 私たちの大半はきれいに左右対称になった顔立ちを好む。そういう顔は強い免疫系と優良な遺伝子を示唆するからだという。非対称性はしばしば胎児期に生じ、その原因は栄養不足、疾病、寄生虫、近親交配などの生物学的なストレスと考えられる
    • (と、書いてあるけれどこれは眉唾だと思う。非対称性な顔の人が、胎児期にどう過ごしていたか遡って調べられないし、胎児期に栄養不足や寄生虫がいるからと比較実験するのは倫理的にできないから)
  • 男女ともに異性の女性っぽい面立ちに惹かれる
  • 男性は排卵期の女性の顔をことに好む。どこが魅力的になったかは微妙とのこと
  • ヒトは類人猿のなかでももっとも匂いが強い(タスマニア大学の動物学者D・マイケル・ストダート)
  • 脇の下の匂いは性的興奮を誘う。これはヒトが二足歩行しているからではないか?これを嫌うのは文明社会の習慣かもしれない
  • 母乳を出している女性と一緒にされた泌乳していない女性は、性的衝動が17-24%上昇したという実験結果がある
  • 幼児期に誰にも触れてもらうことが極度に少なかった乳児には発達障害がみられた。(この調査はチャウシェスクの政権が倒されたあとのルーマニアでなされた。)
  • 恋が始まったばかりで無我夢中の男女はいずれも、血液中のコルチゾールレベルが高い
  • 恋する男性はテストステロンレベルが低く、反対に恋する女性の場合は高い(どう実験したんだろ)
  • テストステロンが増えると女性はより性的に積極的になり、このホルモンが少なくなると男性は攻撃的でなくなるようだ
  • 相手を特定せずセックスを求めるだけの情欲の段階では、アンドロゲン回路が作用する。好みの相手を追い求める恋愛感情はドーパミン系と強く結びついている
  • 相手との子どもを扶養し長い期間一緒にいたいと思わせる、ヴァソプレシンとオキシトシンの2つのホルモンがかかわる神経化学系と結びついている
  • 若い男性の大半は1日の内に合計3時間もの勃起を経験する。大半は就寝中である
  • レオナルド・ダ・ビンチ「(ペニスは)ときおりそれ自身の知性を見せる。男が刺激に反応して欲しいと願うときには、頑固に言うことを聞かないくせに、ときどき主の許可も意向も関係なく勝手気ままに動く。男が起きていようが寝ていようが、己の意思のままに振る舞う。男が寝ているときは起きており、男が起きているときは寝ている。男が動いてほしいときには、その望みを拒絶する。それが動きたいときには、男が抑える必要がある。だから、この生き物は男とは別の生命と知性をもつように思われてならない」
  • 勃起を開始して維持する血流を起こしているのは一酸化窒素。これがペニスの血管を囲む平滑筋に対する弛緩剤として作用し血管が拡張する
  • 射精の引き金がなにであるかはほとんど解明されていないが、腰椎にある小さな細胞群が射精を起こしているらしい。これが生殖器かたの知覚キュー(?)と脳からの性的な知覚を処理し、筋肉のけいれんを制御する信号を出し、脳の腹側被蓋野(オーガズムに達したときに活性化される快楽領域)の細胞とシナプスを形成するようだ
  • エストロゲンは語源とは違い、性的興奮にはさほど関与していないが膣をセックスのために準備し、触覚受容体の感度と反応を高める作用をする。性的興奮はこれらの受容体と生殖器周辺の特殊な神経終末から得られる
  • 少なくともイタリアの研究者たちによれば、Gスポットは実際にある。膣の数センチメートル奥にあり、体の前側で恥骨の裏側に位置するという。この場所は、男性で言えば前立腺に相当するスキーン腺がある。この場所をやさしく押すと痛覚閾値が40%あがり、オキシトシンレベルが通常の5倍にまではねあがる。このオキシトシン放出がセックスの鎮静効果を説明するかもしれない
  • オーガズムを感じる女性とそうでない女性がいる原因は、35-45%は遺伝に帰せられるとされるが、それ以外の原因もありそうである
  • オーガズムのときの脳活動は、ヘロインやコカインで快感を得られたときのパターンと酷似している
  • オーガズムをもっとも頻繁に経験する男性では、死に至る心臓発作を起こす可能性が半減する
  • 週に1,2度、セックスする学生は層でない学生に比べて免疫グロブリン(抗体)レベルが30%高かった。(因果か相関か・・)
  • 精液に含まれ、膣から吸収される数種の化合物(テストステロン、エストロゲン、プロスタグランジン)が抗鬱効果を有することを示唆しているが性病や避妊などの点から非推奨(せやな)

感想) セックス、健康にもいいっぽいのでもっと積極的にしていきましょう

風邪

  • アドレナリンとコルチゾールのレベルは夜間になると下がり、夜間にぜんそく発作が起きる頻度を何百倍にも増やす
  • 平均すると大人は1年に約2-4回、子どもは約4-8回風邪を引く
  • 子どもが風邪を引き、親がそのウイルスに対する免疫を持っていないとすると親が風邪をひく確率は40%ある
  • 風邪にかかった際、くしゃみは午前8時頃がもっともひどい。午後5時から8時は一番少ない
  • 咳は正午から午後6時のあいだにピークがくる
  • ヒスタミンやアレルゲンに対する皮膚の藩王は、就寝直前の夜がもっともはっきりしている
  • 医薬品も体内時計により影響を受けるようだが詳細はわかっていない。抗がん剤の副作用は時間によって変化があるようだ
  • ウラジミール・ナボコフ「眠りは世界でもっとも馬鹿馬鹿しい友愛会だ。会費をふんだくったうえに、ろくな儀式をしない」
  • 入眠は緩慢な過程ではなく神経の飛躍的な変化でありフリップフロップのようなものと考えられている。ナルコレプシーの患者はこのスイッチが不安定になっているようだ
  • 入眠時に発生する短い痙攣(ミオクロニー発作)は子どもより大人に起きることが多く、神経質な人や疲れている場合に起こりやすい
  • 睡眠が足りないとたくさん食べるようになるのはレプチンの供給が減るからだと考えられる
  • 同じ運動量、食事量であっても睡眠時間が短いほど太る傾向がある。
  • 東に向かうフライトの場合の時差ぼけの症状:ぼんやりとして元気が出ない、胃腸の不調、日中の疲労感、夜間の不眠
  • 西に向かうフライトの場合の時差ぼけの症状:早すぎる目覚め
  • 異なる時間帯を行き来した場合、脳の概日リズムは1日程度で修正されるが体内組織の末梢時計の修正は1週間以上かかる
  • 頻繁に時間帯をまたぐ国際線の客室乗務員を調査したところ、5年間従事すると記憶力や認知能力に問題がおきている
  • アメリカの総労働人口の15%ほどが夜間働いている
  • 三交代勤務を10年間続けた看護士は夜勤しなかった看護士に比べて乳がん罹患率が60%高く、大腸癌の罹患率も高かった
  • 17-19時間連続で起きているとその人の能力は血中アルコールレベルが0.05%の人と同じ程度になる
  • 午前3時と4時の間は夜間労働者のミス、自動車やトラック事故、鬱血性心不全胃潰瘍、乳幼児の突然死症候群、骨破壊、偏頭痛、ぜんそく発作がピークを見せる時間帯
  • F.スコット. フィッツジェラレルド「魂の中の真の闇夜では、いつだって時刻は午前3時だ」

感想) 人間的な生活リズムで働こう

感想

繰り返しになるけれど、人の性格や性的なこと、健康にかかわることはどうしてもキャッチーなものがもてはやされて、論文があってもその質を素人は評価できないように思うので、うのみにしないようにしましょう。

そういえば、大学受験まではぼんやりとバイオ・生命を研究したいなー、と思っていたのを思い出した。 人体も人間もまだまだわからないことだらけなので勉強・研究したい思いはある。